新宿うずめ様事変~鬼狩りの迷宮

    作者:麻人

    「急なところあつまってくれてありがとう」
     村上・麻人(大学生エクスブレイン・dn0224)は挨拶をしてから、先日学園に保護されたエスパーの事について報告した。
     彼らについては諸々の身体検査や現在の状況への説明を行い、更には神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)の提案によってサイキックアブソーバーを見てもらうことになったのだそうだ。
     すると、エスパー達がサイキックアブソーバーに触れた際に暗号のような文章が出力されたのである。この暗号は新沢・冬舞(夢綴・d12822)と漣・静佳(黒水晶・d10904)の両名によって解読され、『サイキックアブソーバーの予知に似た力を持つ者の存在』と『その居場所』についての情報が得られたというのだ。

    「この暗号が示すものこそ、ソウルボードの戦いに加わらなかった『うずめ様』がデスギガスとの戦いで半壊した『新宿迷宮』で何かを行っているという情報だったんだ。予知能力を持つ彼女が動いているということは、おそらく重要な意味があると思って間違いないだろうね」
     うずめ様がいると思われるのは新宿迷宮最下層だ。
     彼女は配下のデモノイドや羅刹たちに指示を出し、チームを組んで新宿迷宮下層の探索を行っている。
    「君たちにお願いしたいのはそのものずばり、うずめ様の灼滅だ。ただし、迷宮では多数のデモノイド達が探索している。彼女の元にたどり着くにはこれらの敵をかいくぐり、または撃破しながら最下層を目指してもらえるかい?」

     新宿迷宮は幾つかの階層に分かれている。
     上層部については破壊されて瓦礫となっているものの、先に入った羅刹たちによって下へと進む道が作られているので問題ない。
     中層部はあちこちが崩壊しているが、探索は可能な状態だ。
     下層部からはデスギガスとの戦いやグレート定礎の影響なども無く迷宮として機能しており、多数のデモノイドや羅刹達が何かを探して探索している。
    「この下層部で探索している敵と出会わずに最下層に到達するのはおそらく難しい。しかも、『うずめ様』は例の予知能力を持っているからね。逃げられないためにはあらゆる事を想定した同時攻略が求められる」
     よって、今回の作戦は察知されやすい全体行動ではなく、チーム単独による撃破を目指す。拠点を作り、大人数で少しずつ侵攻していくような迷宮攻略の定石は『うずめ様』に察知される危険性が高いためだ。
    「探索中のデモノイドや羅刹は4~6体くらいのチームに分かれて行動してるから、遭遇しても勝てない相手ではないはず。でも、ずっと戦いっ放しじゃ最下層にたどり着く前に疲れてしまうから、必要な戦いのみ選択しつつ進んだ方がいいだろうね」

     そういえば、とエクスブレインは思い出したように呟いた。
    「新宿迷宮はかつて、刺青羅刹の外道丸が灼滅された場所でもあったね……もしかしたら、なんらかの因縁があるのかもしれない。いずれにしてもここで『うずめ様』に引導を渡せるかどうかは大きな違いを生むはずだ。頼んだよ、皆――」


    参加者
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)
    柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)
    加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)
    羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)
    月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)
    若桜・和弥(山桜花・d31076)
    四軒家・綴(二十四時間ヘルメット・d37571)

