運動会2018~お弁当コンテスト!?

    作者:佐和

    「八鳩さん、八鳩さん。運動会が開催されるのです!」
     楽し気に駆け込んできた七重・未春(小学生七不思議使い・dn0234)に、八鳩・秋羽(中学生エクスブレイン・dn0089)はシュークリームをもぐもぐしたまま振り返った。
     状況が切迫している現在、大々的な行事を行うことは難しいけれども。
     運動会が完全に中止となるのは寂しいと、有志によって企画されたのだという。
     組連合もなく個人戦で行われる、普段からは大分規模が小さくなる運動会。
     それでも久しぶりの学園行事に、未春は表情を輝かせていた。
     灼滅者達に日常を思い出してもらう、というのも開催理由の1つなのだろう。
     シュークリームを頬張りながら頷く秋羽の前で、未春は案内チラシを広げ、1つ1つ眺めては笑顔を零す。
    「色んな競技があるですね。どれも楽しみです。
     八鳩さんは、どの競技が気になるですか?」
    「お弁当コンテスト」
     即答に、一瞬、未春はきょとんとして動きを止めた。
    「お弁当コンテスト」
     しかも2回言いましたよ。
     通常の運動会でも、秋羽が参加できる唯一の競技ではあったし。
     運動が好きでも得意でもないとなればその選択も納得できるかもしれないが。
     ……組連合がないと、成り立たない競技ではないでしょうかね?
     そんな未春の戸惑いを気にもせず。
    「どんなお弁当あるか、楽しみ」
     シュークリームを食べ終えた秋羽は、至極真面目な表情で言い切って。
     目を瞬かせる未春の前で、ほんのりと微笑を浮かべた。


    ■リプレイ

    ●おにぎりとサンドイッチと
    「はいはい休憩休憩。午後からの競技に備えて体力回復だよー」
     八重歯を見せる風峰・静(d28020)に、八千草・保(d26173)はのんびり微笑んだ。
     その傍らでおずおずと頷く月夜野・噤(d27644)は、卵焼きにウィンナー、ミートボールが並ぶ普通のお弁当をちょこんと広げる。
     メインはおかかをのせて醤油をかけたおにぎりです。
    「わぁ、可愛らしいなぁ」
    「やっぱり手作り? すごいなー」
    「え、えと、保先輩はお重、すごいです……です……」
     風呂敷包みから出てきたお重には、焼き鮭に豆ごはん、色とりどりの温野菜と、ふわふわの卵焼きが整列し、そして。
    「さんどいっちは……ちょっと凝ってみた。運動会ぽいかな? て」
     お勧め通り、フルーツとクリームのサンドイッチはとても鮮やかでした。
     そして静のはというと。
    「お弁当コンテストと言えばおにぎりだよねー」
     毎年1位の人気メニューが、すっごい大きさで出てきました。
    「静先輩……らしい、です……」
     ぐっ、と噤は可愛いガッツポーズを見せ。
    「お味は何ですやろか?」
    「具? 具は……あっ!」
     保の問いに答えようとした静の動きが、唐突に止まる。
    「おかずをわけてください……」
     どうやら中身を入れ忘れたようです。
     でっかい塩むすびを前に、保と噤は目を瞬かせて。
     すぐに微笑み合うと、どうぞとそれぞれのお弁当を指し示した。
    「しっかり食べて、お昼からに備えましょ」
     そして保は、水筒の冷茶を注ぎ配り始める。
    「運動会……規模は小さくなったけど、中止になるよか良かったぜ」
     盛り上がった午前中の競技を思い出しながら、幾つものお弁当箱を運ぶのはイヴ・ハウディーン(d30488)。
     でもイヴが用意したのは1つ、唐揚げとおむすびのお弁当だけ。
     それ以外のには、卵焼きにゆで卵、オムライスとオムソバと卵サラダ、と卵ばかりが詰め込まれていて。
    「卵料理フルコースなのですです!」
