魔法使いと小さな魔法

    作者:日暮ひかり

    ●intermezzo
    「こんにちは! 今日は皆さんをお誘いしたい場所があるんですけど……」
     今日、6月12日はイヴ・エルフィンストーン(大学生魔法使い・dn0012)の誕生日らしい。例年学園の仲間たちと楽しく過ごせるこの日を楽しみにしているのだというイヴは、馴染みの友人たちや学園で見かけた灼滅者たちに声をかけ、ある場所へ向かった。
     大通りから一本、路地へ入った先。閑静な住宅街の中にひっそりと佇むその店は、まるで魔女の隠れ家のようだった。かわいらしい木製の窓から店内を覗きこめば、ちいさな星のようにきらきらと輝くものたちが、棚や机にきれいに陳列され、並んでいるのが見えた。
    「……天然石のアクセサリーショップ? へー、こんな所にあったんだ。なんか良さげじゃん」
    「うふふ。そうなんです、最近できたお店みたいなんですよ。哀川さんならこの素敵さをわかってくださると思いました!」
     固い握手を交わさんばかりに頷きあっているイヴと哀川・龍(降り龍・dn0196)に挟まれた鷹神・豊(エクスブレイン・dn0052)は、例の如くピンとこない顔をしている。
    「君達はあれか……石マニア仲間だったのか? もうそれなりに長い付き合いになるがそれは知らなかったな……」
    「ただの石ではないんです。これはパワーストーンっていって、お願い事を叶えてくれる石なんです。占いでも、開運アイテムとしても有名なんですよ!」

     古来より特別な力があると信じられてきたパワーストーン。
     身につけていれば、石にこめられた力により願いが叶うとされ、占星術とも関わりが深いアイテムなのだそうだ。
    「ガーネット、アメジスト、アクアマリン……などの石は誕生石っていって、特に有名ですよね。そのほかにも本当にたくさんの石があるんです。ひとつひとつ、こめられた力が違うんですよ。恋愛運、金運、魔除け……いろいろなご利益があるんです。ね、良かったら一緒にお買い物しましょうよ」
     店内にはたくさんのパワーストーンが並び、説明も書いてあるようだ。
     誕生日や星座にちなんだものを選んでみるのもいいし、いま叶えたい願いから石を探してみるのもいい。あるいは、色や形が気に入ったものを選んでみるのも運命って感じでロマンティックですよね、とイヴは言う。
     パワーストーンはブレスレットやネックレス、指輪、イヤリング、キーホルダーなどの身につけやすいアイテムに加工されている。店内をよく探せばその他の変わり種もあるかもしれない。
    「これから、大変な戦いが始まりますけど……イヴは大好きな皆さんと一緒に、素敵な未来に行きたいなって思います。だから、未来に願いを託してみませんか」
     本当はちょっぴり怖い気持ちもあるんです、とイヴは言う。
     けれどこの学園で、中学一年生から築いてきたたくさんの絆や楽しい想い出が、彼女に苦手な争いへと立ち向かう強さをくれたのだ。
    「そうそう、イヴももう大学生になったんですよ? 女子大生です!」
     周りからええっ、と声が上がり、イヴはくすくすと笑う。
    「変わらないものはずっと大切に。そして、今日より少しでも良いほうへ変われるように。これからも一緒に頑張りましょうね!」

     ――さあ、魔法にかかりに行きましょう!
     魔法使いが扉を開ける。その先にはきっと、素敵な明日が待っているはず。


    ■リプレイ

     みなそれぞれに抱く想いがあり、石に宿る力へ願いを託す。
    「イヴさんはどんなアクセサリーが好みですか?」
     尊敬するイヴさんとお揃いのものをプレゼントにしたくてと、すっかり成長した水織はややイヴを見下ろしながら尋ねた。
    「水織さんは何でも大丈夫ですか?」
    「ピアスとか穴を開けるのはちょっと……中学生だし」
    「ではブローチはどうでしょう。好きな所につけられますよ!」
     水織が選んだイヴの誕生石のパールと、魚座の守護石ブルームーンストーンを少し大人びたブローチに加工してもらう。魔法使い達がいつか大人になっても、大切に使えるように。

    「パワーストーンって、きらきら、ぴかぴかしていてとっても綺麗なのです」
     どれにしようか目移りするチセの様子にイヴは微笑む。石の海の中でふと目に入ったのは、綺麗な青のひとしずく。空から落ちてきたドロップみたい――チセの手に掬いあげられた青いアパタイトは、ストラップの先できらきら揺れた。
     ――あ、この子がいいな。
     直感力や魔法力を高め、心の成長を促してくれるアパタイトは、魔法使いにぴったりの石。
    「お迎え決定なのです」
    「ふふ、チセさんのおめめもピカピカです」
     心が成長すれば、自ずと力も強くなる筈。きっと、運命を切り拓く力になってくれる。

