
日ごとに暑さが増していく7月。学園内がいつにもまして明るいのは、学園祭が近いからだけではないだろう。
「サイキックハーツ大戦、完全勝利よかったですね!」
一年以上は続いていた、張り詰めた緊張感から解き放たれ、灼滅者たちは学生としての日常を取り戻している。
そんな生徒たちを嬉しそうに眺める榛名・真秀(高校生魔法使い・dn0222)の言葉を受け、橘・創良(大学生エクスブレイン・dn0219)も頷く。
「まだいくつか問題は残っているけど、ダークネスの脅威はもうどこにも見あたらないからね。これから時間をかけて、みんなで考えていこう」
「みんなのがんばりがあったからですよね。本当にみんなお疲れ様です」
どんな強敵や難題にも果敢に立ち向かっていく灼滅者の姿を誇らしくも頼もしく思う。そして最大限の感謝と労いを。
「わたしの誕生日も平和に迎えることができて嬉しいです。この嬉しい気持ちを美味しいスイーツを食べてみんなで分かち合いたいです!」
「また今年も真秀さんの誕生日にスイーツを食べに行くんだね。今年は何を食べるの?」
恒例となった行事に創良の飲み込みも早い。
「食べたいものが多すぎて、選べなかったので……今年はスイーツビュッフェにします!」
真秀は、サイキックハーツ大戦に勝ったお祝いでもありますから、と言い訳のように付け足した。
「ホテルのスイーツビュッフェなんですが、味はもちろん見た目もとってもかわいいんです! もちろん種類も豊富ですよ」
真秀が取り出したチラシには、色鮮やかなスイーツたちが所狭しと並べられていた。多種多様なケーキはもちろん、小さなグラスに美しく盛りつけられたジュレやムース。パステルカラーのマカロンに、ジェラート、一口大の粒よりのチョコレートたち……。
「みんなたくさん頑張ったから、ご褒美です! それだけのことを成し遂げたんですからね!」
そのことには創良も大いに同意する。本当にみんなのがんばりには敬意を表したい。
「今年もまた、楽しいひとときになりそうですね」
真秀は幸せそうに呟くのだった。
●毎年恒例甘い夏
毎年の誕生日には、みんなでスイーツを食べに行く。パンケーキに始まり、ガレットとクレープ、かき氷と続いたこの企画。今年はサイキックハーツ大戦の勝利もあって、いつもより贅沢にホテルのスイーツビュッフェを楽しむのだ。
●あまくてしあわせ
「榛名さんお誕生日おめでとうございます」
「榛名殿、お誕生日おめでとうなのじゃ」
クラスメイトの中板・陸朶(高校生神薙使い・d37513)と尼村・唯(高校生ダンピール・d38632)に祝福され、榛名・真秀(高校生魔法使い・dn0222)は嬉しそうにえへへと笑う。
「みんな、ありがとう! 一緒に楽しい時間が過ごせるのがほんと嬉しいよ~」
集まってくれたみんなに感謝しつつ、今年もわいわいと楽しく甘い時間を過ごせるのが何より嬉しい。
「去年は浴衣でかき氷でしたが、今年は更に食いしん坊な企画ですね」
陸朶に優しく微笑まれ、真秀はさらにえへへ、と笑う。
「食べたいものが多すぎて、決めきれなかったんだ……それに、サイキックハーツ大戦ではみんな頑張ってくれたし! ちょっとは贅沢してもばちは当たらないと思うんだ~」
「今日は戦いのことを忘れ楽しませて貰うのじゃ」
みんなでスイーツビュッフェの会場に向かうと、そこは真秀にとっては、まさに夢の世界。
甘い香りとともに、目の前に広がるのは宝石のようにきらきらと輝くスイーツたち。そのひとつひとつがどれも個性的な輝きを放っている。
「うわあ、陽桜ちゃん! すごい、すごいよ~!」
スイーツ大好き同志の羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)に思わず声をかける真秀。学生らしく街中のケーキ屋さんのケーキバイキングもいいけれど、ホテルのものはやはり特別感がある。
「目指すは全メニュー制覇! ですね」
陽桜の言葉に、目を輝かせながら大いに頷く真秀。
「とりあえず席に着きましょうか」
微笑ましそうにその光景を見守りながらも、年長者らしく橘・創良(大学生エクスブレイン・dn0219)が皆を促す。
「みんなでビュッフェを楽しみましょう」
「ビュッフェとはなんじゃ?」
陸朶の言葉に唯が小首を傾げる。
「セルフサービスで、自分で好きなものを取って食べる形式だよ」
創良が説明すると、唯は周りにあるスイーツを見渡して、うんうんと頷く。
「果物とかもあるのかのう?」
果物……特にぶどうが好きな唯はうきうきとしている。
