運動会2018~乾坤一擲の名の下に

    作者:佐伯都

     精神防衛線、次いで新宿迷宮に潜むうずめ様への対応、と武蔵坂学園をとりまく状況が切迫している中ではあるが、有志による運動会が行われることになった。
    「こんな時こそ普通の日常を、って考えはとっても大事だと思うんです!」
     必要以上に力をこめて松浦・イリス(ヴァンピーアイェーガー・dn0184)が力説する。
    「とは言ってもサイキックハーツが出現しているさなか、例年通りの開催は流石に現実的ではないのでこういう形に。そしてきっと、毎年の恒例行事を楽しみにしていた人もいたんじゃないか、ということで」
    「……で、それで、コレ、と」
     どうなんだろうこれ、と疑問符がつきそうな顔で成宮・樹(大学生エクスブレイン・dn0159)が競技概要の記入された紙をひらひらさせた。
     
    ●運動会2018~乾坤一擲の名の下に
     ルールとしてはいたってシンプル、いわゆるハンドボール投げ、あるいはハンマー投げ、と思えばよい。基本的には投げた距離がより長ければ高得点、というものだ。
     しかし灼滅者が集う武蔵坂学園、ただの運動競技で話が済むはずがない。
    「飛距離のほかにフォームやかけ声によるパフォーマンスで追加点を狙ったり、協力者を得て見た目で追加点が貰えます!」
     飛距離が採点の基本となるのはもちろんだが、ここに『より美しいフォームで投擲する』とか、『観客の心に訴えるかけ声』などで追加点が入る。
     投げる側は主にフォームとそれ以外のパフォーマンス部分での評価がされるが、もちろん一応厳正なルールのうえでの競技という名目があるのでサイキックのたぐいを使用してのそれは御法度だ。ただし投げられる側ならESPの使用に制限はないので、いろいろ考える事ができるだろう。
    「……いやちょっと待った、ESPに制限無しはいいけど、普通こういう競技って『投げる』ヒトしかいないんじゃ」
     投げられる側、という文言に果てしなく嫌な予感がしているのだろう、樹が当該の箇所に指先を置く。
    「大丈夫です灼滅者ですから校外までぶん投げられても怪我はしません!」
    「そういう問題じゃなく」
     だめだこいつはやくなんとかしないと、と樹が考えていたかどうかは不明だ。
     ともあれ、『投げられる』こともできるので、手に汗握る柔道の模範演技をしてみるだとか、面白いことは思いつかないけどダブルジャンプで飛距離ではなく高度を狙うだとか、色々考えられるかもしれない。
    「……まあ人間らしさを失えばダークネスに近づくのは間違いないんだから今更何も言わないけど」
    「大丈夫です一般人のエクスブレイン投げようって人はいないと思います」
    「だからそうじゃなく」
     やっぱりこいつはやくなんとかしないと、と樹が考えていたかどうかはやはり不明だ。
     サイキックハーツや何やらはとりあえず置いておいて、初夏の一日を楽しく過ごしたところでバチは当たらないだろう。


    ■リプレイ

     空は快晴、気温も暑すぎず肌寒くもなく。
    (「壱……それは愛と安らぎの象徴」)
     関東甲信地方が梅雨入りとの報道があったばかりだったが、この日は絶好の運動会日和。間違いなく学園生の日頃の行いの成果だろう。
    (「弐、最初のハンマー投げからずっと求めてやまないもの。参、そして多くの男子、ときに女子が情熱をもって求めるもの」)
     涼しげな風が吹き渡るグラウンドの一角、防護ネットを張ったそこでゆっくりとスタートポジションに着く背中があった。
    (「四、生まれた時、皆そこから安らぎを得るもの」)
     炭酸マグネシウムの白い粉を両手へまぶし、静かにその時へ向かって心を集中させていく。
    (「……伍、同志が少ないとは言わせない。みんなずっと求めていると僕は信じる。六、運動会で叫び続けてきたけどその思いは色褪せずさらに強く激しさを増し」)
