ブレイズゲート消滅~旧GHQ秘密基地

     衛・日向(探究するエクスブレイン・dn0188)は、幾度か繰り返した仕草で集まった灼滅者を見回し、久しぶりの一言もなくタブレットに視線を落とした。
    「最新の研究により、ブレイズゲートを構成していたサイキックエナジーが尽きたため、遠からずブレイズゲートが消滅することが判明した」
     説明する日向の表情と口調はどこか固い。
     小柄だった背丈はすらりと成長し、青年となった面差しに曖昧な幼さはない。
     赤い縁取りの眼鏡をかけているが、よく見れば度の入っていないものだと分かる。
    「……まあこれは、やむを得ない時代の流れだろう。ソウルボードが消滅したことで、灼滅者も闇堕ちする危険性が皆無であることが判明しているため、ブレイズゲートが消滅したとしても、直接的な問題はない」
     あるとすれば、後進のレベル上げが大変になるくらいだ。
     しかしここで、多少の問題が発生した。
    「ブレイズゲート内部の分割存在は、ブレイズゲートの力によって維持されている。つまり、ブレイズゲートが消滅すれば、分割存在は連鎖して消滅する。だが、その消滅は全く同時に行われるわけじゃない」
     ブレイズゲート本体が消滅しても、分割存在の内部に蓄えらえたブレイズゲートの力が尽きるまで、分割存在単独で最大で3時間程度は存在を維持できると試算された。
     つまり、ブレイズゲートが自然消滅した場合『分割存在をブレイズゲートの外に出さない力』も消え去るため、最大で3時間の間、ブレイズゲートから解き放たれた分割存在が暴れまわるという事態が発生してしまう。
     存在可能時間は、撃破されずに存在していた時間が長い程長くなるようだ。
    「ブレイズゲート周辺からの避難勧告などを行なうことで被害を抑制する事は可能だが、避難できない建築物などは多大な被害を被るだろう。或いは分割存在の中に、距離を無視して別の場所に出現して事件を起こすことができるような者がいた場合、被害はより大きくなるかもしれない」
    「これを防ぐために、ブレイズゲートが消滅するタイミングで、『灼滅者による大規模なブレイズゲート探索』を行なう作戦が提案された」
     それまで彼のそばで黙って聞いていた白嶺・遥凪(ホワイトリッジ・dn0107)が後を継いだ。
     こちらは元より背丈があり大人びた様子だったからか、10年経っても学生時代とあまり雰囲気が変わっていない。
     但し、日向と真逆に、あの頃かけていた眼鏡を今はしていなかった。
    「ブレイズゲートの消滅は10月31日から11月1日に発生するので、そのタイミングで、日本全国のブレイズゲートの大規模探索を行う。場所は、」
     ちら、とエクスブレインを見やる。
     日向は一枚の地図を取り出して、それから数枚の書類も並べる。
    「神奈川県横須賀市。皆一度は訪れたことがあると思う。『旧GHQ秘密基地』だ」
     或いはこの地を、武神大戦獄魔覇獄で訪れた記憶があるだろうか。
     ブレイズゲートとはいえ、戦場に赴くのは久しぶりだという灼滅者もいるだろう。或いは、普段対峙する相手と違う戦いに気合いを入れる灼滅者もいるか。
     かつて武蔵坂学園の教室に集まった時のようににわかに活気付く空気に、ああそれと、と日向が口を開いた。
    「ブレイズゲート消滅のニュースが広がっていて、それを見に観光客が集まってきている。そしてその観光客を目当てに出店も出ているようだ。それから、せっかくだからと在日米海軍横須賀基地からも屋台を出しているとか」
    「……はい?」
     あまりにも突拍子もないことに思わず灼滅者のひとりが声をこぼし、だからぁ、とやや伸びた語気でエクスブレインが再度説明する。
    「時期的にハロウィンだ。で、ハロウィンは今や一大イベントとなっている。そこへもってブレイズゲートが消滅するなんてイベントもある。それなら見に行くしかないだろう、と」
    「平和な時代になったなあ……」
    「皆で手に入れた平和だ。せっかくだから俺も見に行くつもりだけどな。ファンネルケーキ食べたいし」
     その言葉に、遥凪が弾かれたように彼を見た。
    「ブレイズゲート探索はいいが、そうそう油断するのは……」
    「今の灼滅者にとっては大した相手じゃない。ブレイズゲート消滅時に、分割存在がブレイズゲートの外で活動できないように、討ち漏らしのないように掃討するのが作戦の目的となるけど、久しぶりに顔を合わせる相手もいるだろうから探索を楽しんでくるといい」
     撃破されて復活したばかりの敵は、ブレイズゲート消滅とほぼ同時に消滅するので、外で事件を起こす危険性はなくなる。
     ブレイズゲート探索を楽しむってのもなんだかなあ、となんともいえない表情のひとりに、エクスブレインは資料をまとめながら応えた。
    「まあ、難しく考えることはないよ。同窓会みたいな感じで」
    「ブレイズゲート掃討同窓会、か」
     なんとも物騒な同窓会である。


