闇堕ちライブハウス~闇に踊れ!

    ●エクスブレインからの依頼
    「……サイキックハーツ大戦に灼滅者が勝利した事で……、世界の危機は去りました……。しかし……、サイキックハーツの力によって強化されていたサイキックアブソーバーが限界を迎えてしまい……その上、本来の性能を大きく超えた力を発揮していたサイキックアブソーバーは、校長の超機械創造では、もはや制御が不可能となっています……。このままでは遠からず、サイキックアブソーバーは完全破壊されてしまう事でしょう。そうなる前に、サイキックアブソーバーの破壊を食い止め、サイキックアブソーバー内のエネルギーを消費して、暴走を発生しないようにする対策が必要になったという訳です……」
     エクスブレインの少女が教室ほどの広さがある部屋に灼滅者達を集め、淡々とした口調で今回の依頼を説明し始めた。

    ●エクスブレインからの説明
    「……最も有効な対策は、灼滅者がサイキックアブソーバーの力を一時的に吸収し、その力を消費・発散してしまう事です……。灼滅者が消費すればするだけ、サイキックアブソーバーの総エネルギー量が低下し、暴走の危険が下がり、いずれ制御可能な状態に戻る事が期待できるでしょう……。この状態で戦闘を行う事で、力を消費・発散する事が可能となり、『闇堕ち状態』は戦闘不能になるか戦闘開始後18分間が経過すると解除されます……。ただし、灼滅者の意識をもっている状態なので、戦闘中の説得などの必要もありません……。ここで消費できる力は『極限の状態で激戦を繰り広げる事』で、手加減しながら戦った場合、消費・発散するエネルギーが少なくなってしまうため、本気で戦う必要があります……」
     そう言ってエクスブレインの少女が、灼滅者達に資料を配っていく。
    「……サイキックアブソーバーの役割は既に終わっているのかも知れません。……しかし、今後の世界の為に、サイキックアブソーバーが必要になる可能性も十分にあり得るでしょう。そういった意味でも、よろしくお願いします」
     そしてエクスブレインの少女が、オドオドした様子で頭を下げるのであった。


    参加者
    聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)
    泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)
    泉・火華流(自意識過剰高機動超爆裂美少女・d03827)
    槌屋・透流(ミョルニール・d06177)
    赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)
    有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751)
    綾辻・理人(樹氷の射手・d33057)
    天瀬・華音(花吹雪・d34196)

