運動会2018~学内1周RBクロスカントリー

    作者:相原あきと

     6月10日(日)は武蔵坂学園の運動会が予定されていたが、状況が切迫した今、大々的に運動会を行うのは難しい。しかし運動会が完全に中止になるのは悔しい……そう思った有志達によって、今年は小規模な運動会が開催される運びとなった。
    「と言うわけで、有志で運動会を行う事になったの。最近は大変な続きだったから、運動会を行う事で日常を思い出して貰えれば嬉しいなって……」
     そう言って皆を運動会に誘うのは鈴懸・珠希(高校生エクスブレイン・dn0064)。
    「べ、別に、ここにいる皆を気遣って、コレを持ってきたわけじゃないんだからね!」
     珠希はそっぽを向きつつ、とある競技について書かれた書類を健全な灼滅者達へと差し出す。そこに書かれていた競技は以下のようなものだった。
     ………………………………………………………………………………。

     『競技名』
     「学内1周RBクロスカントリー」

     『内容』
      学園の敷地内を走り回るクロスカントリー。

     『RB』
      リアルバウトの略。
      クロスカントリー中に相手走者を妨害する事を可とする。

     『禁止事項』
      サイキックの使用は禁止。
      ライドキャリバーに乗ったり利用したりは禁止。
      学校の備品や校舎を破壊するような事は禁止。

     ………………………………………………………………………………。

     一方その頃。
     某校舎の屋上には、とあるメンバー達が集まっていた。

     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らはリア充が発生するタイミングで確実に自然発生する。
     ある者は覆面を、ある者は三角頭巾を、ある者は素顔で……。
     彼らの名は――RB団。
    「というわけで、有志で運動会を行う事になったでやんすよ! そしてコレがお勧めの競技でやんす!」
     猫柳・又次郎(高校生ご当地ヒーロー・dn0240)が持ってきたのは毎年恒例のRBクロスカントリーであった。
    『だっしゃーっ!!!』
     屋上に集まった同志達が拳を突き上げる。
     学内1周RBクロスカントリー。RBの上にはリアルバウトとルビが振ってあるその競技は、学校中を舞台としたリアルバウト有りの何でもあり競争の事だ――表向きは。
    「ふふふ、良しッ! この隠語で今年も同志が集結するだろう」
    「ああ! 遠慮なく流れ弾でリア充を爆発させられる!」
    『おお~!』
     そうして盛り上がる同志達だが、競技の連絡を持ってきた又次郎が言い辛そうに呟く。
    「盛り上がってる所申し訳無いでやんすが、実はこの競技、今回は初期のルールに戻ってるでやんすが……」
    「ん?……本当だ! 確かに初回のルールに戻ってやがる!?」
    「そうか、今年の運動会は大々的じゃないしな、仕方ねーか」
    「ちょっと待て、初代、ファースト……いや、原点回帰! そう考えれば悪くない」
    『……確かに!』
     なんとなく第1回目に戻った事に懐かしさと特別感を感じて頷く同志達。やがて同志達は少しずつ念いが昂ぶっていき、やがてその異様なオーラが頂点に達した時、吠えるように叫び声をあげる。
    「これぞ俺達の日常だ! いつもの行くぞ!」
    『おー!』
    「目的は!」
    「リア充撲滅!」
    「合い言葉は!」
    「リア充爆発しろ!」
    「我ら!」
    『RB団!!!』


    ■リプレイ


    「リア充枠で出場できるとか、ある意味名誉な事じゃない?」
    「新婚夫婦はリア充とは少しズレた枠組じゃないのかしら」
     スタート前に楽しげにおしゃべりするは彩瑠・さくらえ(d02131)とエリノア・テルメッツ(d26318)、2人の発する幸せオーラはRB団達を刺激する。
    「僕、できればこれで走りたいな」
     さくらえが隣のエリノアの腰に手を回しつヒョイッと。
    「やっぱり今年もこれなのね」
     さくらえにお姫様抱っこされつつエリノアもしがみつき。
    『リア充爆――』

     パーンッ!

