ブレイズゲート消滅~ハロウィンの流れ星

    作者:ねこあじ


     時の流れというものだろうか。
     武蔵坂の灼滅者にとって馴染みの深い場所が、終わろうとしていた。
     幾星霜を経て、十月三十一日へと向かう。
    「皆さん、お久しぶりね。元気に過ごしていたかしら?
     近況報告とか、色々聞くのはまた後にして、早速だけれど説明を始めるわね」
     遥神・鳴歌(エクスブレイン・dn0221)が久しぶりに集った灼滅者達へと言った。
    「最新の研究により、ブレイズゲートを構成していたサイキックエナジーが尽きたことが判明したわ。
     これによって遠からずブレイズゲートも消滅することが分かったの」
    「ソウルボードが消滅したから、灼滅者の闇堕ちする危険性は皆無と判明したよね。
     なら、ブレイズゲートが消滅したとしても、直接的な問題もなさそうだね」
     集まった灼滅者の一人、日向・草太(神薙使い・dn0158)が言い、鳴歌は頷いた。
    「ブレイズゲート内部の分割存在は、ブレイズゲートの力によって維持されている。
     つまり、ブレイズゲートが消滅すれば、分割存在も連鎖して消滅するの」
     凡そ予想通りである。
     灼滅者達は頷いた。その中には、変わらない者もいるし年相応の落ち着きを持った者もいる。十年の歳月は様々に見て取れた。
     そんな彼らを眺めながら鳴歌は言葉を続けた。
    「でも消滅は全く同時に行われるわけではないの」
     多少の問題は発生するらしい。灼滅者達は気を引き締めた。
     彼女が言うには。
     ブレイズゲート本体が消滅しても、分割存在の内部に蓄えられたブレイズゲートの力が尽きるまで、分割存在は単独で最大三時間程度は、存在を維持できると試算された。
     つまり、ブレイズゲートが自然消滅した場合「分割存在をブレイズゲートの外に出さない力」も消え去るため、最大で三時間の間、ブレイズゲートから解放された分割存在が暴れまわる――そんな事態が発生することとなる。
    「周辺に被害が起こるとのは当然のこととして、あとは、距離を無視して別の場所に出現して事件を起こすことができるような者がいたら、被害はより多くなることでしょう」

     こうして、ブレイズゲートが消滅するタイミングで「灼滅者による大規模なブレイズゲート探索」を行なう作戦が提案されることとなった。
     ブレイズゲートの消滅は十月三十一日から十一月一日にかけて発生するようだ。
     ――ハロウィンの夜だ。
    「時間制限付きで暴れる分割存在か……。まるでハロウィンの魔物だな」
     文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)が、そう言うと、
    「つまり、ハロウィンのイベントをするべきだということか」
     神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)がそう同意した。

     草太が資料を見ながら呟く。
    「僕たちが向かう場所は、緋鳴館の一角――眷属のフライングメイド服がいっぱいのところだね」
     可憐で麗しいメイド服が沢山flyしている。
    『わたしゃ洋服屋、レプラコーン♪
     じょうずにメイド~服、作ってみましょ~う♪
     チクチックチク、チクチックチク、でき~あがり~♪
     おつぎはな~んの、服つくりましょ~う♪』
     と歌いながら淫魔レプラコーンさんが頑張って作っていたフライングメイド服。
    「ああ、同じ眷属のマジックキャットは、ハロウィンって感じだね」
     トンガリ帽子を被って赤目がくりんとめっさかわゆい黒猫である。なんなんこのおてて、っていうか脚。かわいすぎだろ。
    「……後はメイド服や執事服の淫魔とか……色々いるね。資料はあるし、復習がてら一度目を通してみよう」
     と、草太。
    「期間はあるし、色々準備していきたいね」


