闇に堕ちし者達の極限バトル！

■リプレイ

●某ライブハウス
「……闇堕ち、か。ガイオウガとの戦いの件で一度だけ、意図的にやった事があったが……今度は安全に堕ちる事ができるのか。……不安が無いといえば嘘になるが、それが本当なら、安心して『オレ』を出せそうだ」
　狂舞・刑（その背に背負うは六六零・d18053）はサイキックアブソーバー内のエネルギーを消費して、暴走を発生しないようにするため、仲間達と共にライブハウス仕様になった空き教室にやって来た。
　安全な闇堕ちと言う時点で、怪しさ爆発ではあるものの、一応エクスブレインの保証付き。
　そのため、闇堕ちしたまま戻る事が出来ず、暴走の末に大量虐殺と言うオチはない。
　ちなみに刑はＡチームに所属しており、サイキックアブソーバー内のエネルギーを消費するため、Ｂチームと戦わねばならなかった。
　だからと言って、どちらかが勝利しなければならないという訳ではないのだが本気で戦わなければ、サイキックアブソーバー内のエネルギーを消費される事はない。
「まさか、闇堕ちの力に頼ることになるなんてね」
　備傘・鎗輔（極楽本屋・d12663）も、タイマーをセットした。
　鎗輔はＢチームに所属しているが、その気持ちは複雑。
　過去に闇落ちした経験がある分、そう思ってしまうのも、仕方がない事だろう。
「2度目の闇堕ちライブハウスだが……保証されているとは言え、こうして何度も闇堕ちするのは余り良くないのだろうな。だが、今はそれも仕方ない」
　赤城・碧（強さを求むその根源は・d23118）が、自分自身に言い聞かせる。
　Ｂチームを勝利に導くため、手を抜くつもりはないのだが、闇堕ちする感覚は決して心地よいモノではない。
　むしろ、不快。
　まるで自分が自分でない感覚。
　何か黒いモノに自分が塗り替えられていくような感覚であった。
「私も2度目の戦いとなりますが……大丈夫でしょうかねぇ……？」
　紅羽・流希（挑戦者・d10975）も、不安げな表情を浮かべる。
　もちろん、Ｂチームに負けるつもりはない。
　負けるつもりはないが、それよりも心配なのは、闇堕ちであった。
　浅くとは言え、闇堕ちしたのは、既に4度目。
　そのたび、何やら深い深い所に、気持ちが沈んでいるような錯覚を受けた。
　もちろん、それは単なる気のせい……のはずだが、それでも色々な意味で不安が残る。
「まあ、こういう機会って、そうそうないんだろうからな。いっそのこと楽しむくらいに取り組んでみるか。あ、そういえばイフリートはオレだけか。……暑くなりそうだな」
　栗原・嘉哉（陽炎に幻獣は還る・d08263）が、気まずい様子で汗を流す。
　ただでさえ、暑いのに、それ以上に暑くなる事は確実。
　その暑さとも戦いつつ、Ｂチームを勝利させる必要があった。
「確かに……今まで協力し合った仲間と、こうやって戦う機会も滅多に無いわね」
　藍善・きあら（真実の担い手・d34252）が、納得した様子で答えを返す。
　とにかく、一番優先すべきは、Ａチームを勝利させる事。
　闇堕ちに関しては、大丈夫だと言われているのだから、たぶん何とかなるだろう。
　万が一、何とかならなかった場合は……その時に考えればイイ事だ。
「闇堕ちの状態で戦えるっていいなと思ったけど、冷静になって考えると俺ってダークネスの姿で戦うことが多かったから、あんまり新鮮味がないような気も……。……あ、デモノイド以外の姿になれる……？　……って、なんだろう全然変わってない気が……」
　そんな中、Ｂチームに所属している井之原・雄一（怪物喰いの怪物・d23659）が、いち早く闇堕ちした。
　だが、これと言って変化はない。
　強いて言えば、目つきが鋭く、悪っぽくなった感じである。
