窓の外を見たくるみは、小さくため息をつくと机に突っ伏した。
「最近、大きな戦いばかりやなぁ。うちは皆を送り出すばっかりで、なんもできひんのが心苦しいいうか……」
「くるみさんのせいではありませんよ。……そうだ。今年は有志で運動会をするという話はご存知ですか?」
向かいの席で励ます葵の声に、くるみはパッと顔を上げた。
「そうなん? 中止になったん違うん?」
「状況的に、例年通りの大きなイベントはできませんが、何もないのも日常を見失ってしまいそうですからね。有志で開催しようということになったようですよ」
「やったぁ! うちも参加する!」
ぱあっと笑顔になったくるみは、楽しそうにプログラムを見た。
「どれも楽しそうな競技やなぁ。……あ、後夜祭もあるんや」
くるみが指差したプログラムの最後の行に、葵は感心したように頷いた。
「本当ですね。夕方から焚火をして、その周りで踊ったり歌ったり、演奏したり。くるみさん好きそうですね」
「こういうの、めっちゃ好きや! うちこれに参加する!」
元気を取り戻して着ていく服を悩み始めたくるみに、葵は安堵の息を吐いた。
「大変な状況で、重要なことも決めなあかん。せやけど同じくらい、日常や楽しみも大事や。せいいっぱい楽しもうな!」
くるみはにかっと笑うと、親指を立てた。
夜空を焦がす炎に、ギターの音色が響いた。
クラブの皆と肩を並べた紗里亜は、アコースティックギターを爪弾くと「がんばれがんばる武蔵坂 アコースティックver」の前奏を奏でた。
皆の心に沁みるようにゆったりとした曲に、部員たちの声が重なった。
♪がんばれ がんばる 武蔵坂
がんばれ がんばる 武蔵坂
ファイト ファイト ファイトオー
ファイト ファイトオー
運動会の締めくくり。その始まりに歌われる歌に、ファルケはギターとコーラスで華を添えていた。
メインボーカルを務めてもいいが、今回はギター演奏にて、華を添えることにしておく。
(「最近気づいたのだが、歌うとなぜか無駄に被害が出るよーだし」)
たまには天使の歌声をフォローし、コーラス程度に抑えるのもいいだろう。
ファルケのギターの隣でカンテレを取り出した柚澄は、メロディラインを爪弾きながら最後の時を思い、今までのことを思い出していた。
「がんばれ がんばる 武蔵坂♪」
天使の歌声に微笑んだファルケは、柚澄の歌声にコーラスを添えた。
ギターを持ったえりなは、弾き語りながら今日一日を思い返した。
(「運動会、運動は、得意とは言えないですけれど、なんとか1日頑張りました」)
大変なときだからこそ、こうして運動会を楽しめたのが、良かったと思う。
これからの皆を応援するように、えりなは優しく歌を響かせた。
♪大きな戦い 前にして
決意を胸に 抱きしめる
皆が笑える 未来のために
みんなと一緒に歌を歌う結衣菜は、紗里亜のギターに寄り添うように奏でる。
(「そうして、運動会の終わりを祝おう。この世界の未来が明るい物になることを祈ろう!」)
結衣菜達は今世界の岐路に立たされていて、忙しい時期なのかも知れない。
でも、だからこそ祈りを込めて歌いたい。
皆の気持ちのこもった歌を支えるようにギターを弾いた結衣菜は、静かな歌を歌いきった。
普段は演奏に回っていた流希は、今回は歌い手としてしっかりと歌う。
(「この祭りが終わったら、又厳しい戦いが始まりますから……。だから、この時を楽しく盛り上げる為に心を込めて、精一杯歌います……」)
「さぁ、皆さんもご一緒に、「がんばれがんばる武蔵坂!」ゆっくりで良いですから、一緒に歌ってみてくださいねぇ……」
間奏で聴衆に語りかける流希の声に、他の生徒も歌い始める。
戦いになった時の力に。
そして、いつか離ればなれになった時、この思い出が心の中で、輝くものであるように。
精一杯歌う声が、夜空に響いた。
♪灼滅者も(がんばれ)
エクスブレインも(がんばれ)
ラグナロクも エスパーも
みんな がーんーばーれー…
流希の隣で徒もまた、静かに力強く歌う。
毎年やってる応援合戦とは違うけど、学園の皆を応援したい気持ちは変わらない。
大きな戦いを控えた今は余計にそう思う。
(「皆がそれぞれの大切なものを守れるように、背中を押す力になれたらいいな」)
