教室に駆け込んだくるみは、手にしたチラシを高らかに掲げると宣言した。
「今年も! 皆で! 花火大会! 行きたい!」
「例年の、屋上バーベキューですか。いいですね」
チラシを受け取った葵は、日時を確認すると頷いた。
例年通り開催される花火大会は、屋台が数多く出る大規模なものだ。
普通ならば場所取りの問題等もあるが、会場近くの雑居ビルの屋上をまた借りられるのならばその点はクリアできる。
皆でバーベキューを楽しんで、打ち上がる花火を見るのはとても楽しい会になるだろう。
「あそこは本当に、花火が見やすくていい場所ですからね」
「ええやろええやろ! あそこはうちのお気に入りやねん!」
両手を挙げて喜んだくるみは、時計を見上げると焦った声を上げた。
「あかん! うち、今日は皆で浴衣を買いに行くて約束しとったんや! せっかくやし、新しい浴衣を買うねん! どんな柄にしようかなー?」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
「何言うてはるん? 葵はんも行くんや!」
びしっと指を突きつけるくるみに、葵は目を丸くした。
「僕ですか? 僕は別にこのままでも。大して変わりませんし……」
「浴衣と着物は別物やろ? ほら、行くで!」
葵の手を取ったくるみは、踊り出しそうな勢いで走り出した。
「ここの花火大会に来るのは初めてだけど、凄い盛り上がっていて楽しそう」
「やっぱり、盛り上がってるのは色々と落ち着いたからかな?」
どこか遠い目のロベリアの赤い浴衣を、透流は元気づけるように軽く叩く。
人混みの中、二人は新しい世界に想いを馳せる。やがて顔を上げたロベリアは、吹っ切れたように顔を上げた。
「まあ、考えることも多いけど、こうやって友達と色んな事を楽しむ時間さえあれば、そうそう闇堕ちもないだろうしね」
「そうそう。私たちも平和をこれからはもっと楽しまなくっちゃ……!」
微笑いあった二人は、雑居ビルへと急いだ。
キィンと一緒に射的を堪能したルティカは、奢りのタコ焼きを口に運んだ。
「以前の祭りでもタコ焼きを喰うたが、在れは七夕じゃったな」
「あの時お前が短冊に書いた平和とは、こういうことなんだろう。そういう意味で叶ったんじゃないか?」
キィンの言葉に、ルティカは頷く。
「確かに、かように楽しめるのは平和な証じゃな。……其う云えば木嶋殿は短冊に何を書いたのだ?」
「オレの短冊はやっぱ真っ白なんで。必要な人間に託すことにした」
「……成程の。木嶋殿らしいと云えばらしいかの」
頷くルティカの耳に、花火の音が響いた。
水鳥が焼いてくれた肉を頬張ったマサムネは、思わず快哉の声を上げた。
「うんまーい!」
(「でも女の子の美味しい顔の方が、オレ的には美味しいかなって」)
ホタテの串を頬張る水鳥は、美味しさにぷるぷる震えている。
「うんんんん……これ、すごく……すごくいいよ……っ! マサムネさんも、一口……?」
差し出される串を頬張ったマサムネは、ホタテの甘みに目を細めた。
「ホタテもジューシーでいいよな」
嬉しそうな水鳥の横顔に、マサムネは二人と一匹の将来を想う。
「オレは水鳥を幸せにするぞ。幸せになろうな」
マサムネの告白に、水鳥は頬を染めた。
「急に食材用意しろっつうから何かと思えばバーベキューかよ」
言いながらもいそいそと焼き始める要心に、深夜は皿と箸と串を配って回った。
「タレは普通の市販のと、ボク特製ハーブタレがあるので、お好みで選んでね?」
「冷たい飲み物を用意してきましたよ~」
よく冷えたビンや缶を全員に配るパメラに、モーリスは嬉しそうに微笑む。
「ヤー、コウも賑やかなのは懐かしいデスネ」
「まぁ平和になった証拠かね」
あっという間に空になった鉄板に、モーリスは串刺しのぐるぐるソーセージを掲げた。