    ■リプレイ

     悲鳴館のとある一角は薔薇と血の香りが薄まり、様々な繊維の入り混じった匂い。
    「実に十年ぶりか、此処に来るのも皆と共に戦場に立つのも」
     ニコ(d03078)が呟く。はたりと耳が揺れ、スカートが微かに翻った。
    「そして此のウサミミメイド服に袖を通したのも……ッ」
     くっ、といかめしい表情で言うニコ。悲愴、いや、喜びの声。色々な意味で少々キツくなったかな、と内心思っていた。思うだけに留めた。口に出したら、こう、なんか、我に返る、ゼッタイ。
    「ここにはメイド服がある。そしてウサミミもある。ならば、やることは一つ!」
     真剣な目で言を紡ぐのは渚緒(d17115)――今宵スペシャル再結成! 【糸括】ウサミミメイダーズ。
    「三時間スペシャル的!」
     陽司(d36254)の頭の中でさくっと見出しが出来上がった。
     男性陣――フーベルトゥス先生とカルラは距離を保ち追随してくる光景。
     ばさばさと音を立て、フライングメイド服が灼滅者達を取り囲む。
    「ここには長らく世話になった。これで最後と思えば寂しく、」
     くっ、目を閉じ真摯な口調で何かを言おうとした白兎メイドな脇差(d17382)は一瞬でフライング服に埋もれた。
    「……なるかよこん畜生!!」
     内から山を崩し出てくる脇差。スカート丈がミニミニに変わり、元のメイド服が攫われていく――。
    「では先生、おさらいします」
     と明莉(d14267)はフーベルトゥス先生の頷きを確認した後、重要な事を述べた。
    「強制着衣のBSは『捕縛』です。皆さん気を付けて」
    「BS無しでも強制着衣じゃねーか!」
     脱がされたメイド服を奪還すべく、めっちゃ動いて服を攻撃する脇差に「メイドさん、大股気を付けて!」と声掛けしたさくらえ(d02131)は続ける。
    「すっごいね、とりさん! 敵も味方もどこまでもメイドだねー♪」
    「……さくら、超楽しそうだなおい!?」
     にっこにこな彼に応じる勇弥(d02311)はスカートめくりしてくるフランス人形を懸命に払っていた。
    「ははは、どうだ神鳳。皆堂々としたものだろう」
     ニコの声に頷く勇弥は「猛者だね」と呟く。
    「何、慣れてしまえばどうという事は無い」
     そんな彼らにもメイド服達は容赦なく襲いかかってくる。
    「はっ。危なーい!」
     やや棒読みで渚緒が庇いの為にカルラを前にやった。
    「兄さんだけ逃げようなんて思わないでね……?」
     可愛い弟の頼みを基本的に断れないのが「兄」というものだ。服に埋もれていくカルラ。
     可愛い生徒ニコが師を見れば、弧を描くようにさりげなく移動して次の標的へと向かっていく所であった。
     一方、少し戻って女性陣。
    「ウサ耳メイド隊、前へ♪」
     可憐なメイド達が優雅に前へ。男性陣と同じように踏みこむ姿、安定感は半端ない。主に絵的な意味で。
     淑やかに号令をかけたのはらぶりぃ☆らびきゃっとを着たミカエラ(d03125)。
    「それにしても壮観だね。種々メイドだらけ」
    「ふふ、そうですね」
     微笑む紗里亜(d02051)。十年経っても変わらぬウサミミメイダーズを見ながら、手の八卦方棍で傍のフライングメイド服を絡めとる。
    「さ、店仕舞いは盛大に行きましょう!」
    「はい! 楽しく盛大に!」
     そう言った和奏(d03706)が攻撃に動けば、エンドレス*TOWAのスカートもふわりふわりと動く。
    『いつも』の皆と一緒の杏子(d17363)はにっこりと微笑んでいた。
     大人になった彼女は色っぽいメイドさんで。
    (「お胸の格差社会も気にならな……」)
     でも杏子は見てしまった。紗里亜の奥ゆかしく楚々としたビクトリアンメイド服だからこそ輝く王侯貴族的な――胸。
    「……ならないよっ!」
     うわぁんと涙目で八つ当たりの攻撃を繰りだす杏子。
    「ああっ、キョンちゃん気を確かにっ!」
     フライングメイド服の山に突っ込んでいく二人を見てにこりと微笑む千尋(d07814)。