    ■リプレイ

    ●ライブハウス内
    「まさか闇堕ちした状態で、槌屋先輩と共闘するとは思ってもいませんでしたが……」
     有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751)は複雑な気持ちになりつつ、Bチームの仲間達とライブハウス仕様に変えた空き部屋にやってきた。
     闇堕ちした状態のまま、この場所で戦う事で、サイキックアブソーバーのエネルギーを消費する事が出来るのだが、その戦いもいよいよ終盤。
     最初の頃と比べると戦いも行われなくなっているものの、このまま何もトラブルが起こらなければ、月末には制御できるところまで来ているようだ。
    「闇堕ち状態はそう簡単になる事はないから……この機会に、思いっきり闇堕ちを楽しんでみたいな」
     天瀬・華音(花吹雪・d34196)も、Aチームの仲間達と部屋の中に入ってきた。
     ここでの戦いは、ふたつに別れて、チーム戦。
     本気で戦わなければ、サイキッンクアブソーバーを消費する事が出来ないため、仲間相手だからと言って決して手を抜く事が出来なかった。
    「まあ、闇堕ち状態で戦う機会も、滅多にないですしね。私も、偶にはこうやって戦うのも楽しそうだと思いますし……」
     綾辻・理人(樹氷の射手・d33057)が、苦笑いを浮かべる。
     少し不謹慎な気もするが、今のところ事故はない。
     そういった意味でも、闇堕ちしたまま戻る事が出来ず、無関係な人達を傷つける事も無いだろう。
    (「今回で4回目……俺の身体は大丈夫なのか……?」)
     そんな中、赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)が、不安な気持ちに襲われた。
     闇堕ちするたび、襲い掛かってくる不安……。
     何やら淀んだ気持ちが、底の方に溜まっていく感覚……。
     それは単なる気のせいかも知れない。
     気にし過ぎているせいで、そんな気持ちになっているかも知れない。
     そう自分自身に言い聞かせているものの、それでも不安を拭う事は出来なかった。
    「まあ、なんであれ……、全力の死合だ」
     聖刀・凛凛虎(小さな世界の不死身の暴君・d02654)が、色々と察した様子で口を開く。
     サイキックアブソーバーを消費するためには、闇堕ちした灼滅者達が本気で戦わねばならない。
     故に、戦いで迷いは禁物。
     最悪の場合は、サイキックアブソーバーを消費する事が出来ず、失敗に終わってしまう可能性もあるため、ここで気を抜く訳には行かなかった。
    「それじゃ、せいぜい暴れるとするか。ガス抜きがしたいのは、アブソーバーだけじゃないようだし……。私も、ゴチャゴチャ考えるよりこういう方が向いてる……」
     槌屋・透流(ミョルニール・d06177)が仲間達を見やり、自分自身に気合を入れる。
     何やら思うところはあるものの、そう言った事は依頼を成功させた後でいい。
     ただ、今は依頼を成功させる事だけを考え、Aチームと戦うのみである。
    「闇堕ちバトルも終盤……最後に『アレ』を試してみたいんだよね……」
     泉・星流(魔術師に星界の狂気を贈ろう・d03734)が思わせぶりな態度で、含みのある笑みを浮かべた。
     試すのであれば、今しかない。
     ここでタイミングを誤れば、試す機会を失ってしまう可能性すらあるのだから……。
    「……とは言え、闇堕ちする感覚は、慣れそうにないわね……」
     泉・火華流(自意識過剰高機動超爆裂美少女・d03827)が、何処か遠くを見つめる。
     兄に付き合わされる形で依頼に参加したものの、闇堕ちする感覚には慣れる気がしない。
     灼滅者の中には闇堕ちする感覚が心地良いと言う者もいるが、そう言ったタイプは極稀である。
    「さぁ、行きますよ、皆さん。手加減はしませんからね」
     そう言って理人が腕時計に視線を送り、15分経ったらアラームが鳴るようにセットするのであった。

    ●生きるか死ぬか
    (「……限られた時間で、どれだけ戦えるか、試してみませんとね……」)
     理人(A)が闇堕ちした状態で赤い目を光らせ、時計の時間を確認した後、相手チームに視線を送る。
     だいぶ、闇堕ちに慣れてきた者もいるのか、人並み外れた力を使いこなしているようだ。
     だからと言って、扱いに慣れているものが強いとは限らない。
     闇堕ちしている状態とは、深淵を覗き見ているような状態。
     この場所にいる限り、あちらの世界に引きずられる事はないものの、精神的な負担がゼロと言う訳ではない。
    (「まさか、闇堕ち状態でディフェンダーをやるなんてね。ダークネスに対する意趣返しでは決してないのだけど、『何やってるんですか』とか言っている気がする。……たぶん、僕自身の戦闘狂の部分はダークネスに影響されているし……」)
     雄哉(B)も闇堕ちして青髪、青瞳、筋肉質のアンブレイカブルになり、衣装は破れた学ランとタンクトップ姿で嘲笑を浮かべた。
     足元からは常に闇のオーラが噴出しており、それが全身に纏わりついていた。
    「そろそろ……始めようか……」
     星流(B)が闇武装を発動させ、火華流のドレスに宿る。
     その途端、星流のダークネスとしての力が、火華流に上乗せされた。
     だが、まだ安定しない。
     強力過ぎる故に、身体に掛かる負担も大きかった。
    「それじゃ……、行くね」
     その影響で火華流(B)が纏っていた真紅のドレスが、漆黒に染まっていく。
     それに合わせて影薔薇の能力を使い、無数のガトリング銃と、バベルブレイカーを生成し、Aチームに攻撃を仕掛けていった。
    (「今日は愛刀にはお留守番してもらって……俺はデコイとして動くか。これも全力で相手を倒すため……」)
     碧(A)が火華流達の気を引きながら、少しずつ間合いを取っていく。
     限られた時間の中で、やるだけの事をやる。
     それが勝利の近道。
     戦いに勝つための秘訣……のはずだった。
    「だったら、クロスグレイブでボコボコにしてあげるよ!」
     すぐさま、華音(A)が碧を狙い、十字架戦闘術で足止めした。
    「しまっ……」
     これは碧にとっても、誤算であった。
     何とか倒れずに済んだものの、状況的に危険な状態。
     一対一の戦いであれば、問題なかったのかも知れないが、実質一対二の戦い。
     その上、チーム戦である以上は、何が起こるか分からない。
    「有城と聖刀は、『こっち』では久し振り、か? ……といっても、中身は私のままだが……」
     そんな中、透流(B)が凛凛虎(A)と対峙し、暑い戦いを繰り広げていた。
    「お前は灼滅者か? ダークネスか? それとも人間か? さあ……俺をもっと殺す乙女になれ!」
     凛凛虎がまるで呪文のように呟きながら、透流にギルティクロスをブチ込んだ。
    「殺しきってはやれないが、暴れるぐらい付き合ってやるよ。…なあ凛凛虎?」
     その一撃を食らっても透流は怯む事なく、凛凛虎に攻撃を仕掛けるのであった。

