新宿うずめ様事変~迷宮の底で

    作者:九連夜

    「皆さん、羅刹の『うずめ様』の行方がわかりました。灼滅をお願いします」
     緊急に教室に集められた灼滅者たちに対し、五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)はいきなり事態の核心を突く台詞を吐き出した。
     予知能力を持つことから様々なダークネス勢力と友好的な関係を保ち、これまでもたびたび灼滅者たちの追求から逃げ延びてきた『うずめ様』。武蔵坂学園の宿敵ともいえるその彼女の居場所が、ついに特定できたのだという。
    「実は、学園に新たに加入したエスパーの皆さんとサイキックリベレイターの組み合わせから、意外な情報を得ることができまして……」
     おそらくはソウルボードに働きかける民間活動によって発生したと思われる新種の能力者「エスパー」。灼滅者と一般人の中間的な力を持つ彼らは学園に保護され、身体検査などの調査や現在の状況の説明などが行われていたが、神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)の提案によりエスパー達がサイキックリベレイターに触れた時、アブソーバーに暗号めいた文章が出力されたのだという。そしてその正体不明な暗号文は新沢・冬舞(夢綴・d12822)と漣・静佳(黒水晶・d10904)により解読され、サイキックアブソーバーの予知に似た力を持つ者の存在と、その居場所を示すものである事が判明した。
    「それがつまり『うずめ様』だった、というわけです。その内容と私たちエクスブレインの予知を合わせて調査したところ、うずめ様がデスギガスとの戦いで半壊した『新宿迷宮』で何かを行っている事が判明しました。うずめ様の目的は不明ですが、予知能力を持つ彼女がソウルボードの戦いに加わらずに動いている以上、彼女とその関連勢力にとって重要な何かがあるのは間違いありません」
     うずめ様は新宿迷宮の最下層に居り、配下のデモノイドや羅刹たちに指示をして迷宮下層の探索を行わせている。だから探索を行っているデモノイド達を掻い潜り、或いは撃破してうずめ様の下に向かい、灼滅をお目指してほしい。
     そう説明すると、姫子は一息ついて灼滅者たちの顔を見回した。
    「新宿迷宮の上層部は先の戦闘で破壊されて瓦礫となっていますが、羅刹によって下に進む道が作られています。侵入は容易でしょう」
     中層部もあちこち崩れてはいるが、探索は可能。
     下層部は、かつてのデスギガスとの戦いやグレート定礎の出現の影響も無く、迷宮として機能し続けているらしい。そして多数のデモノイドや羅刹達が何かの探索を行っている。
    「迷宮を探索する敵を完全に避けて最下層に向かうのは無理です。しかし予知能力を持つうずめ様の逃走を阻止する為には、最下層に対してあらゆる方向からの同時攻略を行う……つまり完全に包囲したまま輪を縮めていく必要があります」
     だから突入するチームはチーム同士の連携などは考慮せずそれぞれ単独で最速の踏破を目指し、かつ結果としてうずめ様の逃げ場を無くす必要がある。迷宮攻略の定石は拠点を作って周囲を掃討しつつ確実に前進していく形だが、今回はそれでは確実にうずめ様に読まれて逃走を許してしまうだろう。
    「デモノイドや羅刹は4から6体程度のチームに分かれて行動しています。幸い、強力な敵は出払っているので今の皆さんなら遭遇しても勝てないことはありません。ただし……」
     腐っても相手はダークネス。連戦は非常に厳しいし、仮に脱落すればそれだけうずめ様の脱出の可能性を高めてしまうことになる。だから可能な限り戦闘を避けつつ、避けられない敵を確実に撃破して最下層に向かって欲しい。説明をそう締めくくると、姫子は真剣な表情で灼滅者たちを見た。
    「『うずめ様』はいわばダークネス側のエクスブレインです。皆さんというよりも、むしろ私たちエクスブレインにとっての宿敵です。これまでも何度も読み合いを繰り広げて、勝ったり負けたりを繰り返してきました。ですが……」
     それももう終わりにしたい。
     いろいろ思うところのありそうな表情で、しかし決然とそう言い切ると、姫子は灼滅者たちに向かって深々と頭を下げた。
    「お願いします。どうか彼女に引導を渡してきて下さい」