     2人にRB団達が襲いかかろうとした寸前、スタートの銃声が鳴り参加者達が走り出す。
     最初に抜け出したのは2人。
    「ペース配分があるから最初から全力疾走するヤツはいないと思ったが……」
    「アタシは全力で駆け抜けるだけよ」
     1人は風真・和弥(d03497)、もう1人は神夜・明日等(d01914)。
     だが、トラックの終わりが見えた所で立ち止まりクルリと反転するは和弥。そう、1位狙いの明日等とは目的が違う。
    「さあ、クソアベックども! ここから先は通さねえ!」
     明日等を抜いてもほぼ全員と敵対する位置に立ち塞がる和弥だが、それを見て集団から1人の女性が飛び出す。
    「……バカズヤ、相変わらず馬鹿な真似をしているのね……そんな暇があるなら私と勝負しなさい」
     刑ヶ原・殺姫(d10451)は、決闘だ、と和弥の正面に立とうとするも、当の和弥はさっさとアベック(男)に襲撃をし始めており。
    「ちょっと! 人の話を聞いてるの!?」
     邪魔な参加者をぶちのめしつつ和弥へと向かっていく殺姫。
    「例えこれが最後だって同じ事! 一瞬だけど花火のように! まぶしく燃えて駆け抜けてやるっ! それが俺たちRB団の生き方だっ!」
     ドーン、と爆発を背に1人乱闘を始める和弥だが、殺姫の様子にやっかんだRB団達は、最終的には和弥も殺そうと心に誓うのであった……。
     トラックを走り終えた競技者は、校内を駆け抜け、校舎壁登りへと進む。
     そんな中、教室で1人機材を設置しベースを作るは【戦戦研】指揮官鹿島・狭霧(d01181)。
    「ネーベルコマンドより各員へ、ウェポンズフリー(全手段使用許可)、これより状況を開始する」
     同時、教室の窓からドローン数機が出撃。
    「さぁ! 今年もヤツらを狩りまくるわよ!」


    「大地の恵みに感謝して……召し上がれっ!」
    「うちらが丹精込めて作ったおにぎりのお味はいかがですか~?」
     校舎の壁を登り切ろうとしたRB団を待ち受けるはひょっとこお面の榎本・彗樹(d32627)と、赤鬼お面の篠崎・伊織(d36261)の2人組。
     やっと登り切れそうだ、と手を伸ばした所で強引に口へ突っ込まれるおにぎりは、呼吸的意味で殺人的であり、団員達はもがき手を離し次々に落下していく。
    「赤鬼、まだ来るよ」
    「本当だ、おにぎり食べて一休みしようと思ってたんだけどなー」
     再び壁を登ってくるRB団達に2人は再びおにぎりを装備し直すのだった。
     さて、校舎の壁を登り切った面々は屋上をひた走るのだが、事前に設置されていたのかドガンドカンと地雷が爆破。
    「ちょ、ちょっと休憩! 柴崎君、これ、ほんとにただのレースなぁわっ!?」
     地雷ゾーンを抜けた所でへたり込もうとした栗花落・澪(d37882)を、「どうせ誰も見てやしねぇよ」と強引に自分の膝に乗せる紫崎・宗田(d38589)。
    「そういう問題じゃなくて……!」
    「今だけだ。大人しくしてろ、澪」
    「だ、だって……もう、ほんとズルい……」
     宗田を上目遣いに睨みつつ心の中で悪態を付くも、最終的には真っ赤になる澪。
     と、その時だ。宗田が急に抱きしめる。
    「きゃっ!?」
     慌てる澪だが、見れば宗田の背は真っ赤に濡れている。ツンと鼻に来る匂いから檄辛水鉄砲を受けたようだ。
    「姫は今休憩中だ」
     宗田の言葉にRB団の襲撃者――月影・木乃葉(d34599)は口元を歪ませ。
    「いちゃいちゃしよって!」
     檄辛水鉄砲を連射。
     澪を背後に押しのけつつ襲撃者に向かって行く宗田。
     見られていた事にパニクる澪。
    「くっ、強い! 援軍! 援軍は――」
    「偽赤頭巾参上。さぁ、今のうちに逃げて下さい」
     木乃葉を逃し代わりに立ち塞がる偽赤頭巾――安藤・ジェフ(d30263)。
    「おっと、うっかり自爆装置のみで来てしまいました……仕方在りませんね」
    「テメェ!?」
    「ポチっとな」
     咄嗟に澪を庇う宗田。
     出落ち要員として吹っ飛ぶジェフ。
     一方、辛くも逃げ延びたオリジナル赤頭巾は衝撃のシーンを目撃していた。
    「ねえ、あなた……校内では『一先生』って呼んだ方が良いかしら?」
    「他の生徒がいる所なら兎も角、二人きりの時は普段通りで良いよ」
     そう言って高校3年生の荒谷・耀(d31795)の額にキスをするのは、武蔵坂学園教師の一・威司(d08891)。2人は生徒と先生という立場でありながら夫婦でもある。
     目が合う木乃葉と夫婦達。
    「私達に襲いかかろうだなんて……身の程を教えてあげるわ、このくん」
     耀がガトリングガンを構える。
    「ええいっ! RB団の勇気が世界を救う! ボクらの戦いはこれからだー!」
     覚悟を決めた木乃葉は腹マイト花火で特攻し。
     チュドーンッ。
     煙の尾を引き空の星となったのであった……。
     第一の修羅場と化した屋上を3人で駆け抜けていくのは【TG研】の紅羽・流希(d10975)、竹尾・登(d13258)、桜井・夕月(d13800)。
     先頭の流希は高濃度唐辛子液を装填した小型バズーカ型消化器でモブRB団達を一掃していく。
    「走る鍛錬に、良い一撃を入れる角度を狙う瞬発力、恋人達を守る達成感……これぞ義勇軍の醍醐味ですよねぇ……」
     その頃には周囲のRB団はいなくなり、夕月が「ありがとう、そろそろ先に行くね!」と入賞目指して一気に屋上を駆け抜けていった。
     残された流希は、ふと登に「そういえば秋山さんと一緒では無いのですね」と。
    「途中ではぐれちゃって……」
     残念そうに呟く登。とその時だった。
    「た、た、大変なのだ!」
     それは顔面蒼白な秋山・梨乃(d33017)。
    「どうしたんです?」
    「お、お姉ちゃんが、置き手紙で……」