     迷わず歩いていく愛を追い、【クマムシ】の面々は恋愛運コーナーへ。こういった店に縁遠い人狼達はそわそわ落ち着かない様子だ。
    「あまりキョロキョロするとキョドってるみたいになるだろ。落ち着けお前たち」
     そう言うくもりの目が一番泳いでいるのはさて置き。
    「恋愛運も結婚運も同じようなものだと思っていたけど、別なのね。見て、子宝や安産もあるわ。こっちの方がいいかしら」
    「俺達への配慮なのか?」
    「はいはい老い先短い人狼ですよー。大事にしてねー、あはは」
    「短くねぇーーよ、まだイケるわ」
     愛とくもりの軽口に笑いながら、静は見慣れない石達の匂いを嗅いでは首を傾げる。匂いには大差ないが、そんなに違うのか。弥鈴はというと理想があるらしく、どちらが良いか真剣に考えていた。
    「でも恋愛してから結婚はしたいからやっぱり恋愛運?」
    「まあ相手も必要よね……そもそもあなたたち好きな人は?」
    「居るって言うか居たって言うか……僕がまごまごしてる内に超疎遠になっちゃったよ、あはは」
    「いるよ。でも、居ても居なくても手が届かないなら一緒だろ」
    「……そう。じゃあ皆殆ど失恋済みみたいなものね」
     恋愛に効くというローズクォーツを光に透かして、愛がぽつりと零す。死にたくなってきた、と静。失っちゃいないさ、と呟きながら、くもりは愛の選んだイヤリングを弥鈴の耳に翳してみる。
     桃色の石が映える瞳を輝かせ、弥鈴は言った。
    「好きな人……今はいないの。頼りがいがあって逞しいサモエドみたいな人が急に現れないかな」
     犬。
     女ってホント分からん、と男達は顔を見合わせる。
    「その……見つけたら逃がさないように頑張ってね」
    「やめとけやめとけ、ガチ犬だろ。それより見ろこの首輪……」
     一転和んだ空気の中、四人は各々気に入った石を選び取る。
    「イヤリング可愛いね。私これにするの。こっちのピンクトルマリンって石も綺麗、愛の目の色に似てるし」
    「ブレスレット……そうね、小ぶりの石が素敵」
    「僕もブレスレットくらいなら……どうだろ、変じゃない?」
    「ウンウン、いんじゃない? どうでも。俺はアメジストのピアスにすっかな」
     情熱的なインカローズは静くんにぴったりと、愛は説明を見ながら微笑む。くもりの選んだアメジストは――真実の愛。
    「真実かァ」
     瞳を細めるくもり。近い色合いでも、四人の個性を映した石はどれも違って素敵に見える。皆ご利益あるといいね、と弥鈴が笑った。

     隣りの彼をふと見れば、随分熱心に石の解説を読んでいるようだ。いつものように彼を飾るごつごつとしたアクセサリ。詳しくないと言っていたが、興味があるのだろう。
    「御伽さんは好きな石とか、あるの?」
    「好きな色は黒とか、かな」
     見知った石をひとつ、指先で摘まむ。近い色の石を拾って光に透かせば、わずかな違いに気づいたり。聞き慣れないカタカナの名前もみな、茅花の好奇心を誘う。
     その様子に御伽は口元を緩ませた。自由に彷徨う彼女の白い指が、ある所でぴたりと止まる。
    「これがいい。贈り合いっこしよう?」
    「へぇ、じゃあ加工してもらってストラップにするか」
     石は選べるようだが、色はもう決めてある。茅花の好きな淡い紫の石がいい。籠める意味を考えていたら、ふいに裾を掴まれた。
    「ねえ、私。御伽さんの色がいい」
     ぱちりと瞬いた御伽の蒼い瞳を、茅花がまっすぐ覗いてくる。
     あぁ、なるほどとその眼で理解した。
    「茅花さん、ホント俺の目好きだよなぁ」
     照れたようにけらりと笑う彼の顔を見て、茅花もまた嬉しそうに笑む。
    「じゃあ俺にも茅花さんの色をくれよ」
     どうせなら君の魔法にかかりたい。縹の青と灰紫色、二つの魔法にかけられて。