    「ウサミミメイダーズby糸括・フィニクス連合出撃は、賑やかだね」
     襲ってきたフライング服を華麗に千尋は回避。黒系に統一されたウサミミゴスロリパンク風メイド服を翻す姿は洗練された可愛い格好良さ。
    「千尋、かっこいーっ♪」
     ミカエラがぴょんこと跳ねて応援ダンス。
    「どうよ、あたしもまだまだスタイル維持できてるでしょ!?」
     しわすざき・ちひろ、にじゅうはっさい、まいにちおしごとがんばってます。
    「お、おう……千尋さん」
     陽司は言いながら、何やら合掌していた輝乃(d24803)に気付いた。目を向ければ、彼女の夫がミニミニメイド服になっていた。
    「と、脇差さん。カクゴ決まってんな……負けらんねえ」
     気合を入れた陽司は歌った。ディーヴァズメロディ(ふんいき)っぽい気合いに反応したのか「俺を着ろぉ!」という風に強制着衣を仕掛けられ、彼はキラキラと光を放つメイドへと進化した。ゴシックメイド服(ラメ付)であった。
    「それ、強制っていうか、もはや誘導着衣だよね!?」
     わりと近くで直視した澪(d37882)が言った。
    「混沌ですね」
     真名(d08325)が呟く。
     くるっと真名が回れば、膝上十三センチでふわり舞うパニエ付スカート。そしてウサミミ――「あ」と彼は声を上げ、目が合った人の元へと歩み寄った。
    「神鳳さんお久し振りです」
    「? ……! 虚中くん、久しぶり。
     あの時は男性アイドルで……けふっ」
     思いだしたのか噴出す勇弥。真名と澪は可憐枠として女性陣在中であった――ので、うん。察した真名は微笑み、勇弥を見た。
    「見ない間に……」
     じー。
    「……イイ趣味にお目覚めで何よりです」
    「似合うでしょう?」と尻尾を振り応じたのは加具土であった。杏子につけてもらったウサミミが揺れる。
     チャイナメイド服を見つければ紗里亜を。ツンデレメイド服を見つければ脇差を――プロデュース(物理)していく仲間へ輝乃が言う。
    「さすがミカエラ、抜け目がないね」
    「あ、巫女や戦国なメイド服も舞ってる。風情だなぁ♪」
    「いとをかし、だね」
     包囲してくるメイド服達を倒していく輝乃とミカエラ。
    「粗方、片付いたかな。――!」
     息を吐き一瞬手を止めた瞬間だった。フライングシルキーメイド服が輝乃に強制着衣を仕掛ける。
     ペンダント代わりのお面はそのままに、いつもの着流し姿からウサミミメイドとなった輝乃。
    「く!?」
    「何か気配があるなと思っていたら。
     ――って、脇差?」
     突然唸った旦那を見れば何故か悶えていた。
     現われた淫魔メイド・シルキーが彼らを取り囲む最中、明莉は言う。
    「シルキー? 甘いな。
     こっちには現役アイドル@れいタン☆がいるんだからな!」
    「やっほー! 皆の心のアイドル、れいタン☆だ☆よっ♪」
     執事淫魔を従えたれいタンがキラッ☆とウインク。「って誰がれいタンだぁっ!」と言って執事淫魔を攻撃する澪。
    「もー、メイド服でもなんでもかかってこぉーいっ!」
     と叫べば、イタダキマスなノリで澪とミカエラにメイド服が襲いかかる。
    「く!?」
    「にゃぎゃー!?
     って、あかりん?」
     ネコネコメイド服に着衣されたミカエラが、突然唸った夫を見れば何故か悶えていた。
    「基本的に【俺の嫁が可愛すぎてつらい】って完治しませんよね」
     と、和奏。BS【眠い】と似たものだろうがGS(グッドステータス)な気がするのでキュアできない。
    「わかるわかるー。そこに【娘】が加わった今、ほんとどうにかなりそうでね」
     と言うのは二人の娘をもつさくらえだ。妻娘と溺愛する彼の、大人魅力な女装力はカンストしていた。
     メイドや執事など、使用人の制服は様々にある。
    「清純、健康美、無垢、貞節――そんなデイリーメイド服が旦那様には似合うと思うのです!」
    「断る」
     主張の内容が理解できませんね、という顔でラススヴィ(d25877)は無敵斬艦刀を振り執事淫魔を一刀両断。
