●エクスブレインからの依頼
「サイキックハーツ大戦に灼滅者が勝利した事で、世界の危機は去った。だが、しかし、サイキックハーツの力によって強化されていたサイキックアブソーバーが限界を迎えてしまったようだ。その上、本来の性能を大きく超えた力を発揮していたサイキックアブソーバーは、校長の超機械創造では、もはや制御が不可能となった。このままでは遠からず、サイキックアブソーバーは完全破壊されてしまう事だろう。故に、サイキックアブソーバーの破壊を食い止める為には、サイキックアブソーバー内のエネルギーを消費して、暴走を発生しないようにする対策が必要になったという訳だ」
エクスブレインの男性が、教室ほどの広さがある部屋に灼滅者達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
●エクスブレインからの説明
「最も有効な対策は、灼滅者がサイキックアブソーバーの力を一時的に吸収し、その力を消費・発散してしまう事だ。灼滅者が消費すればするだけ、サイキックアブソーバーの総エネルギー量が低下し、暴走の危険が下がり、いずれ制御可能な状態に戻る事が期待できるだろう。この状態で戦闘を行う事で、力を消費・発散する事が可能となり、『闇堕ち状態』は戦闘不能になるか戦闘開始後18分間が経過すると解除される。ただし、灼滅者の意識をもっている状態なので、戦闘中の説得なども必要ない。ここで消費できる力は『極限の状態で激戦を繰り広げる事』で、手加減しながら戦った場合、消費・発散するエネルギーが少なくなってしまうので、本気で戦う必要があるだろう」
そう言ってエクスブレインの男性が、灼滅者達に資料を配っていく。
「サイキックアブソーバーの役割は既に終わっているのかも知れない。……だが、今後の世界の為に、サイキックアブソーバーが必要になる可能性も十分にあり得るから、そういった意味でも、よろしく頼む!」
そしてエクスブレインの男性が、深々と頭を下げた。
参加者 | |
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花咲・マヤ(癒し系少年・d02530) |
鴻上・巧(砕けた鎖・d02823) |
戯・久遠(悠遠の求道者・d12214) |
片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525) |
リディア・キャメロット(贖罪の刃・d12851) |
有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751) |
ミーア・アルバーティ(猫メイドシスターズ・d35455) |
藤崎・美雪(高校生ダンピール・d38634) |
●闇堕ちライブハウス
「闇堕ちの力か……忌まわしき力だけど、今はその力でサイキックアブソーバーの制御に努めるしかないわね」
リディア・キャメロット(贖罪の刃・d12851)はA班の仲間達と共に、ライブハウス仕様になった空き教室にやって来た。
この場所で既に何度も戦いが行われているものの、闇堕ちしたまま帰ってこなかった者はいない。
その分、安心して闇堕ちする事が出来るのだが、死ななかっただけで、まったく副作用がないという訳でもないようだ。
だからと言って、今のところ深刻な副作用も確認されておらず、ただ気分が悪い程度のレベル。
それでも、決して良い気分ではないため、闇堕ちを控える灼滅者も少なからずいるらしい。
「……とは言え、お手軽簡単に闇堕ちできるのは凄いのです!」
ミーア・アルバーティ(猫メイドシスターズ・d35455)もA班の一員として、リディアの後に続いて教室の中に入っていく。
あまりにも、お手軽に闇堕ちする事が出来るため、本当に戻ってこれるのか、若干不安ではあるものの、いまのところトラブルはゼロ。
安心、安全が売りになっているため、多分……大丈夫だろう。
ただし、裏で秘密裏に異議申し立てをしない契約書などを書かされていなければ、の話だが……。
幸い、そう言った噂も聞いてはいないので、大丈夫……なはず。
「何度も参加すると危険と言う人もいるけど、アブソーバーの維持に必要なら、僕はためらわない」
有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751)がB班の一員として、自分自身に気合を入れた。
色々な噂があるのは確かだが、そんな事を気にしていたのでは、いつまで経っても根本的な問題が解決しない。
それ以上に、ただ感情の赴くまま戦ってみたいという理由もあった。
正直、闇堕ちした時の爽快感がたまらない。
それがイケナイ事だと分かっていても、ついつい求めてしまう程に……!