     お母さんと先輩達に教えて貰ったのだと、珍しく興奮気味に話す有馬・南桜(d35680)に、七重・未春(dn0234)がぱちぱちと拍手を送りました。
     しかし卵だけという偏りと圧倒的な量とに、イヴは目を反らし、水筒を運ぶウィングキャットのピーターさんもどこか憮然とした様子。
     その光景に八鳩・秋羽(dn0089)はそっと立ち去ろうとして。
     だが、がっしりと手をイヴに掴まれる。
    「秋羽先輩も良ければ一緒に食べようぜ」
     それはお誘いというより懇願。
    「料理作る有馬ちゃん、鬼神のごとき迫力だから、残すと……後が怖い」
     引きつった笑いに押されて、秋羽は思わず頷いていた。
     そんなイヴ達に気付かず、南桜はにこにこ未春と笑い合う。
    「さあ、楽しいお昼休みにするのです」
     得意料理はカップ麺なシルキー・ゲーンズボロ(d09804)と、メシマズな莫原・想々(d23600)は、それでも互いの為にと頑張って。
    「わぁ! シルキーさんのお弁当かわいい!」
     レトルトカレーとチーズを挟んだホットサンドに、初めて食べると興味深々。
     埴輪のようなタコさんウィンナーにもまた、かわいいと笑顔がこぼれる。
    「想々さんのは家庭的でとても素敵ね」
     鮭フレークと焼きたらこのおにぎりは、何個でも食べれそうで。
     レンチンのおかずにも優しさを感じて微笑んだ。
    「この卵焼きも、焼き加減が絶妙で……」
    「何十回も練習したんよ」
     シルキーが食べる様子を、どきどきしながら見ていた想々だけれど。
    「想々さんもひとつどうぞ」
     あーん、と差し出されたのをおずおずと口にして。
    「……甘い。甘すぎる」
    「ふふ、凄く美味しいですよ」
     落ち込む想々に、シルキーは優しく微笑んだ。
    「ありがとう」
     喜んでもらえたなら、と想々にも照れた笑みが戻る。
     月村・アヅマ(d13869)のお弁当はおにぎりづくし。
     梅干し、たらこに、後乗せの大葉味噌、鮭とわかめの混ぜご飯、そして大き目のは味玉入りと、多種多様な大量のおにぎりが味毎に違う形で並ぶ。
     卵焼き、ほうれん草のごま和え、春雨サラダとおかずも少し添えられるけれども。
     メインのおかずは桜井・夕月(d13800)のお弁当。
     ジャーサラダに卵焼き、油淋鶏風からあげ。おかずじゃない稲荷寿司が混ざりつつ、デザートにカットフルーツの盛り合わせまで。
     取り合わせのバランスは2人合わせて丁度いい感じ。
     なので問題は。
    「んー、流石に作りすぎたか?
     けど夕月さん、いつも俺が思う以上に食うからなぁ」
    「何故に私が大食いの様な評価を受けているのだ、解せぬ」
     楽しげに笑うアヅマに、夕月も怒ったようなふりをして見せて。
     そこに通りかかった助っ人の姿を見つける。
    「……お、八鳩君。よければどう?」
     声をかけるアヅマの隣で、夕月も紙皿や割り箸を差し出し誘い。
    「では、頂きます!」
     皆で分ければ何とかなるでしょう。
     木陰にレジャーシートを敷いた斑鳩・まとい(d22006)は、埜々下・千結(d02251)と小豆里・霧湖(d20756)とお弁当を広げ合う。
    「サンドイッチ、なかなか難しいですね。
     きれいに包めなくて崩れてしまいました」
     まといの言う通り、ハムとレタスのサンドイッチは少々不格好だけれども。
    「まと先輩のちゃれんじ凄いです」
     いただきます、と早速霧湖が手を伸ばして笑顔がこぼれた。
    「きりこのお弁当はレシピ通りですが」
     続くのは、餡子とチーズのサンドイッチと、いちごとマシュマロのホットサンド。
    「厚切りベーコンのごろっと串焼きと、ジャーサラダもどうぞです」
     保冷効果をひんやり感じながらサラダを差し出せば。