徒の思いは歌に乗り、風に流れた。
アコースティックのやさしい調べにのせて、みんなで奏でる応援歌を、くるみは静かに歌っていた。
毎年、運動会の応援合戦で自慢の応援歌をみんなに披露するのが、星空芸能館の見せ場だった。
しかし今年は応援合戦がない。
でもこういう時だからこそ、みんなで歌おう。
今日、運動会をがんばったみんなへ、そして明日を戦い抜くみんなへ、想いよ、届け……。
♪がんばれ がんばる 武蔵坂
がんばれ がんばる 武蔵坂
ファイト ファイト ファイトオー
ファイト ファイトオー
「ファイト ファイトオー……みんな、がんばるもんだよ!」
くるみのアレンジで歌い終えた星空芸能館のメンバーに、盛大な拍手が沸き上がった。
歌い終えた徒は、遠隔操作で撮影していたカメラを回収すると映像を確認した。
この一時を忘れない。この瞬間を残したい。
そして撮影した動画は『ドキュメント星空芸能館』の素材になるのだ。
学園祭企画の物販特典をイメージしながら、徒は撮れた画像に笑みを浮かべた。
●
歌い終わった柚澄は、ファルケの所に行って声を掛けた。
「ファルケさん、ボクと踊ってくれますか?」
「もちろん!」
嬉々として柚澄の手を取ったファルケは、キャンプファイヤーの前で踊る。
「この炎が、明るい未来を照らしてくれる明かりになるのであればいいな!」
明るい笑みを浮かべるファルケに、思い出とこれからのことを思い描いていた柚澄は頷いた。
「うん。……ファルケ、ずっと、ボクと一緒に居てください……」
柚澄の告白に、ファルケは返事代わりに抱きしめた。
マイムマイムを踊っていた丹は、なんだか違うステップに足元を見下ろした。
「マイムマイ……え? これあかんのん?」
「丹さん、よろしければ他の踊りをお教えしましょうか?」
にっこり微笑む恵理の申し出に、丹は表情明るく顔を見上げた。
「ええの? ご好意に甘えて教わりますー。でもウチあんまり踊りは上手くあれへんから、お手柔らかにお願いしますー」
微笑みながら流れるように丹の手を取った恵理は、そのままシンプルなケーリー・ダンスを教えた。
「ね、簡単でしょう?」
「ふむふむ、こぉこぉ。確かに簡単やわぁ」
そこはかとなく魔法使いの学生になった感じがする丹の背に手を当て一緒に踊った恵理は、他の灼滅者と雑談していたくるみに近づいた。
驚くくるみの傍を、ご機嫌にくるくるり。
そして急に立ち止まると、二人はくるみに手を差し出した。
「この通り、簡単な踊りです。見真似で結構ですので、ご一緒してみません?」
「練習だ、えふんけふんお相手してもらえんかなぁ」
「踊る! なあ、どうやるん?」
ぱあっと笑顔を見せるくるみの手を取り、くるくると三人で踊る。
「くるみさん。やる気をくれる人が心苦しいとか、聞捨てならなかったですよ?」
いたずらっ子を叱る口調で首を傾げる恵理に、くるみは首をすくめた。
「堪忍やで。でも気にかけてくれて、おおきにな」
にかっと笑うくるみに安心した恵理は、カスタネットを二人へ放り投げた。
「次はシャン・ノースを踊りましょう。知ってる歌、何でも一つお願い出来ます?」
「おっとと、カスタネット? 知ってる曲を1つ?」
カスタネットを受け取った丹は、少し宙を睨んだ。
「んぅー、うん、たん? うん! たん! ……あ、なしなし。いまのは無し」
慌てる丹に、笑い声が響く。
誰でも知ってそうな流行りの歌のリズムを叩く丹に合わせて、恵理は華麗なステップを踏んだ。
「あ、カスタネットでやるとスペインっぽいわぁ」
「なんや、難しそうやなぁ」
「大丈夫、曲に合せてこうステップするだけ」
音楽役を交代しながら、三人は踊る。
変調転調も思いの儘、魔法の祭祀めいたダンスは、賑やかに続いた。
踊り疲れてベンチに座ったエミーリアは、空を見上げた。
小学生の頃からずっとクラスメイトだった、二人のお友だち。
でも高校受験を控えた今、来年はおそらく別々の道に……。
視線を戻したエミーリアは、立ち上がり振り返ると両隣に座る二人を見た。
「わたし、歌います。二人に感謝を伝える機会なんて、そんなに多くは残されていませんから! 伝えられるときに、伝えておきたいのです」