    ■リプレイ

    ●Trick or slay, and treat
     灼滅者たちがブレイズゲート『旧GHQ秘密基地』に足を踏み入れると、見慣れた鉄板頭のアメリカン怪人、キャプテンバーベキューが地図から顔を上げ、もう何度めか分からないくらい灼滅者たちの姿に驚いた。
    「ガッデム! ムサシザカスレイヤー、いったい何度コンクエストしに来れば気が済みやがりマスか!」
     『旧GHQ秘密基地』の総制覇数は実に29万回以上を数える。
     それも今日、10月31日で終わりを迎えるのだが、そんなことを説明してもブレイズゲート内の分割存在であるダークネスが理解するはずもない。
     まあとりあえず。
    「高枝切鋏を持ち出すのも、久しぶりですね~」
     しゃきん! と断斬鋏を手に対峙する佐祐理と、彼女に続き武器を構えたりサイキックを放つ準備に入る灼滅者たち。
     さすがのダークネスも、彼我の戦力差が分からないわけがなかった。
    「オ……オーケーオーケー、ユーとミーでトーキングすれば分かり合え……」
     キャプテンバーベキューはじりじりと後ずさりながら、会話で時間を稼ぎつつ相手が油断している間に戦闘態勢を整えようとする。
     もちろん、フレンドリーにトーキングしてもらえるなんて都合のいい展開はなかった。
    「10年は戦闘してはいませんが、ハロウィンを荒らす相手とあっては黙っちゃいけませんね!」
     気合いを入れる彼女の声がきっかけとなり、灼滅者たちの攻勢が始まる。
     最後の、ブレイズゲート探索。
    「んん……本当に、消えるのか」
     折角なので、サズヤは仮装してみたが……。
    「……流石に大人になると、お菓子を渡す側になってしまった」
     和服の蛇男の仮装。カボチャのバスケットにはお菓子をいっぱい詰め込んで。
     とりっくおあ、とりーと。と口にし、
    「……10月31日の、化け物達のお祭り騒ぎ」
     ぽつぽつ怪談を語る彼の語り口に、うっかり灼滅者も分割存在も攻撃の手が止まりかけた。
     その隙をつくわけではないが、攻撃はテンポよく。躊躇いなく、迷わず彼らが逝けるよう。
     かつてそうしていたように、初顔合わせ同士でも即席の連携を組みながら敵を撃破していく。
     何戦かこなして、つかの間の小休止。
    「灼滅者引退して長いだけに、結構キツいですね~」
    「ん……無理は、禁物」
     肩で息をする佐祐理を労り、しかし姿を見せた新手の敵にサズヤは再び得物を構えた。
    「お前達も、これできちんと終われる」
     最後に、俺が送ってやれる。

