運動会2018~出陣! コスプレ徒競走

    作者:夕狩こあら

     二〇一八年六月一〇日。
     この日は毎年恒例の大イベント、武蔵坂学園の運動会が壮大に開催される予定だったが、ダークネスとの戦いや世界の状況が愈々切迫する今、学校行事を大々的に行う事は難しくなっている。
     然し、だからといって、運動会が完全に中止となるのは、普通の学生と等しく青春を謳歌する灼滅者にとって非常に残念な事だろう。
     ということで。
     今だからこそ楽しみたい! という有志らによって、武蔵坂学園では小規模な運動会を開催する事になった。
     行事としてはささやかではあるが、学園の掲示板に貼り出された告知ポスターの出来は素晴らしく、
    『ヘイ、ユー! こういう時でもエンジョイするのが灼滅者だぜ☆』
     テンション高めのメッセージが、廊下を歩く生徒達の目を惹き付けていた――。

     有志のメンバーによって立ち上げられた運動会企画のうち、槇南・マキノ(仏像・dn0245)が手に取ったのは、毎年グラウンド中を熱狂に包む『コスプレ徒競走』。
    「今年も皆の趣向を凝らした走りが見られるなんて……今から楽しみ……!」
    「ふふ、待ちきれない様子ッスね。それなら家庭科室を見に行ってみると良いッスよ!」
     掲示板の前でそう指に示すはノビル。
     コスプレ徒競走の告知があってから、参加を希望する灼滅者達は間もなく衣装作りに取りかかり、今、家庭科室はミシンの音が止まぬという。
     マキノは成程と頷いて、
    「出場選手が着て走る衣装は最も大事な演出だものね。気合いが入るのも理解るわ」
    「押忍! それになりきり要素も大事ッス!」
     ゴールに至るまでのパフォーマンス。
     観客の視線を釘付けにするインパクト。
     そして全身から伝わるエモーション。
     コスプレ徒競走とは視覚的な遊戯でなく、「なりきる」事が重要なのだと語るノビルにこっくりと是を示す。
    「単騎駆けもカッコイイし、仲間とテーマや物語を作って走りきる友情や絆、そして観客にダイレクトに届くメッセージ……!」
    「今年は組連合で戦う事もないし、皆で楽しめそう」
     競技は個人戦。
     と言っても有志の者達で開催するのだ、走る者と視る者、全員で楽しめれば企画は大成功となるに違いない。
    「……私も皆の衣装作りに協力させて貰うわ」
    「自分も応援しに行こうと思ってたんス!」
     ぎゅ、と拳を握るマキノに同じく拳を固めたノビルは、急いで家庭科室に向かう。
     道中、二人は息を弾ませながら声を交し、
    「サイキックハーツか何か知らないけど、その所為で学校行事が中止になるなんて酷いと思わない?」
    「そっす! 今こそダークネスなんぞに屈さぬ気概を見せてやる時ッスよ!」
     サイキックハーツ上等、と言って笑い合った。


    ■リプレイ


     二〇一八年六月一〇日。
     空は梅雨入りしたばかりの靄雲を蹴飛ばす様に、完爾として澄み渡る。
     乾いたグラウンドに引かれた純白のレーン、そのスタートラインには、我こそはと集ったコスプレの猛者達が、四方より飛び交う声援に手を振って応えていた。
    『頑張れー!』
    『運動会を盛り上げるのは君達だー!』
     深香はピンクのドレス、澪は白地に赤い装飾のタキシードと、栗花落家の姉弟はまるで童話から飛び出してきた様なお姫様と王子様。
    「澪ったら可愛いー! 抱きしめちゃいたい♪」
    「ダメですー。ほら、始まるよ」
    (「良かった、ちゃんと男ものだ……」)
     内心安堵する傍ら、姉の過剰なスキンシップを遠ざける澪。
     深香はそれすら愛らしいと笑み、
    「がんばりましょうねぇ♪」
    「……お手をどうぞ、姫」