    ●闇に堕ちた者達
    「う~ん……普通に戦っているのと代わり映えしなかったような気が……」
     火華流(B)が複雑な気持ちになりつつ、Aチームに攻撃を仕掛けていく。
     だんだん星流(B)と息が合ってきたせいか、まったく違和感がない。
     その分、ひとりで戦っているような感覚に陥っているため、新鮮味が感じられなくなってしまったようである。
     それでも、戦力的には、同じくらい。
     一対一の戦いであれば、もう少し戦闘力の差が出るのかも知れないが、連携を取る事によって欠点がカバーされているようだ。
    「……でしたら、赤き逆十字の刻印をその身に刻み込みなさい!」
     理人(A)が火華流の死角に回り込み、ギルティクロスを炸裂させた。
     これが普通の戦いであれば、その一撃をモロに喰らった事で、致命傷になってもおかしくはないのだが……。
    「……火華流……随分と便利な能力もってるな……」
     それよりも速く星流が影薔薇の能力と茨数本を借り受け、杖やクロスグレイブを生成し、反撃を仕掛ける事で理人の攻撃を相殺した。
     だが、身体に掛かる負担も大きく、意識が跳びそうなほど、心が激しくグラついた。
    「あなたの罪を、灼く光線をその身体に受けてみなさい!」
     すぐさま、華音(A)がオールレンジパニッシャーを使い、星流たちに追い打ちを掛けるようにして攻撃した。
     それだけ強いと思われているのかも知れないが、今度は流石に直撃である。
    「どうした、透流。俺を早く殺(と)めて魅せろ!! 俺の殺戮と暴力を、乙女に、殺されたい。この胸に、心臓に、ナイフを突き刺せ!」
     凛凛虎(A)が興奮した様子で、透流(B)に攻撃を仕掛けていく。
     しかし、透流に攻撃は当たらない。
     まるで空気を殴る如く勢いで、凛凛虎の攻撃を避けていた。
     そして、放たれた透流の一撃!
    「……何ッ!?」
     凛凛虎は完全に油断していた。
     透流が守りに入っていたせいで……。
     後半から、攻撃ではなく、守りに転じたため、必要以上に踏み込み、まわりが見えなくなっていた。
     その間、透流は神経を刃物のように研ぎ澄まし、攻撃を仕掛ける機会を窺っていた。
     結果的に透流の攻撃をモロに喰らい、床に膝をつく事になった。
     だが、そこで非常にもアラーム音が響く。
     まだ決着がつかぬまま、非情にも終わりを告げた。
    「お疲れ。気は済んだか? 私の方は……まあまあかな」
     透流が闇堕ち状態から戻り、ホッとした表情を浮かべる。
     本音を言えば、キツかった。
     後5分アラーム音が遅ければ、形勢逆転……と言う状況も十分に有り得た。
     それでも、引き分け。
     時間が無制限であれば、間違いなく決着がついていたかも知れないが、そんな事をすれば肉体的にも、精神的にも、計り知れないダメージを受けていた事だろう。
    「……今回もすごく、満足しました。そろそろ、必要な分は消費したかな?」
     雄哉(B)が恍惚とした表情を浮かべ、サイキックアブソーバーの勝利量を確認した。
     誰も倒れる事無く効率よく戦えたせいか、いつもよりも勝利量は多め。
     それでも、完全に安定させるには、もう少し戦う必要がありそうだ。
    「……暫くはもう闇堕ちライブハウスは参加しないでおこう。流石に疲れた。なのでお休み」
     そう言って碧(A)が疲れた様子で、深い溜息を漏らすのだった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年8月19日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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