岩内ホッケの開き怪人ホッケを貪り食うの巻!

    作者:旅望かなた

    「はぐはぐはぐはふーはふーはふー! くーっ、マジホッケの開きうめええええ!」
     ホッケの開きがホッケの開きを貪っていた。
     何を言いたいのかと思うかもしれないが実際そうだったので仕方ない。
     トンカツは石のように硬くしか揚げられないが、ホッケの開きの焼いたのにかけては天下一品のおばちゃんも、シュールすぎる光景にドン引いていた。
    「あ、おばちゃんごちそうさまっした。会計お願いしまーす」
    「は、はいよ」
     伝票を受け取ってレジを打ち始めたおばちゃんの前に、積み上がる木箱。
     漂う磯の香り。
    「へ? アンタ、いったいどういうつもりだい!?」
     営業妨害の気配を感じとり、一気に言葉を強めるおばちゃん。
    「ふっ、これも全てホッケへの愛のなせる技……」
     ホッケの開きが薔薇を咥えたイケメンっぽいポーズで優雅に告げる。
    「ホッケの開きを喰らい、その報酬としてホッケを与えることで岩内町の経済活性化! 客が増える! 第三セクター化した鉄道もそもそも岩内まで来ないけど採算が取れて岩内まで延長! 観光客ホイホイ! 彼らにホッケの開きの良さを宣伝することで、結果的に世界はホッケの開きが支配する!」
     世界を支配するまでのプロセスが適当――もしやこれは、ご当地怪人!
    「馬鹿こくでねぇ! とっとと金さ払って二度と来んでねぇこのたくらんけ!」
     そんな超常現象にも負けずに平手でレジカウンターをぶっ叩くおばちゃん!
     みんなも悪戯した友人とかを怒る時は『このたくらんけ!』って言うと北海道気分を味わえるかもしれないぞ!
    「ふはははは我が深謀遠慮を理解できぬおばちゃんは此れでも喰らえ!」
    「ひゃん!」
     炸裂するホッケ開き手加減攻撃アタック。
     割と可愛い声を上げて吹っ飛ぶおばちゃん。
    「はーっはっはっはっはっはー! 天下はホッケの為にあるー!」
     かっこつけて去っていくホッケの開き怪人。
     かくしてそこには全治三週間のぎっくり腰を負ったおばちゃんとホッケの山が残された。
     
    「という悲劇を阻止してもらいたいんだよ!」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)がびしっと地図にペンを突きつけた。
    「……どこ?」
    「えっとー、北海道岩内郡岩内町だって。電車ないから、新千歳空港まで飛行機で行って、そこから札幌まで電車で行って、札幌でバスに乗り換えて……2時間くらい?」
     遠っ。
    「なんでそんな場所から世界征服始めるんだよ!」
    「ご当地怪人だからご当地を拠点にしなきゃ駄目じゃん!」
     そうか、ご当地なら仕方ないな。
     頷く灼滅者達。
    「ともあれ岩内町に現れたホッケの開き怪人は、まず手始めに美味しい食堂でホッケの開きを食べるそうなので」
    「ホッケの開き怪人がホッケの開き食べるんだ……」
    「またシュールな……」
     それについては否定しない、とまりんは深刻な顔で頷いた。
    「それまでにみんなにはホッケの開き的な挑発でホッケの開き怪人を誘き出してちゃちゃっと倒してほしいんだよ!」
    「どうやって!?」
     思わずツッコミを入れる灼滅者達に、にこりと笑ってまりんは食堂の割引券を取り出した。
    「たぶんホッケの開き怪人が出るより7時間くらい前に到着できるから。2回くらい食べれるよね!」
     びし、と親指を立てるまりん。
    「ちなみに北海道のホッケの開きは本州とは比較にならないレベルで超絶ほっぺたとろけるらしいから! 大丈夫!」
     何が大丈夫なんだろうと思ったけど、超絶ほっぺたとろけるホッケの開きは美味しそうなのでみんな突っ込まないでおいた。
    「とりあえずホッケの開きでびたーんとか磯の香りキックとかホッケビームとかそんな感じで要するにご当地ヒーローと同じサイキック使うから!」
     ホッケビームって何だよって思ったが、ぶっちゃけそれを訪ねると大体のご当地ヒーローが大変なことになりそうなのでみんな突っ込まないでおいた。
    「しかしホッケどれだけ美味しいんだろ……脂がのってじゅーしーでごはんと一緒に食べると激ウマって言ってたけど……あ、大丈夫、みんななら勝てる!」
     ぐっとガッツポーズと共に北海道の乗換案内を押し付けて、まりんは灼滅者達を送り出した。


