ブレイズゲート消滅~富士急ハイランド

    作者:西灰三


    「みんな、久しぶりだね」
     有明・クロエは10年ぶりに出会う旧友たちを前にしてそう口を開いた。背はあまり変わらないけども色々と経験してきたのかしっかりとした大人の雰囲気をまとっている。服装もどちらかと言えばフォーマルに近いか。
    「それで久しぶりに連絡を入れた理由なんだけど……そろそろブレイズゲートが消えそうって言う事が分かってきたんだ」
     ブレイズゲートを形作っていたサイキックエナジーが尽きるのが原因らしい。諸行無常である。……後進の育成がちょっと大変になりそうだが。
    「それでそこにいた分割存在も一緒に消滅するんだけど、一緒に消えるわけじゃなくてちょっと時間差があるんだ。その間に分割存在が悪さをしないようになんとかして欲しいんだ」
     なんとか? と言う疑問の声にクロエは答える。
    「えーと、皆に行ってもらいたいのは富士急ハイランドなんだ。……あそこのブレイズゲートってもともと不安定だったし、直接人に危害を与えないのもいるから……」
     それでも一般人に近い位置に現れる危険な存在もいるのでやっておくべきだろう。
    「まあ、みんなが動いてくれれば大体さくっと終わるから遊びついでに来てくれると嬉しいな」
     作戦当日は富士急ハイランドもハロウィンイベントを行っており、それに合わせて仮装して戦っても良いかも知れない。と言うか観光地+ブレイズゲート見物でいっぱい人が来る予想が立っている。
    「現場で会う機会があったらみんながどうしてるのか教えてほしいな。ぞれじゃみんな頑張ってね!」


    ■リプレイ

    ●富士急ハイランド in Halloween
    「兄者、今日はやけに人が多いな」
    「弟よ、お前もそう思うか」
     浅草風神怪人と浅草雷神怪人は必死でモギリをしながら小声でつぶやきあう。その様子をスタッフが私語をするアルバイトをたしなめるような視線で睨むとしずしずと二人は業務へと集中する。
    (「「今日はやけに灼滅者っぽいのを見るのは気のせいか……」」)
     写真撮影に応じるご当地怪人兄弟を一樹が振り向く。
    「あっさり通り抜けてきたけれど大丈夫だったかな……」
     10年前から変わらないその姿を見て、彼は自らの同じ時間も振り返る。『憧れ』だったその人の後を追うように、自らに施してもらったことを返すつもりでカウンセラーの道を辿った日々。振り返れば色々あったけれど。
    「この10年の間に、少しでも『紳士』に近づけたのかな、僕は」
     久方振りに握る武器の感触は懐かしい。今はその力でできることをするために一樹は園内に足を向ける。

     玉は全国ブレイズゲート巡りの途中、ワールド・ブッチギリ・コースター・ドドンパ改め、ぶっちぎりスピードモンスター・ド・ドドンパに乗っていた。そして同乗者には相も変わらず釘バットの六六六人衆が同乗していた。彼女は小さくため息をつくと落下途中での戦闘を開始する。
    「テメェら灼滅者……!! どんな……!!」
     やっぱり古臭い言葉を吐く相手といびつなウロボロスブレイドで打ち合う。その姿を見物人たちが見上げている。そうそう灼滅者なんてこのご時世お目にかかれないし。そして戦いから離れて久しいと言えども、分割存在ごときに遅れを取る彼らではない。
    「邪魔」
     ド・ドドンパの最も特徴的なところであるループの最高点で敵と共に落ちながら相手を切り捨てる。そして何もなかったようにコースターに飛び乗り終点までたどり着く。
    「……入手アイテムはこれか。ただの遊園地土産でブレイズゲート関係ないな?」
     コースターから降りた玉が手にしていたのは焼菓子詰め合わせであった。個人貿易商である彼女は何かめぼしいものを探していたようだが……。
    「これはうかつに転売すると訴えられる類のやつだろうか」
     思案しとりあえず考えるのは後にした。せっかくだから4大コースター乗りたいし。果たして彼女は全てのブレイズゲートを回ることはできるのだろうか。