「ヤハハ、ソーセージを焼くのデース! その名も『見てターノシー食べてオイシー、ソーセージ・マルメターノ』デース!!!」
「イタダキマース!」
早速手を伸ばすファムに負けじと肉に手を伸ばすリュータ。
肉の取り合いを繰り広げる二人に、深夜はリュータの皿に野菜を乗せにかかる。
「りゅーたは肉ばっかりじゃなくて、野菜も食べなさい野菜も」
「リューさんとか、妖精さんや椛さんには、これ!」
ファム特製の肉尽くし串を皿に盛られた深夜は、戸惑いながらファムを振り返った。
「ふぁむ、気持ちは嬉しいんだけど、ボク、野菜が食べたいかなーって。お肉も美味しいんだけどね?」
どんどん盛られる肉類に、深夜は諦めムードで微笑んだ。
「あの……はい、お肉食べます」
「口直しにシャーベット作ってあげる。ほら、柚シャーベットとかいかがかしら?」
コルトは熟知した氷の魔法で作り上げたシャーベットを差し出すと、深夜はホッとしたように口に運んだ。
「ありがと、こると」
「コルトさん、あーん」
「え? 何? パメラんぐっ」
パメラが差し出す、よく焼けた串を頬張ったコルトは肉を噛み締めた。
「ふぁ……ちょっと、あふい……でもおいひ……お返しよ!」
「甘くておいひいです」
コルトからのお返しの一匙を口にしたパメラは、冷たい甘味に微笑んだ。
「わが眷属も美味しいって言ってるわ!」
髪の蛇に手を添えたコルトは、嬉しそうに微笑んだ。
紙食器類を魔法のように綺麗なものと入れ替えるパメラは、リュータに笑顔を向けた。
「リュータ、ステキな夜会に、お誘いありがとう」
「またみんなで見れるといいなーっ」
要心とじゃれていたファムの耳に、花火の音が響いた。
「スゴイ、綺麗……ミンナ、またこよーねー?」
「んじゃ締めはチャーハンでいいよな」
脂の染み込んだ鉄板で作られるチャーハンに、全員歓声を上げた。
狩ってきた猪や熊、鹿、雉の肉や天然ものの鮎、山女魚、鰻等の川魚、自家栽培の野菜、自己製作の竹炭に、鉄串。
準備を万端に整え黙々と焼く貫二に、玉は持参した食材を調理台に置いた。
「祝いを兼ねた場で主役ばかり働かせるのも難だし、焼く側に回ろうか」
手慣れた様子で調理を始める玉に、小梅が駆け寄った。
「肉を食いに来たぞー! 飲み物しまったし、これでアタシの任務完了? いや、手際良い奴が揃ってるから正直出番がね……。一部ガチだし」
苦笑いを零した小梅は、ガチ勢の一人の丞を振り返った。
「少し大きめの肉を焼けるのはバーベキューの醍醐味ですね」
肉を大事に育てる丞は、魚介も焼きつつ端で玉ねぎを炒める。
「じゃあ、このキャベツは浅漬けにしよう」
章がもむキャベツの袋を、小梅は楽しそうに茶化した。
「おっ良い猫の手ですなー。素敵よパパー」
「梅、焼けるまでこの袋揉んでてくれる?」
「アッハイ」
「って誰ですか! 俺が大切に育てていた肉食べちゃったのは……!?」
周囲を見渡す丞をよそに、玉は小梅の皿に肉を入れた。
「肉食系女子の梅さんにはこれをあげよう。部長がじっくり育てた肉です。食べ頃」
「あらやだ玉さん良いの? 悪いわぁ」
一切悪びれなく口にした小梅は、その美味しさに顔を緩めた。
「お主の子はまこと美味であった……」
「平和な証拠だ。良き哉良き哉。……焼きマシュマロはどうだ? とろとろになったところが美味いのだ」
「詳しいな」
村があった頃を思い出し微笑む貫二の言葉に、みゆは驚いたように頷いた。
「食べたことはないのだが、何故か知っておる気がしてな」
遥か昔に、こうして仲間と笑いあったもの。それは掴む前に消えて。
苦笑いを零すみゆに、章はビスケットを差し出した。
「焼きマシュマロをビスケットに挟むと美味しいよ」
楽しそうな章に、みゆは頷く。
(「わたしはこれでいいのだ」)
見上げる空に、花火が上がった。