    参加者
    乾・舞夢(煮っ転がし・d01269)
    一之瀬・梓(月下水晶・d02222)
    司城・銀河(タイニーミルキーウェイ・d02950)
    阿櫻・鵠湖(セリジュールスィーニュ・d03346)
    辻村・崇(真実の物語を探求する者・d04362)
    綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    リタ・エルシャラーナ(タンピン・d09755)

    ■リプレイ

    「正直、今回は観光でいいんじゃないかなっ」
     待て待て。
     乾・舞夢(煮っ転がし・d01269)さん待て待て。
    「ともあれ、今回の依頼はっ!」
     ご当地番組の如く、依頼の幕が開く。
     
     有体に言えば田舎である岩内の街を、バリバリ目立つメイド服の小学一年生。
     思わず振り向いた少年に、赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)はにこりと笑って手を振る。
    「今までも変な都市伝説を相手にしてきたが……ご当地怪人も変な奴らが多そうだな」
     綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)が肩を竦めてから、「とりあえず食べる方のホッケは楽しみだぜ」と頬を緩める。
    「勿論、おばちゃん自慢のホッケの味も下調べしとかないとだね。それはそれはよ~~~く味わって下調べしとかないとだね」
     表情を変えないままリタ・エルシャラーナ(タンピン・d09755)が、戦闘に丁度良さそうな広場を下見しつつ頷く。気合は十分だ。
     どれくらい十分かと言うと、芸人デビューして旅行グルメ番組に出演した時の予行演習用にエアマイクを持ってるくらいだ。
    「ええ、北海道からホッケが読んでいる気がしたので!」
     ぐぐぐっと司城・銀河(タイニーミルキーウェイ・d02950)が拳を握り締める。
     ホッケを食べる。心行くまで美味しく頂く。このために北海道まで来たと言っても過言ではないくらいに。
    「ああ、全ては美味いホッケの為に……ではなく、ご当地怪人討伐の為に」
     自然に歩くように見せながら、一之瀬・梓(月下水晶・d02222)は密かにぐっと拳を握る。
     縞ホッケの塩焼き大好き、熱々のご飯と食べるとさらに格別。
     そんな彼が本場のホッケを食べる機会を逃す訳がないじゃないか。
    「ああ、北海道は僕の故郷!」
     くいと鹿撃帽のつばを軽く上げ、その下から辻村・崇(真実の物語を探求する者・d04362)が瞳を輝かせる。
    「特にホッケの開きの怪人が相手なら僕は全力全開を出さざるを得ない!」
    「それにこの辺りも、米どころなのですね」
     バスの中から見た、収穫も終わった水田を思い出しながら、ふわりと優雅に阿櫻・鵠湖(セリジュールスィーニュ・d03346)が微笑む。秋田という米どころを守る鵠湖にとっては、他の米どころも米に合う名産品も守りたい宝物。
    「しかし、家と家の間が広いし、道が広いですね。戦闘には困らないでしょうが」
    「聞いたことがある! 北海道では、5キロ離れていてもノーマルお隣さんなのだと!」
     きゅぴーん、と舞夢が瞳を輝かせる。
     バスの中で目をきらきらさせて北海道の秋と(土地の)空きを堪能していたようだが……半径10kmくらいは学区内だけどさ!
     閑話休題。
    「こちらが、ご当地で噂の定食屋なんですね。創業以来、おばちゃん一人で背負った看板、今では岩内港周辺に暮らし働く皆さんの胃袋を支えているそうです。んー、焼き魚の香ばしい匂いが漂ってきます! それでは、行きましょう!」
     エアマイクを構えて前口上を述べるリタを先頭に、一同はいい香りのする定食屋に足を踏み入れたのだった。
     