「さぁて、俺の力、全て魅せて楽しませてやるよ！　だから俺も楽しませて貰うぞ！！」
　続いて牧野・春（万里を震わす者・d22965）も闇堕ちすると、Ｂチームに攻撃を仕掛けていくのであった。

●チーム戦
「さてと、宴を始めるか」
　刑が白い影の鎖を右腕に巻きつけながら、Ｂチームに攻撃を仕掛けていく。
　ダークネス『ハングドマン』。
　それが闇堕ちした刑の名前……。
「勝ちを取れるとはさすがに思ってないけど、簡単に負けるつもりはないからな！」
　その攻撃を受け流しながら、雄一が反撃する機会を窺った。
　さすがに闇堕ちしている状態だけあって、一撃が……重い！
　最悪、一撃を食らっただけで、瀕死の重傷を負いかねない程だった。
「だからと言って、殺し合いじゃないからね。あくまでサイキックアブソーバーのエネルギーを消費して、暴走を食い止める事が目的だから……」
　きあらが闇堕ちしつつ、仲間達に対して釘をさす。
　もちろん、みんな了承済み……のはずだが、念のため。
　闇堕ちした状態では、力の加減も難しいため、ついウッカリを防ぐためでもあった。
「ええ……、もちろん。今回も、見知った顔がいますが……。これはこれ、それはそれ、という事ですので、ねぇ……。さぁ、やり合おう。時間が来る、その時までな」
　流希も闇堕ちした状態で武器を構え、Ｂチームに攻撃を仕掛けていく。
　何度、闇堕ちしても、慣れない感覚。
　漆黒の闇が広がる水の中に落ちたような感覚に包まれる中、もがけばもがくほど水がネットリと纏わりつき、そこに引きずり込まれていくような錯覚に襲われた。
　果たして、今回も戻る事が出来るのか。
　不安になってしまう程の恐怖感……。
　それでも、エクスブレインが保証をしている以上、闇に飲まれる事はないのだろう。
「さて、俺のまま戦っても良いのだが、それではこの前の闇堕ちライブハウスと変わらない。折角だ、ここから先は……『主の刀である私、≪黒百合≫がお相手致します。この身全てが一振りの刀と識りなさい』」
　すぐさま、碧も闇堕ちすると、流希の攻撃を弾く。
　生きるか、死ぬかの戦いではないものの、本気の本気で、そのギリギリ。
　一歩間違えば死ぬのではないかと錯覚してしまう程の真剣勝負。
　何とか理性は保たれているものの、危うい状態である事は間違いない。
「それにしても、何度やっても慣れないね。この堕ちるって感覚はさ。でも、必要なら……。……やるでコショ！　この怪人っぽい語尾が、かなり気になるけど、仕方がないコショ！　コーッショッショッショ！」
　鎗輔も闇堕ちすると、奇妙な笑い声を響かせた。
　最初は誰がコショコショ笑っているのか分からなかったが、冷静になって考えてみれば、どうやらそれは自分自身だったようである。
　だからと言って、その笑い声を……語尾を止める事が出来なかった。
　むしろ、それを止める事は、息を止めているのと、一緒。
　それ故に、言わずにはいられない……！
「はぁっ、なかなか強いな……！　けれど、手加減されるのは嫌だし、こっちも全力で迎え撃つ！　オレは幻獣イフリート、もっと燃やし尽くすぜ！！」
　嘉哉も闇堕ちしてイフリートの姿のまま、Ａチームに攻撃を仕掛け、興奮した様子で叫び声を響かせた。
　そのため、ライブハウス内は、灼熱地獄。
　自然と汗が滴り落ち、足元に水溜りが出来る程だった。
「……流石に暑いな」
　春が黒い騎士鎧に包まれたまま、溢れ出した汗を拭う。
　ただでさえ、暑い室内が燃えるようにして暑く、汗が次から次へと溢れ出した。

●ライブハウスでの戦い
「はあはあ……、さすが闇堕ちしているだけの事はあるな」
　刑が荒々しく息を吐きながら、ゆっくりと辺りを見回した。