     玉にとって、ここはバイクで行く全国ブレイズゲート巡りの旅の14番目。
     海外に住み個人貿易商を勤めている彼女は学生時と大差ない容姿で、猫の杖を手にした魔女の仮装だ。
     猫耳のついた帽子を淡い青の髪の上に乗せ、歩を進めるたびに裾と一緒に尻尾が揺れる。
     連戦で燃料が減ってきたので、ブレイズゲートに潜る前に、ファンネルケーキを購入。探索中に食べよう。
     ここ最近も定期的に潜っているから出現する敵やマップは把握しているし、片手間で何とかなるレベルだとも把握している。
     しかしというかなんというか、甘味の度が過ぎるのは把握してなかった。
    「ボリュームもかなりのものだし」
     言いながら掲げたトレイの大きさは、実に彼女の顔ほどもあった。
     仕事ついでに試作武器の性能試験。
     こういう時ブレイズゲートは非常に便利だったのだが、困ったことに、そのブレイズゲートが消滅してしまう。
     消滅するとなると今後どうしたものか。
     思案しながらファンネルケーキを口に運び、顔をしかめた。
    「ううむ、カロリーの暴力。美味しいけど1人で平らげるには少し重いな」
     油で揚げた生地というただでさえハイカロリーなものに、粉砂糖やらチョコレートソースやらがたっぷりとかかっている。
     しかもサイズはアメリカン。屋台料理は値段がお高いくせにサイズはコンパクトというのは、アメリカン屋台には通用しない。
     指先についたクリームをちろと舐め、ふむと唸る。
     どこからか聞こえてきた、『キルゼムオール!』の雄叫びの後に続いた『ノォーッ!!』の悲鳴。
    「日光慈眼城もそうだったけれど。どうしてこうアメリカへの誤解を招きそうな連中ばかりなのか」
     いや本当に、アメリカへの誤解を招きそうだ。しかもここ米海軍横須賀基地に程近いのに。
     溜息をついて、武器を手にムサシザカスレイヤー目掛けて襲いかかろうとするアメリカン怪人を迎え撃つ。

     探索を終えたサズヤはブレイズゲートから戻って屋台に顔を出し、休憩していた遥凪に挨拶する。
    「元気そうで、よかった」
     その言葉に彼女が笑い、そちらはどうかと問うと、こっくりと頷いた。
    「俺? ……ん、元気」
     とても、充実している。
     答えて、ふとごそごそと懐を探りだす。
     どこか嬉しそうな彼の様子に遥凪は何事かと怪訝な顔になり、
    「……こどもの写真、見る?」
     いそいそ慣れぬ手でスマホを操作し見せた写真に、動きがびたりと止まる。
    「……白嶺?」
     どうかしたかと問う彼に、白嶺・遥凪(28歳独身・恋人なし)はとてもぎこちない笑みで、何でもないと答えた。
    「幸せそうで何よりだ。……ああ、いや、本当に」
     言って、それからふっと表情を緩め、
    「それはお前が自分で掴んだものだ。手のひらからこぼれ落ちないようにしっかりと、な」
     ぐっと拳を握って見せた。
     サズヤはもう一度頷き、
    「写真、もう少し見る?」
    「……いや、もう少しブレイズゲートにこもろうと思う。また後で見せてくれ」
     それでは、と手を挙げブレイズゲートへ向かう彼女に手を振り、ファンネルケーキをもぐもぐ。
     日本語と英語が飛び交う屋台は、食べ物だけでなく米海軍関係者によるフリーマーケットもあるようだ。
    「……家族へのお土産も、買っていこう」
     きっと面白いものや楽しいもの、いいものが見つかる。
     彼が武蔵坂学園の仲間たちと過ごしてきた日々のように。

