死人を呼ぶ椿

    作者:草薙戒音

     小さな手鏡を握りしめ、少女は歩く。
     もうすぐ日没――逢魔が時。それまでにあのお寺に行かなければ。
    『寺の境内にある大きな椿の木が花を咲かせる頃、日没の時間に死んだ人の形見を持ってその椿の前に立てば、死んだ人に会える』
     そんな噂を聞いたのは、いつだったか。
     その噂を聞いて以来、少女はずっと待っていた。
     ひどく寂れた廃寺の片隅にある椿の木が花を咲かせるのを。
     そして、花は咲いた。
     あとは日が沈むその時に、形見の品物を持ってあの椿の前に立てばいい。
     そうすれば――あの日、いなくなってしまったあの子に逢える。

     噂には続きがあった。
    『ただし死んだ人に会ったら、他の人には2度と会えなくなるらしい』
     それでもいい。もう1度、あの子に――。
     
    「『死人に逢える』という都市伝説が実体化した」
     集った灼滅者たちを見渡して、一之瀬・巽(中学生エクスブレイン・dn0038)が口を開いた。
    「場所は古い寺の境内……どうもろくに手入れされていないらしいな、ずいぶん寂れてる」
     そんな感想を漏らし、巽は手に持った扇子をパチン、と鳴らした。
    「『死人に逢える』なんて言ってるがもちろんそれは本人じゃない。死人以外に会えなくなる理由も単純なもので、呼び出した本人がその死人に殺されてしまうからだ」
     悪いことに、と巽が続ける。
    「都市伝説を真に受けた子供が1人、それを実行しようとしている。皆でこの子を守って都市伝説を灼滅してきてほしい」
     都市伝説を灼滅するにはまず都市伝説の出現条件を満たさなければならない。この都市伝説の場合、「日没の時に死んでしまった誰かの形見を持って件の椿の前に立つ」というものだ。
    「方法は2つ。子供にそのまま死人を呼び出させるか、この中の誰かが囮となるか」
     前者を選ぶのであれば子供を守りながら戦うことになる。後者を選べば、寺にやってこようとする子供を追い返す必要が出てくる。
    「件の寺は小高い丘の中腹にあって麓から長い階段が続いている。子供を追い返すならこの階段で待っているといい」
     子供は日没の少し前に、走ってその場所へやってくる。
    「子供が都市伝説を呼び出した場合、子供と同じ年頃の女の子が現れる。誰かが囮になった場合はその人間が呼び出そうと思った人物の姿を取る……だが、その能力自体は変わらない」
     攻撃方法は2種類。
     椿の花を舞わせることで複数の相手を傷つけ毒を浸み込ませる遠距離攻撃と、相手の体の一部に触れ傷を負わせるとともに自分の傷を回復させる近距離攻撃。
    「都市伝説として呼び出された人物の見た目とか、かつての性格とか……それによって近距離攻撃の見た目の形は変わってくる」
     ちなみに子供が呼び出す女の子は『抱きつき』という形を取ってくるらしい。呼び出された人物によっては『殴る』『蹴る』だったりする場合もある。何らかの形で体に触れられるとダメージを受け、相手の傷が回復するということだ。
    「相手は1体。とはいえそれなりに強いから油断はするなよ?」
     そこまで言うと、巽は少し考えるような素振りを見せた。
    「一応確認しておくけど」
     そう前置きして、言葉を紡ぐ。
    「仮に子供を追い払う場合、子供を納得させようとしたらそれなりに時間を食うってことは理解してるよな?」
     そこで言葉を切り、灼滅者たちを見回す。
    「説得するなとは言わないが、無駄だと思ったら実力行使することも考慮に入れておいてくれ。この手の思いは納得するのもさせるのも難しい」
     仮に子供が納得せず、後日再び死人を呼び出そうとしても――。
    「お前たちが灼滅に成功していれば、その子供が都市伝説の犠牲になることはないんだから」


    参加者
    鬼無・かえで(風華星霜・d00744)
    竹宮・友梨(鳴歌巫医・d00883)
    黒路・瞬(路選ぶ継承者・d01684)
    比名間・修央(暴虐・d01723)
    晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821)
    志那都・達人(求道の風・d10457)
    ニコロ・コルシーニ(神属吸血鬼・d12520)