     敵に囲まれているがそれらへ赴き駆けるは影の狼達だ。走駆に散った残滓が黒薔薇の花弁のように、周囲を舞う。
     その中心には白狼――ラススヴィは一つ頷いた。
    「気晴らしには良いな」
     十年という年月。久々に見る知り合いの姿を度々目にしながら、変わらぬ姿の皆無(d25213)は佛継弥勒掌で結界を構築する。敵の霊的因子の流れが遮断され、次々とフライングメイド服が落ちていく。
    「浮かれて観光に来ている人達は本当に何を考えているのやら……ですが、被害を出す訳にはいきませんからね」
     落ちた敵を一体また一体と仕留め、穏やかな笑みを浮かべる皆無の攻撃は容赦が無い。
    「きっちりと駆除をすると致しましょう」
     【白影の夢】は新たな階層へと踏みこんだ。
    『トリックオアトリートー!』
     ハロウィンの挨拶が重なる。
     ひらりと舞い込む蝶の羽は青く、シャオ(d36107)のゴシックメイドのスカートがふわりと広がる。
    「なのですー!」
     と望(d25986)――目隠しのなくなった瞳は煌いて、ツーサイドアップな髪にゴシックメイド服。
     半ばヤケ気味に言ったのはロードゼンヘンド(d36355)である。
    「誰得だよコノヤロウ……」
     強制着衣への対処はメイド服を着れば大丈夫、と言われ黒いゴシック調なメイド服を着ている。一見、不機嫌そうに見えるが、だが一見である。
    「問題なく可愛いな……なんで似合ってるんだよ!!」
     チッと舌打ちして自身を見下ろし、「いやそれよりも」と言ってシャオと望の写真をめっちゃ撮り始めるロードゼンヘンド。
     何枚撮っても大丈夫。予備もきちんと持ってきた。
    「ツインテール久し振りだけど、大丈夫かな……?」
    「……似合ってるって、可愛いって」
     シャオとロードゼンヘンドにこくこくと頷く望。
    「二人共似合うのですー。
     あ、こっち寄らないでください。少し離れて行動しましょう?」
    「何ゆえ!?」
     レンズを向けるロードゼンヘンドに、指先をつんつんさせて望は、
    「似たような服装ですし、並んだら私が比較して小さく、幼く見えてしまうのです!」
     切実な問題である。
     シャオはダンスに誘うように、手を広げた。
    「えへへ、皆とっても可愛いのー。だから一緒に、ね!」
     玉(d03686)がSphyrnidaeを繰れば先端の重みに伴い伸びる刀身がメイド服達を絡めとる。
    「殺伐としたところが多かったから、ここは癒されるね」
     マジックキャットを軽くいなす玉の服装は強制着衣されたのちに倒したメイド服。
     戦利品の一つである。
     しかし、と玉が呟く。
    「……十種類以上ものメイド服となると、流石に持ち歩くにはだいぶ嵩張るな」
     とはいえ仕事――個人貿易をする上で使える物。玉は着々と集めていく。
     とある部屋では招き過ぎた呪いのフランス人形達を攻撃するコルト(d09182)。
    「誰かさんそっくりのお人形でぎっしり……住みたいわねここ」
     呪いのフランス人形の攻撃を受けた【少女彫像研究会】の面々へシルキー達が攻撃もとい眷属を使って着衣させていく。
    「一通り撮影しとくわよ」
     レンズ越しに、まずは深未(d09593)。ドレス調フリルエプロンが目立つメイド服を最初に、更に「こっちは? こっちは?」とシルキー達にメイド服を着せられていく。
    「次はこの服で行きますの」
     そう言ったシエナ(d33905)はヴァグノジャルムから次の衣装を受け取った。
     スタイリッシュな戦闘服、スパイシーなドレス、そして室内には様々なメイド服もある。
    「ブレイズゲートでは色んな物が手に入るので、なくなっちゃうのは寂しいですね」
     良いメイド服、目新しいメイド服を集め由香里(d36413)が言う。寂しいけれど、皆との再会はとても嬉しかった。
    「学生だったころはこうやって蝋人形にされたり、氷像にされたり、他も色々あったなぁ」
     ――愛でるなら本格的に、と研究熱は尽きない。