     やはり男の子、姉を「一人の女性」としてエスコートを申し出る澪に、繊麗の指を差し出した。
    「澪くんは女装もナチュラルに似合うけど、男性の正装も、紳士な仕草も素敵ね」
     マキノの予想が妙々ひっくり返された一方、悪い予感、いや仄かな期待に体当たりで応えてくれたのは陽桜。
    「生地を見た時から判ってたけど……ピュアな輝きにも苦労性が覗えるこの瞳は……」
    「あまおとパイセンっすね!」
    「はい! 縫製はともかく、退魔神器つけたり刀咥えたりするのが大変でした」
     嘗てアルパカを見事に演じた陽桜は、此度、別つ事なき魂の欠片を完全再現。
     そのクオリティが示すは感謝であろう、少女はむぐむぐしていた刀を外し、
    「いつも無茶振りしてるあたしの相棒さんに敬意を、なのです!」
     初夏の陽光の下、はふ、と息を零して笑む可憐に、マキノはそっとイリュージョンを解き、ノビルは団扇で風を送ってやった。
     着ぐるみなる意外性では、【武蔵坂軽音部】も負けていない。
    「今年は皆でこあらや! 大きな耳が可愛かろう?」
     と、灰色のボディスーツにグラマラスなラインを暴くはまり花コアラ。
     その隣、ツナギを着た錠コアラはモコモコの手にドラムスティックを握り、
    「こあらのマー……いや、ロックを、グラウンド中に響かせようぜ」
     雄気堂々、仁王立ち。
     めんこいコアラプリントTシャツにテナーサックスを提げた葉コアラは、ギリギリのラインを飄々と擦り抜け、
    「これはおやつのアレをリスペクトしたコアラのまーちんぐばんどとです」
    「そしてわたしはコアラのマ……リンバ弾きよ」
     彼とつがいの千波耶コアラは、もっふり手袋に口元を隠し、げふんと咳払いひとつ。
     錠達のライヴを愛するノビルは、その守備範囲の広さ深さも重々知っていたつもりだが、企画を聞いた当初はかなり驚かされたものだ。
    「普段、クールでキュートな兄貴と姉御が動物変身とは……恐れ入ったッス!」
    「お前らも名誉けいおんメンバーとして手ェ貸してくれっか?」
    「勿論っす」(きりり)
     然し尊敬の念が突き抜けた今、彼は着ぐるみ姿で敬礼し、傍らのマキノはまり花と揃いのボディスーツでスタートラインに並んでいる。
    「ぼでぃすーつは、ちとやりすぎたかぇ? 恥ずかしいどす……」
    「セクシーで似合ってるし、『やるならとことん』な先輩が素敵よ」
     蓋し出走前の身支度が毛繕いに見えるのは何故だろう。
    「赤いリボンを後ろで蝶結び――ねえ誰かこれ結んでくれない?」
    「ちーたんこれ以上かわいくしてどーすんの」
     葉は項を差し出す千波耶のリボンを結んでやりながら、背越しに注がれる流眄を受け取りつつ、
    「可愛さはいつだって必要ですとも」
    「大賛成ッス!」
     誰より早く是を示した弟分の興奮に、コアラのニットキャップを深めに被った。
     この動物大行進を更に妖怪大行進へと進化させるはコルトといちご。
    「都市伝説退治協力のお返しがしたいって、でも何で運動会で……」
    「迷惑を掛けた事もあって、この機会にお礼をしたくて」
     氷を愛するコルトと、彼女の発案に付き合う形となったいちごが扮するは雪女。
     揃いの着物は瑞風に裾を揺らして涼しげに、
    「これでも歌手です。ダンスパフォーマンスは任せて下さい♪」
     スッと差し出るエスコートの手に手を重ね、間もなく鳴る笛の音を、待つ。
     扨て雪女が現れれば、海を渡ってラミアも現れたか――シエナは下半身を蛇の尾に変えてうねり、撓り、波打つ。
    「頑丈な布を円錐状の筒にして下地に、緑色のスパンコールで鱗を形成。更に筒の先端に大きさの異なる缶を繋げてガラガラを作りましたの」
     威嚇用に音まで連れる気合いの入りようだが、上半身のビキニ水着に隠された胸は控えめに、ささやかに、そのギャップが微笑ましい。