     占い館で働く煌介と、趣味で占いをなすリヤン。今春兄妹と判明したばかりだが、二人とも石には詳しく話は弾む。
    「リヤンが見てるのは……庭園水晶、すね。この石が好きな人は本当に石好き、って、その筋の人が言ってた」
    「ガーデンクォーツ……いろんな風景を感じられて、好きよ。この雫型ペンダントの石の中は、慈雨注ぐ森に薔薇が咲いて……奥にユニコーンが居るの……」
     聞き入る煌介の表情は動かなくても、優しさも、楽しさも伝わっている。
     リヤンの語る詩のような風景は煌介には見えない。けれどそんな事たちこそ、きっとダークネス不要の小さな魔法。
    「……それ、贈らせて?」
     先日共に冒険を頑張った証、と煌介は言う。
     それに――天涯孤独の俺に血の繋がりを紡いでくれて、沁みるほど嬉しいから。
     同じ事を考えていたリアンも嬉しくなる。半分だけでも、あなたと同じ絆――大切な想いは自然と言葉になり、溢れだす。
    「有難う、煌介兄さん」
     不意打ちの『兄さん』に煌介は咳こんだ。綺麗に包んでもらった贈り物を胸に抱き、こちらを眺めて優しく微笑むリアンと目があう。その微笑を瞳で受け、煌介は目を細めた。
     何だかくすぐったくて……でも、幸せだ。

     エアンと百花、【新婚さん!】な二人は連れ立って店内へ。
     鉱石には詳しくないが、彼女の好みならよく知っている。鉱石でいっぱいのここはいかにも百花の好きそうな空間だ。エアンは微笑ましくなり、ゆるりと並ぶ品物を見回す。
    「あったv えあんさん、手首を貸して?」
     ガラスケースの中に彼女は何を見つけたのだろう。望むまま手を差し出せば、手首に何か巻かれた。
     群青の夜空に、金色の星粒が天の川のように煌めく瑠璃の石。少し大きめのオーバルを、マクラメで美しく編み上げたブレスレット。
    「……これは」
     来たる戦いに向け大切な彼に贈りたかった、最強の護り石――ラピスラズリ。
     ブレスレットの上からそっと手を重ね、強く強く願いを込める。
    「戦場で離れていても、ももの代わりに……えあんさんを護ってくれますように」
     その白く細い手から、想いと願いが伝わる。
     ほんの少しでも、たくさん、彼へ幸運を。
    「……そうか、俺の事を考えてくれていたのか。ありがとう、嬉しいよ、」
     もも。
     愛しい君。名前を呼ぶだけでは足りないから、俺も君に何か返したい。
     選んだのは涙型のアメジスト。このイヤリングが耳元で揺れたら、誰より似合う筈だから。

     買い物デートに来たニコと未知は並んで誕生石を眺める。ニコの誕生石のルビーは、古代より『勝利を呼ぶ石』と言われるらしい。
    「此れからも様々な困難が待ち受けていると思うが、何事にも打ち勝っていけるよう、此の石の力を拝借したく思うのだ」
    「前にも増して強い奴と戦うことが増えてきたもんな……とは言えどの戦いも絶対負けられないから、このルビー様に是非とも勝利を呼んでもらおうぜ」
     手に取ったペンダントをニコの首元に翳し、未知はこれ似合うじゃんと笑う。トレードマークの赤い衣装にイメージぴったり、彼自身も気に入ったようだ。
     お礼に未知にも誕生石の贈り物を、と表を見てみる。
    「……ダイヤモンドか」
     一瞬表情が固まる二人だが、財布の心配は不要、だそうだ。お言葉に甘えて未知が選んだのは、ダイヤの指輪。
    「これをニコさんから俺の左手の薬指にはめてほしいなーなんて……」
    「……何!? 其れはつまりそういう事になるが、本当に良いのか!?」
    「そ、そういうつもりで言ったんだよ!!」
     何度も訊き返され、未知はだんだん恥ずかしくなってきた。固い絆を結ぶと言われるダイヤモンド。二人ならきっと、どんな戦いにも立ち向かえるだろう。