「羽柴さん、榛名さん、みなさん……よかったら、席……ご一緒しても、いいです……?」
遠慮がちにシャオ・フィルナート(進撃のおとこのこ・d36107)が席に座った一行に声をかける。
「あ、シャオさん、ぜひ一緒に!」
陽桜が空いた席を示しながら笑顔で応える。
「シャオ先輩、ぜひぜひご一緒しましょう♪」
真秀もみんなも大歓迎でシャオを迎える。
「榛名さんは、お誕生日……おめでと……」
「ありがとうございます! さあ、みんなでいっぱい食べて、完全制覇を狙うよ~」
「せーは……なら……分けっこしよ……?」
さすがに種類も豊富。いろいろな種類を食べるならシェアするのも作戦の内。なによりみんなでわいわいと食べるのは楽しいのだ。
「唯ちゃん、あっちにぶどうのジュースもあったよ! 陸朶ちゃんはさつまいものタルトだね」
みんな思い思いのスイーツと飲み物を持って席に着く。真秀はメロンのショートケーキにマンゴープリン。
「まずは桃のロールケーキから、です♪」
陽桜は桃のロールケーキを。シャオは苺のミルフィーユラズベリーアイス添えと、3種のベリーゼリーを紅茶と一緒に。
シャオが苺の乗ったミルフィーユにアイスを乗せて、皆に差し出す。
「皆で幸せを少しずつ共有出来たら、おっきな幸せになるんだよ」
それぞれのスイーツを口にし、みんな自然と笑顔になる。
「ん~幸せ……」
「えへへ……甘いねぇー」
真秀と顔を見合わせ、幸せそうに笑うシャオ。
「あたしのもよかったら♪」
人数分にカットした桃のロールケーキを差し出す陽桜。みんなであれこれ食べては美味しさのあまりにんまり。
「うふふ、美味しい幸せ、ですね♪」
美味しくて、楽しいと言えば、と陸朶が話を切り出す。
「運動会の時も皆で楽しく走れて良かったですよ~♪」
様々な種類のパンをめがけて一生懸命走ったパン食い競争。
「運動会の時は世話になったのう」
唯は転んでなかなか進めず、苦労したことを思い出し呟く。
「いつもと規模は違ったけど、運動会楽しかったね」
大好きな友達に囲まれて、普通の日常を過ごせることがなによりだと、戦争が終わった今、改めて気づく。だから、今目の前にあるのは戦いのことではなく……。
「そつぎょー後の進路とか……決めてる?」
シャオが、こういったことを話すのは初めてだねぇ、と呟きながら皆に話を振る。
「俺、孤児院のせんせ、なりたいの……」
おべんきょ、ニガテだけどね、と呟くシャオの藍色の瞳は、未来への希望を抱いて輝いている。
「シャオさん、すごいです!」
陽桜の言葉に、みんなも大きく頷く。
「やりたい事があるならお勉強とか、そういうのはどうにかなっちゃうものなのですよ!」
「うん、まずはやりたいって気持ちが一番大事だと僕も思うな」
創良もにっこりと微笑み、シャオの背中を押す。
「あたしは……むむ、今は未定ですけど……でも、お母さんみたいな教師もいいかなぁって」
「陽桜ちゃんのお母さん、先生なんだ! お母さんと同じ仕事を目指すのって素敵だなあ」
陽桜の言葉に真秀も瞳を輝かせる。
「真秀さんや創良さんはどうですか?」
「僕は、本が好きだから、図書館の司書になれたらなあって思ってるよ。大学でも資格を取るため勉強してるんだ」
創良はよどみなくすらすらと答える。図書館学部に在籍しているので、高校の時から進路は決めていたようだ。
「うーん、わたしはまだ全然何も考えてないんだけど……」
真秀はパッションフルーツのジュレを食べる手を止めて思案顔。
「そのうち、何かやりたいこと見つかるかなって」
学園生活を通して、その経験の中から何か見つかるかもしれない。
「美味しい物に囲まれる仕事とかいいかもしれませんね」
陸朶の言葉に、真秀もにっこり。
「料理とかはできないけど、何かわたしに合うのが見つかるといいな」
そんな榛名さんに……と陸朶がぱっとプレゼントを差し出す。
「美味しくご飯が食べれるように、特注、ひまわり大皿ですよ」
「わあ、ありがとう!」
「耐熱性バッチリ。冷たいものもOKなのです☆」
「クレープとかのせてもいいし、アイスの盛り合わせとかもいいかも。ひまわりがかわいいね!」
会話に耳を傾けつつも、ぶどうのタルトに夢中だった唯は、はっと我に返る。
「いかん、いかん。先に渡すものが」
唯も真秀にプレゼントを手渡してくれる。
「アイスクリームを美味しく食べれるセットをプレゼントするのじゃ」
保冷効果のあるカップに、熱伝導効果のあるスプーンのセット。冷たいまま、美味しくアイスを食べることができる。