    「小豆里さん、将来良いお嫁さんになりそうっすね」
     受け取った千結に褒められて、霧湖は照れながらも嬉しそうに笑う。
    「自分はその、料理は不得手でして」
     そして、千結が申し訳なさそうに出したのは、形の崩れたおにぎり。
     とても人様には、と躊躇うが、まといは気にせず一口頬張り。
    「柔らかくておいしいですよ」
     食べ進む様子にほっと息をついて、千結もサンドイッチにかじりつく。
    「お弁当持ち寄って食べるのも、楽しいっすね」
    「こうして皆さんと一緒に外で食べることは無かったですから」
     微笑を浮かべる千結に、まといもこくりと頷いて。
     木漏れ日の下に並ぶお弁当と友人達とを見た霧湖も、そっと目を細めた。
     別の木の下でも、お弁当の見せ合いっこ。
    「朱里さんと2人で作ってきた。如何せん、慣れていなくてな」
    「私もほとんど作ったことがないから、うまくできているかな……?」
     藤崎・美雪(d38634)と市川・朱里(d38657)の合作は、塩鮭、梅干、昆布、明太子のおにぎりと、タコさんウィンナーにアスパラベーコン。
    「サラダは1つずつピックに刺してるのね」
     プチトマトやキュウリ、ハムが可愛く盛り付けられているのを見て、松原・愛莉(d37170)が微笑む。
    「私のは……運動会恒例、一口サンドイッチ弁当ね」
     毎年お弁当コンテストにサンドイッチで参加している愛莉は、ロースハムとトマトとレタス、関西風の厚焼き卵サンド、スモークサーモンとレタス、など色とりどりに揃えて。
     もちろん、イチゴやキウイのホイップクリームサンドでデザートも忘れない。
    「うわあ、すごいよ! 美味しそう!」
    「今年もすごいね」
     目を輝かせる朱里の横で有城・雄哉(d31751)が頷いた。
     その雄哉のお弁当は、白だしで炊いたご飯に釜揚げしらすを混ぜたおにぎり。
     あおさ入りの卵焼きに、塩味の唐揚げ、煮物も添えて。
     定番だけど本格的なお弁当だ。
    「わ、私のお弁当は皆ほど上手く作れていないが、いいのか?」
     その出来栄えに美雪が固まってしまうけれども。
    「気にしなくていいよ。みんなで食べるのがメインだからね」
    「そうか。ありがとう」
     雄哉の笑顔に、ほっと肩の力が抜ける。
    「……って、雄哉おにいちゃん、作りすぎ」
     そこに愛莉がずいっと割り込む。
    「やっぱり? どうも加減がわからなくて」
    「でも、私もちょっと作りすぎたかしら?」
     苦笑する雄哉に、愛莉も改めて自分達のお弁当を見る。
     そんな時に役立つのが、色んなお弁当を見て回っているもぐもぐエクスブレインで。
    「未春さんも秋羽さんも、一緒にどうかしら?」
     見つけた愛莉が声をかけると、秋羽が未春を引いてやってきた。
    「頑張って握ってきたよ」
     早速、朱里からおにぎりを受け取って、いただきます、の声が次々と上がる。
    「ワイワイ食べるのって、本当にいいね」
     楽し気なその様子に目を細めた雄哉は、サンドイッチに手を伸ばした。
    「はい、あーん。
     どうかな? 形はあまりよくないけど、味は大丈夫、のはず」
    「えへへ、ミリーさんの味がしますのです。
     お返しの、あーん、なのですよー♪」
     ミルドレッド・ウェルズ(d01019)の手作りサンドイッチを食べさせ合うのは日野森・翠(d03366)。
     デザートは翠がチュロスを用意して、ゲームでキスをと可愛く企むけれども。
     誘う間もなく反対側の端をミルドレッドがぱくり。
     翠が理解する前に2人の距離がゼロになる。
    「ん……甘くて美味しいのはどっちだろうね?」
     ミルドレッドの問いに、翠は真っ赤になって。
     でも甘えるように、引き寄せる腕に身を委ねた。
