●エクスブレインからの依頼
「学園に保護されたエスパー達に対しては、身体検査や、現在の状況への説明などを行っていましたが、神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)さんの意見もあり、充分な警護を行った上で、エスパー達に、サイキックアブソーバーを見てもらう事となりました。特別な期待は無かったのですが、エスパー達がサイキックリベレイターに触れた時、アブソーバーに暗号めいた文章が出力されたのです。この暗号は最初意味不明でしたが、新沢・冬舞(夢綴・d12822)さんと漣・静佳(黒水晶・d10904)さんが解読に成功しました。この暗号が、サイキックアブソーバーの予知に似た力を持つ者の存在と、その居場所を示すものである事がわかったのです。その後、解読した暗号文章と、エクスブレインの予知から、『うずめ様』が、デスギガスとの戦いで半壊した『新宿迷宮』で何かを行っている事が判明しました。うずめ様の目的は不明ですが、予知能力を持つ『うずめ様』が、ソウルボードの戦いに加わらず、彼らにとって重要な何かがあるのは間違いありません。うずめ様は、新宿迷宮最下層に居るようです。配下のデモノイドや羅刹たちは、うずめ様の指示に従いチームを組んで、新宿迷宮下層の探索を行っています。皆さんには、探索を行っているデモノイド達を掻い潜り、或いは撃破して、うずめ様の元に向かい、うずめ様の灼滅をお目指してほしいのです」
教室ほどの広さがある部屋に灼滅者達を集め、エクスブレインの女性が今回の依頼を説明した。
「新宿迷宮の上層部は、破壊されて瓦礫となっていますが、羅刹によって下に進む道が作られています。中層部は、あちこち崩れているものの、探索可能な状態になっているようです。下層部は、デスギガスとの戦いやグレート定礎の出現の影響も無く、迷宮として機能しています。下層部は多数のデモノイドや羅刹達が、何かを探して探索を行っているようです。迷宮を、探索する敵を完全に避けて最下層に向かう事は不可能でしょう。迷宮下層の攻略は、予知能力を持つ、うずめ様の逃走を阻止する為、あらゆる方向からの同時攻略を行う必要があります。また、突入するチームは、チーム同士の連携などは行わず、チーム単独での踏破を目指す事になるでしょう。迷宮攻略の定石通り、拠点を作って周囲を掃討しつつ確実に前進するような攻略を行えば、うずめ様には確実に逃走されてしまいます。デモノイドや羅刹は、4~6体程度のチームに分かれて行動しているので、遭遇しても勝てない相手ではないでしょう。……ですが、さすがに何連戦もして勝利し続ける事はできないので、可能な限り戦闘を避けつつ、避けられない敵を確実に撃破して地下に向かってください」
そう言ってエクスブレインの女性が、今回の資料を配っていく。
資料には最低限の情報が書かれており、それを参考にして依頼を遂行してほしいとの事だった。
「正直、エスパーの人達の救出と保護が、サイキックアブソーバーに影響を与え、うずめ様の撃破に繋がる事になるとは思いませんでした。新宿迷宮は、刺青羅刹の外道丸が灼滅された場所でもあるので、なんらかの因縁があるのかもしれません。また予知能力を持つ『うずめ様』を、このチャンスに灼滅出来れば、大きな戦果になるでしょう」
そう言ってエクスブレインの女性が、灼滅者達に対して期待の眼差しを送るのであった。
参加者 | |
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古海・真琴(占術魔少女・d00740) |
ジヴェア・スレイ(ローリングエッジス・d19052) |
アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193) |
九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536) |
カーリー・エルミール(元気歌姫・d34266) |
驚堂院・どら子(コンビニ大学卒っ・d38620) |
●新宿迷宮上層部
「……ダンジョンというより地下都市ですね」
驚堂院・どら子(コンビニ大学卒っ・d38620)は普段と変わらず宇宙人人形を抱え、仲間達と共に新宿迷宮の上層部を歩いていた。
新宿迷宮の上層部は破壊されているため、あちこち瓦礫の山になっていた。
一応、羅刹によって下に進む道が作られているものの、そこを通っていく事は彼らと遭遇する事を意味していた。
それが分かっていても、その道を通らなければ、瓦礫を退かすだけでも一苦労。
最悪の場合は、下層部に行く事さえ出来ないため、何を犠牲にしながら進む必要があった。
「その、なんだ……デモノイドや羅刹は、何を探しているんだ? 何処を見ても、瓦礫の山……。こんな場所に何もないと思うんだが……」
九条・九十九(クジョンツックモーン・d30536)が、自分なりの疑問を口にした。
いまのところ、デモノイドや羅刹の目的は分かっていない。