    「ひっさーつ! おいしくなあれ!」
    「おっ、ハイカラだねぇ」
     ほかほかの湯気を立てるホッケに向かってびしっとヒーローっぽいポーズを決める緋色に、おばちゃんは楽しげに笑って見せた。
     実際のところESP『おいしくなあれ』を使っているのだが、もちろん一般人のおばちゃんにはわからない。
    「むむっ!」
     最初に声を上げたのは、舞夢。
    「箸を入れた途端にじゅわりと汁が染み出してくる!」
    「脂が染み出す肉厚の身、こいつは絶品だな」
     祇翠が目を細め、そっとほぐした身を口に運ぶ。ふっと目を細め、やはり、とこくり。
    「こ、これは……これが本場のホッケか……なんという、じゅーしぃぃな味わい……!」
     きらっきら輝く瞳。即座に梓はご飯に次の一切れを乗せ一緒に掻き込んだ。さらに味噌汁。幸せのひととき。
    「美味しい! これはまずふんわりと広がるホッケの香り、それにジューシーなのに脂っこくない……これに合わせるならやはりご飯ですね」
     カメラを意識した口ぶりで、リタが感動を伝える。うんうん頷いてもう一口。ご飯と一緒に。
    「あぁ……地元の皆さんの愛がぎゅっとつまった、素敵な味。内陸育ちとしては、美味しい海産物を食べると旅の幸せを噛み締めてしまうわね」
     ほっこりと頬を緩ませて、鵠湖が幸せと共に口の中でほぐれてじゅわりと脂の溶けるホッケを噛み締める。
    「やっぱり、関東のホッケとは一味違うよね」
     崇が慣れた箸使いで骨を外し、大根おろしを乗せて一口。脂たっぷりで塩を振ったホッケに、大根おろしはぴったり。
    「うん、美味しいね」
     こくりと頷いて、銀河が頬を綻ばせながら丁寧に身をほぐし、ご飯にたっぷり乗せてもう一口。食が細くても美味しいものは好きだし食べれば嬉しい。とても美味しければなおのこと。
     舞夢がにぃ、と悪い笑みを浮かべた。
    「これをほぐして大根おろしとしょーゆであつあつのご飯に混ぜて食べると、お行儀は良くないけどたまらんちんだよねっ」
     即座にホッケをほぐす!
     乗せる!(ホッケ)
     乗せる!(おろし)
     混ぜる!
     喰らう!
    「はふー!」
     必殺技を決めた顔で、舞夢はほくほく幸せいっぱいに頬をとろけさせる。
    「ふー! 一匹でお腹いっぱいになっちゃうね!」
     緋色が満腹のお腹をさする。その隣で梓が、ふぅと息を吐いて味噌汁を飲み干した。
    「次は、大根おろしもお願いしなければ……」
    「いやぁ本当だね」
     カメラから一時解放された芸人の顔で、リタがゆっくりとお茶をすする。
    「さて……あとは」
     中骨と頭しか残っていない皿の前に箸を置き、崇が帽子を被り直す。
    「お土産を買わなければいけませんね」
    「まりん先輩も食べたがってたしね!」
     そして鵠湖と舞夢の言葉に、盛大にずっこけた。

     ――もちろん、ご当地怪人も忘れてたわけじゃない。
    「炊きたての新米あきたこまちでいただきたい……」
     鵠湖がうっとりした様子で大きなホッケの袋を抱き締めたりしたが、もちろん忘れてたわけじゃない。
     
    「やはり、食べ物の価値は2回目のインプレッションで決まるな……」
     ホッケに大根おろし、それにもちろん白米を合わせて。
     先ほどよりもゆっくりと食べながら、ほうと梓が息をつく。
    「さて……そろそろか」
     その言葉とほとんど同じタイミングで。
    「失礼、おばちゃんホッケ定食を」
     からりと扉を開けて現れたのは――ホッケの開き頭の男!
    「あ、あぁ……わかったよ」
     驚きながらもとりあえず伝票を手に奥に引っ込むおばちゃん。
     ――しばし、静観する灼滅者達。
     ゆっくりと椅子に身を預けたホッケの開き怪人の元にほかほかのホッケがやってきた次の瞬間。
    「君はその衣装に頼りすぎているよ」
     戦いは、始まる。
     