    「ごちそうさまっ♪」
    「そ、それじゃあ食後の休憩に」
     そして今度は翠の膝に、ミルドレッドの銀髪が委ねられる。
     さらさらの髪の柔らかさを、すべすべの太腿の感触を、それぞれに感じながら。
    「運動会、これで終わりでもいいかな? なんてね」
     笑うミルドレッドに翠は頬を染めて頷いた。

    ●他にもいろいろ
    「これは……うさみっちキャラ弁!」
     ニコ・ベルクシュタイン(d03078)の弁当箱には、鮭フレークのピンクをメインに、桃色たれウサ耳付きのジト目の少年が描かれていた。
     その周りには、ハンバーグやアスパラ肉巻きなど、榎・未知(d37844)が好きな肉料理。
     がっつり可愛い出来栄えに、ニコは未知の持つ弁当箱を見て。
    「俺は、無難過ぎたかな」
     今度は未知が蓋を開くと、卵・インゲン・鶏ひき肉の三色そぼろ弁当が現れる。
     綺麗に三色整えられ、丁寧な仕事ぶりがうかがえる出来栄え。
     添えられたタコさんウィンナーはニコの趣味ではないはずだから、未知のために一生懸命考えてくれたのだろう。
     制作風景を想像して、未知は余計嬉しくなってしまう。
    「しかし見れば見るほど良く出来ている」
     そのニコは、まだうさみっちに見入っていて。
     頑張ったかいがあったな、と未知の笑みが深くなった。
    「どれから食べてみたい? うさみっちの顔をガッといってみる?」
     カレーの香りに足を止めた未春は、無道・律(d01795)と目が合う。
    「母方の親戚はインド出身なので」
     気付いた律が見せてくれたのは、インド風カレー応援弁当。
     カレーチャーハンと、解し鶏のチキンカレーを具にしたおむすびに。
     海老烏賊と夏野菜のマスタードカレー炒め、豆と牛蒡のコールスローサラダ、と珍しいメニューが並び。
     デザートもヨーグルトソースでラッシー風のココナッツミルクプリン。
    「辛味はマイルドに抑えて、スパイスは食欲に働きかけるものを選んで使いました」
     解説してくれる律に、未春が瞳を輝かせる。
     そこに。
    「おーい。一緒にどうぞ♪」
     かけられた声に振り向くと、渡来・桃夜(d17562)が竹に素麺を流していた。
    「天ぷらは流さないから適当に突いて食べてね」
     クリス・レクター(d14308)が大皿をどーんと置いていく。
     竹のコースにホースで水を流す仕組みで、組み立ても2人でやったのだろう。
     立派な流し素麺に、律と未春は思わず目を瞬かせた。
    「だってお弁当コンテストの項目に素麺ってあったし……」
    「暑くなってきたし、日本だし、流れるもの好きでしょ?」
     既に食べているクリスと素麺を投入し続ける桃夜に説得(?)されて。
     折角なのでとお邪魔することにする。
    「ふぅ……腕が疲れてきた」
    「代わりますね」
     しばしして律と交代すれば、未春も倣い。
    「トーヤ、お疲れ様。はい、海老天あーん」
    「ありがとう。……うんまっ♪」
     さくさく天ぷらと共に、今度は桃夜も流し素麺を味わう。
    「空の下で食事をするのはいいよね」
    「うん、外で食べると一層美味しいよね~」
     笑い合う2人の下流で、いつの間にか秋羽も素麺を食べていた。
    「可愛い彼女に期待されちゃったからには、全力で応えるしかないだろ?」
     大條・修太郎(d06271)は『豪華な弁当とは』で検索した結果を詰めた弁当を広げる。
     唐揚げやタコさんウィンナーなど定番の中に、星型人参や飾り付けたうずらの卵といった可愛い系も入れて、春巻きも手作り。
     おかずばかりの中、椿森・郁(d00466)のためにこれだけは外せないのが。
    「稲荷寿司好きって言ったの覚えてくれてて嬉しい」
     気付いた郁が笑うのを見て、修太郎も微笑んだ。