    「やーんっ、メイド服着て来たのにぃー」
    「メイド服、着てても意味ないのですー!?」
     シャオと望のきゃあきゃあとした声に、
    「誰得だよコノヤロウ!」
     と冴え渡る声を披露するロードゼンヘンド。
     ワタシを着なさいよ! とばかりのフライングな服達。ちょっとしたファッションショーが開催されていた。
    「強制着衣よりお菓子が欲しい」
     ドロップを狙ってきたのに、とシャオが呟いた。
    「じゃ、回ります~」
     足捌きを披露する和奏はくるくると全方位に攻撃を当てていく。袖口で光を反射する時計の意匠。
     そこに「にゃ」とマジックキャット達が乱入してくる。
    「……ああ、可愛いよう。マジックキャットももうこれで見納めなんですね」
     もふ、と猫のお腹が顔に。
     もふもふもふ、と一瞬で和奏は敵猫に埋もれた。
    「こら~、めっ! だよ!」
    「わ、和奏先輩~!」
     ミカエラと杏子が猫をもふっと抱き上げて、ぽいっとする。
    「うん、お前はいつも可愛いね。抱きしめたい」
     もふぽいに参戦した千尋の言葉に杏子が真剣に頷いた時、ねこさんが見ているのに気付いた。
     強制着衣の末、家政メイドとなったねこさんはやや半眼。
    「……あ、ねこさん、ねこさんが一番かわゆいよっ! 拗ねないでーっ!」
    「でもこの見た目に騙されちゃダメ! 心を鬼にして倒そう……」
     そう言う千尋に救出された和奏は頷く。
     マジックキャットを粗方倒し、次は淫魔――と千尋が振り返ると準備を終わらせた面々が。
    「はーい、じゃ、本番いっくよー」
     ピンクの垂れウサミミを揺らした澪が腕を振れば、ざざーっとフライングな服達がその方向へと動く。なんか統率されていた。
    「皆も一緒に踊ってねー」
     れいタン☆オンステージ。楽しい事大好きな淫魔達が歌と音楽に合わせて踊り出す。
    「ふっふっふ、たーのしー♪」
     れいタンをセンターにサイドを飾るはさくらえだ。
    「つゆ……れいタンと彩瑠も絶好調だな」
     ちら、とフーベルトゥス先生を見るニコ。
    「先生、やはり俺達も」
     手始めに、と、そっとメイド服を差し出すニコに、そっと首を振る先生。
     それでも、
    「……先生用で確りと持ち帰ろう」
     ちなみに確保した中には家族の物も。ちょっとわくわくしているニコであった。
    「先生、いかがですかこの空間。皆さん活き活きとしてますよね!」
     残っていた小さなマジックキャットを抱きながら、真名。攻撃されても1ダメージなので痛くない。
     敵味方関係なくあらゆるニーズに応えるそれがメイド業・ウサミミメイダーズである。
     ペンライトを持ち込みヲタ芸を披露するのは明莉と陽司と草太(dn0158)。
     イイ笑顔で「はい、神鳳さん」と明莉に渡された勇弥もまたヲタダンス。
    「メイドの心得……」
     勇弥は新たなスキルを得た。
     踊りながらわっくわくとさくらえはメイク道具を取り出した。
    「さあ、行くよ。皆を更に可愛くアレンジしてやる勢いでな! まずはとりさん!」
    「って俺の需要無いよ!?」