「花火見ながらバーベキューとか最高じゃない?」
浴衣姿の春陽と希沙を眺めて和みモードな希の視線に、希沙は牛タンと大海老をじゃーんと見せた。
「お薦めはこちらですっ! 野菜も沢山ありますよ」
「とろーり鶏チーズとかヤバい……っ!」
鶏チーズを頬張った春陽は、次々に焼かれる食材に頬を緩めた。
「海鮮系も玉蜀黍も素敵。ああっ、スペアリブの香ばしい匂いとか!」
「赤身肉も焼くぞ。油少ない方がいいだろ?」
持参した赤身肉を鉄板で焼くシグマは、特製のたれを皿に移した。
「タレもいいがわさび醤油も用意済み、完璧過ぎだな」
「あ。俺、んー……取り敢えず全部!」
皿に色々な食材を乗せる希の隣で、椰は肉を鉄板に乗せた。
「とにかく肉だ。学祭ではハムしか当たらなかったからな」
やる気を見せたのは最初だけ。肉を乗せ終えた椰は、真剣な希沙に冷えたペットボトルを差し出した。
「奉行殿に献上な。倒れんなよ。ハルにもやろう」
「! あ、ありがとございます」
「ありがとー」
ふにゃりと笑った春陽に、希沙は首を傾げた。
「シグマ先輩は好き嫌い大丈夫ですか?」
「好き嫌い? ……まぁ大丈夫」
といいつつ椎茸は避けるシグマの皿に、椰は野菜を乗せる。
「だから! 野菜を俺にまわすなって!」
「シグマっ、野菜あげるぅー」
「……って待ってぽっぽー先輩その辺焦げてますー!」
「ほら、私はデザートのスモアの分お腹空けとかなきゃいけないから」
全員から盛られる野菜てんこ盛りの隣には、牛タンと大海老を盛った皿。
「肉ばっか食うなよな」
「食ってねえよ!」
こんな時間が過ごせる幸せを、春陽はお肉と一緒に噛み締めた。
背中までの髪を纏めた陽桜は、浴衣の袖を腕まくりした。
「個人的おすすめは、塩コショウしたエリンギなのです!」
さっと焼いて冷ましたエリンギを、陽桜は差し出した。
「はい、あーん」
「あーん!」
美味しそうに頬張るくるみの隣でエリンギを味わった葵は、陽桜の髪に目を止めた。
「髪、よくお似合いですよ」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに微笑む陽桜は、ケーキの箱を開けた。
「今年は「花火ケーキ」です!」
「おおきに! チョコケーキ大好きや!」
満面の笑みを浮かべたくるみは、視界に入った背中に立ち上がった。
「花火大会ええやねぇ。うちも色々……あれ? 見る方?」
花火セットをしまって咳払いをする丹に、くるみは話しかけた。
「手持ち花火、後で皆でやろ! 丹はん、良かったら一緒にバーベキューせえへん?」
突然声を掛けるくるみに、丹はどきどきする胸を押さえて微笑んだ。
「おおきに!」
微笑んだ丹がふと夜空を見上げれば、大きな花火。
鮮明な輝きを残し、ふっと消えるその様に自分を重ねた丹は、くるみの背中を追いかけた。
紺の浴衣を着た武流は、淡いピンクに白い沈丁花の柄の浴衣姿のメイニーヒルトに笑顔を見せた。
「花火は『一瞬の美』っていうけどさ、そもそも永遠に変わらないものなんてないよな」
花火に消されそうな武流の吐露に、メイニーヒルトは花火を見上げた。
「ボクも随分と変わったものだ。それも、武流のおかげなのだけれどね……」
メイニーヒルトがこんなにも柔らかい性格になったのも、武流のおかげだ。だから。
「一緒に明日へ歩こう。ボクたちの『明日』は繋げて行くのだから……」
「そうだな。まずは今を全力で楽しみたいな」
頷いた武流は、打ち上がる花火を見上げた。
「去年のこの時期、貴方と浴衣デートをしたのを覚えているかしら」
「僕みやちゃんとだけは付き合いたくない、って言った気がするんだけどなぁ」
苦笑いのむいに、京は花火を見上げた。
「綺麗で情緒的な光は華やかだけれど、終わった後にどうにも物寂しさが残るもの。そういうことよ。明け暮れた戦いが終わって、どうすればいいか、悩んでいるの」