    「――ほう」
     リタの言葉に、ホッケの開き怪人は箸でホッケの身をほぐしながらゆっくりと顔を向けた。
    「我が頭はホッケの開き愛の証! それを侮辱したという事はわかっているか?」
    「逆に君自身がホッケを愛しているのか伝わってこなくなってしまう」
    「……なるほど」
     ホッケの開き怪人は軽く頷いてから、ご飯に乗せたホッケ(With大根おろし)を一気に頬張った。
    「はぁホッケうめぇ……! なまらうめえ……!」
     灼滅者達を無視してホッケの幸せに浸るホッケの開き怪人の前に、突き出される皿。
     見れば――ここにもホッケの開きが載っているではないか!
    「お前はホッケのおいしさの本当の意味を知らない!」
     ずびし。
     皿と共に指を突きつける緋色。
    「このホッケの開きとおばちゃんのホッケの開き……食べ比べてみるがいい!」
    「その挑戦乗ってやろうではないか!」
     ホッケの開き怪人は、そそくさと緋色のホッケの開きに箸をつける。
     丁寧に身をほぐしてご飯の上に乗せ、大根おろしを乗せておもむろに頬張る。
     そして――ホッケの開き怪人は箸を置き、やれやれと言ったように肩をすくめた。
    「うむ。この勝負、どうやらおばちゃんの勝ちのようだな」
    「何ぃ!? AKIBA式に負けはないはず……!」
     ふ、とホッケの開き怪人が、驚愕する緋色に笑みを浮かべて「食べてみたまえ」と皿を差し出し返す。
     ばしりと受け取って一口食べた緋色は、次の瞬間愕然と呟いた。
    「おばちゃんの方が……美味しい……」
     ESP『おいしくなあれ』。どんな食事でも、むしろ美味しくなくても『美味しくする』裏ワザである。
     けれど。
    「ホッケの開きは普通に焼いても美味しい。それが北海道のホッケであれば尚更――だが、この道数十年の現地のおばちゃんが丁寧に焼いたホッケには敵わん」
     そう、『美味しくする』は『元から非常に美味しい』には及ばない。
    「超能力であるESPは、万能――しかし万能であるがゆえに」
     後ろでホッケ三昧しながらくいと梓が眼鏡を上げる。
    「この道数十年のおばちゃんのホッケ愛には敵わなかったということか!」
     舞夢がさらにグルメ漫画度を加速させて後ろでうんうん頷く。
    「――では」
     皮までしっかり食べ終わったホッケの開き怪人に、リタは静かに口を開いた。
    「美味いホッケを食べさせてやるから真のリアクションを見せてもらいたいものだな」
    「このおばちゃんのホッケを知った上での挑発かい?」
    「ああ」
     しっかり食後のお茶まで飲み干した梓が、『ごちそうさま』と声をかけてから席を立ち、ホッケの開き怪人に背を向けた。
    「一味違った美味いホッケを教えてやる。来い」
    「……面白れぇ!」
     ホッケの開き怪人は勢いよく席を立って楽しげに言った。
     
    「――む。炭火焼か……」
     店を出てしばし誘導されたホッケの開き怪人は、そう呟いて鼻らしき場所をひくつかせる。
    「私は開きよりみりん干し派なのだけれど……」
     そう鵠湖の呟きが聞こえた途端、勢いよくホッケの開き怪人が振り向く。
    「それは、一つの真理――だが! 我がホッケの開き怪人である以上、お主は敵対者!」
    「その頭をしてる割には無知な奴だ……」
     ふっと聞こえた笑い声に、がばりと再び振り向くホッケ怪人。
     うちわを持った祇翠がニヤリと笑う。
    「ホッケの開きのおいしさの秘訣、それがなんだかわかるか!」
     さらにその反対側から姿を現したのは、崇。
    「ふ、笑止。それはホッケを干す事によってヒスタミンが発生し……」
    「それはホッケの開きを作る人の愛だ」
     崇の言葉に、得意げに話していたホッケの開き怪人が息を呑む。
    「彼らはこのホッケの開きを食べて皆がただただ美味しいと、幸せな気持ちになる事を願って作っているんだ。それを世界征服に使おうなんて片腹痛い!」
    「なっ――!」
     絶句し、がくりと手と膝をつくホッケの開き怪人。
    「そう……そうだ。ホッケは人の手が加わってこそ、美味しい……干すのも、みりんも、焼くのも!」
     そう叫ぶホッケの開き怪人に、くいと祇翠が親指で招いた。
    「……来な。俺達がホッケってのを教えてやるよ」
     
     ぱたぱた。
    「美味しそう……」
     銀河がうちわで一生懸命ホッケのいい香りを送る。
     脂がじゅーしー皮がぱりぱり、非常においしそうである。
    「きゅーん……」
     一緒にうちわをはためかせる鵠湖の傍らで、霊犬の梵ちゃんが物欲しそうにホッケを見つめていた。
     