    「綺麗だなあ。自然の中で作られたなんてすごいね! 室本さん、これなんてどうかなあ?」
    「穂純ちゃん、その石綺麗なの」
     色が違うだけで皆同じに見える、等と口に出してはいけない。【リトルエデン】女子達の清いオーラに圧倒された峻と鷹神は店の隅に追いやられていた。
    「あっ哀川さん、このラピスラズリ、最強の幸運をもたらす聖なる石だって!」
    「しかも12月の誕生石か。色も渋くていいじゃん」
    「ね! お揃いのキーホルダー買おうよ!」
    「この兎のやつ可愛くない?」
     すんなり馴染める龍に二人が若干心の距離を感じる瞬間である。
    「だが想いを込めると力が生じるのは解る。こうして選ぶ段階でも気持ちを詰め込んでる訳だしな」
    「効力云々よりそこに籠めた送り主の想いが大事……か。成程、有りかもしれん」
    「あ、あの峻さん達、顔色が悪いけど大丈夫?」
     香乃果がまだいつぞやの玩具の指輪をつけているのを見て、峻はエンジェライトの首飾りを買ってあげた。籠めた想いが持つ者の支えになるなら、多少の出費も構うまい。
     そんな一幕もありつつ、皆で相談して選んだ石をイヴにサプライズプレゼント。
    「今日のイヴさんはジェムストーンプリンセスさん!」
    「6回目だな、感慨深い。俺一人で選ぶより遥かにセンスが良い品だぞ」
     夢や目標や自分らしさへ導くアイオライトは、角度によって3色に色が変わる石だ。香乃果と峻と穂純、3人から1色ずつの贈り物。
    「これからもイヴさんが笑顔であります様に、皆で願いを込めて……」
     誕生日おめでとうと皆に祝福され、イヴは早速つけたチェーンブレスレットを幸せそうに眺める。
    「これからの戦いはどうなるんだろうね」
    「ふふ、でもこれがあればどんな辛い時も頑張れちゃう気がします。大切なお友達の皆さんがいつでも一緒に居て下さいますから!」
     買ったキーホルダーを手に、穂純はうん、と頷く。
     目の前にはいつも未来しかない。皆で力を合わせ、明るい未来を作るのだ。

    「ね。イヴちゃんはどっちが好き?」
    「こっちですね!」
     宝石箱のような店内で見つけたのは、可愛い翡翠の薔薇のペンダント。了解っ、と笑い、ひよりはイヴにラベンダー色の方をプレゼント。もう一つの淡い翠は自分用に。今年もお揃いですね、とイヴは笑う。
    「魔除けと成功の石なんだって。イヴちゃんと、大好きな人みんなの素敵な未来のために助けになれたら良いなって」
     願うは大好きな人たちの幸せ。みんなの笑顔が、わたしを幸せにしてくれるから。
    「イヴちゃんもね、わたしの大好きな人だよ!」
    「えへへ……イヴも、大好きなひよりさんがずっと笑顔でいてほしいです!」

    「イヴがJDとかヤバくね? そう考えると俺等マジもうオッサンだよな」
    「大学生になってまた一段とキレイなったイヴたんも、俺らが今年卒業を控えてて社会に出るっていう現実も、5年という月日の流れも何もかもヤバいわ」
    「ええっ。嬉しいですけど、まだ老けるには早すぎます……!」
     慌てるイヴを間に挟み、錠と葉は普段のように軽口を交わす。昨年二人が骨董市で購入したハットピンをイヴが今日もつけているのを見て、葉は嬉しさにほんのり口許を緩ませた。野郎二人、少々場違いでもこうして一緒にアクセを見繕っていると、イヴも花の女子大生と実感する。
    「アイオライトにはヴァイキングが太陽に翳して、羅針盤代わりにして使ったって伝説があってよ。ひょっとしたら、黄金色の道標が視えるかも!」
     葉が選んだフローライトもお前らしいな、と錠は笑う。
     例え明日が来なくとも、これが最後の誕生日になったとしても。
    「誕生日おめでとう」
     その笑顔にありったけの魔法を込め、二人はイヴにプレゼントを渡す。大好きなお前らに、最高の今日が訪れることだけ願って。
    「来年も再来年も遊んで下さいね! お二人はずーっと、イヴの憧れのお兄さん達です」
     菫青石と蛍石、両耳に違う石のイヤリングが揺れる。似合いますか、とイヴは照れ笑いした。

    「こんなにたくさんあって、街に巨人があふれないでしょうか」
     壮大な誤解を解きつつ、イヴはミリアと一緒に人避けの石を探してみる。
    「縁結びならあるんですが」
    「しょうがないので、勉強運で願掛けです……」
     イヴさんが英語のカンニング手伝ってくれますように、と聞こえイヴは慌てた。
    「あと、こっちはイヴさんの分です……」
     願い事が叶いますように。声に出さずとも、祈りを込めて。人見知りな彼女の小さな勇気はイヴをいつだって笑顔にさせる。
    「卒業してもずっとお友達ですよ、ミリアさん!」
     ドライフルーツを埋めた手作りクッキーも、イヴの大切な宝石の一つだ。