     西洋風のチュニックベースの服にマントを羽織り、マスケット帽に添えられた大きな羽を戦がせ――その鍔から柔らかい視線を送る雁之助の隣には、愛らしい子ネズミの格好をしたカンナ。
    「親子で『ハーメルンの笛吹き男』を表現するんだなー」
    「折角父上と一緒に走るんじゃしの。色々と工夫して楽しんでいかんと」
     骨の様な意匠の笛を手に待つ雁之助に対し、カンナは大きな鞄を提げてスタートを待っているのだが……彼女の言う「工夫」が衆目を驚かせるまで、あと少し――。
     同じく物語を綴るシャオが演じるは『白雪姫』。
    「小人さんに出会うまでの1シーンを演じるの……」
    「自分が猟師で、姉御が魔女の役ッスね!」
    「シャオくんの大好きなシーンだもの、確り演じ切らないと」
     幸運にもスカウトに――お役に預ったノビルとマキノも意気軒昂、頭に叩き込んだセリフが走り出さんばかり。
    「係の人には、トラックの四隅に的を用意していて貰いましょう」
     と、事前打合せを済ませていたレリエルは、運営委員と視線を合わせてスタートラインに立つ。
     繊麗の躯を包む緑の狩猟服に、藍の艶髪を覆う青のフード。
     弓と矢を手にしたその姿は――伝説の義賊ロビン・フッド!
     弓の名手と扮した彼女は、スタートの合図と共に、風と走り出した。
    「どうしてこうなったと……!」
     マキノの助言に従い豪華な洋装を選んだ筈の優奈は、フリルをふんだんにあしらったゴスロリメイド服を着る事となり、刻下、凄まじい含羞に襲われている。
     スタートを戸惑う彼女は、人波にノビルを見るや真剣な表情で迫り、
    「おい! 私の姿をどう思う!? 正直に答えてみろ!!」
    「!? 『日下部同盟』の優奈の姉御!」
     信頼できる彼が判定すれば――「似合わない」とNOが下されれば、直ぐにも棄権すべきと思った。
     のだが。
    「うおお、ギャップ萌え最高ッス!」
    「なっ!?」
    「凜々しい姉御の従順なメイド姿に、男心が猛烈に擽られるッス!」
    「そ、そうか……? そう言われると……まあ……悪い気は、しないが……」
     健全男子の興奮を素直に受け取った彼女は、今度は雄渾を得て走り出す。
    「ふっ……なら、その気持ちに答えて完走しないとな!」
    「速ッ――姉御、かっけーっす!」
     可憐なフリルが初夏の風に溶けた。


    「さぁ、物語の始まりなんだなー」
     旅人を思わせる綻び汚れた服を纏った雁之助が、軽やかに笛を吹く。
     少し遅れて後を追うネズミ姿のカンナは、チューチュー鳴いてはちょこまかと動き、また笛の音が変われば、溺れた様にジタバタ。
     流れのある進行に観客の反応も上々、
    『へぇ、トラック一周を使ってハーメルンの寓話を演じるのか!』
    『音とリズム、それに物語性もあって目が離せないな』
     笛吹き男の鼠退治が終われば、カンナは次に付け髭の市長へと変身し、悲しげな表情を浮かべる吟遊詩人に厳めしい顔を突きつける――妙々たる親子の共演。
    「場面ごとに変えられるギミック衣装、それを仕舞える鞄にも工夫したのじゃが」
     演技も演出も大成功とは、観客の喝采が示そう。
     カンナがボロを着た子供に変身し、嬉々と笛の音に従う頃には声援が背を押して、何処か吹っ切れた様に演奏を楽しむ雁之助を、皆々手を振ってゴールに送る。
     カンナ……ではなく、彼女が連れた大勢の子供の人形がラインを超えた瞬間が物語の結びとなったか、父娘は溢れる拍手に頬笑みを返して演目を終えた。
    「まぁ、お母様が……でも、私を逃したら猟師さんがっ」
    「こんな美スィ姫を殺せる訳がない、さぁ逃げるんだ」(キリッ)
     ありがとう、と駆け出すシャオ姫を見送ったノビルは、姫の後を追うマキノの殺気に思わず一緒に逃げ出す。