立ち上がったエミーリアは、明るく歌い始めた。
♪わーふわーふ♪わーふーふ♪
いっつも頼れる☆レーンちゃん♪
楽しくなのなの☆みーずきちゃん♪
わふわふわんこな☆わーた~しっ♪
そして! ぷにぷにもこもこ☆もここちゃん♪
いつもいっしょなわたしたち~♪
ありがとぉ~♪ ありがとぉ~♪
楽しいひと時、ありがとぉ~♪
学校が楽しかったのは~2人プラスアルファのおかげ~♪
これからも~どうかお友だちで♪
エミーリアの歌の後に立ち上がった瑞葵は、今までの感謝と残り1年よろしくお願いしますの意を込めて歌い始めた。
♪な~のなの~♪は~わ~わ~♪
おとなっぽ~い☆レーンちゃん♪
わふわふ可愛い☆エーミちゃん♪
なのなのコ~ンビ☆私ともここ♪
いつも一緒なわたしたち~♪
ありがと~♪ありがと~♪
たくさん思い出ありがと~♪
いっつも楽しかったのは~二人のおかげなの~♪
二人ともとっても大好きなの~♪
二人の歌を聞き終えたフローレンツィアは、感極まると二人をまとめて抱きしめた。
「レンからもありがと、よ。事あるごとにこうやってワイワイやって色々遊べて、レンもとっても楽しかったんだから。レンも二人の事、大好きよ」
お互いを抱きしめあった三人は、たくさんの思い出に涙をこぼした。
やがて顔を上げたフローレンツィアは、照れたようにミニギターを取り出した。
「……さて、と。これでレンだけ歌わずに、っていうのもあれよね。こんなのも持ってきてるし、3人で何か歌いましょうか?」
フローレンツィアの提案に、二人共喜んで賛成する。
三人の歌声が、校庭に楽しそうに流れた。
後夜祭の会場に、優しい歌声が響いた。
いちごが歌うのは後夜祭の雰囲気に合わせた、やさしいバラード。
オリジナル曲を歌い上げるいちごの姿に、由希奈は微笑んだ。
「そう言えば、あの時もあんな風に歌ってたよね。懐かしいな……」
初年のクリスマスで何故かステージに上がらされて、二人で歌った日。
それが、初めていちごの事を意識した日だった。
歌い終えたいちごは、由希奈の姿を見つけると駆け寄った。
「どうしました? 何か微笑んでましたけど?」
笑うような歌ではないはず、と首を傾げるいちごに、由希奈は答えた。
「ああ、初めて二人で歌った日のことを思い出したんだ」
「あれからもう5年……6年くらいでしたっけ。そういえば付き合いも長いですね」
「あの時は、こうなるなんて思わなかったけどねっ」
懐かしそうないちごの腕を抱いた由希奈は、幸せそうに寄りかかった。
腕に抱きつかれた温かさを感じながら、いちごは由希奈の頬にキスを落とした。
「これからも、思い出たくさん増やしていきましょう、一緒に」
「うん、いっぱい思い出増やそうねっ」
頷いた由希奈は、頬を染めながら寄り添った。
紅詩の手を取って踊る七葉は、ちゃんとリードできているか不安そうな紅詩に甘えるように囁いた。
「今年の運動会は規模は大きくないけど……。こういうゆったりしたのもいいかな?」
あまり目立たないようにちょっと赤くなりながら囁かれる声に、紅詩は七葉の目を見つめた。
「ゆっくりと出来るからこそ、こうやって二人で静かに踊れるわけですしね」
自然に笑みをこぼし合う二人は、佳境になる踊りに将来を誓う。
「これからもずっと一緒だよ?」
「ええ……ずっと一緒に片時も離れることなくね」
七葉の笑顔に、紅詩は笑顔で応えた。
満月の手を取ってリードしながら踊る結城は、中心から離れた人のいない場所で満月に語りかけた。
「ん……こうやって踊るのは初めてですけど……。やっぱり踊るのは良いものですね」
「こ、こんな風に踊るのも素敵ですよね」
自身の爆乳を見下ろしながら、今まで激しく踊る機会がなかったことを思い出す。
満月もまた、あまり本格的に踊ったことがないため見様見真似になってしまう。
二人はぎこちないながらも、自分達のペースで踊る。
のんびりと話しながら踊っていた結城は、曲の最後に満月の手を握りしめた。
「こうやって二人で取り合って……。この先も一緒にいましょうね」
「は、はい、これからもずっと一緒にいきましょうね」
大好きな結城の話に、満月は微笑みながら答えた。