    ■リプレイ

    ●降下
     上層から中層にかけて、彼らは一気に迷宮を降っていく。現在最下層に向けて進軍中の班は二十。その中でも彼らが突き進むペースはかなり良い方と判断していいだろう。
    「ふんッ……!」
     道を塞ぐ柱をどかして、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)は額を拭った。裂け目から下を覗くと、これまでとは違ってほとんど建物が崩れていない。どうやらこれで中層を抜けるようだ。用意してきたフック付きのロープを楔に通して、慎重かつ迅速に進んでいく。
    「随分と下ってきたな……ここからが本番だなッ」
     控えめにポーズを取る四軒家・綴(二十四時間ヘルメット・d37571)の足元をサバトラの雄猫がすり抜けた。猫変身した柳瀬・高明(スパロウホーク・d04232)である。彼ら姿を変えられる者たちが小柄を生かして先行・偵察を行うという作戦だ。
     加賀谷・彩雪(小さき六花・d04786)が祈るように呟いた。
    「見つかりませんように……」
     彼らはできる限り足音を忍ばせ、ライトは極力使用せず、先に進むときは床や壁に耳をそばだてるなどして察知した敵を回避する。
    「気を付けて! そこ、なんかあるよ」
     守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)は注意深く床や壁を探り、事前に罠を見つけては仲間達にそれを伝え、躱していった。
    「なんか冒険映画みたいだね。探求心がすごく疼くっていうか」
    「うん……!」
     結衣奈に頷き、羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)は張り切って前に進む。
    「はてさて、久しぶりの新宿迷宮。何が出るかな……って、前に来た時とマップが違うみたいね? 大まかな方向や形は合ってるけど、道なんかは結構変わっちゃってるみたい」
    「結界発動時になんかそういう力が働いちゃってるのかもねー。あの再生怪人てば一体何をやらかそうとしているのやら」
     月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)の声色は軽く、どこか楽しんでいるような風情がある。
    「こうも探検っぽいとキャンプでもしたくなってくる――」
     言いかけた時、先行して偵察していた若桜・和弥(山桜花・d31076)が狼姿で戻って来た。どうやら敵が近づいているらしい。
    「そこの脇道に入って」
     とっさに玲が示す建物の裂け目に入り、迂回しながら更に下層を目指す。目的地へと確実に近づいていることは、一気に増えた敵の数からして明らかだ。
    「仕掛け時か……?」
     これ以上迂回路を探しても敵との遭遇は避けられないだろうという頃合いを見計らって、綴が言った。
    「そう、ですね……ここからは最短距離をとるべきかと」
     彩雪が頷き、康也が言った。
    「俺の後ろにいろよ、彩雪。高兄、背中はまかせたぜ!」
    「ああ、思いっきり行ってこい!」
     こちらに気付いたデモノイドの群れに向かってバスターライフルの引き金を引き絞り、高明が叫んだ。
     既に周囲は結衣菜によるサウンドシャッターによって遮断され、戦場外まで音の類が届くことはない。
    「前衛は私に任せて! ふふふ、おねえちゃんにいいとこ魅せるんだ」
     張り切って飛び出した結衣菜はざっと敵の編成を確認。
    「羅刹1人にデモノイド3体かー。刺青羅刹はいないのかなあ?」
     きょろきょろと辺りを見回しながら、「まあいっか」とマテリアルロッド片手に敵ディフェンダーと思われるデモノイド目掛けてフォースブレイクを叩き込む――!
    「おっと、こっちにもいるぜ!」
     結衣菜に群がりかけたデモノイドの注意が康也にも向いた。
    「そらよ!」
     幻狼銀爪撃をフォースブレイクの直後に放ち、手早く1体目を撃破。
    「――」
     和弥は眼前で両拳を打ち合わせ、凛と敵を見据えた。
    「悪いけど、通させてもらうよ」
     狼の尾を翻してデモノイドの懐へと潜り込み、瞬時にティアーズリッパ―で切り裂く。間隙を与えず綴は突き出した両手からオーラキャノンを放出した。
    「沈めッ!」
    「眠りな、安らかに」
     高明の構えるバスターライフの内部構造から流れる聖歌。オーラキャノンと連続で黙示録砲の直撃を受けたデモノイドがその場にくずおれる。
    「さっちゃん……!」
     足元の霊犬の六文銭に合わせて彩雪がマジックミサイルを撃ち込んだ。額を撃ち抜かれたデモノイドがのけぞったところへ、玲のオーラキャノンが更に追撃。
    「もう一発!」
    「了解! ばしばしなぎ倒していくよ!!」
     結衣菜が滑り込んで、槍の穂先を敵の急所へとねじ込んだ。
    「やったね!」
     結衣奈が歓声を上げ、前衛にワイドガードを広げて援護する。
    「くっ……!!」
     残された羅刹が苦し紛れに異形化した腕を振りかざす――だが、それが振り下ろされるより先に灼滅者たちの攻撃が一斉に降り注いだ。
    「ぐが、あ――!!」
    「殺し合い奪い合う、それ以外の道を選べたら良かったのにね」
     灼滅されゆく彼の脇を走り去りながら、和弥はぽつりと呟いた。