    参加者
    神虎・闇沙耶(罪と誓いを背負う獣鬼・d01766)
    聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)
    刻野・晶(サウンドソルジャー・d02884)
    桃野・実(すとくさん・d03786)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)
    松原・愛莉(大学生ダンピール・d37170)
    片桐・雫(因果綴りの万年筆・d37686)

    ■リプレイ

     ぽっかりと黒い穴が口を開けていた。一般人が知る新宿の真下に広がる広大な地下空間から、さらに地の底へと下る穴が。
     かつて強大な力を持つラグナロクの少女が統べ、幾度かの戦争の舞台となり、そして何体もの強大なダークネスの墓場となった『新宿迷宮』。瓦礫の山と化したかに思われたその場所は、今また新たな陰謀の舞台となっていた。
    「新宿迷宮か、懐かしいな」
     桃野・実(すとくさん・d03786)は周囲を覆う一面の瓦礫を見回しながら、傍らに控える愛犬「クロ助」の頭に手を置いた。
    (「あの時はデスギガスのおへそに必死だった気がする」)
     かつて迷宮と同化し、灼滅者がその身体の部分部分で激烈な戦いを繰り広げた恐るべきシャドウはすでに亡い。
    「しかしなんでわざわざこんな場所に来たんですかね」
     指で眼鏡の位置を直しながら、牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)は穴の奥をのぞき込むようにした。何かを思案する表情で松原・愛莉(大学生ダンピール・d37170)が応じる。
    「ええ、うずめ様の探し物も気になるわ。……うずめ様にとって、サイキックハーツに至るより重要なことって、何?」
     同感ですとばかりにみんとが大きくうなずいた。
    「私たちに察知される可能性を考えてなかったのか、それを踏まえてでもここに来なければならなかったのか。いずれにしろ、大変なものが眠っていそうですね」
    「そうね。爵位級と別れて行動している時点で嫌な予感がするわ」
     ソウルボードに赴いた大物たちと別れてまで彼女が求めるもの。それが何なのかを知りたいと、そして自分が未だに答えを得られずにいる問いを彼女に投げてみたいと、愛莉は痛切に願った。
    「単純に考えればサイキックハーツと同程度かそれ以上のもの、だろうね」
     実が当然の推測を口にする。
    「もしそうなら、此処で奴を討たねば俺達が死ぬだろうな」
     神虎・闇沙耶(罪と誓いを背負う獣鬼・d01766)は普段と変わらぬ表情のまま凄まじい台詞を吐きだした。そんな仲間たちに向かって、片桐・雫(因果綴りの万年筆・d37686)が穏やかに宣言する。
    「とにかく、進まなければ物語は始まりません。入りましょう」
    「了解だ。このまま一番下まで飛び降りれたら楽なのにな」
     奈落の底へと落ちるかのような急な斜面をしばし眺めてから、聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)は仲間たちに顔を向けた。
    「で、探索の方針は……」
    「避けられるんなら、やり過ごす」
     闇に溶け込むような服装に身を包んだ槌屋・透流(ミョルニール・d06177)の答えは簡素きわまりなかった。
    「避けられないなら、ぶっ飛ばす」
     乱暴なことを言いつつも、彼は脇に置いた小さな鞄の中から紙束を取り出した。
    「それは地図か」
     刻野・晶(サウンドソルジャー・d02884)が一瞥した。
    「ああ、過去の探索の成果を貰ってきた」
    「貸してくれ。私はスーパーGPSを使える」
    「頼む」
    「あ、私も持ってきました!」
     愛莉も集めてきた地図を差し出す。やがて晶が手にした一枚の地図上に浮かんだ現在地を示すマークを見て、雫がうなずいた。
    「地図作りは探索の基本です。刻野さんは先頭としんがりは避けたほうがいいですね」
     不慮の事態の発生に備えて指揮者は身を守るべし。その指摘に応えるように、実が片手を小さく挙げた。
    「先導は俺がしよう。ブレイズゲートで結構深く潜ったし、この辺りもだいたいわかる」
    「そりゃあ頼もしい。背中は俺に任せろ」
     凛凛虎はさっさと最後尾に回った。実が一息ついて進み出て、改めて穴の暗闇を見やった。
    「極力隠密行動、敵の動きを読むように努力しつつ、無駄な戦いは回避する。明かりは必要最小限、敵の気配を少しでも感じたら消す。いいかな?」
     仲間たちの同意の声を背中で受け止めながら、実は愛犬に目を向けた。
    「……行くか、探しに」
    「わふっ」
     先頭の一人と一匹はそのまま闇の中へと飲み込まれ。
    「……気を付けて行くぞ」
     闇沙耶の言葉と共に、残るメンバーの姿も地の底へと消えた。