     自分が軸になるように、徐々に加速しつつ泰河はハンマーを回転させた。ぎゅんぎゅんと凶悪な風切り音が聞こえる中を、きっちり四回転数える。四回転めの最後に泰河は抜けるような青空を見た、ほんのつかのま。
    (「七。今こそその魅惑の象徴への想いを……最後の魂の叫びとして捧げよう!」)
     投擲のさい、背筋にかかる負荷は実に400Kgを越えることも珍しくない。ハンマー投げとはかくも過酷で、そして肉体の限界へと自ら挑む崇高なスポーツなのだ。ゆえに最後の瞬間、雄叫びのように絶叫する選手は多い。当然泰河もそのように、……。
    「おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
     ……あんまり崇高じゃないどころか邪念満載だった。と言うか色々と我欲もてんこ盛りだった。
     半ば恒例の絶叫だったとは言え一人目のなかなかなインパクトに、さてこれはどうしたものかと考え込んでいた紋次郎の足元、兎変身中のサズヤが垂れ耳をぺなぺなさせて回っている。元々コミュニケーション能力に難があること位知っているが、投げる、と言われただけで兎変身されてもさっぱり意味がわからない。兎サズヤもとい、うさズヤを投げろということなのか。ハンマーばりに。
     しかし当人はきちんと説明したつもり満々のはずなので、改めて問いただすのも少し憚られる。かと言ってもふもふもきゅーん、な兎を容赦なくぶん投げるなんてちょっと倫理的にどうなのかという気もしないでもない。
     さあ投げろ桜田、と目をきらきらさせ前脚でぴしぱし催促してくるうさズヤに、紋次郎は眉間を押し揉んだ。
    「兎は愛でるもんだろう。投げるなんざとんでもねぇ……!」
     逡巡のあげく猛烈に撫でもふり始めた紋次郎を見かねてか、うさズヤが兎変身を解く。
    「んん……やはり、蛇変身の方が良かっただろうか」
    「やっぱり兎投げろって事かよ……」
     多少げっそりした紋次郎が、そういうことならと自ら大型の長毛種猫に姿を変えた。投げるのは無理だが投げられるなら、という理屈らしい。
     くるりと紋次郎が中心に腕を突っ込みたい誘惑満載のニャンモナイト形態を取ると、無表情ながらも何だかやる気満々という空気のサズヤがスタートポジションに着く。そのまましっかりと基本のフォームを守ったハンマー投げの要領で、ニャンモナイト紋次郎をぶん投げた。
    「……そこそこ、飛んだ」
     なかなか豪快な投げっぷりに、ギャラリーからも歓声が上がる。やたら理想的な放物線を描いたニャンモナイトは途中でしゅぱっと鋭く姿勢を解いてそのまま一回転し、なかなかの飛距離を稼いで華麗に着地した。お手本のようにぴしりと胸を張ったお座りの姿勢に、観衆からも拍手が湧く。
    「ん……流石、桜田。きれいな、着地」
     心なしかドヤ顔な猫とぱちぱち手を叩くサズヤを眺め、木乃葉がなにやら息巻いていた。
    「さぁ負けていられませんよ、ボクがシャオ先輩をもっと奇麗に投げてあげます……!!」
     えっちょっと俺投げるとか何言ってんの意味わかんない、と言わんばかりに真顔で首をかたむけたシャオへ木乃葉が食ってかかる。
    「えっ、ボクがシャオ先輩を投げるんじゃないですか? ってかそれが自然だと思いますボク後輩なんだし」
    「何言ってんの俺が木乃葉さん投げるに決まってるでしょ……? 身長的に言ってそうなるのが自然。身長的に。すごく大事な事だから、身長的なことって。第一爆発で飛び慣れてるでしょ。むしろ自ら飛べ」
    「うわ自分から飛べとか言ったし」
     お互いに自分が投げるいやそっちが投げられろと実に幼稚な掴み合いを繰り広げる【性別投げ捨てーズ】の二人に、なんだあいつら仲いいなあ、とほっこり暖かい視線が送られていることも当人同士は気付いていないようだ。