    「椿森さんのロールサンド食べるのも久しぶりで嬉しい」
     そしていつものメニューにも顔が綻ぶ。
    「あと、アイスクリーム作るね」
    「えっ、ここで?」
     本の知識をお試しに、と郁は容器にアイスの材料を入れ。
     氷と塩、さらにタオルで包んで振り回し混ぜること10分。
    「うお、マジでアイス!」
     科学の実験ぽく出来上がったデザートに、カットフルーツを添えて。
    「あーんてする?」
     問いかける郁に、修太郎は頷いた。
     椎葉・武流(d08137)のお弁当はエビチリ餃子。
     エビは歯応えを楽しめるように刻み、チリソースとクワイと一緒に水餃子の皮で包んで。
     辛さも甘さも、もちもちもぷりぷりもシャクシャクも一口で楽しめるようにしてみた。
     一方のメイニーヒルト・グラオグランツ(d12947)は、わさびの茎を混ぜたお稲荷さんにアスパラと人参のベーコン巻き。うずらの煮卵、鳥のから揚げ、絹さやのマヨネーズ添えで、初心に帰った定番弁当。
     生姜をきかせたキャベツ・人参・胡瓜のおしんこも別箱に用意して。
    「さっすが『師匠』」
     感心しつつ嬉しそうに笑う武流に、メイニーヒルトは稲荷寿司を差し出す。
     あーん、と食べさせてから、ちらりと水餃子を見ると。
     察した武流が今度はあーん。
     照れくさいけどあったかい、何度やっても気恥ずかしい食べさせっこ。
     でもそれは、大切な人との大切な時間を楽しむものだから。
     またお互いにお弁当を運び合う。
    「お弁当コンテストになると何故かとうもろこし弁当を作りたくなるのですよね」
     北條・薫(d11808)が並べるのは、コーンブレッドにコーンクリームコロッケ、とうもろこしたっぷりサラダに冷製コーンスープにと、どれもこれもとうもろこし。
     過去に2度最下位になったとうもろこしだけれども、今年は順位がつかないので心置きなく作った様子。
     そこに熊谷・翔也(d16435)が広げるのは、いなり寿司、海苔巻きと俵巻き。
     おかずはエビフライにハンバーグ、鯖の煮つけ、ポテトサラダにきんぴらごぼう。
     デザートには栗きんとん。
     コンテストはなくとも、大切な人へは自分なりの1番をと気合いが入る。
    「少しいただいてもよろしいですか?」
    「では、少し交換しましょうか♪」
     コーン茶とお吸い物も交換して、それぞれに舌鼓をうつ夫妻。
    「沢山食べて、午後も頑張りましょうね。翔也さん」
    「ええ。後半戦も頑張りましょうね、薫」
     寄り添い、微笑み、歩んでいく。
    「今回は広島の郷土料理、ワニ料理だよ」
     折角だし、と笑う崇田・來鯉(d16213)は、先頃、鰐脚の悪魔と戦ってきたところで。
     ちなみに、このワニはサメのことを指すので鮫料理が並びます。
    「鮫は他の魚と違って傷みにくいから弁当とかにも使いやすいしね」
     鮫の味噌漬け肉と千切りした牛蒡・人参・砕いた牡蠣の燻製と牡蠣醤油を加えた炊き込みご飯のおにぎりと、鮫肉のつみれやハンバーグ。
     さらに広島が生産量日本一のクワイチップスサラダにはレモンドレッシングをかけて。
     広島づくしのメニューに、未春が驚きの声を上げました。
    「私は、府中味噌の味噌汁と、デザートのいが餅、海軍珈琲だな」
     その横にヴァーリ・マニャーキン(d27995)が添えるのは、干しトビウオとスルメ、昆布で出汁を取り、魔法瓶で温かな味噌汁と。
     紅生姜をつけてた酢で色付けした米をあんこ餅の上に乗せた、自己流いが餅。
    「先生として鼻が高いね! 良いお嫁さんになれるよ」
     それを見た來鯉が嬉しそうにそう言うけれど。
    「何処かの誰かさんに私の想いを気付かせてお嫁になりたくはあるな、うん」
     ヴァーリの呟きは届かないまま。