     任せろ、彼はちょーいい感じにしてくれる美容師だ。
    「いさみん可愛いー!」と陽司。照れて茶色の垂れ耳を引っ張り、顔を隠そうとするいさみん。
    「うんうん、いい絵が撮れるね~♪」
     と芸術発表会(卒業生枠)用に撮るミカエラも手招きされ、きょとん。
    「行っておいでよ、ミカエラちゃん」
     そう言った渚緒(メイクアップ済)にカメラを預け、メイクの場へちょっと照れながら寄っていく。
     この時、我に返ったフライング服達が襲いかかってくるのだが――、
    「十年分の強制着衣をこの一身に受けてやろうぞ! ……鈍が」
     あらゆるニーズに(以下略)なので、明莉は脇差をぐいぐい押す。
    「って……俺かよ!?
     もう自棄だ、かかって来やがれ!」
    「自らメイド服へ立ち向かうその勇姿、しっかり記録に残しておくよ」
    「三蔵も、さあ!」
    「あ、ごめん。僕、今カメラ係だからね」
     笑顔で、さっくりと渚緒は告げた。
     代わりにカルラが捧げられた事をここに記録しておく。
    「さすがに回復かな」
     と輝乃が明莉と脇差そしてカルラを癒していく。
    (「十年経っても糸括は糸括のままだね」)
     懐かしさに、しみじみとする輝乃。
    「さくらえさんちょっと! うさ耳を良い感じにデコって欲しいんですけど」
     ラメキラメイド服に負けないウサミミを――陽司はそのまま頭をさくらえに差し出した。
    「はーい、おまかせっ。ここは布も飾りもあるからね」
     さくらえの邪魔にならないよう、指先でペンライトをくるくるさせながら陽司がじっとしていると、歌声が聞こえてくる。

    「はい糸召喚、ほい布召喚、はじ~めましょ~う♪
     あっれ~、なんかダンスパーティだ~♪
     はーい、煌びやかな服の出っ番かな~」

     いつの間にか着ていたレプラコーンのメイド服、確りと化粧を施され増々綺麗になった紗里亜が駆けつけると同時。
    「違法服乱造の容疑で、無期懲役刑を言い渡すわレプラコーン!」
    「正直あまり恨みとかは無いけど、お相手願うよ『妖精職人』」
     コルトに続き玉が攻撃を繰りだす。
     数多くのメイド服を送り出したレプラコーン。
    (「私が見つけたブレイズゲートが、まさかここまで皆さんに愛されるとは……」)
    「閉店のお時間です、レプラコーン!」
     レプラコーンの動きを見切り、一撃を繰り出す紗里亜。

    「あらら負けちゃ~った、これは残念♪
     メイド服さ~ん達、頑張ってね~♪
     きっと何処かに、ぴったりの人、待ってるわ~♪」

     レプラコーンの台詞も、これが最後。

     ハロウィンの夜もふけ、メイド無法地帯を送る灼滅者達。
     大量のフライグ服を生み出した場は、この夜、消失したのだった。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月8日
    難度:普通
    参加:25人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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