     敬厳の誕生日、7月11日の誕生石は『持ち主を最良の方角へ導く』アイオライトと『勝利』を呼ぶルビー。これからの戦いの力になりそうだと気に入った敬厳はペンダントを作ってもらう。
     刀を思わせる細長いアイオライトをペンダントトップにし、革の紐の両端に小さなルビーを嵌める。刀のデザインは蜂さんの鎧にぴったりとイヴも絶賛だ。
    「そう言えばイヴさんは天文学部に進学されたんですね」
    「はい。占いと星は関わりが深いですから」
     それにロマンチックですよね、との言葉に敬厳も頷いて。
    「今度、星の話を聞かせてくださいね」
    「ふふ。では、また一緒に星を見ながら」

     綺麗な物は嫌いじゃないが、つい戦闘の事を気にしてしまう。邪魔にならないからとピアスを見る仙に付き合いつつ、君は案外俺と似た所があるよなと鷹神は言う。
    「彼女は魔法に掛かりに行こうって言ってたけど、鷹神さんは現実に居るって言いそう」
    「イヴ君の中でも俺は騎士らしいからな。現実と戦う人間なんだろ」
     自分は面倒がりだから解けない魔法を掛けるかなと笑い、仙は身代わりの石という立方体のヘマタイトのピアスを手にした。
    「餞別だ。俺が買おう」
     魔法は使えないが、と鷹神は勝気に笑い返す。
    「うん。ちょっと出掛けてくるよ。その間の学園は君たちに任せるね」

     真剣な顔で誕生石を眺める陽桜とコルトを見てイヴは声を掛ける。6月12日の誕生石はシリトンとムーンストーンだそうだ。
    「大学生おめでとう。ちょっとうらやましいわ」
    「シリトンは『黄金の種をまく石』なのだそうです。大学生なイヴさんにぴったりなのです♪」
     チャンスを引き寄せるシリトン、絆を深めてくれるアクアマリン。どちらにするか、両方買うか。陽桜は悩んでいる様子。
    「陽桜さんの誕生石ですか?」
    「えと、これね、プレゼントしたいなぁって」
     大切な人の誕生石だから、と陽桜は少し照れたように笑む。
    「イヴ応援しちゃいます! お揃いのデザインで買って、片方は陽桜さんがお守りにするなんていうのは?」
    「私もお勧めが知りたいわ。宝石に閉じ込めて宝物にしちゃいたいくらい、硬い愛を確かめられるようなの」
     今度式を挙げるつもりの人がいるのと、二人の誕生石ペリドットのブローチを受け取るコルトをイヴと陽桜は憧れの目で見つつ祝福する。
    「結婚記念なら思いきってダイヤモンドも良いかもしれませんね!」
    「加工……えっキーホルダーに出来るの? じゃあ私とかイヴとか彼の、手のひらサイズの宝石フィギュアなんて加工できるかしら!」
    「ええっ」
     それって一体幾らするんだろう、とイヴと陽桜は思わず顔を見合わせる。
    「イヴちゃん誕生日おめでとう! いつも学園祭競技に参加してくれてありがとう」
    「こちらこそ! 昨年はパフォーマンス賞まで有難うございましたっ」
     そこにやってきた【Fly High】のアメリア。部員の誕生石を探しているのだという。企みに乗ってみないと誘われついていくと、シャオが黒い布の上に石を並べていた。
    「あっ、イヴさん、おめでとう……。あの……よければ、手伝ってほしいな……?」
     そこに広がっていたのは小さな宇宙。月に見立てたムーンストーンの周りに、色とりどりの石の星が輝いている。
    「こうしたら星空みたいにならないかなって!」
    「石言葉から、色々見繕ってみたの……皆の希望の星なの」
     赤いカーネリアン、アンバー、リビアングラス。
     青も緑も、皆前向きな力を持つ石の星が、黒い世界を優しく照らしている。
    「学園の廊下とかに張り出して、皆の誕生石を張って、学園全員がパワーストーンの恩恵に預かる……ふふ、どう? 楽しそうじゃない?」
    「素敵です! イヴにもぜひ手伝わせて下さい」
     周りの皆にも声をかけ、イヴが最後に調和をもたらすクリスタルを添える。出来栄えにシャオもご満悦だ。
    「うん、とっても綺麗……」
     小さな魔法が集まり、大魔法になる。魔法使いと仲間達の願いは、きっと未来へ届くだろう。

    作者:日暮ひかり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年6月27日
    難度:簡単
    参加:27人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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