    『私は好きなようにします。君たちも好きなようにしてください』

    「折鶴と一緒に置いてあったりしなかった?」
     シンな事を呟く登はスルーし、梨乃は言う。
    「私では止められないので、皆に助けて欲しいのだ。お姉ちゃんは……お姉ちゃんは――」


     リア充にも戦闘狂にも近づかず、菜々野菜野・菜々(d37737)は駆け抜ける。
     屋上の終わりが見え、そこに待ち構える少女にきな臭さを感じつつも、視線が外れた隙に一気に加速、屋上際から落下、途中で壁を蹴り一気に距離を稼ぐ。
     眼下に姿を消した菜々をチラ見し、際に立ち塞がるRB団の少女――白神・柚理(d06661)は次に備える。競技者に興味は無いのだ。
    「こんにちは、RB団を狩るには良い日ですね」
     柚理の前に現れるは、恋人持ちリア充オーラを纏い徒手空拳の構えを取るオリヴィア・ローゼンタール(d37448)。
    「ふーん、つまり覚悟は出来てるって事で……いいよね?」
     一触即発。
     だが、そこに割り込んできたのはアトシュ・スカーレット(d20193)。柚理の隣に降り立ち。
    「卑怯とか言うなよ? RB団にあるのはリア充爆破の信念のみ、だからな」
     オリヴィアの眉間に皺が寄るも、その肩をポンと叩いて現れるは淳・周(d05550)。
    「おいおい、数で有利になったとか思うな。ヒーローはどこにだって現れるんだぜ?」
     巨大ハンマーを担いだままの周。
     徒手空拳のオリヴィア。
     激辛水風船を装備したアトシュと柚理。
     プラスでアトシュは水鉄砲、柚理はメリケンサック。
     ヒューン……ドカ、と空から木乃葉が振ってきたのを合図に4人が一斉に動き出す。そして――……やられ遺伝子が発動しロープで捕縛された2人、そんな結末。
    「さすが原点回帰……だが、正義は我に有り!」
     笑うはアトシュと柚理。
    「例えここで終わっても、次の同志が現れる……リア充は爆発だぁぁぁぁぁぁ!」
     その瞬間、アトシュの自爆用花火が着火。オリヴィアが2人を屋上から投棄。
     ………………その日、とても綺麗な花火が咲いた。
     喧噪が去った屋上からロープを垂らし、壁をするすると降りて行くのは寺内・美月(d38710)。だが、その途中で10秒ほど硬直。同じように屋上からロープを垂らし壁を降りる途中で絡まるようにイチャイチャする【戦戦研】の2人を見たからだ。
    「……よし、行きましょう」
     スルーする事に決めて壁を降りきる美月。
     一方、スルーされた2人――風間・紅詩(d26231)と新城・七葉(d01835)は。
    「こんな所で怖いですか?」
    「旦那様と一緒なら怖いことなんかないよ?」
    「ええ、七葉のことは何があっても私が守りますしね」
    「ん、信じてる」
     宙空でいちゃこらする2人。

    『ネーベルコマンドよりフロッグマン、RB出現、エリアK2より数5、健闘を祈る』
     スッ、プールの水面から顔を出し、プールサイドにサイレンサー付き狙撃銃の銃口を固定、潜水装備一式の灯屋・フォルケ(d02085)が「Einverstanden」と答え。
    「good night」