　戦いが始まってから、既に１０分以上が経っており、その場に立っている者もごく僅か。
　限界ギリギリの勝負を繰り広げてきたため、例え立っている事が出来ても、フラフラである。
　それでも、理性を保っていられるのだから、闇堕ちしたまま戻ってこれないと言う事はないだろう。
「我が腕よ、鬼と化し、敵を叩き切る力を与えよ！」
　その間に、きあらが雄一に突っ込み、鬼神変を叩き込む。
　それと同時に雄一が床の崩れ落ちたものの、きあら自身も体力の限界。
　まるで糸の切れた人形の如く崩れ落ち、そのまま動かなくなった。
「正直、こんな風に力を振える機会なんか、なかなかないと思うから、目いっぱいやっておくコショ！」
　そんな中、鎗輔がハイテンションで、流希に攻撃を仕掛けていく。
「この一撃で、過去にあった禍根を取っ払ってしまいたいところだが……」
　それを迎え撃つようにして、流希が居合斬りを仕掛ける。
　今までの戦いの中で、灼滅者の戦いは身に染み付いているため、ある程度の予想し、鎗輔よりも早く、攻撃を当てる事が出来た。
「こんなところで負ける訳には行かないでコショ！」
　だが、鎗輔は傷つきながらも、流希を攻撃！
　ほぼ相打ち的な状態で、その場に崩れ落ち、血溜まりの中に沈んでいった。
「残っているのは、俺達だけか」
　春が一気に間合いを詰め、クルセイドスラッシュを碧に放つ。
　既に残り時間は、１分もない。
　故に、勝負を決めるのであれば、ほんの一瞬。
　相手が気を抜いた、その時だけ。
『痛みも感じぬまま眠りなさい。奥義玖拾捌式―――常世ノ闇―――』
　次の瞬間、碧もクルセイドスラッシュを放ち、春の身体を血に染めていく。
　互いに同じ技を繰り出し、食らったものの、ほんの少しだけ……碧の方が深く斬り込んでいた。
　そして、タイマーの音が、辺りに響く。
　それは戦いの終わりを告げる合図であった。
　結果的にＢチームを勝利に導いた碧は、グッタリ。
　戦いには勝利したものの、かなりダメージを食らってしまったようである。
　そのため、すぐに起き上がる事が出来ず、眠るように倒れていた。
「なかなか大変だったな。けど楽しかったな。こういうの定期的にあったら、ずっと参加しそうだ」
　嘉哉が元の姿に戻って、苦笑いを浮かべる。
　ある意味、自分との闘い。
　闇堕ちする事による身体の負荷も考えて行動しなければ、あっと言う間にオーバーヒートな感じである。
　だが、闇堕ちして『飲み込まれる』事もないため、決して嫌な感覚ではない。
　むしろ、元に戻ったのと同時に、何やらモヤモヤしたモノが取れて、気持ちがスッキリしたような感じであった。
　もちろん、その感覚は、人それぞれ。
　その時の状況も影響するため、場合によっては、二日酔いにも似た感覚になっている仲間がいるかも知れない。
「うーん、楽しかったなぁ！　こういう機会って定期的にしてくんないかなー？　そしたら俺何回でも参加するんだけど……。皆もダークネス姿拝められるしさ」
　雄一も興奮した様子で、戦っていた時の事を思い出す。
　元々、怪物好きだったせいか、ワクワクが止まらない。
　むしろ、この状態が続けば、どんなに幸せな事か、と思ってしまう程に……。
　ある意味、それは至福の時間……。
　故に闇堕ちは止められない。
　闇堕ちしたまま、元に戻らないという事がない分、尚更そう思ってしまうのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2018年7月22日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 6
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