    「お、クロエ久しぶり」
    「淳さん、久しぶりです」
    「……口調変わってないか?」
    「……10年経てば変わるよ……」
     熊毛皮の女戦士姿の周は園内で、大人びたクロエと久しぶりに出会った。何度か教室でダークネス関連の依頼をやり取りした仲である。当時の口調に戻ったクロエは周に問う。
    「淳さんは今何してるの?」
    「アタシ? 今は考古学者として、ヒーローとして世界中回ってるよ。クロエは?」
    「……インディ? あ、ボクは通訳と、それとは別に灼滅者との仲介する仕事してるよ」
     クロエは視線を遠くにやった。
    「ところで不安定とか言われてた気がするけど、今日まで残ってたんだなここ」
    「まあ残り火みたいなものだけどね。……あれ!」
     クロエが指さした方にはベートーヴェンもどきの群れが現れていた。
    「クロエは下がってな! 確実に全部ぶっ潰してやる!」
     燃えるような赤髪とサイキックの炎をはためかせ、周はまっすぐに敵陣に切り込んだ。

     奏明彦と結衣奈、そしてその子供らである明奈と勇斗の姉弟の家族は富士急ハイランドのハロウィンというイベントに行楽に来ていた。しっかり仮装も忘れていない。……というかこういう時イグニッションカードって便利である。
     明彦は騎士鎧に白銀の剣を携えて、結衣奈は昔使っていた装備のメカニカル魔法少女姿にマテリアルロッドの【Metis】を手に。
    「2児の母にもなってこの格好は恥ずかしいよ!?」
    「結衣奈はやっぱり可愛いなあ」
     なぜ着た。旦那はほっこり顔で、子供たちは「かっこいいー」と言うばかりである。そんなこんなでVRジェットコースターや、メリーゴーランドで家族の団らんを過ごしていると。
    「明奈、勇斗、こっちを向いてね~」
    「……結衣奈、高飛車の所に」
     日本刀を持った、あれは任侠鬼だろうか? 二人は子供たちにここを動かないように伝えるとコースターが来ないタイミングを見繕ってレールの上へと跳び上がる。
    「今日は祭りかい? そりゃ客も多いってことだな」
     眼の前に現れた二人に光り物をちらつかせた敵は直ぐ様に袈裟懸けを仕掛けるが、それよりも早く結衣奈が明彦の影から飛び出し、相手の足を杖で砕く。姿勢が崩れた所を明彦の剣が一刀両断にして灼滅する。敵の消滅を見届けると即座に二人は子供たちの元へと戻る。
    「昔の父さんと母さんはこんな風に戦っていたんだよ」
    「父と母は強し、なんだよ! どうかな、格好良かったかな?」

     FUJIYAMA、それは富士急ハイランドで最も人気のあるコースターでありアトラクションである。
    「あんな変顔の写真を残させるわけにはいかないにゃ。こうなったら、このお店をぶっ壊して誰にも見れないようにしてやるニャ!!」
     その終点で物騒なことを言う猫娘、だが彼女に向けて大きな声がかけられる。
    「待て!」
    「何者にゃ!」
    「俺の名前は風真・和弥! 暴れるのはよすんだ!」
    「なぜにゃ!」
    「暴れれば俺はお前を倒さねなければいけない! お前のおっぱいごとだ!」
    「……何言ってるにゃ?」
    「あと数時間で消えてしまうこのおっぱいの記憶を俺の中に残しておくのがせめてできる事だ! 行くぞ!」
    「にゃ!? にゃぁあぁぁああ!?」
    「何してるんですか! 和弥さん!」
    「ぐわああ!? 初花か!? これには深い理由が……!」
    「女の人の胸を公然と触る事にどんな理由が成り立つんですか! さ、さわるなら、わた」
    「君の事は世界で一番だと思ってる、でも男にはやらねば……っぐが!」
    「喧嘩するにしても仲直りするにしてもにゃあから離れるにゃ!」
     なお他の灼滅者からはスルーされた挙げ句、和弥は終わる頃にはボロボロになっていたという……。