     そして。
    「ふと考えたんだが、世界征服したらホッケを世界中に食べてもらえて解決じゃね!?」
     やっぱり怪人は怪人だったので一同は心置きなく武器を構えた。
    「世に怪人あらばヒーローの存在もまた必然……紅焔の闘志を胸に風雲参上!」
    「ひっかかったなご当地怪人。その野望、この場で断ち切ってやる」
     華麗にポーズを決める祇翠と梓。ちょっとくらいノリがないと可哀想だから!
    「……それ、悪役っぽくないか?」
    「…………」
     沈黙する一同。
    「多分行ける行ける! ほら野望阻止ってあたりがヒーロー!」
     巨大なバスターライフルからビームをどっかんどっかん撃ちながら、銀河が急いでフォローを入れる。
    「ええいホイホイ釣られたなホッケ怪人め! やろうどもやっちまえー!」
     緋色さんそれ悪役フラグー!
     小江戸ビームでもやっぱり悪役フラグー!
    「うん、いこっか梵ちゃん」
     くすと笑顔を浮かべて梵ちゃんと共に射撃体勢を取る鵠湖。花火型のリングスラッシャーと正義の六文銭が、華麗に輪を描いて飛んで行く。
    「行くよ相方。出番だ」
     そうリタが声をかければ、彼女のビハインドが即座に頷きポーズを決める。――からの戦神降臨の静と霊撃の動がコラボレーション!
    「ホッケ怪人! 貴様はホッケに何を付けて食べる!」
    「決まっておろう!」
     予言者の瞳を使った崇と、制約の弾丸とホッケビームの撃ち合いをしながら、ホッケの開き怪人が胸を張る。
    「塩! 醤油! 大根おろし! だが焼く段階でちゃんと塩を振ってあればいっそ大根おろしオンリィでも構わん!」
     がし。
     戦いの中、一つの友情が大小二つの掌と共に結ばれた瞬間だった。
    「脂のりすぎたほっけでひっぱたかれるのは嫌だなー、でも、ほっけまんなんかにおびえるのも嫌だなー」
     その後方では舞夢が贅沢な悩みを繰り広げていた。
     心配しなくても後衛だから大丈夫。ちなみに回復もさりげなくぽこぽこシールドリングを飛ばしてるから大丈夫。
    「鉄拳制裁でやられる怪人ってのはどうだい? 吹き飛びな、三下野郎」
     紅蓮のオーラを宿した祇翠が、そう言いながら拳をぶち込めば。
    「産地直送冷凍ホッケにしてくれる!」
     梓が時々氷を交えながら制約の弾丸を連射する。時々マジックミサイルも飛んで行く。
     反対側から霊犬のフォルンが刀をざっしゅざっしゅ。
    「いっとうりょうだーん!」
     勢いよく緋色が戦艦斬りを叩き込んでから、反対の手の杖から魔力を流し込もうと大きく振り回す。
     リタの相方がそこにニィとホッケの開き怪人にだけ素顔を見せる。と思いきや、リタがツッコミを入れるように怪人だけ華麗に叩き斬る。
     さらに巨大武器の遠心力を付けて、影の力まで宿して銀河が思いっきりぶん殴る。
    「ホッケの開きパワーで沈め!」
     そこに好敵手(とも)の崇からマジックミサイル!
     緋色がさらに「ひっさーつ!」と威勢よく仲間を回復!
    「派手に空中爆散ってのは怪人の散り際美学だよな……」
     さらに素早く踏み込んだ祇翠が、すれ違いざまに勢いよく怪人を引っ掴み。
    「お膳立ては俺がしてやるぜ」
     危険な角度で投げつける!
     投げた先には鵠湖の姿!
    「岩内ホッケ――ダイナミック!」
     爆☆散!
    「過疎化地域でもいいじゃない漁村だもの――!」
     叫びと共にホッケの開き怪人はお星様になった。

    「北海道の海の幸はホッケだけじゃないよ!」
     早速彼らが北海道の味めぐりをしたのはもちろんのこと。
     だが。
    「……100キロは想定内だが……高低差260メートルは想定外……だった……!」
     バスではなく自分の足で走った祇翠が結局小樽のアップダウンで敗退し、終電に滑り込んだのはまた別のお話ということで。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
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