(「もし救出された、あの時……助けが間に合わずに堕ちていたら、私はどうなっていたのだろう……?」)
そんな中、藤崎・美雪(高校生ダンピール・d38634)が、もうひとつの可能性を考えていた。
おそらく、元に戻る事が出来ず、堕ちるところまで、堕ちていただろう。
そうなっていた場合、自分が自分で無くなってしまい、まったく別の人格が生まれていたかも知れない。
あくまでそれは可能性でしかないのだが、もしかすると仲間達と敵対していた可能性もあった。
「これも、また一つの鍛錬だ」
戯・久遠(悠遠の求道者・d12214)がB班の仲間と共に、静かに呼吸を整えた。
闇堕ちをするたび、消えていたはずの黒い感情が蘇り、心を黒く染めていく。
それは決して心地良いモノではないが、決して嫌なモノではない。
そう言った感情が芽生えている時点で、危険な状態に陥っているのかも知れないが、だからと言って何かトラブルが起こった訳でもないようだ。
「とりあえず、15分経ったら、アラームが鳴るように設定しておきますね」
花咲・マヤ(癒し系少年・d02530)がA班の仲間達に確認するようにして、アラームが鳴るように設定をする。
別に設定しておかなくても大丈夫なような気もするが、万が一の事を考えて保険を掛けているようだ。
「さて……、はじめましょうか」
次の瞬間、B班の鴻上・巧(砕けた鎖・d02823)が『偽装解除』の言葉と共に闇堕ちすると、全ての武器が粒子化し、それらが赤青白黄緑紫の六つの光球になって周囲に漂った。
「もう堕ちるつもりもなければ堕ちることもない。そう考えていたのですがね……」
片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)も自嘲気味に呟いた後、巧と並ぶようにして闇堕ちすると、纏っていた白衣が真っ黒に染まっていった。
●闇と闇の戦い
「さて、どのような結果になっても恨みっこなし。時間の許す限り、全力で闘争を繰り広げるだけです……!」
雄哉が獰猛な笑みを浮かべ、A班に攻撃を仕掛けていく。
ある意味、乱戦に近い形のため、ただ強いだけでは勝つ事が出来ない。
例え、弱くとも作戦次第で、自分達の班を勝利に導く事が出来るのだから……。
故に、全力かつ相手の不意をつく形で、攻撃を仕掛けていった。
「この8人の中では一番力がないが、やれることはしっかりやらせてもらう」
一方、美雪がA班を勝利に導くため選んだのは、仲間達のサポートであった。
闇堕ちしても、意識を保つ事が出来ているものの、湧き上がってくるのは、常に黒い感情。
ある意味、破壊衝動とも呼べるソレは、決して心地良いモノではない。
(「いまのところは安定しているようですが……」)
そんな中、公平が預言者の瞳を使いながら、闇堕ちしていた頃を思い出す。
あれは今から五年前……。
自身が堕ちる選択をした宿敵との戦い……。
その時とは違う感覚ではあるものの、決して心地良いモノでもなかった。
「闇堕ち状態で戦う機会は、前にも体験しましたけど、やはり本気で戦い合うと燃えますね。さぁ、先ずはこの攻撃を受けてみなさい!」
マヤが同じA班であるリディアと連携を取りつつ、レイザースラストでB班を攻撃!
その攻撃は残念ながら命中しなかったものの、その分リディアが間合いを詰める時間を稼ぐ事が出来た。
いまのところ、闇堕ちしたマヤに、身体的な変化はない。
強いて言えば、能力が底上げされたくらいだろう。
それでも、気を抜けば、黒い感情に飲み込まれそうになってしまう程、危険な雰囲気が漂っていた。
「それじゃ、守りは任せます」
巧が仲間達に声を掛けながら、A班に攻撃を仕掛けていく。
難しい事は考えず、眼前の敵を打ち砕くのみ。
実にシンプル。
難しい事は、何もない。
ただ、限られた時間で、出来るだけの事をすればいいのだから……!