     グレート・ザブーンではなく、今はクール・ジャパーンと呼ばれているマシンの前で光也がぼーっと突っ立っている。
    「あ、光也さんお久しぶりです!」
     その姿を認めて声をかけたのは黒い鍔付きの魔女帽を被った陽桜と雨音だった。一人と一匹は黒いマントを翻しながら彼に近づいてくるのを確認して挨拶をする。
    「もしかして多忙中に呼び出しがかかった感じですか?」
    「ええ、まあ、有明さんに。そう言えば彼女から聞きましたがご結婚されたようで。おめでとうございますね」
    「ありがとうございます。ともあれハッピーハロウィーン♪」
     照れを隠すように光也に魔女帽をかぶせる。その時気付いたのだがなんか妙に肌が焼けている気がする。
    「光也さん、今はどんな仕事を? 流浪の釣り人さんとか?」
    「根気よくやるという意味で言えば釣り人も近いのかも知れませんが。中東の遺跡を調査……だったはずが治安維持に駆り出される機会の方が多くなり……」
     そう言いかけた所で二人によう、と元気な声がかけられる。
    「うわあ、久しぶりです!」
    「淳さんも変わらずお久しぶりです。……中東では助かりました」
    「……アタシ、なんかしてたっけ」
    「手が足りない時に武装集団叩き伏せて、終わったあとすぐに次の場所に行ってしまったから挨拶する時間もなかったんですよ」
     そんな会話をしてるいると陽桜は10年前の武蔵坂学園を思い出す。たくさんの仲間達と出会い、戦い時を過ごした日々。おそらくブレイズゲートの消失が済んでしまえばもうこうして会う機会も殆ど無いだろう。そんな彼らに遠くから寄ってきたクロエから声がかけられる。
    「あ、結構人数いるね。お話中悪いんだけど、あっちの広場に分割存在がでたみたいだよ。別の人にも伝えてあるから合流して片付けてきて」
     頼まれた通りに彼らは走り出す。途中で一樹と合流しビスケットを一枚渡される。
    「そちらもお疲れ様。さ、甘いものでも食べてもうひと頑張りしよう?」
    「ありがとうございます! さすがハロウィンです!」
     陽桜は2つに割ってあまおとの口の中に投げ入れる、その表情を見て一樹の感想がこぼれる。
    「楽しそうだね」
    「うん、たぶん今日が武蔵坂学園の人が集まれる最後の日。だからこそ今日のこの日の戦いも楽しむのもこなしていきたいですから!」

    「ええじゃないか……ええじゃないか……」
     大量のゾンビたちと【神凪家】のメンバーが『ええじゃないか』の前で戦っている。ゾンビはハロウィンの仮装の定番ではあるが、流石にここまで生々しくはない。
     巫女服と神主服で身を包んだ一団が和風コースターの前でゾンビ退治をする姿はなるほど絵にはなる。遊園地の客たちは彼らを遠巻きに応援しているようだ。
     彼らにとってこの場所は重要な所だ。初めて家族で赴きご当地怪人たちと戦い、それ以外にも色々な経験をした場所。ブレイズゲートとしては不安定なものの、人に害を与えかねないこの分割存在は見過ごすわけにはいかない。
     彼らは家族ならではの連携を見せて手早くゾンビたちを片付けていく。
    「ここはこれで終わりでしょうか」
     燐が武器を下ろして辺りを見回すと、安全を確認した客が中華まんを被ったへんなのがいると聞く。その情報を元に彼らが向かうと行き交う人々の口の中に熱々の中華まんを押し込む横浜中華まん怪人の姿があった。これでは口の中がやけどしてしまう。
    「キサマら灼滅者アルね! 中華まんを広める活動を邪魔しないで欲しいアル!」
    「もうしたい放題するのは今日で終わりだ。僕達が送ってあげるよ」
    「お役目ご苦労さま。富士急ハイランドの平和の為に潔く消えてね!!」
     朔夜と陽和が同時に切り込み、ご当地怪人は慌ててせいろの中からフカヒレまんを取り出し食べて回復を図る。
    「くっ……もぐもぐ、ごっくん……多勢に無勢とは卑怯アル!」
     そう言いながらも中華まんを蹴りでまとめてばら撒くがその全てを空凛が叩き落とす。
    「10年以上に及ぶイベントもやがて終わりが来ます。閉会式を、私達の手で」
    「貴方達の悪行もここまでです!! さあ、終わりの時ですよ?」
     相手が足を下ろすその隙に双調が即座に近付き相手を掴む。そして飛び上がったかと思うと強かに地面へと投げつける。刹那、ご当地怪人は爆発し消滅していく。――イベントの終わりは近い。