「……僕はねぇ、いつ死んでもいいやって顔してたみやちゃんが、そーやって今後のこと考えようとしてるのが結構嬉しいんだ」
花火から目を逸らさない京に、むいは微笑んだ。
「やっぱ人生はっぴーでなきゃ。らいふいずはっぴー! ってね」
むいの笑顔に、京はため息を零した。
「浴衣、新しいのにしてきたですよ」
どうですー? と言ってくるりと回るめりるに、透馬は頷いた。
「とても可愛くて似合っていますよ。僕はいつもと同じ着流しなので少々色気にかけますね」
苦笑いを零す透馬の目に、花火の光が映った。
「花火、綺麗ですね。毎年一緒に花火を見たいですね」
「はい! 毎年一緒に行くですー!!」
微笑むめりるの頬を、花火が染め上げた。
イカ焼きをかじっていた雛は、奏のたこ焼きに手を伸ばした。
「あ、奏たこ焼きちょっとくれー」
「わっ、バカ! 食べ過ぎだって!」
「いーじゃんイカ焼き、かじっていいからよー」
差し出すイカ焼きをがばっとかじる奏に、雛は慌てた声を上げた。
「ちょ、おま、持ってきすぎ!」
「雛だってさっきガッツリ食べたんだから、お互い様だろ?」
「やれやれ……こうやって集まれる幸運に感謝だな」
感慨深げな翔に、奏はふと思い出した。
「そういえば翔、女装したよなー」
「俺にとっちゃ堕ちた時の次に黒歴史なんだよそれはよ!?」
慌てた翔は、浴衣姿で三人を見守る椋をチラリと見た。
「俺ら的には椋の浴衣姿が見れりゃ、それで十分だろうが」
その声に、全員の視線が椋に集まる。
「椋、その浴衣、前は持ってなかったよね。新調したのかい?」
「……新調というか姉のお下がりね」
袂をつまんで微笑む椋の頬に、花火が開く。
「……これからもよろしく。……気が向いたら」
花火から視線を離さない椋の横顔を、翔はチラリと見た。
「あぁ、畜生綺麗だよ……眩しいぐらいにな」
花火が、ということにした翔は、食い入るように花火を見つめた。
「向陽・英太、お肉焼きます!」
宣言した英太が用意した肉を焼く傍ら、供助は用意した野菜を鉄板で焼いた。
「後は向陽の期待に応えて焼きおにぎりもしようか」
「やった!」
「空部自慢のゼリー、持ってきたよ! くーさんの準備の良さ、パパって言うよりおかんだわぁ。な、サイワもそう思わへん?」
ゼリーを掲げる朱那の言葉に擽ったそうに笑った才葉は、二人の姿に目を輝かせた。
「へへ、供助がお母さん? お母さんってこんな感じかぁ。わー! シューナも瑠音もかわいいな? 似合うー!」
「いいでしょー♪」
薄桃色の浴衣姿でくるっとした瑠音は、朱那の浴衣姿に笑顔を浮かべた。
「シューナちゃんすっごくかわいい! ね、サイワくん? やっぱり女のコは浴衣だよねーっ♪」
はしゃぎながら記念撮影をした瑠音は、飲み物をグラスに注いで配る。
一度深呼吸をした朱那は、改めてグラスを掲げた。
「あの空の下、あたし達はずっと「空部」のメンバーだよ。今までお疲れサマ、そしてこれからもヨロシク! かんぱーい!」
「かんぱーい!」
全員のグラスが打ち鳴らされる音に、英太は少しの寂しさを胸にしまう。
「皆と出会えてよかったなあ」
「オレも空部のみんなと出会えて良かった! これからもよろしくな?」
大切な記憶たちを思い返す才葉に、瑠音も微笑み頷いた。
「想えばいつでも繋がれるよ。連絡一本でぴゅーって飛んでくからね!」
大きく息を吸い込んだ瑠音は、皆に向かってグラスを掲げた。
「ーーまた逢おうね!」
その声に、花火が打ち上がる。
夜空を見上げた供助は、朱那の滲む視界にそっと背を叩いた。
最高に楽しいでしかない。
寝不足の目をこする陽司は、集まった仲間を振り返った。
「へっへーん! 夏祭りなら俺の十八番っすよ!」
「ミカエラ先輩っ!輪なげしようっ!」