    「命令に背いた猟師も、姫と一緒に灼滅よ!」
    「大変、早くどこかに隠れないと……きゃあっ! 足が……」
     シャオは転びつつも迫る杖撃を躱し、逃れ、猟師の指差すゴールへと走りきる。
     テープを切ればノーサイド、三人は手を繋いで集まり、
    「ああ、楽しかった!」
    「気分爽快ッス!」
    「えへへ、ありがとう……」
     と、笑い合った。
    「あまおとも一緒に走りましょう!」
    「うぉふ!」
     着ぐるみダンスに観客の目を楽しませる陽桜、その尻尾を追うあまおとの肉球行進も頗る愛らしく、癒される。
     コースを巡る二匹は一心同体、主がバク宙でゴールテープを切れば、白柴わんこもくるり一回転、
    「わふっ」
    「おんっ」
     もふもふ最強の名を縦にしていた。
    「雪の妖精が、キャッキャうふふと戯れるように……でも、う、動き辛い……」
     女装がすっかり日常ないちごだが、和装に慣れぬとはナイショの話。
     地面を引き摺るほど長い着物の裾捌きに苦戦していた彼は、「踏みそう」と懸念が過った瞬間に爪先を引っ掛け、
    「ふわり、雪が舞う如く……って暑いわ! 舞ってるの風と砂よ!?」
     イメージが肝心と集中を高めていたコルトに、覆い被さるように転倒!
    「あいたた……」
    「もう、遭難者を襲う雪女みたいになって――」
    「ん? 何だかふにゅんとした感触が……」
     気付けば地に着く筈の手は、薄ら汗ばんで透けた雪柄の着物の、着崩れた襟の間に滑り込んで胸を掴んでおり、いちごの顔が一気に赤らむ。
    「ご、ごめんなさいー?!」
     然しコルトは嘆息ひとつ、雪女らしく冷たくあしらって、
    「そういうのは大人になってからしなさい……後で氷漬けの刑ね」
    「ええっ!?」
     氷漬け発言に震えて頭を抱えるいちごの和装を、丁寧に直してやる。
     抜群のダンス力、表現力に優れた彼も、氷の魔女たるコルトの演技力(でも運動は苦手)には適わないようだった。
     転ばないように、踊りやすいように。
    「僕が優しくリードしてあげる」
     まるでワルツを楽しむ様に、互いのコースを軽やかに往来していた澪が「そろそろかな」と見計らったのはレースも後半、彼は振付の一環として深香を抱えるつもりだった。
     だが、然し。
     この姉が何のサプライズもなしに終わる事はなく、抱っこされたのは澪の方。
    「えーいっ♪」
    「ちょ、ちょっと姉さん!? なにしてんの!?」
    「だってぇ、澪疲れやすいから心配で」
    「これ逆! 逆だから!!」
     一瞬で反転した視界に戸惑い、現況に赤らめる弟に姉はニッコリ。
    「大丈夫よぉ。澪はちっちゃいし軽いから♪」
    「ち、ちっちゃ……」
     更に突きつけられる身長差にショックは大きく、澪は石の如く硬直する。
    「イタズラ大成功☆ ってことでぇ、澪が動けないうちに有言実行の、ぎゅー!」
    「あぁ、もう……好きにして」(遠い目)
     深香は弟を姫抱きにした儘、ゴールへと一直線に向かった。
     扨て的を掲げた係員を緑瞳に捉えたレリエルは、先ずは一射、鏃部が吸盤になった矢をペタリ、的中させる。
     次のコーナー、リンゴを頭に乗せた者が「ここだ」とばかり指差せば、
    「それ違う人だからね!?」
     とウィリアム・テルとの違いを説明しつつ、こちらも命中。
     更にもう一発、矢は的に当たった矢を狙い、
    「この『継ぎ矢』の事を別名ロビンフッドと言うそうです」
    『おおおー』
     腕も見事ながら、話術も巧みに。
     斯くして喝采を浴びる主を、緑のドレスを着た姫猫プチがゴールでお迎えした。