    ●合流
    「見て、この足跡。他の班がここを通ったんだ」
     玲が指差す床には明らかに人のものと思われる複数の足跡があった。
    「じゃあ、この先に?」
     結衣奈は仲間に続いて最奥へと続く階段を飛び降りる。
     その先を急ぐ途中で彼らは別の班のメンバーと合流した。どうやらあちらも上・中階層を一気に抜けた後は敵を回避しつつ、最後は強行突破で押し切ってここまで到達したようだった。
    「みんなもここまで辿り着いたのね」
     玲は手を振って合流した班のメンバーとあいさつを交わしながら、明るく言った。
    「ああ。皆で協力したお陰でな」
     微苦笑して応える文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)に、玲が肩を竦めてみせた。
    「こーんな迷宮で何探してんだか知らないけど、大本を潰してしまえば後はどーとでもなるでしょーよ」
    「確かにうずめ様が何を探しているのかには興味があるが。月夜の言う通り、うずめ様を灼滅してからでもそれを調査することは不可能では無いからな」
     レイ・アステネス(大学生シャドウハンター・d03162)の視線を受けた高明は康也と共に笑みを浮かべ、親指を立てた。
    「なんにせよ、今度こそ決着をつけてやろうぜ。――急ぐぞ」
    「そうだな」
     白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)が頷いたのを合図に、2班は共に最奥を目指して駆ける。
    「! あれは……!?」
     遂に到達した迷宮の最下層で、結衣奈は今まさに撤退しようとしているうずめ様と、彼女の配下と交戦中の仲間を見つけた。既に1班は戦闘不能に陥っており、大の字に倒れている者さえいるようだ。もう1班も挟撃に耐えるのが精いっぱいで今にも戦線が瓦解しそうな状況である。
     うずめ様を逃がすわけにはいかないが、戦闘中の班が倒れて配下たちがうずめ様の撤退支援に回るのもまた、阻止しなければならない。
     康也は有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751)とアイコンタクトを交わすと、うずめ様はそちらに任せて仲間の救援へと向かった。
    「私達が皆の希望になる! その為に……うずめ様、貴女を倒して務めを果たして帰るわよ! 皆で、一緒に!」
    「俺達の絆の力、見せてやる!」
     氷上・鈴音(夢幻廻廊を彷徨う蒼穹の刃・d04638)と咲哉が揃ってうずめ様に啖呵を切るのに合わせ、結衣奈もまた自らと仲間を鼓舞するために宣った。
    「決着を付けるよ! 絆と未来を信じて!!」