    ●探索
     瓦礫の合間の道を通って上層を抜け、崩落しかかった中層を通過して、目的の下層に辿り着いたのは、ほとんど無言の行軍が一時間あまり続いたのちのことだった。過去の戦いの影響が見られた中層までとは違い、下層はほぼ完全な迷宮の姿を誇っていた。
    「どう思う?」
     進み始めて十数分の後、実は足を止めて振り向いた。それまで各部屋や通路に堆積する埃の量から敵の規模や移動の規則性を探り、晶の地図と照らし合わせて見事に皆を導いてきた彼が、始めて発した問いだった。
    「変わってる感じだな」
     質問の意図を即座に理解した透流がぶっきらぼうに答える。事前に目を通しておいた地図、現在地を示すそれと現状が合わない。己のESPを試した晶が顔を上げた。
    「マークがぼやけている。地図が正確ではないせいか、あるいは」
    「迷宮が変化している……かしら?」
     愛莉は周囲の様子を改めて眺めた。通路や壁や小部屋が無秩序に並ぶ迷宮の中を限られた明かりの下で行動している以上、その全体像を把握する術は無いといっていい。だが少なくとも、地図と実情の乖離は地図の作成ミスの範囲を明らかに超えるレベルだった。
    「簡単に最深部まで行かせてくれる敵ではないでしょう。向こうもそれなりの用意を……」
     どこかアニメの巨大ロボットを彷彿とさせる西洋の鎧甲冑姿のみんとが、そんなことを言いながら先へ進もうとしたときだった。
    「待て」
     唐突に闇沙耶が鋭い声を発した。
    「え?」
    「そこの床」
     戸惑うみんとに、闇沙耶は指で彼女のすぐ前の場所を指し示す。
    「お、罠かな? 罠っぽいな」
     後から出てきた凛凛虎が割って入り、注意深く観察すればわずかに色が違って見える部分の床を強く踏んだ。というか踏みつけた。
    「……ん? てっ!」
     床から電撃のような力が迸り、凛凛虎は軽く飛び下がった。
    「怪我は……無さそうだな」
     闇沙耶の確認に凛凛虎は軽く肩を竦めて見せた。
    「まあ掠り傷だが、バベルの鎖は抜かれた。サイキック系の罠だな」
    「冒険小説っぽい展開になってきましたね」
     雫はくすりと笑った。
    「迷宮に潜む敵に待ち受ける罠の数々。こっそり進むのはドキドキですねぇ……ちょっと楽しくなってきました」
     そこでふと、真剣な表情になった。進行方向の暗闇の中を凝視した。
    「お客さんか」
     透流がすかさず戦闘態勢に入った。
    「こっちに向かって歩いてきてるみたい。そして」
     スーパーGPSを発動させたまま地図を見た晶が手短に分析結果を述べる。
    「離れてやり過ごすなら、かなり戻ることになるね。もしくは賭けで未探査区域に踏み込んでみるか、だ」
     沈黙が落ちた。厄介な罠の存在や迷宮の変貌まで把握した今、敵との戦いは避けたい。しかしそれでは時間を無駄にするか、未知の危険を冒すことになる。
     時間か安全か戦力か。難問に結論を下したのはこのなかでもっとも場数を踏んでいる凛凛虎だった。
    「サクッと殺って下に行くか」
    「だな。うまく敵を捕らえられれば情報が得られるかも知れん」