    「衛さんとは、10年前のパラオ以来かしら? お久しぶりです」
     探索から戻った佐祐理が声をかけると、日向は手にする書類に向けていた顔を上げ、ふわと微笑んだ。
    「久しぶり。もうそんなになるんだな。……なんだか、そんな感じがしないけど」
     ブレイズゲート探索の情報を説明した時よりもくだけた様子で。
    「今はカメラマンの助手をしているんです」
     言って、佐祐理はクラシックなカメラを掲げて見せた。
     数十年以上も昔の、舶来もののアンティーク=フィルムカメラ。持ち主の表情に、日向はそれがただアンティークというだけではないと理解した。
    「いいカメラだね。想いがこもっている。……これで何を?」
     風景とか? 訊く彼に笑い、そうじゃなくてと説明する。
     ESPで変身できる方が増えた今、気味悪がられたり、差別対象にされたりするのはよくない。
    「何か出来ないか考え、私が変身した姿のセルフポートレートをメインに写真展をやってみることにしてみました」
     招待券を渡しながら言う佐祐理に、日向は控えめながら嬉しそうに微笑んで受け取った。
    「きっと、みんな理解してくれると思うよ。だって、パラオで泳いでいた佐祐理さん、すごく綺麗だったから」
     俺のクラスメイトもそうだしね、と、少しだけ意味を変えてはにかむ。
    「いい未来になるように願っているよ」
    「ええ。あなたも」
     交わす笑みは、穏やかに。

     ブレイズゲート探索の休憩にと屋台散策に赴いた陽桜は、見覚えのある相手を見つけて声をかける。
    「日向さん、すっごくお久し振りですー!」
     呼ばれる声に振り向いた日向は、少しゆっくりとした歩調で彼女のそばに来て。
    「背、だいぶ伸びましたね?!」
     おおー、と見上げて声をあげる陽桜に、少し視線を下げた。
     彼が初めて彼女に会った頃は、同じくらいだった……気がする。もしかしたらこっちのほうが低かったかも。
    「いつぞやかの誕生日に大人になっても……とか話をしたの覚えてます?」
    「ああ……」
     彼女の手のひらに乗せた青いバラと、スイートフラッグの花砂糖。
     スイートフラッグの花言葉は、『嬉しい知らせ』。
    「10年も経ったらさすがにあたし達、すっかり大人になっちゃいましたけど」
     大人の実感、わきました?
     微笑み問われた日向の答えは、少しの間があった。
    「俺はエクスブレインだし……情報は分かっても実際には見られないから、世間知らずだったんだよな。だから色々な場所に行く仕事をしているけど、まだ皆と同じ場所には立てていないと思っている」
     視線を落とし、陽桜の足元を見た。
    「仕事がら大人に囲まれてはいるけど、自分が大人になったって感じはしないなあ。陽桜さんは?」
    「あたしは……んー、やっぱり大人って感じはしないかな」
     ちょっぴり小首をかしげ、けれど、
    「でも、着実に歩きたい道を歩いてるって感じはしますね」
     満面の笑みで頷き、日向も笑ってうなずく。
    「そうだ、日向さん!」
    「ん?」
    「オススメのファンネルケーキも、その他の屋台スイーツも美味しそうなのです!」
     ぱちりと両手を合わせて笑う。
     あっこのパターン知ってるっていうかなんだか懐かしい。
    「なので、スイーツ制覇、手伝ってください♪」
    「……はぁい。そういや向こうですごい色のカップケーキ売ってたけど、そういうニュアンスでも?」
     ちょっと日本人には想像できない、赤とか紫とかのカラフルな生地にやっぱりカラフルなアイシングやプラスティックのおもちゃで飾ったカップケーキ。
    「あとアルミパックに入ったスポンジに、べったりクリーム塗ったケーキとか……」
     両手で30センチメートル四方くらいの大きさを表しながら説明する日向。
     彼女が期待しているのは、たぶんそういうものではない気もするけども。
     時間はあるのだから、少しくらい寄り道したってきっと大丈夫。