藍とフォークダンスを踊りなら、統弥は思いを馳せた。
近い将来に起こるであろうダークネスとの大戦。
それは受け入れた。
大切な未来の為に自分の命は惜しまない。
皆が笑える未来の為なら死んでも良い。
そう考える統弥を、藍は見上げた。
「統弥さんとこうやって踊っていると、時間を忘れてしまいますね」
微笑みながらも、藍の胸には未来への不安が渦巻いていた。
敵は強敵ばかり。二人とも生き残れるかどうか判らない。
自分達の二人の将来を良くしようと頑張っているけれど、確固とした目指すべき未来が見えない不安が、最近付きまとう。
そんな気持ちを押し隠しながら微笑む藍の姿に、統弥は目を見開いた。
(「ただ、自分が死んだら藍は悲しむだろう……」)
それは嫌だし、藍に危険が及ぶことを考えただけで胸が苦しくなる。
(「藍と一緒に笑顔で生きていきたい」)
なら迷うことは無い。
一緒にフォークダンスを踊って、当たり前の結論を噛み締め直した統弥は、藍に笑顔を向けた。
「愛している、藍。一緒に未来を掴み取ろう。藍が傍にいてくれるなら、僕は迷わずに戦う事ができるよ」
その笑顔に、藍は不安が解けていくのを感じた。
統弥さんと一緒にいると、頑張ろうと思える。
こうやって統弥さんと踊っていると、絶対大丈夫、なんとかなると思える。
「統弥さん、ありがとうございます」
自分を見つけてくれて、自分を愛してくれて。
声にならない声に藍を抱き締めた統弥は、藍と深くキスを交わした。
「真珠、今年も一緒に踊ってくれるかな?」
笑顔で誘う咲哉に、真珠は微笑みながら咲哉の手を取った。
「もちろんです。よろしくお願いします」
二人で手を繋ぎ、踊りの輪の中へと入る。
フォークダンスを踊りながら、咲哉は話しかけた。
「そういや真珠が学園に来たのも運動会の頃だったっけ」
「はい。あの時は、本当にありがとうございました」
微笑む真珠に、咲哉は今までを思い出した。
あれから5年も経つ。
色々な学園行事に、二人で参加した。
今でも色鮮やかに思い出される出来事は、どれも大切な思い出だ。
咲哉と二人で思い出を語り合っていた真珠は、ふと何かに怯えるように首を竦めた。
「……学園が襲撃されたことも、ありましたね」
「ああ。今も世界は混迷を極めてる」
それでも、絶対に変わらない事が一つある。
「俺は真珠が大好きだ。これまでもこれからも、いつだって君を護るから」
「ありがとうございます、咲哉さん」
強く抱きしめる咲哉を、真珠は抱きしめ返した。
葵と踊る陽桜は、高鳴る鼓動に視線を少し落とした。
この間のダンスの時よりも、もっとずっとドキドキしている自分が、何だかとても不思議だ。
煩い心臓の音を振り払うように葵を見上げた陽桜は、自分の気持を口にした。
「葵さん。あたし、葵さんのこと、好きです」
見つめる視線の向こうで、葵が驚いたように目を見開いている。
目の前の相手への気持ちは、兄を慕うような、そんな「好き」ではないのだと。
想いが届くようにまっすぐに葵を見つめ、微笑んで見せる。
「……もし、ご迷惑でなければ。あなたの傍に、居させてもらってもいいですか?」
陽桜の告白に、葵は恐る恐る尋ねた。
「……本当に、僕でいいんですか?」
「はい。もっと、一緒にいられたらって思います」
陽桜の声に、葵は思わず陽桜を抱きしめた。
「僕も、あなたが好きです。妹の代替としてではなく、羽柴・陽桜としてのあなたが」
陽桜を離した葵は、優しく微笑むと一礼した。
「ご不便やご迷惑をお掛けするかも知れませんが、どうぞよろしくお願いします」
律儀に頭を下げる葵に、陽桜は嬉しそうに微笑んだ。
手には光るマラカス、麦わら帽子にサングラス。
アロハ着用で気分は南国リゾート。
「踊りっつったらこれだろ」
オタ芸よろしくダイナミックにマスカラ振る明莉に、ミカエラは駆け寄った。
ヒマワリ着ぐるみの足に鈴を付けて、しゃんしゃんしゃん♪ と軽やかな音を立てながら駆けるミカエラは、明莉に手を振ると隣で踊り始めた。
「お待ち~。いや~、やっぱ運動会よかったね! 色々出られて、楽しかったなぁ♪」
明莉の芸に合わせて、ミカエラはうにゃうにゃぱぱーん、くるくるり~ん♪ と踊る。