     他の選手の妨害や追い抜きを想定して対策を練ってきたシエナだが、大丈夫、妨害行為はマナー違反になる為、彼女は悠々と蛇行が出来よう。
    「邪魔立てはありませんのね。でしたら、ゴールは……!」
     フィニッシュの瞬間こそ魅せ時。
     そう読んだシエナは、尾をバネの様に縮ませ、弾性を解放するや見事な跳躍でゴールした。
    「そら行けー! けいおんこあらがこあら舎から脱走したでー!」
     鼻のペイントも愛らしげに、まり花のユーモア溢れる発声でコアラ達が行進を始める。
    「マキノンはチアリーダーで、ノビルは前でドラムメジャーな」
    「ええ、全力で盛り上げるわ」
    「ふわっ! 自分、そんな大役は……」
    「ヲタ芸の要領で振ってりゃそれっぽく見えるよたぶん」
     たぶん、と葉が言った様に、聴き専のノビルが相応に熟せているのは、大黒柱たる錠が刻む慥かなリズムのお陰だろう。
     ティンプトンドラムが奏でる音は、魂を揺さ振るビートでコアラロックを支えると同時、観客の心音と共鳴する。
     更に錠はユーカリの枝を模したスティックを回して観覧席を煽り、
    「一緒に歌おうぜ、青春の賛歌を!!」
    『ねぇ……これって……』
    『あ、なんかエモい……!』
     知らぬ者は居まい、武蔵坂学園校歌をアレンジした曲は、聴く者の身体を自然と揺らし始める。
     まり花はキュートな色柄のギターに白磁の指を躍らせ、
    「うち、ぎたーは初めてやけど、皆の演奏見て覚えたんや。さぁさ、うちらの演奏、聞いて行きんしゃい!」
     薄ら口ずさむ者の歌声を大きく大きく促していく。
     顔と耳のついた帽子も然る事ながら、手袋も靴もヌイグルミの様な千波耶はモフモフ、ぽてぽてと進みつつ、可愛らしいマリンバの打音に音の世界を広げて。
    「大事なので二度言います。可愛さはいつだって必要ですとも!」
     斯くも見事な「えろかわ女子」を是非ご堪能あれと、葉はテナーサックスの豊富な低音で演奏を支える。
    「ちーたん先輩!」
    「ちーたんの姉御!」
     彼女のソロパートにちーたんコールを叫ぶマキノとノビルも揚々、奏者(走者)の昂揚は衆人の歓喜を呼び起こし、今やトラック全体が一体感を得る。
    「サイキックハーツだとか全人類がどうとか知らねぇけどさ。何だって関係ねぇよ」
     葉は突き上がる拳を見ながら言ち、
    「ただいつものように泣いて笑って、響かせてりゃいい」
     ――武蔵坂学園ここにあり、ってな。
     その声を音色として受け取った錠は、淡然たる彼に代わって観客と声を揃えた。
    「サイキックハーツ上等!」
     と、――。
     畢竟、二〇一八年の運動会は今日、本日しかない。
     思い出を過去に流しては、未来へと針を進めていく時の残酷を知る千波耶は、ゴールするやカメラを手に皆を集めて、
    「記念写真を撮りましょ!」
    「勿論、マキノンとノビルも一緒にな」
    「はい、ちーずや!」
     この瞬間が永遠になりますように、とシャッターを押した。

     有志の者達によって催された運動会はささやかであったか――否。
     其が例年と遜色ない鮮烈を刻んだとは、走者らの笑顔が証しよう。
     世界情勢が厳しさを増す中、それでも青春を――若者たる心の躍動を見せた彼等は、観る者達にも歓喜と勇気を与え、清けし風、眩き光と駆け抜けたのだった。

    作者:夕狩こあら 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月10日
    難度:簡単
    参加:15人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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