     ほぼ同等の戦闘経験を持つ闇沙耶が応じる。他の皆もうなずき、小さな部屋の中で速やかに陣形を整える。雫とみんとがサウンドシャッターを展開して音の閉鎖空間を形作るなか、やがて敵の気配が急速に膨れあがった。
     お互いにバベルの鎖を纏う者同士、一定距離以下に近づけば自ずと互いの存在に気づき不意打ちはない。5つの大型の影、顔無き青い異形のヒトガタ――デモノイドの乱入と戦闘開始は同時だった。
    「そうら!」
     初撃はTyrant、深紅の無敵斬艦刀による凛凛虎の一撃。敵先頭のデモノイドを問答無用で叩き伏せるように唐竹割りに叩きつける。
    「グワハッ」
     妙な悲鳴を吐き出したそのデモノイドはしかしすぐに立ち直り、凛凛虎に向かって爪状の右腕を伸ばす。やはり斬艦刀を構えた闇沙耶がその進路に割り込みガッチリと受け止める。
    「この程度か」
     呟いた彼にさらに別のデモノイドの爪が伸びる。浅傷を受けつつ回避した闇沙耶の影から無数の刃が乱れ飛んだ。晶が放った虚空ギロチンだった。その刃をくらった最初の一体に向かって透流が突進する。先の凛凛虎の軌跡をなぞるようにクロスグレイブが脳天を直撃、青い巨体は声もなく消滅した。
    「意外と弱い? いや……」
     微かな光しかない空間でどうやってか眼鏡を光らせたみんとが、ダイダロスベルトを展開しつつ戦況を読み取る。今のは連続攻撃が非常にうまくいったが、敵は雑魚扱いされるほど弱くはない。実の螺穿槍が貫き愛莉のダイタロスベルトが切り裂くが、残る4体はまだまだ健在だ。
    「なのちゃん、お願い!」
    「多少、手間がかかりそうですね」
     愛莉の指示を受けたナノナノと小声で呟いた雫が、闇沙耶に向かって同時に癒しの力を送った。
     それから数分。実の妖冷弾を受けたデモノイドが落ち、凛凛虎に殴り飛ばされた個体も消えた。残るは2体。
    「おっ!」
    「グワッ!」
     低い姿勢の凛凛虎が放ったアッパー――抗雷撃とデモノイドはの斬り下ろしはクロスカウンターとなった。
    「これで終わりっ!」
     すかさず愛莉が飛ばした五星結界符がデモノイドの顔面に貼り付き、それは顔を掻き毟りつつ消滅する。
    「『仮面』」
     短く呼びかけた晶とビハインドの動きがシンクロする。ガトリング砲と霊撃の乱射の猛威のなかに、最後の一体も消え去った。
    「みんな無事か? って、俺が一番ひどそうだな」
     戦闘終了と同時に仲間たちに声をかけた闇沙耶が苦笑した。勝利することはできたが、前衛陣、特に防御役を買って出ている闇沙耶とクロ助のダメージは浅くは無い。
    「サクっとはやれなかったか。降伏勧告も全然聞きやがらねえし」
     集気法を使いながら凛凛虎が呟いた。
    「今後出てくる敵が同等ぐらいと仮定して」
     再び眼鏡の弦を指で押し上げながらみんとが口にした。
    「無理してあと2戦。『うずめ様』戦を考えれば1戦が限度かな」
     実の結論。皆は何となくお互いに顔を見合わせた。
    「とにかく、できるだけ戦闘を回避するしかないな」
     透流がまとめ、一行は再び前進を開始した。