    ●決戦
     敵の増援に挟み込まれたその班は既に戦闘不能者が1名、他にも数名が深手を負って凌駕済みとかなり追い込まれているのが見て取れた。
    「大丈夫かッ!?」
     愛機――ライドキャリバーに騎乗した綴が、ドリフトの要領で鋏を振り上げるロード・キャンサーの眼前に滑り込み、その一撃を引き受けた。
    「駄目……とは言わないでおこう」
     背後から茶倉・紫月(影縫い・d35017)がダイダロスベルトを撃ち出しつつ、気丈に答える。
    「実際、いいタイミングだよ!」
     反撃を受けて後退するロード・キャンサーへと、饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)が影刃で追撃を入れながら礼を言う。
     突然の乱入に、勝機と見ていたデモノイドと羅刹達の間で動揺が広がる。その隙を逃さず、彩雪は回復が足りないと思われるところへとラビリンスアーマーで援護した。
    「加勢します……! 今のうちに体勢を立て直してください」
    「助かる。これで、もう少し粘れそうだ」
     それを受けた刻野・渡里(殺人鬼・d02814)は発動しかけていたシールドリンクを切り替え、指先で繰る大量の結界糸を乱舞させながら再び攻勢に出る。
     眼前には、二体のデモノイドロードと羅刹他デモノイドが数体。ルフィア・エリアル(廻り廻る・d23671)がちらりと横目で敵を示しながら言った。
    「早速で悪いけど、半分と――あの蠍おばさんを任せたい。酸と毒に気を付けて」
    『おばっ……これでも人間だった時は、まだ三十路前よぉ!』
    「了解」
     ロード・スコーピオンの反駁を無視した和弥は無駄のない身のこなしで敵の陣中に斬り込み、その身に纏う畏れを具現化した刃を薙いだ。どのような状況であろうと全ては常と変わらない。
     立ち塞がる蠍型のデモノイドロードを見据え、気負いなく告げた。
    「いつも通り、勝って帰るよ」
    「そーゆーこと」
     玲の肩上でウイングキャットがリングを光らせる。
    「ガゼル、わかってるな?」
     高明の指示を受け、ライドキャリバーが盾となってデモノイドの前に滑り込む。できるだけ攻撃を引き付け、他班の戦闘不能者が引くための時間を稼いだ。高明もまた、特に素早さそうな相手に狙いをつけ、足止めを狙って黒死斬で断つ。
    「みんな、頑張って!」
     結衣奈の巻き起こす清めの風が、高野・妃那(兎の小夜曲・d09435)のそれと溶け合うようにして戦場に清涼な息吹をもたらした。
    「頼もしいな……ありがたいッ!」
     綴が叫び、ライドキャリバーのギアを更に上げた。
     両手離しで運転しながら放つ渾身のオーラキャノンがデモノイドの眉間を撃ち抜く。
    「いける。一気に行くぞ!」
    「ああ、ここが正念場だ。絶対に決めてやる」
     殺人注射器を手に康也が躍りかかったデモノイドへと、高明の機械触手状の影業が背後より迫った。
    『ギシャアア!!』
     前後から撃たれたデモノイドが叫び、腕を振り回すのを玲と彩雪が同時に狙い撃った。魔弾と影刃が迸り、灼滅する。
    「あと残り2体だよ、頑張って!」
     前衛にワイドガードを展開しながら、結衣奈が叫んだ。
    「せやッ!!」
     綴の放ったリングスラッシャーが羅刹の白軍服に包まれた肩を切り裂き、体勢を崩す。そこへ狙いすました和弥の螺穿槍が繰り出され――敵の正中を貫いた。
     穂先を抜き払いながら、和弥はうずめ様の撤退阻止に回った班の様子を伺った。
     灼滅者たちの波濤のごとき攻撃を一身に受けながらも、うずめ様は微かな笑みすら浮かべて舞うように地面を叩く。その途端、大地震の余波がここまで届き、誰かが「メディックか!?」と叫ぶ声がした。
    「粘られるときつそうだ」
     和弥は仲間を振り返り、決然と言った。
    「早く片付けて援護に回ろう。残るはあのデモノイドロードのみ」
    「よーし、全力全開でいくよ!」
     結衣菜が両手を広げると、影業が呼応してロード・スコーピオン目掛けて迸った。直撃を受けつつも、敵は両手の毒針を飛ばして応戦する。
    「このタイミング、うん、大丈夫。外さないよ」
     だが、すぐさま結衣奈がソーサルガーダーを展開。
    「ありがとう、ございます……!」
     援護を受けた彩雪は雪風――エアシューズを駆りながらラビリンスアーマーを纏った。そして敵の背後へと回り込み、グラインドファイアによる紅蓮の蹴撃を叩き込む――!
    『う、嘘でしょ? このあたしがやられるなんてぇ……っ!!』
     炎に撒かれながら灼滅されていくデモノイドロードの脇をすり抜け、うずめ様の元へと急ぐ彼らに気付いた羅刹が叫んだ。
    「うずめ様の元には――っ!?」
     だが、羅刹が宿す雷光ごと影で束縛しながら、妃那が促す。
    「行って下さい。うずめ様には、何度も振り回されました。ルナ・リードも依も、うずめ様に振り回されて死にました。いい加減、二度目の灼滅を迎えて欲しいものです」
     刃と化した影で羅刹を切り裂き、ルフィアもまた後を託した。
    「復活怪人程、面倒なのはいないからな。決着を、頼んだ」
    「――うん。彼女との因縁はここで終わりにするよ……!」
     結衣奈は二人に頷くと、仲間たちの後を追って暴虐なる力を振るい続けるうずめ様の元へとひたすらに駆けた。