「ならば、楽しんでいっていただきましょう」
それを迎え撃つようにして、ミーアが闇堕ちして幽霊館の水先案内メイドのような姿になり、ビハインドのマーヤとシンメトリーな感じでポーズを決めた。
闇堕ちしているだけあって、全身に漲るパワーも半端なく、はち切れんばかりに膨らんでいくのが分かる。
おそらく、人によっては、これを心地良く感じてしまうのだろう。
そうなってしまった場合、元に戻る事は非常に困難。
今回の戦いでは制御が効くものの、そうでなければシャレにならない事になってしまう可能性が高かった。
「僅かでも隙は隙だ。攻めさせてもらう」
久遠が僅かな隙を見つけ、ミーアにオーラキャノンを撃ち込んだ。
それは闇堕ちした事によって、さらなるパワーを得た一撃ッ!
「……!」
すぐさま、マーヤが盾になり、ミーアが逃げるまでの時間を稼ぐ。
だが、戦っている相手は、久遠ひとりだけではない。
何とか久遠からは逃げる事が出来たものの、あっと言う間に包囲され、絶体絶命の大ピンチ!
「さぁ、貴方はこの私の殺気に耐えられるかしら?」
その危機を救うようにして、リディアが返り血の付いたウェディングドレス姿で、鏖殺領域を展開するのであった。
●闇に飲まれる感覚
「まさか、最後まで残ったのが、僕だけなんて……。だからと言って、接近戦が出来ないわけでも、無いのですよ!」
マヤが荒々しく息を吐きながら、零距離格闘で公平に攻撃を仕掛けた。
あれから数分ほど時間が経ち、立っているのは自分だけ。
それは、ある意味、奇跡であった。
既に肉体は限界に達し、身体のあちこちが悲鳴を上げているものの、それでも負ける訳には行かなかった。
先に散っていったAチームの仲間達の為にも……!
「これでも元六六六人衆六四三番、舐めないで頂きたい」
それでも、公平は鋭い殺気を放ちながら、ホーミングバレットを撃ち込んだ。
マヤよりも早く……瞬きするほどの差で……公平の一撃が決まった!
しかし、公平も無傷ではない。
マヤの攻撃を多少なりとも喰らいつつ、後ろに吹っ飛ばされて、そこでアラーム音が響き渡った。
「ふむ……よい戦いでした」
巧がアラーム音に気づき、元の姿に戻っていく。
結果的にはBチームの勝利。
うまく連携を取る事が出来た事もあり、何とか勝利する事が出来たものの、同じようなメンツで戦ったとしても、次に勝てる保証はない。
「確かに、そうだね。今回も満足したよ」
雄哉も元の姿に戻って、満足げな表情を浮かべる。
闇堕ちが解除されたのと同時に、心の中に渦巻いていた黒い感情が消え去り、気持ちがスッキリとした。
「ふぅ……、何とか元に戻る事が出来ましたけど……アイタタタッ」
その途端、ミーアが涙目になって、利き腕を押さえる。
闇堕ちしている間は、まったく気にならなかったのだが、全力で戦い続けていたせいで、身体のあちこちが痛い。
おそらく、限界以上の力を発揮し続けた事の代償的なモノだろう。
だからと言って、後遺症が残るほどのモノでもないが、しばらく横になっていたいというのが本音であった。
「とりあえず、サイキックアブソーバーは無事のようね」
リディアがホッとした様子で、溜息をもらす。
いまのところ、順調にサイキックアブソーバーの総エネルギー量が低下しているため、今月の末頃には制御可能な状態に戻す事が出来るだろう。
「やはりあの時、助け出されて本当によかった」
美雪がホッとした様子で、その場に崩れ落ちていく。
彼女にとって、闇堕ちは不快なモノでしかない。
おそらく、あのまま戦っていたら、また同じように……。
そんな不安が脳裏に過ってしまう程、嫌な感覚……。
実際には、そう言った危険がないはずだが、それでも考えてしまう。
堕ちたまま、戻って来る事が出来ないのではないか、と……。
「だが、いずれ辿り着く領域だ」
久遠が何かを悟った様子で、何処か遠くを見つめる。
今は笑い話で済むかも知れないが、そのうち……もしかすると……。
それでも、今のところ安定しているのだから、何も心配する必要はないだろう。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年8月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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