    ●捨て石
     未踏の場所の地図を書き込み、敵の気配らしきものを感じ次第躊躇なく迂回し、罠に何度かひっかかりかけては何とか回避、一部崩れかけた通路の瓦礫は愛莉が怪力無双のESPを発揮して片付け踏破。そんな風にして進み続けていくうちに、彼らは雰囲気の変化を感じ取った。
    「……敵が多くなってねーか?」
    「同感だ」
     凛凛虎の疑問を透流が肯定する。稀に感じるだけだった敵の気配が、ここ10分ほどは頻繁に感じられるようになっていた。
    「下層の、敵の探索区域に完全に入り込んだということか」
    「多分ね」
     晶の確認に対する実の返答も言葉が少ない。彼は別のことを考えていた。
    (「他の班も隠密作成、あるいは迂回作戦が多かった。ということは……」)
     敵の数が減っていない。皆が迂回を続ける以上は遭遇の確率が落ちないのは当然だ。
    「引き返す敵をつけていくのも難しそうですね。他の作戦を考えないと」
     雫も当初の作戦は不可と判断した。互いにバベルの鎖がある以上、自分たちだけが気づいた状態で敵を追尾するのは思った以上に難しかった。
    「でも、地図は出来ていますよね。このまま進めば何とか」
     愛莉は晶が手にした地図をのぞき込んだ。かなりの追記、改変が加えられたそれは空白だった部分も含めてかなりの完成度に近づいていた。
    「あとは運次第ということですね」
     手にした箒を振り回しながら言ったみんとの動きが唐突に止まった。先頭の実が立ち止まっていた。最後尾の凛凛虎もまた。
    「来たよ」「来るぜ」
     二人の言葉を待つまでも無く、全員が感じ取っていた。前後から挟むように敵が近づいてくる。
    「悪運のほうだったか」
     闇沙耶が苦笑し、すぐに真顔になった。
    「あくまでやるなら……」
     全力で前の敵を撃破し、そのまま進み続ける。うずめ様にたどり着ける可能性は残るが、最悪の場合はうずめ様か他の敵と背後の敵に挟み撃ちにされる。
     凛凛虎が背後を見やった。
    「後の連中を潰すなら……」
     退路は確保できる。前の敵に追いつかれても戦闘、撤退の好きな方で対応できる。だがそれは、最深部への到達を諦めることだ。
     目的達成にこだわるか、確実な生還か。難しい二択に断を下したのは実だった。
    「退路の確保――というより、敵の撃破を優先しよう。他の班のためになる」
     少しは敵を減らさないと最下層へ辿り着ける班が減り、作戦全体の成否に関わる。ならば捨て石の役割もやむなしと、彼はそう判断した。
    「そんならさっさとやろうぜ」
     凛凛虎は躊躇わずに踵を返すと走り出した。その勢いのまま後方の敵の群れ――4体の羅刹のなかに突入する。
    「雑魚の掃除だ!」
     躊躇いの無い拳の一撃が羅刹を吹き飛ばした。
    「ぶち抜く!」
     追ってきた透流のグレイブが、先の戦闘を再現するように同じ羅刹の脳天を叩き潰す。
    (「たとえうずめ様に会えなくても……!」)
     今は仲間のためにと、愛莉は敵の群れめがけて符を飛ばした。
    「クロ助!」
    「わふっ」
     実は愛犬と連係攻撃、飛びかかった敵を狙って妖霊弾を撃ち放つ。
    「増援を」
    「遅らせましょうね」
     みんとと雫はアイコンタクト、再びサウンドシャッターを展開して後方の敵への音漏れを防ぎ、そして共にダイダロスベルトを伸ばして羅刹の身体を切り裂いた。
    「せっかく作ったが、ここまでか」
     晶は手にした地図をしまい、代わりにガトリングガンを腰だめに構える。連射の轟音が響く中、闇沙耶が突進した。
    「サイキックハーツの時が訪れた今、俺達は友の為にも――」
     八相に構えた斬艦刀に炎が宿る。
    「負けるわけにはいかない!」
     横薙ぎに振られた一刀に反応することもできず、羅刹は一瞬で消滅した。
     そのまま戦いは続き、やがて前方にいた6体のデモノイドが到着したが、彼らの勢いは止まらなかった。剣電弾雨が狭い空間で飛び交い、入り乱れ、やがて灼滅者たちの気が闇の気を圧した。しかしダークネスの姿が消えたとき、流石に五体満足で立っていられる者はいなかった。
    「ここまでですね」
    「仕方ありません」
     愛莉が残念そうに溜息をつき、みんとはうつむいて眼鏡を押さえた。
    「これも一つの物語でしょう」
     何を思うのか、雫は微笑を浮かべていた。
    「久しぶりに気持ちよく闘えたしな」
     透流がちらりと凛凛虎を見る。
    「ああ、次が楽しみだ」
     凛凛虎はからりと笑った。
    「あとは他の班に期待だな」
     闇沙耶は傷の痛みをおして立ち上がった。
    「成功してくれるといいですね」
     うずめ様への道を開く、自分たちが少しでもその役に立てたのならと、実はそう願った。
     晶が再び地図を広げた。
    「帰りは任せてくれ。安全な道を選ぼう」

     そして帰途についた8人が作戦全体の成否を知るのは、もう少し先のことになる。

    作者:九連夜 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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