    「うわーかよわいおとこのこをなげよーとするなーやばんじーんだーれかたーすけてー!」
    「自分でかよわい男の娘って認めましたね性別不詳め!」
    「いや性別投げ捨ててないデスシ!」
    「ボクだって捨ててません。無自覚捨て済なのはシャオ先輩だけです!!」
     性別って無自覚で捨てられるもんなのか、という観衆の地味な疑問もよそに、ほんの一瞬の隙を突いた木乃葉がシャオの奥衿を引っつかんだ。
    「世界の! 果てまで!! 飛んでいけぇぇえええっ!!!!」
     そのまま遠心力を使った横投げのフォームに入り、ぺいっ、と宙へ放り出す。
     んにゃーっ!! とシャオの悲鳴――もとい、宙空で咄嗟に猫変身を発動させた猫シャオの悲鳴が響き渡る。哀れ。
     しかしながら猫シャオもさるもの、着地だけは華麗に決めていく。勝利! と手を高らかに揚げている木乃葉を睨みながら、変身を解いたシャオが何やらじっとり湿っぽく呟きはじめた。
    「いいもんいいもん……木乃葉さんにいじめられるーって、クラスメイトに言いつけてやるもん主に女性陣にあることないこと山盛り追加して」
    「いや、ちょっと待って下さい言いつけるのは卑怯です。反則です」
     きゃーやばんじーんが追いかけてくるぅー、と脱兎の如く逃げ出したシャオを慌てて追いかけながら、もう一回投げてやるー! と木乃葉が叫ぶ。とりあえず双方の関係は非常に良好なようなので、放っておいても問題はなさそうだった。
    「暢気なものですの……久々のハンマー投げ、近頃の鬱憤を込めさせてもらいますの」
     ふんす、と鼻息も荒くシエナは相棒のヴァグノジャルムを引き連れ、防護ネットの内側へ陣取る。
     より遠くまで投げるためのシエナが立てた戦法としては、こうだ。
     ヴァグノジャルムの排気ガスで回転の推力を得つつ、ダイダロスベルト【ヴィオロンテ】を展開しバランスを維持、綺麗な回転を目指す。かつ有効範囲に留意しつつ日頃の不満を込めに込めまくった叫びと共に、投擲。
    「色々殺意強すぎな人が多すぎますのぉおおおおおお!」
     実際に排気ガスやダイダロスベルトが回転に寄与したかどうかは定かではなかったものの、渾身の叫びと共に投げられたヴァグノジャルムのエンジン音が遠くなる。小学生ながらそこそこの飛距離も出て拍手が起こった。
    「よーし、あたしもじょしこーせーの底力(と書いて物理と読む)を回転で見せちゃいますよー!」
     やる気満々でグラウンドを進む陽桜の傍らには、いつも一緒の霊犬・あまおとがいる。何もかも真っ白い日本犬といった出で立ちの相棒にうふふっと笑いかけ、それではいっきまーす、と元気よく陽桜は右手を挙げた。
     ……が、陽桜の手にはハンマーどころか、何もない。不思議そうに見上げているあまおともよそに、陽桜は続けた。
    「投げるのは霊犬のあまおとです!」
     まさかそんなばかな、とでも言いたげなあまおとの様子に、ちゃっちゃと手際よく紐をくくりつけていく陽桜はやっぱり気付いているのかいないのか。
    「ん、んん、あまおと、ちょっと重くなりました? いいですか、空中で飛距離稼げるようにくるりんって飛んで頑張ってくださいね!」
     とうとう本格的に投げられるとわかり、ヒンッ、と当の霊犬が短く悲鳴を上げたのも妙に上機嫌な陽桜の耳は届いていないらしい。そもそも紐でくくられてぶん投げられるものを頑張るも何も、と大層無茶な要求に抗議するような声をあげてはいるが、陽桜の意志はかたいようだ。
    「そぉれあまおと、運動会の、星に、なれーっ!!!!」
     たーまやー、と色々間違った合いの手が観衆から飛んだとか飛ばなかったとか。
     どうやら今年の運動会は小動物とサーヴァントを投げるのがトレンドのようだ。次いで登場した蒼騎の小脇にも、何やら少々薄汚れたナノナノが抱えられている。