「そいえば、毎年輪投げやってるなあ~。上手くなってる?」
はしゃぐ杏子に、ミカエラは輪を投げる。残暑は袖をまくると、輪を一斉に投げた。
「秘技一気にいっぱい投げ! ……一つも入りませんでしたわ!」
「木元先輩、ヨーヨーつり教えてください!」
楽しそうに屋台を巡った生徒たちは、屋上へ向かった。
濃紺に大きな紫陽花が艶やかに咲いて帯はレース付。
橙色の地に白抜き蝶々。白灰色の兵児帯をきゅっとして、巾着、黄緑の鼻緒の下駄。
お花模様の青系の浴衣に、去年着た桃色浴衣の上に黒い羽織。
淡い紫地に花火柄の浴衣。お面はイースター仕様に、白地に格子柄。桐下駄で紅色の巾着袋。
白地に桜模様。小豆色の帯を合わせて。
屋台グルメにはしゃぐ女性陣に、脇差は感心したように頷いた。
「女子力、物理じゃないのもあったんだな、一応」
呟く脇差の頬を染める大輪の花火に、明莉は歓声を上げた。
「大華開く一瞬で魅了して後腐れなく消えてく姿、ってのは潔くていいね」
「野球見に行くとよく見れるんだケド、何度見てもキレイでステキだなって」
目を輝かせるポンパドール達の姿を、輝乃は絵に描き留める。
「高いところから見る花火は、一味違いますね」
幻想的な世界に目を細める紗里亜に、千尋も頷く。
「長い戦いが終わって、やっとゆっくりできる……。今年の夏は最高だね」
「皆、どんな将来歩いてくんだろな?」
誰にともなく問いかける明莉に、残暑が答えた。
「わたくしお嬢様ですから、もっとお嬢様になりたいですわね!」
その隣で、千尋は頷く。
「あたしは、箱根あたりで働こうと思ってるよ。イフリート達の眠りを守っていきたくってね」
「僕は……まだ悩み中。でも歌は続けるかも。主職かは別にしてね」
澪の声に、輝乃は頷いた。
「まだ決まっていないけど、どんな形であれ実家の神社は継ぎたいとは思っているよ」
「俺はまだ先の事は決めてないけれど。戦わずに済むのなら、殺さずに済むのなら、それでいい、それがいい」
(「そして大切な人の側に居られたら……」)
万感の思いを込めた脇差は、隣をそっと見た。
「お嫁さん、なんて考えてたんですけどね」
「誰の?」
明莉の問いに、紗里亜はちょっと苦笑いを零した。
「今はこれからの世界で必要とされるだろう、新しい法を考えて行きたいと思っています。……明莉さんは、どうなんですか?」
「俺? ……次は打ち上げる方にも挑戦したいねえ♪」
「花火師ですか? ハハッ、それも面白そう!」
陽司は楽しそうに笑うと正直な気持ちを答えた。
「まだ分からないけれど俺は、自分に向いてることをやりますよ。一生懸命に」
「おれ、接客業とかやってみたいかも。カフェの店員さんとかイイな! 夏休み入ったし、バイトからはじめてみよっかな?」
「いいんじゃないか?」
脇差の声に、ポンパドールは嬉しそうに頷く。
「夢はね、大地に近い場所で、獣医さんっ!」
明るく微笑む杏子は、花火を見上げながら言った。
「そこでもね、こんな大きな花火を打ち上げて、みんなで見るの」
「来年も、またココで見よ~? ん、約束っ」
明るく宣言するミカエラに、明莉は頷いた。
「来年、ね。またこうして集まれることを花火に願っとこ」
花火に向かって二拍手して拝む明莉に、全員が続く。
皆の願いを乗せた花火は、一際大きく花開いた。
作者:三ノ木咲紀 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年7月31日
難度:簡単
参加:52人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 13/キャラが大事にされていた 4
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