だが、何の理由もなく、こんな場所に来る事はないだろう。
「とにかく、最下層まで行けば、何か分かるはずです」
古海・真琴(占術魔少女・d00740)がスーパーGPSを使いつつ、空飛ぶ箒(天狗丸)から降り立った。
スーパーGPSのおかげで、自分の現在位置を確認する事が出来ているものの、何も使わなければ確実に迷ってしまうほど、似たような景色が続いていた。
それでも、分かる人が見れば、微妙な違いに気づくのかも知れないが、少なくとも真琴には違いが分からなかった。
そう言った意味でデモノイドや、羅刹が迷っている可能性があるものの、こちらもハッキリとした目的地が分かっていないまま歩いているため、似たようなモノだった。
「何か手掛かりになるようなものがあればいいんだが……」
アトシュ・スカーレット(黒兎の死神・d20193)が足音と気配を可能な限り殺しつつ、ゆっくりとペンライトを照らしていく。
どうやら、別の班が先に通っていたらしく、足元にチョークで矢印が書かれていた。
おそらく、その矢印が向いている方向に進んだと言う事だろう。
しかし、これが万が一罠だとしたら……。
そんな考えが脳裏に過る。
もちろん、普通に考えれば、罠である可能性は限りなく低い。
だが、何らかの事情で、そうしなければならないのであれば、事態は深刻。
最悪の場合は、他の班の誰かが人質に取られている可能性もあった。
ただし、それは現時点で憶測でしかない。
それでも、用心に越した事はないだろう。
「なんだか、ここだけおかしくない……?」
それに気づいたカーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)が、ヘッドライトで瓦礫の山を照らす。
一見すると、単なる瓦礫の山だが、それにしては妙だった。
まるで一度退けた瓦礫を、もう一度積み直したような不自然さ。
何かを隠すためなのか、それともあえて気づかせ、罠にハメるつもりなのか、これだけの情報で判断する事は難しい。
そういった意味でも、臆する事なく前に進み、自分の目で確かめる必要があるだろう。
「つまり、その……なんだ。この先に何かある……って事か?」
九十九が警戒した様子で、DSKノーズを使う。
確かに臭う……薄っすらとだが……。
相手に気づかれていない状態であれば、蛇変身で先行する事も出来るのだが、待ち伏せされていたとしたら、それは自殺行為でしかない。
「まあ、おそらく……な。それが必ずしも俺達が求めているモノとは限らないが……」
アトシュが怪力無双で瓦礫を退け、そこから出現した道を眺めた。
この先に誰がいるのか分からないが、地図を持っていない限り、正解のルートを進んでいるとは考えにくい。
それでも、瓦礫で道を塞いでいたのだから、なるべく戦闘を避けつつ、最下層を目指している事だけは間違いなかった。
「とにかく先に進んでみよう。デモノイドや羅刹たちが求めているものの正体を確かめるにも……」
そう言ってジヴェア・スレイ(ローリングエッジス・d19052)が、警戒した様子で先に進んでいく。
そして、その先にいたのは、羅刹達で構成されたチームであった。
●羅刹
「まさか、後を追ってくる奴がいたとはねぇ……。もっと念入りに塞いでおけば良かったかな」
張りついたような笑顔を浮かべた羅刹が、やれやれと大袈裟に首を振る。
「……たくっ! だから言っただろうが! あんな事をしたって、意味がねぇって!」
鋭い目つきの羅刹が、イラついた様子で叫ぶ。
おそらく、瓦礫を積んでいたせいで、無駄な時間を費やしてしまった事を、今まで悔いていたのだろう。
『ほら、見ろ! 言ったとおりになったじゃねぇか!』と言わんばかりにイラついていた。
他の羅刹達も何やら言いたげな表情を浮かべていたものの、それを口に出す事が出来ないような感じであった。
(「なんで、こんなところに羅刹が……」)
どら子が信じられない様子で、宇宙人人形をギュッと抱き締めた。
なるべく気配を消すようにして進んでいたため、気づかれるような事はしていなかったはず。
にもかかわらず、羅刹のチームが、どら子達の前に立っていた。
おそらく、チームのリーダーは、張りついた笑顔を浮かべた羅刹。
羅刹は合計六体ほどいるものの、その中でも鋭い目つきの羅刹がズバ抜けて強そうな感じであった。
(「この状況で逃げる訳にもいかないし……」)
カーリーがゴクリと唾を飲み込んだ。
羅刹達の後ろに道が続いているものの、暗くて遠くまで見る事が出来ない。
だが、羅刹達がここにいたと言う事は、この先に『何か』ある……と言う事だろう。
「おいおい、どうしたァ!? ひょっとして、ビビッちまったのか? 先に進みてぇんだろ。この先にさァ!」
鋭い目つきの羅刹が、わざと大声をあげて、カーリー達を睨む。
その間も、リーダー格の羅刹は、ずっと笑顔を浮かべたまま。
まるで、それ以外の表情を『失ってしまった』ような感じであった。
(「……やるしかない……!」)
ジヴェアが覚悟を決めた様子で、サウンドシャッターを使う。
それが合図となって、羅刹達が動く……!