    「もし結果が出なかったらまた来年にむけて特訓を続けるからな、いいな白豚!」
     容赦ない蒼騎の活に、ナノーッ、と鎖でハンドボール用のボールと共にぐるぐる巻きにされた白豚が泣き叫ぶ。ざわ……ざわ……とギャラリーに広がるどよめきも蒼騎は気にしない。大事なのは記録、その一点のみだ。
     哀れっぽいナノナノの悲鳴も完全に無視しきって蒼騎はスタートポジションに入る。いよいよ大きくなる白豚の悲鳴をBGMに、蒼騎は叫んだ。
    「今のお前はただのボールだ! 飛んでいけぇえええ!」
     高速回転からの投擲に、ナノおおおぉぉ、と白豚の悲鳴が遠くなる。……白豚は尊い犠牲になったのだ、とその後しばらくまことしやかに嘘か真かわからない噂が囁かれたのは別の話だ。
     蒼騎同様、日頃の鬱憤を晴らすために参加した者は少なくないが、星流と火華流の兄妹もなかなかふるっていた。どういうわけかぼこぼこに殴られたあげく縄でぐるっと巻かれ、妹の火華流に引きずられている星流に、再び観衆がどよめく。
    「えっと……コレ……投げても問題ないよね?」
     サーヴァント使いがサーヴァントを投げるような競技なのでたぶん問題はどこにもない、と飛距離計測担当者からOKをもらい、火華流は安心して防護ネットの内側に立った。星流は完全に気絶しているようでうんともすんとも言わない。
     滑り止めの炭酸マグネシウムを手にとり、火華流はおもむろに星流の脚を両脇へ抱え込んだ。そのままジャイアントスイングで星流を振り回していく。
    「……!!!!? な、なんだああああぁぁぁぁぁーー!!!?」
    「この馬鹿兄いいいいぃぃぃぃ!!!!」
     そこで星流はようやく気がついたが、時既に遅し。やはりどういうわけか烈火の如く怒り狂う妹に説明を求めようにも、とっくに最後の1回転。火華流の絶叫が青空に響き渡った。
    「私の純潔返せええええぇぇぇぇーーーー!!!!!!」
     あまりにもあまりな絶叫に観衆は黙り込み、高く高く宙を飛んだのち見事に顔から落ちた星流が息も絶え絶え、といった様子で呟く。
    「ま……待て……今、何かとんでもない事、言わなかったか……」
    「え、何、私の純情の方が良かったかしら?」
     どうやらさして言葉の意味もわからず言っていたらしく、星流としてはたまったものではない。そこまでが限界だったようで、再び意識を失ってグラウンドへべしゃりと顔を伏せた兄に、火華流は軽く首をかたむけた。
    「何か皆すげーな……」
    「うちらも何か考えないと駄目かねコレ……」
     額を覆いつつ、彗樹と伊織は担架で運ばれていく星流と火華流の背中を見送る。しかし土壇場で何か工夫を凝らそうにも、そう簡単には問屋がおろさぬというものだ。主に発想力とか事前準備とかこう、色々。色々。
    「どこまで飛ぶかはわからないが、できるだけ高く投げてはみるか。日頃の鬱憤晴らすためにも」
     さすがに日頃の鬱憤、は冗談だが、農作業で鍛えられた身、並より力のあるほうだと思いたい。
    「さてどこまで行けますかね~……少しの間の空中散歩、といきますか!」
     にやり、と伊織が不敵に笑い彗樹の背後へまわる。無造作に後ろからさしだされた腕を、彗樹が背負い投げに似た動作で取った。
    「――ということで、伊織、飛んでけ!!」
     ぶぉん、と見ている側が一瞬ひやりとするほどの風切り音。華奢だがやや長身よりの伊織の身体が風車じみた勢いの背負い投げで地面に叩きつけられると思いきや、ぱっと彗樹が手を放す。
     続けて大きく脚を振り上げ、背負い投げの勢いを伊織が加速させる。おおおお、と観衆が沸く声をバックに伊織は前方抱え込み宙返りで一転二転し、さらに放物線の頂点でダブルジャンプを加えた。
     姿勢をほどき、今度は伸身からのひねりが入った回転を数度入れてあざやかに着地する。飛距離ではなく高さを稼いだうえで、いかにスポーツらしく華麗に着地するか、を追求したいかにも運動会らしい内容に、大きな拍手が起こった。