     龍牙はミイラ男の姿で園内を回っている。ここにいたエクスブレイン曰く手薄な所を見て欲しいと言われたからだ。巡る中で出会う風景は過去を思い出させる。
    「……そう言えば小さい頃にアイツと家族で来たな」
     通り過ぎる家族連れを目で追ってから彼は首を横に振る。
    「……本当に懐かしいけど、思い出に浸るのは後だな」
     彼の足は戦慄迷宮へと足を向ける。繰り返しバージョンアップしているここは、彼の思い出の中ではまだ企画に過ぎない頃だったか。灼滅者であることを入り口で示し、中に何かいないかを見て回る。
    「………」
    『トンカラトンと言え』
     低い男の声で包帯姿の怪人が現れ、壊れたレコーダーのような言葉を放つ。
    『トンカラトンと言え!』
    「断る」
     答えるよりも早く日本刀を抜いてそして仕舞えば、トンカラトンの体は胴から上下真っ二つに切り捨てられる。周りに隠れているアクターから感嘆の声が漏れ出るのを、龍牙は聞き取り微かに笑った。

     此処はちょっと楽しみつつ戦いの練習に来ていたのよ、とチセは述懐する。
    「遊びながら戦うことができるのは、これで最後になってしまうのね……」
     寂しげな視線をそこかしこに向けて歩く彼女は感傷モード。
     ――ええじゃないかするアンデッドさんたちとか、変顔写っちゃったから抹消しなきゃする淫魔さんとか、色々居らっしゃいましたね。
    「だけれど、理論的にツッコミ満載なことをおっしゃっていた分割存在さんが居たのを鮮明に覚えているのですよ」
     彼女の足が大観覧車・シャイニング・フラワーの前で止まる。
    「……ええ、観覧車仮面です」
    「カンラカンラ! 回れ回れ! 回るでゴザルよシャイニング・フラワー! ……むむっ!」
     チセを始め、エアン・百花や明莉・ミカエラ等の二人組が観覧車仮面と対峙していた。
    「ククク、よくぞここまで来た。我が術中に嵌りに来たでゴザルか」
    「……そこの方々は、ここは私に任せて先に行って下さい。ここまでの戦いで疲れているでしょう」
     その場にいた灼滅者達はチセを残して観覧車の列に並ぶ。
    「貴様は並ばなくてもいいでゴザルか」
    「そんな事よりあなたに聞きたいことがあります。まずあなたはここで何をしようとしてるのかしら」
    「簡単なこと、観覧車を支配し、この世を恐怖のズンドコに陥れてくれるのゴザルよ!」
    「具体的には?」
    「具体的には拙者の能力を受けると観覧車に乗ったカップルがアツアツになるでゴザル! カップルをアツアツにすることによって、地球温暖化は進み、人口は爆発し……そこからなんやかんやあって、やがて世界はグローバルジャスティス様のものとなるのでゴザル!」
     改めて聞いてもよく分からない理論である。チセはこめかみに触れるととりあえずフリージングデスを叩き込む。
    「冷たっ! 何をするでゴザルか!?」
    「カップルをアツアツにしても別に地球は温暖化しません!」
    「なん……だと……でゴザル! そんなバカなでゴザル!」
     体についた観覧車を回転させ嵐を呼ぶ観覧車仮面。それを真っ向から紅く切り裂くチセの口撃は止まらない。
    「普通は観覧車を回しても風は起きないし」
    「グハア!? ならばこれならどうでゴザルか!」
     ミニチュアカップル爆弾を投げつけるがこちらも白睡蓮の飾りの付いた杖で打ち返される。
    「……あのね、あと恐怖のズンドコじゃなくてどん底だと思うの」
    「まさかの言いまつがいでゴザルか!? げふぅ!?」
     思い切りフォースブレイクを受けた観覧車仮面は吹っ飛んで地面に伏せる。もう息も絶え絶えなのだろうが立ち上がる。
    「グローバルジャスティス様に栄光あれーッ!!」
    「あ、もう私達が倒したわ」
    「え」
     こうしてこの場所の顔とも言えるご当地怪人は最期を迎えたのであった。