     階段をおりた先、無敵斬艦刀を振るいまとわせていた炎を払う先客に夜音が声をかけた。
    「遥凪ちゃん! お久し振りさんだねぇ」
     元気さんだった? なんて尋ねる声は10年前とさっぱり変わらず、身長もさっぱり変わらない模様で。
     刀を鞘に納めてから、遥凪はとてとてと寄ってくる夜音と視線を合わせた。
    「私のほうは……まあ、うん、いろいろあったよ。夜音は変わらないようで何よりだ」
     今いくつだったかな。ええとね、僕は。……んんん!? などと、ささやかなやり取り。
    「そういえば、さっきサズヤにも会ったが……一緒じゃないんだな」
     気付いて問うと、夜音はかすかに寂しさを浮かべて笑う。
    「おひとりさまでのんびりさんなの」
     ブレイズゲートに対してのんびりさんっていうのもなんだか変な気分だねぇ。
     その笑みに、遥凪がそっと首を振った。
    「のんびりできるほど脅威が減ることはいいことだ。誰かが傷付かなくて済む。そしてそれは、お前が差し伸べた手だ。その意図があっても、なくても」
     言って、ふと、まっすぐに夜音を見つめる。
    「迷っていても時間は待ってくれないな」
     静かに笑って。
     それから近況を聞いたり、将来の話を訪ねてみたり。
     通りかかった他の人にも将来の話を聞いたりする素振り。
     それじゃあまたあとでと手を振り別れ、夜音は先に行くほど暗くなる通路を見つめた。
    「皆色々変わって行くんだね。僕は……どうだろう、何をしていくのかな」
     10年前と変わらず廃病院に住み着いて待ち人を探す自分。
     先生の名残がどこかにあればとブレイズゲートを駆けずり回った事もあったっけ。
     もの想う間に、分割存在が灼滅者との距離を詰め――。
     丈も合わず薄汚れ綻びた白衣を翻し、辺りの敵を討ち一息を。
     いなくなっていくダークネス。
     共存を選ばなかった世界の中。
     華奢な少女の指にはおよそ合わないサイズの銀の指輪の、その裏側に刻印された文字を指でなぞり。
     先生、と一人呟いた。

     そして、最奥にて。
    「やはり現れたか、灼滅者……」
     地を這う声に、皆無は眉を動かすこともなく現れた羅刹を見据えた。
     背だけでなく全身に色鮮やかな刺青を施した男は、若輩とさえ呼べる姿の青年を睨む。
     姿は10年前のままに若く、しかし確かに10年の時が蓄積され、その技量も研ぎ澄まされていた。
     最近は死刑執行人等も引き受けて、表舞台からは完全に姿を消している。
     その彼が姿を見せたと言うことは。
    「随分と賑やかにしておったようだが……」
    「ええ、まあ。今回はブレイズゲートの後始末に」
     その言葉の意味を図りかね、『彫師』が眉をひそめる。
     物見遊山で来ている人達に被害が及ばぬように、というのは建前で。
     彼の狙いは、『彫師』達を野に放たない事。
     うずめとの因縁もあるが、刺青羅刹を生み出す存在とその力はここで根絶やしにせねばならない。
    「力を奪って自分の力にできるのでしたらそれはそれで魅力ですが」
     それを狙い、そして果たせなかったダークネスのように。
    「という訳で、狩らせていただきますよ」
     宣言と共に皆無は、その刺青の力ごと、喰らい尽くすかの如く己の力を最大限に解き放つ。
     一合、二合と互いの攻撃を交わす間に、『彫師』は自らの絶対的な劣勢を理解し、それでも決して引かず。
     ず、ぁっ!!
     灼滅者の惑いのない一撃が、その『刺青』ごと羅刹を討った。
    「我が力、灼滅者に及ばずか……」
     幾たび繰り返されたか自身にすら分からぬ絶命。
     灼滅した『彫師』の体が消滅していく。『刺青』の消えた後を静かに見つめ、
    「貴方達を構成するサイキックエナジーを奪えば、その力を奪えますかね?」
     ま、今更の戯言ですけども。
     かつて羅刹として堕ち黒炎夜叉を名乗った灼滅者の手元で、金剛錫杖が鳴った。

     暦が移ろう。
     10月31日から、11月1日に。
     様々な思いをその内に納め、ブレイズゲートは消滅していく。
     戦いに対して。ダークネスに対して。或いは、過ぎ去った記憶に対して。
     それはさながら、一夜の幻のように。

    作者:鈴木リョウジ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月8日
    難度:普通
    参加:6人
    結果:成功!
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