(「でも、この人数なら……」)
真琴が羅刹達の攻撃を避けつつ、斬影刃で反撃をする。
この先に何があるのか分からないが、どちらにしても羅刹達を倒さなければ、確かめようがない。
羅刹達も見つけた以上は放っては置けないと言わんばかりに攻撃を仕掛けてくるため、この状況で逃げると言う選択肢は存在していなかった。
「なかなか、やるじゃねえか! だが……遅い!」
鋭い目つきの羅刹が、真琴に殴りかかってきた。
そのパンチは無数の刃物がついているかの如く素早く、少し触れただけでも切り傷が出来てしまう程の破壊力があった。
(「なるべく短期決戦に持ち込みたいところだが……」)
アトシュが何度か羅刹からの攻撃を受けつつ、険しい表情を浮かべる。
それでも、何とか仲間達と力を合わせて、2体程倒したものの、目の前の羅刹は別格……。
段違いに強いだけ、一対一での戦いは、自殺行為であると言えた。
「とにかく、やるしかないか。まあ、そもそも、選択の余地なんてないんだが……」
九十九が深い溜息をつきながら、目の前の羅刹に黙示録砲をぶち込んだ。
おそらく、それは羅刹達も同じ事。
こうなってしまった以上、戦う以外の選択肢は存在していない。
生きるか、死ぬか、ただそれだけ。
実に単純な事ではあるが、誰だって死にたいとは思わない。
それ故に……、羅刹達も必死だった。
●血溜まりの中で
「へへっ! 意外としぶてぇじゃねーか! おかげで仲間達が、今じゃ肉団子だ! ……たくっ! こんなところで、遊んでいる場合じゃねーって言うのに、まったく迷惑な話だぜ」
鋭い目つきの羅刹が荒々しく息を吐きながら、灼滅者達を見つめて不気味に笑う。
他の羅刹達は、既に血溜まりの中。
その瞳は死してなお、恐怖と絶望の色に染め上げられていた。
「それはこっちのセリフだから……。本当なら、こんなところで足止めを食らうはずじゃなかったのに……」
ジヴェアが気合をこめたポーズで、胸のスペードを輝かせた。
「だったら、素直に死にやがれ!」
鋭い目つきの羅刹が間合いを詰め、傍にいたどら子を殴り飛ばす。
「……うっ!」
その拍子に、どら子の身体が宙を舞う。
それでも、宇宙人人形だけは決して離さず、力いっぱいに抱き締めながら、自らの身体をクッション代わりにした。
「悪いけど死ぬのはそっちだよ」
その隙をつくようにして、アトシュが死角に回り込み、鋭い目つきをした羅刹の左足にナイフを刺した。
「し、しまった!」
それは鋭い目つきをした羅刹にとって、予想外の攻撃であったらしく、膝をつくようにしてバランスを崩した。
だが、その一瞬……ほんの一瞬が、命取りになった。
すぐさま、立ち上がろうとしたものの、その視界に入って来たのは、目前にまで迫った九十九の姿であった。
「お前の敗因はただ一つ。仲間を……信じなかった事だ……」
次の瞬間、九十九が鋭い目つきの羅刹に、蹂躙のバベルインパクトを叩き込む。
それは鋭い目つきの羅刹にとって、予想外の展開。
決して望まぬ最後であった。
だが、それでも、あがき、九十九の頭を掴もうとしたが、その手は虚しく空を掻き、やがて動かなくなった。
「……あれ?」
そんな中、カーリーが気づいた。
張りついたような笑顔を浮かべた羅刹がいなくなっている事に……。
何か目的があったため、仲間達を見捨てて先に進んだのか、それとも逃げてしまったのか分からない。
ただひとつ言える事は、他の羅刹は単なる手駒、もしくは時間稼ぎの道具としか考えていなかったと言う事である。
もちろん、羅刹ひとりで最下層まで進めるとは考えにくいため、例え前者であったとしても他の班と戦って命を落としている可能性が高かった。
「それにしても、最下層にいったい何が……」
真琴が物思いに更けながら、複雑な気持ちになった。
その答えが最下層にある。
それだけは間違いないのだが、羅刹との戦いで傷ついた身体を癒す事無く最下層を目指すのは、誰がどう考えても自殺行為でしかなかった。
それに、他の羅刹やデモノイドに会う事なく、先に進めるとは考えにくい。
そういった意味でも、この場で戦いの傷を癒すのが、現時点での最優先事項であった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年6月5日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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