    「うん、伊織、よくやった!」
    「いや~楽しかった♪」
     観客の反応ともども互いに満足できる内容に拳を突き上げ、彗樹と伊織が笑いあう。
     そんな様子を見て未知はううむと小さく唸った。何でか競技のラストを締める形になってしまったのだが、今更ここで退くわけにもいかない。もちろん準備万端で臨んでいるし手抜かりはないのだが、土壇場になってふとコレ本当に大丈夫なのか、と我に返るというよくあるアレだ。
    「よぉし男は度胸! 今更ここで尻込みするとかかっこ悪い!」
     なかなか漢前な発言に、えっ男、と二度見した観客がちらほらいたとかいないとか。まあ武蔵坂では見た目で性別を判断してはいけない、など日常茶飯事すぎる事ではあるのだが。
    「えーとそういうわけで……うさみっちゆたんぽをよろしくー! あなたの冷えを可愛く優しくうさみっちがジト目で癒すよ!!」
     防護ネットの外に陣取ったビハインドの大和が、様々なバージョン違い【うさみっちゆたんぽ。】を並べていく。なにやらどこかで見たような気がする桃色たれウサ耳付きの少年のぬいぐるみで、中にゆたんぽが仕込まれているようだ。ぬいぐるみの割にはなぜか揃ってジト目なのだが、そこが可愛い、と評する者も多そうである。
     基本のうさみっちとそのコスプレバージョンなメイドみっち、野球ユニフォームのやきゅみっちに、何でか黒いグラサン姿のワルみっち、となかなかの品揃えだ。主にうさみっちが好評なのは未知の恋人、なのだがまあそこはそれ、これからは適切なマーケティングが行われた事によってクラブショップの売り上げに貢献してくれるに違いない。……たぶん。
     そっぽ向いっちとつままれっちを甲斐甲斐しく防護ネットに吊してから、大和がパペットのように両手にねこみっちを装着し応援をはじめる。むしろいっそ潔いくらいの宣伝っぷりに、冬の冷えに悩まされていそうな女子生徒から、あとで買いまーす、とちらほら声が上がっていた。
     見回したかぎりではあの目立つ三角帽子は見えないものの、どこかで見てくれているはずと未知は奮起する。冷え防止推しのダメ押しがてら、投擲に選んだのはミニコタツ装備のこたみっち。コタツの上のみかんは食べられないよ!
    「それじゃ改めて、……」
     こほんと咳払いをひとつ。呼吸を整えゆっくりと、回転投法ではなく野球のピッチャーよろしくこたみっちを両手で包み、かるく左膝を上げる。
    「うさみっちゆたんぽ好評発売中ーーーーーーっっっっ!!!!」
     ピッチャー、投げた! と実況アナウンスが入ったかどうかは定かではないが、かぎりなく地面と平行に近い軌跡を描いてこたみっちが投擲される。さらにその瞬間、なぜか\やーっ/と鳴き声のようなものが聞こえたような聞こえなかったような、という感想を漏らした者は少なくなかったらしい。
     見事に競技のラストを飾った未知に拍手が贈られている。純粋な飛距離だけではなく見た目や投擲するモノ、かけ声等々で点数が加算されるだけあり集計結果は皆それぞれ高い評価を得ていたようだ。
     そんな中、スポーツという競技本来の理念に立ち戻ったうえで灼滅者らしい演出を加えていた彗樹と伊織のコンビが最高得点を獲得し、競技は終了する。
     学園を取り巻く戦況が混迷と熾烈を極めつつあるなか、初夏らしい青空に歓声がいつまでも響いていた。

    作者:佐伯都 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月10日
    難度:簡単
    参加:13人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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