     パスパスパスパスパス。
     紅詩と七葉に奇襲を仕掛けようと屋上から飛び出したRB団達が無音の狙撃に殺られ、そのまま大地に激突し人型の穴を増やす。さらに穴から這い上がろうとしてくる者には、くさや入り小麦粉爆弾、シュールストレミング缶、が紅詩と七葉から降り注ぎ。
     完・全・沈・黙。
     見事な連携で一網打尽にする【戦戦研】であった。
     ちなみに今年のプールはRB団が沸かなかった為、フォルケの占領下に置かれました。


    「作戦成功だね♪」
    「ふふ、この調子で行きましょう」
     日向・千李(d36723)と東雲・光介(d36794)は、過去の経験を基にRB団の動きを読み迎撃しながら進んでいた。かつては独り身同士で参加したこの競技、だが今は、お互いがお互いを眩しいぐらいに素敵だと思え、見え、感じ、腕に抱きつく千李も、抱きつかれた光介も、どうにもうれしさが止まらない。
     だが、2人だけの世界から現実に戻ってきた時、すでにRB団の包囲は完成しており全員が大量の花火に着火しつつ突っ込んでくる。
    『リア充は爆発だ――!』
     千李を光介が抱き寄せ。
     ドガーンッ!
     2人はかつてでは味わえなかった幸せを感じつつ……自爆爆破に巻き込まれたのだった。
     さて、コース上で給水所を開くは有城・雄哉(d31751)と松原・愛莉(d37170)。RB団達もそれに気がつき、先陣を切って同志にお菓子や飲料水を渡してくるRB団員(女性か?)の薦めで全員が口へ……。
    『にがっ! 辛っ!?』
    「RB団死すべし慈悲は無い」
     雄哉が、にこ、と口だけで笑みを作る。
    「上手くいったね~!」
     愛莉がこれ見よがしに腕を組み、雄哉の顔を引き寄せると頬にキス。
     ビキビキビキッ!
     瞬間、RB団達にしっとの炎が燃え上がる。

     一方、体育館裏の影では、神凪・朔夜(d02935)が1人で透明な糸で織り上げた網を使い罠を設置中。
    「ふぅ、他の皆は大丈夫かな?」

    「毎年恒例だけど、そろそろ懲りましょうよ」
    「って、言ってる場合じゃないよ!」
     雄哉の手を引き逃げる愛莉、涙の泉を沸かせながら追いかけてくるRB団達に、最初こそ迎撃するもキリが無くなり逃げ出したのだ。
     いい加減本気を出すか、と雄哉が思い出したその時。
    「あっ! 皆、あっちのアベックの方がイチャイチャだよ! あっちを襲撃しに行こう!」
     1人(女性か?)が指差す方向には儚げなカップルがいた。
    『美形だ』
    『殺せ!』
     先導されるよう儚げアベックへと方向転回するRB団達。
     そのアベックとは壱越・双調(d14063)と黎明寺・空凛(d12208)。
    「逃げましょうか空凛」
    「そうですね双調さん」
     手を繋ぎ体育館裏へと逃げていく2人、そして体育館の角を曲がった所で一気に草むらへダイブ。2人を追って角を曲がってくるRB団達。
    「今だ!」
     朔夜の声と共に、草むらで罠の紐を掴んだ双調と空凛も一気に紐を引く。
     ばっさ――――っ!
     一網打尽。
     RB団達が網に吊り上げられる。
    「さ、兄さんと姉さんは今のうちに」
     朔夜に促されレースへ戻る双調と空凛。
     吊られたまま騒ぐRB達だが、よく見れば1人だけ罠を逃れている同志が!
    『紐を切れ! 助けろ!』
     指名された罠を逃れたRB団は、サッとサバト頭巾を脱ぐ。
    「わーいっ引っかかったー! 残念、私は義勇軍でした!」
     それは市川・朱里(d38657)、ずっとRB団に潜り込み上手く誘導していたのだった。
     ここに来てハッと合点が行くRB団達、それはやがて怒号に変わるのだった。
     体育館裏の喧噪を離れ、琶咲・輝乃(d24803)を校舎裏へ連れてきたのは鈍・脇差(d17382)。
     当の輝乃は何だろう? と首を傾げるも、脇差は真剣な表情で意を決す。
    「琶咲……俺は、お前の事が……好きだ。友達の好きじゃない。恋人に、なってくれ」
     言った! 言い切った! 友達の好きと想われないよう予防線も張った! 完璧!
    「琶咲!」
     心の中のガッツポーズから現実に目を向けた脇差だが、そこで見たのは……。
    「(もがもがもが)」
     サバト頭巾を被され耳を塞がれた輝乃の姿。
     とソレをするモブRB団達。
    「お、お前ら――――っ!」
     大乱闘勃発。
     一方、頭巾を脱いで怒り気味に「もう、邪魔しないでよ」とプンむくれる輝乃。
     2人がカップルになるのはいつの日か……。