    ●うずめ様
     気づけば、うずめ様と戦い続けていた仲間達は満身創痍。彼らの援護に駆け付けた康也は、時を同じくして発動したうずめ様の一撃――例の大地震だ――の直撃を受けてうめき声を上げた。
    「くっ、こんなもんをずっと食らってたのかよ……!」
    「援護するぞ。構えろ!」
    「お嬢様(フロイライン)……覚悟ッ!」
     高明の号令で、綴は体を全開までしならせつつリングスラッシャーを射出。和弥は己自身を刃と化して、うずめ様の懐へと潜り込みティアーズリッパ―で瞬時に切り裂く。
     その時、うずめ様の口元からぞっとするほど禍々しい呪詛の言葉が紡がれる。
    「くるよ!」
     斬影刃を飛ばしつつ、とっさに結衣菜が叫んだ。
     うずめ様の掲げた両腕が光球を生み、目を開けていられないほどの白光を放射する――!
    「うずめ様は言いました。罪人達に最後の裁きをと」
     その光球が大地に落とされた瞬間、カッ、と爆発音が轟いて身を焦がす程の閃光が地下の空間を埋め尽くした。
    「く……っ」
     鈴音達もろとも攻撃を食らった玲は上に落ちてきた瓦礫を投げやって体を起こす。
    「うずめ様は言いました……ね。もっと自分らしい言葉で話してくれれば、少しは分かり易いんだけどね」
    「はい……」
     かつて盟主候補になった過去を持つ彩雪は何か言いたそうな顔をして、けれどその言葉を飲み込んで灼滅者として告げた。
    「うずめ様、あなたの予言はもう二度と当たりません。ここで終わりにしましょう……!」
    「退場の花道は作ってあげるからさ。こっちも切り札は入手したしね」
     うずめ様の生み出す無数の幻影。
     攻撃後の隙を狙って、玲はクロスグレイブを、彩雪は雪を思わせる縛霊手を構え、次々と弾を撃ち出した。
    「これ以上はやらせねぇ!」
    「諦めちゃ駄目だよ、皆!」
     康也のラビリンスアーマーが幻影の群れからレイを護り、結衣奈の風が鈴音達の心身を癒していく。
    「いけ……!」
     結衣菜が願うように呟いたのと、咲哉の【十六夜】がうずめ様を袈裟に斬り捨てたのとが同じタイミングだった。
     誰もが固唾を飲んで見守る中、うずめ様がゆっくりと倒れ、一瞬だけ眩い光を放った後に灼滅されてゆく。
    「お疲れさま、です……」
     うずめ様灼滅の報が無線で他の班にも伝わってゆく中、彩雪はほっと安堵の息を吐いて皆を見渡した後、隣の康也を見上げて微笑んだ。自然と互いの健闘を称える声が上がり、手のひらを打ち合わせる音が地下の迷宮に清々しく響き渡った。

    作者:麻人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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