    「えあんさん! もも、スケルトンに乗りたい!」
     はにかみながら要望を出した百花に応えエアンはスケルトンのスケルちゃんに乗り込んだ。積極的に乗り込んだ彼女をからかうような笑みを浮かべて問う。
    「これが噂のスケルトンか、ももは大丈夫?」
     今日の二人の仮装は狐の嫁入りがテーマである。その彼女の白無垢の袖から伸びる白い手に、エアンは自らの手を添える。白い手が微かに震えていたから。
    「手、繋ごうか?」
    「……うんっ」
     百花の手が彼の手に重なると震えは止まる。そこから二人の時間がゆっくりと動く。いつしか彼らの乗る透明なゴンドラは頂点にたどり着く。
    「……えあんさん、富士山!」
    「本当だ……」
     二人はその姿に目を奪われる。エアンの目の前にはあまりに雄大な世界が広がっている、ここだけ見ていると時間があまり動いていないようにも見える。そんな彼の頬に百花の手が触れる。それに気付いた彼は彼女の方を向くと彼女と視線が交差する。
     ふっと綿帽子が揺れる。二人の顔がその奥で近づく。そして離れると同時に互いに微笑み合う。
    「ずっとずっと……いっしょにいようね?」
    「うん、これからも変わらずに、ずっと」
     ふわりと感情が二人の間で踊る。
    「ずっと大好きよ」
    「何年経っても、俺も、ももが大好きだよ」

     明莉とミカエラは下に広がる富士急ハイランドを見ながら呟く。こちらはスクムくんだ。
    「……懐かしいな」
     ここでの戦いは何かと縁があった。ご当地怪人選手権に、とあるアンブレイカブル。
    「トンカラトンとか?」
    「まあそういうとか、面白いのばっかだったけどね」
    「光って回る観覧車とかね」
     そんな彼女を苦笑交じりに見遣る。
    「光って回る大きな花、ミカエラみたい」
    「あのご当地怪人とキャラ被ってるし!」
     冗談を言い合いながら明莉がとある駐車場に目をやる。今は多くの乗用車が停まっている。
    「第三駐車場、あれかな」
    「第三駐車場。そっか、あれが……」
     当時の武蔵坂学園にとっては強敵であったアンブレイカブル、柴崎・明。その場で向かい合っていた彼はその実力に強く焦がれていた。その彼の隣でミカエラがぱたぱたと、手で風を起こしている。
    「……どした?」
    「あー、なんだか暑いねー。アイツの呪いかな?」
     突然ミカエラが、急に声色を変えて明莉に聞く。
    「……ね、お膝に乗ってもいい? だいじょぶ、あたし軽いもん♪」
     答えを聞く前に明莉の膝の上に乗るミカエラ。彼の顔にも笑みがこぼれている。
    「あー、そいや俺も何か熱いな」
     彼の言葉もきっと熱に浮かされているのだろう。
    「仕方ないよね、特殊攻撃受けたもん♪」
    「熱、冷まさないとね?」
     彼は抱きしめてくる彼女と唇を重ねる。誰かに見られているかも知れないが、それは仕方ない。
    「……あたし、一人目は男の子がいいな。ね?」

     そして白い残り火は消えていく。人々の賑やかな声の中で。陰にいた者たちの陽の中での戦いによって。
     いつしか彼らもいなくなる、それは一つの終わりであり、次の始まりだ。そして彼らは語られる。闇を灼き滅ぼした者、真理を打ち倒した者。灼滅者(スレイヤー)と。
     その時の歴史は人の手で綴られているのだろう。彼らの切り開いたこの世界に幸あれ。

    作者:西灰三 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月8日
    難度:普通
    参加:18人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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