     最終トラックに最初に入ってきたのはスタートダッシュを決めた明日等と、片っ端から蹴って推進力に変えて来た菜々だった。
     だがその時、2人を追い抜くよう一気にまくって来る者がいた。第二集団で力を温存し機を伺っていた男――戯・久遠(d12214)。瞬間、菜々が動く。そう、ここまで来た技――蹴れる物は何でも蹴って推進力に変える――を発動させるため久遠を蹴ろうと――。
     スカッ!
     踏み台にされる事をピンポイントで警戒していた久遠は咄嗟に避ける事に成功。逆に菜々はスピードを落とす結果に。あとは明日等と一騎打ちか……と、久遠が明日等をチラと見た瞬間。
    「しまっ!?」
    「え?」
     ハッと気がつく久遠。久遠が何に気付いたか解らない明日等。
     そう、明日等の影にもう1人小柄な姿が隠れている事に気づいたのだ。
     パーンッ!
     ゴールテープが切られる。
     それは明日等の影から飛び出したアリス・ドール(d32721)だった。
     もし勝因の中で久遠との差を上げるなら、アリスはコースの下見をして事だろう。例年ならコースは荒れ下見など無意味になる所だが今年はほぼ荒れなかった為下見を活かせたのだ。
     その後、次々にゴールする面々、2位久遠、3位明日等、4位はしれっと追いすがっていた夕月。だが一番目立っていたのは……。
    「あぁ、無事完走したらって約束だったわよね」
     そう言ってさくらえにキスをするエリノアであった。


    「諸君、青春を学園生活という青春を舞台にいちゃいちゃなどというリア充は許すわけにはいかないのです! 今こそリア充を裁く時!」
     初代サバト服こと霈町・刑一(d02621)が演説をかますも、残ったRB団は刑一を含め3人。そして周囲は義勇軍に取り囲まれつつあった。
    「思えばボクが初めて参加した時はRB団じゃなかったんだよね……だけど早いものであれから5年、周りを見てみればカップルを通り越して夫婦を名乗っている人ばかり! 何の嫌がらせなのさ!」
     義勇軍を牽制しつつ柿崎・法子(d17465)が地団駄を踏む。
    「そうだ策を弄する軍師はどうしたんです?」
     黒サバト服を着られるまでになった富山・良太(d18057)が聞くも、法子が首を横に振る。
     だが。
    「策ならあります」
     声と共に3人の背後から現れる人影、それは嫉妬のパワーを纏った秋山・清美(d15451)。
    「昨日の敵は今日の友……ま、よくあること、だよね」
    「心強いですが……どうして?」
     良太の問いに清美は拳を握り、義勇軍が無駄だったと語り……。
    「それにです! 中学から高校の恋に恋するお年頃を、ずっと義勇軍なんかに費やして来たら見事に私、非リアなのですよ! もうこうなったらRB団として暴れるしかないじゃないですか!」
     力説。
     ちなみに背後には『秋山さんの配下』登の姿。
    「それで、策とは?」
     刑一に聞かれ清美は笑みを浮かべ小麦粉を取り出す。
     ………………。
    「目的は!」
     刑一が煙玉を使い煙幕を発生させると「その程度!」と義勇軍達が一斉に煙に突入。
    「リア充撲滅!」
     登と良太と清美が小麦粉を撒き散らす。
    「もう何も気にしない!」
    「結局いつも通りになるんですよね」
    「でも、こんな青春も楽しかったですよ……」
     法子が刑一より謎のボタンを受け取り。
    「それでは皆様ご唱和下さい!……合い言葉は!」
    『リア充爆発しろ!』
     謎のボタンが押されカッと光が瞬いたかと思うと、さらに小麦粉を巻き込み粉塵爆発へと昇華。

     ちゅど――――――んっ!!!

    「RB団は永遠に不滅なり―――!!!」
     こうして2018の運動会RBクロスカントリーは、フィナーレを迎えたのだった。
     おしまい。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月10日
    難度:簡単
    参加:43人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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