     秋羽が早速おにぎりを頬張っていた。
     文月探偵倶楽部の熱い視線の先は、ロジオン・ジュラフスキー(d24010)のお弁当箱。
     身体中でわくわくを表す、向日葵きぐるみのミカエラ・アプリコット(d03125)とイフリートきぐるみの垰田・毬衣(d02897)を筆頭に、今か今かと待ち望む。
    (「皆さんからの期待が凄くてどうしましょう」)
     ロジオンは嬉しさと緊張でどきどきです。
     今日のメニューはロシア料理。
     焼きピロシキに、ビーフストロガノフ、ロシア風ポテトサラダのサラートオリヴィエと茸のコトレータ。スープジャーの中にボルシチと鱈のウハーも入れてある。
     毬衣は思わずよだれが垂れそうになって慌てたり。
    「やかんの麦茶、ココ置いとくねー♪」
     ミカエラはくるくる回ってお手伝い。
     そして。
    「たくさん作ってまいりましたからね、お気軽にお召し上がりください」
     ロジオンの声掛けに、皆は遠慮なく手を伸ばした。
    「む、この味は、絶品です。どんなレシピなのか気になります」
     犬きぐるみ姿の志穂崎・藍(d22880)は、彼氏にも食べさせたいとレシピを聞き出して。
     クロネコきぐるみの文月・直哉(d06712)も、期待以上の味を楽しんでいく。
    「さすが、皆のお母さん属性は伊達じゃない」
     大人気っぷりに、文月・咲哉(d05076)は微笑んで。
    「ほら、真珠も」
     その勢いに気後れする納薙・真珠(dn0140)にも取り分け渡した。
    「一応、あたいも持ってきた!
     タコさんウィンナーとうさぎさんリンゴ~♪」
     ミカエラのそれは容器にぎっしりで。
     やほー、と勧められた真珠が思わず手を引く程ぎゅうぎゅう。
     藍は小さめで摘まみやすい、錦糸卵や桜でんぶなどで色とりどりの、綺麗なおにぎりを並べていく。
    「楽しんでくれると嬉しいです」
     微笑むと、真珠が目を奪われたように覗き込んだ。
    「俺はデザート……と見せかけて、鯛焼き形のお好み焼だ」
     咲哉は山芋入りのもちふわ生地を割って見せて笑いかける。
    「皆もどうぞどうぞなんだよー」
     毬衣のランチボックスには、ビーフパストラミとチーズを挟んだサンドイッチが沢山。
    「俺は、地元北九州の名物料理・焼きうどんの弁当だぜ!」
     直哉が箱の紐を引っ張れば、石灰と水の反応で、ほかほかあったか。
    「これぞ文明の利器だぜ」
     どやぁ、と胸を張る直哉だけれども。
     その前にどんっと現れたのは、携帯コンロ。
    「ホラ、着ぐるミステリーの定番といえば~?
     そう、ヒマワリ着ぐるみのまま、携帯コンロで鍋焼きうどんを作りまっす!」
    「そうかその手があった!?」
     もはや弁当じゃない感じになってきたミカエラを見て、直哉が崩れ落ちた。
    「コンロで着ぐるみ燃やすなよー」
     咲哉は声をかけつつ、傍らの真珠に振り向いて。
    「それで、真珠のお弁当は?」
     優しく期待の眼差しを向ける。
    「真夏の鍋に隠された謎……文字通り熱いな!」
     鍋焼きうどんを頬張りながら直哉がキラリとポーズを決め。
    「大満足なんだよー」
     膨らんだお腹を叩く毬衣に、ロジオンと藍が微笑む。
     そんな皆をくるりと見回して、向日葵が笑った。

    「運動会も無事開催できたし。次の学園祭も、頑張らないとだね!」

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月10日
    難度:簡単
    参加:37人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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