曲とひまわりダンスに合わせてテンポよくマラカスを鳴らす明莉は、ミカエラに向けてマラカスを大きく振った。
「ほれ、テンポずれてんぞー、しっかり踊れ♪」
「えー、ステップ? あたいの足技に文句あるって~?」
文句を言いながらも、ミカエラは更に軽やかに踊る。
「どうだ~っ!」
しゃららららっ、と軽やかに鳴る鈴に、明莉はまじまじと呟いた。
「こゆコンビって何ていったっけな? ちんどん屋?」
「へ、猿回しみたい? あたい、狼だよ! ぶー」
頬を膨らませるミカエラに笑みをこぼした明莉は、踊りながら周りにお疲れさまの塩タブレット飴もばら蒔いていく。
飴の雨に合わせて、しゃぼん玉を飛ばすミカエラは、逆さまに映る炎に目を細めた。
「あー、キラキラ送り火みたい~」
送り火みたい、の声に舞うしゃぼん玉をじっと見つめていた明莉は、一応ミカエラに尋ねた。
「まともにも踊る?」
「ん? ダンス? それよか、帰りのラーメン! もちろん、あかりんの奢りでねっ♪」
「よっし、奢るから俺の分奢れよ?」
やっぱ食い気のミカエラに、明莉は明るく胸を張った。
後夜祭を抜け出そうとした二人の耳に、明るい曲が聞こえてきた。
●
「Fly Highライブの時間だー!」
高らかに宣言したアメリアは、アルトサックスを演奏しながらウキウキ気分でマーチングバンドのようにステップ踏んだ。
(「今日も明日も明後日も、皆でずーっと楽しんでいこうね!」)
アメリアの思いは、アルトサックスに乗せて会場に響き渡った。
♪太陽が向こうに沈んだから
今日もいつの間にか終わっちゃう
なんだか今日も色々だけど
楽しい日々は終わらないから
残暑の歌声が高らかに響き、その場にいた全員が火の回りで踊り出す。
(「毎日を楽しく行けるのなら、ただ回るのも楽しいものですわね!」)
別に特別上手くもないが、楽しいから良いのだ。
これから何かが変わるかもしれないが、きっと変わらないモノもあるはず。
だから、歌って踊って笑えば大体大丈夫。
♪明日に一つだけしか持っていけないのなら
今の気持ちを持っていきたい
うきうき気分の明日なら
楽しい日々は続いてくから
躍動感たっぷりに踊る歌音がステップを踏むたび、タンバリンの華やかな音が響き渡る。
(「歌を聴いてると、もうその歌通りにはしゃぎたくなっちゃうのを止められないからなー!」)
変わるものがあっても、この思い出は変わらない。
(「そんな思い出をみんなでどんどん積み重ねたいぜ!!」)
明るく踊る歌音に合わせて、場の空気は盛り上がりを見せていった。
♪太陽があっちから昇ったから
今日もいつの間にか始まっちゃう
きっと今日も色々だけど
楽しい日々を信じてるから
タイトルの『こうや』に合わせて、木乃葉は篠笛を吹く。
吹き抜ける風のような音が歌に合わせて響き、疾走感を与えていく。
歌が最高潮に達した時、ふいに篠笛の音が止んだ。
♪もし全部変わってしまっても
あの日々はなくならないから
終わりを怖がらないで
ハッピーな毎日がまた始まるから
残暑の歌声に合わせて、未知のバックコーラスが響く。
状況に応じて女性パート・男性パートどちらも歌い上げる未知の歌声は、最後のサビで音楽を止めて歌うメンバー達の歌声をまとめ上げていく。
(「太陽が沈んだってこうして自分達で明るく出来る。明日からの楽しい日々も自分達でいっぱい作っていこうな」)
未知が気持ちを込めて歌い上げた時、花火が上がった。
市販の打ち上げ花火が次々に打ち上げられ、赤、白、水色、緑、ピンクの花火が夜空を彩る。
(「これからも皆で楽しく過ごせますように……」)
夜空に花咲く吹き抜ける風のような一輪を見上げて、木乃葉が思いを込めた。
「運動会、お疲れ様でしたわ!」
残暑の声に、後奏が響く。
大きな盛り上がりと共に、運動会は幕を閉じた。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年6月10日
難度:簡単
参加:31人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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