「ありがとう! えへへ、この夏は毎日アイスを食べちゃおうかな♪」
「これでどのシーズンでも甘いものは食べれるぞよ」
唯もうむ、と頷きながら微笑む。
「毎日甘いもの食べたら……毎日しあわせ……だね」
シャオの言葉に、みんなほんわかした気持ちになり、にこにこと楽しく食事は続く。
その後も、ピスタチオのアイス、クレームブリュレ、いちじくのケーキ、マカロン、ヌガー、紅茶のシフォンケーキなどなどたくさんのメニューをみんなでシェアしながら食べていく。
「ね、陽桜ちゃん」
真秀が陽桜にだけ聞こえるように小声で囁く。
「陽桜ちゃんに大切な人ができたって聞いたよ。また今度ゆっくり聞かせてね」
陽桜は少し恥ずかしそうにしながらも、その人を思い浮かべてか幸せそうに頷いて微笑んだ。
「はい」
「約束ね」
甘いスイーツももちろん大好きだけれど、甘い恋バナにも心惹かれるお年頃なのだ。
●bitter sweet
「うわぁーどうしよ、目移りしちゃうなぁ……」
目の前に広がるスイーツビュッフェを前に、栗花落・澪(泡沫の花・d37882)は歓喜ともため息とも呼べるような声をもらす。
美しくも色とりどりのスイーツの共演。甘い物が好きならば、自ずとテンションが上がってしまうというものだ。
「相変わらずすっげぇ輝いてんな……」
紫崎・宗田(孤高の獣・d38589)の言葉に澪が大いに頷く。
「色鮮やかに輝いてて……まるで宝石みたいだよね」
「いや、デザートも澪が宝石に例えるだけあって煌びやかだが……」
宗田はじっと澪の瞳を覗き込む。茶色の瞳は、あまりにも輝きすぎて、星の幻覚が見えそうなぐらいだ。
瞳を輝かせたまま澪はさっそく数品を選び出し、プレートに盛る。飲み物はもちろん紅茶だ。
「紫崎くんが甘いもの平気な人なら、半分こ出来たのになぁ……」
「食えねぇもんはしょうがねぇだろ」
宗田は無難だと思われるガトーショコラを確保し、二人席に着く。
「はい。ブラックコーヒーでよかったよね」
「あぁ、サンキュ」
なにも言わずとも当たり前のように自分のコーヒーまで持って来てくれる澪を眺めつつ、コーヒーを一口。
(「なんか夫婦みてぇ……」)
思わず口元が緩んだところで、ガトーショコラをぱくり。思ったより甘すぎず、これなら美味しく食べられそうだ。
「この美味しさがわからないなんて、人生半分損してますよっ」
いちごのタルトを口に運び、その美味しさに思わず頬が緩む。お次はパッションフルーツのジュレ。爽やかで夏らしい。
「大丈夫? 楽しめてる?」
ゆっくりとしたペースでガトーショコラとコーヒーを口に運ぶ宗田に、澪は少し心配そうに訊ねる。宗田がしっかりと食べてるところを見たことがないからだ。
「俺は……お前と居れりゃ、それで充分なんだよ」
その素直な言葉に、恥ずかしくなり思わずうつむいてしまう澪。
(「いつもは誤魔化すくせに、こういう時は素直なんだね……」)
「ほれ、食いてぇんだろ?」
ちらちらとガトーショコラに澪の視線を感じていたので、宗田は澪の口に一口突っ込む。
「むぐっ……あ、美味しい」
ぱああっとまたも顔を輝かせる澪を見て、宗田も満足そうに頷く。
しばらく宝石のようなスイーツを堪能し、落ち着いたところで真秀たちのいるテーブルへ向かう。
「お邪魔しちゃってごめんね。榛名せーんぱいっ! 誕生日おめでとうございます!」
「おめでとさん。いい年にな」
二人の登場に、真秀もぱあっと顔を輝かせる。
「わあ、ありがとう! 今ね、ここのスイーツ完全制覇をみんなで頑張ってるとこなんだー。二人も楽しんでる?」
「あぁ、デートだしな」
さらっと即答する宗田に、さらに真秀はにっこり。
「それはすっごく楽しいね!」
「きょ、今日はそんなんじゃないからぁっ!!」
顔を赤くして必死に否定する澪の頭を宗田が優しく撫でながら、そっと耳元に囁く。
「間違った事は言ってねぇだろ?」
甘い物は苦手なのに、平気で甘いことを言ってしまう宗田。先ほどまで食べていたスイーツのどれよりも、甘くて幸せな気分になったのは間違いないけれど。
| 作者:湊ゆうき |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2018年8月4日
難度:簡単
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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