    ■リプレイ


     管理する者のない廃寺の境内は夕暮れ時という時間帯も相まって酷く寂れて見えた。
    「悪趣味な都市伝説な事で。まるで食虫植物だ」
     幾つもの紅色の花を咲かせる椿の木を見上げ、黒路・瞬(路選ぶ継承者・d01684)が嫌悪も顕に言い捨てる。
     その声が聞こえたのか、比名間・修央(暴虐・d01723)は古ぼけた石灯籠の火袋に置いた懐中電灯の位置を調整する手を一旦止めて椿を見遣った。
     どれくらいの樹齢なのだろうか、その椿の木は普通の椿より幹が太く樹高も高い。
    (「寂れた寺で死人が蘇る、ねェ? 陰気臭ェ気休めだな」)
     三白眼の目を不機嫌そうに細め、修央は小さく舌打ちした。
    「複雑な気分です……敵が亡くなった方と同じ姿をしているなんて」
     ニコロ・コルシーニ(神属吸血鬼・d12520)はそう言いながら、椿のそばへと近づいた。
     古い本堂、古い鐘撞堂、古い石灯篭……全ての色が褪せたかのような境内で、椿の紅色だけが妙に鮮やかに目に映る。
    (「死んだ人にもう一度会いたいと思う気持ち、少しわかります。ですが――」)
     ニコロが僅かに目を伏せ、片手に持ったスレイヤーカードを握り締める。
    (「何かを犠牲にすることで会えるなら、僕も……会いたい人がいる」)
     境内の入口を見つめながら、鬼無・かえで(風華星霜・d00744)はまだ見ぬ少女に心の中だけで語りかけていた。
    (「だけど会えないんだ。狂おしい程切望したって……」)
     彼女の場合は、少し事情が違うけれど。どんなに望んでも会えない人が、いる。
     けれど、だからこそ。
    (「君の心を踏みにじる、そんな都市伝説は僕がかならず打ち砕くよ」)

     寺の境内へ続く階段の麓では、4人の灼滅者が待機していた。
     皆無言で件の少女がやってくるのを待っている。
     どれくらい待っただろうか、やがて少女が1人駆けてきた。おそらくは件の少女なのだろう、息を切らし、その手に小さな手鏡を握り締めている。
    「ごめんねー、そこから先はしばらく通行止めなんだ」
     4人を半ば無視して通り過ぎようとした少女の行く手を志那都・達人(求道の風・d10457)が遮った。常と変わらぬ笑顔で、常と変わらぬ口調で、少女に声をかける。
    「どいてください、あたし急いでるの」
     キッと達人を睨みつけ、少女が返す。それでも彼が退かないと見るや、その脇をすり抜けようとした少女の手を咄嗟に掴み、コルネリア・レーヴェンタール(幼き魔女・d08110)が言葉を紡ぐ。
    「……待ってください。そのまま進んだら、あなたまで巻き込まれてしまいますよ。亡くなった彼女だって、そんなことは望んでいないはずです」
    「別に関係ないでしょ、離して!」
     よほど焦っているのか、あるいは手を掴んでいるコルネリアの大人しそうな外見故か……少女の口調が荒くなる。
    「こんな時間に、こんな場所に来るものじゃないの……危ないから、帰って」
     言い聞かせるような晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821)の言葉も、どうやら耳に入っていないらしい。
     続く少女と仲間のやり取り――その間に、竹宮・友梨(鳴歌巫医・d00883)はあたりを注意深く見回す。寺に続く階段の麓ということもあってか、道沿いに植え込みが続いている。
     灼滅者たちの説得に少女が心を動かされる様子はない。苛立ちを隠す素振りも見せず、とにかく離せ、通せの一点張りだ。
    「……他の人に会えなくなったら、今度はその人達が君と同じ思いをするかもしれないよ」
     願いの代償を知っていてそれでもなお願いを叶えようとする少女に、達人がそう言葉をかけた。
    「それだけは、覚えておいてね」
     そう言い置いて、彼は魂沈めの風を巻き起こす。吹き抜ける爽やかな風が彼の淡い緑色の髪を揺らし、苛立つ少女を眠りへと誘う。
     その場に崩れ落ちそうになる少女の体を達人が抱きとめる。
    「志那都先輩」
     友梨の言葉に頷いて、彼は眠る少女を彼女の待つ植え込みの陰へと運び込む。友梨が羽織っていたコートで少女の体を包むと、灼滅者たちは少女の体を植え込みに隠すようにして寝かせた。
    (「今自分にできることは、悲劇を一つでも食い止めること……」)
     眠る少女の顔を見つめていたコルネリアが顔を上げる。
     自分には、自分たちにはそれができる――そう、信じて。


     階段の麓で少女を寝かせた灼滅者たちが、境内で待っていた灼滅者たちと合流する。
    (「大変美しい椿ですが……恐ろしい都市伝説ですね」)
     寂れた寺に鮮やかに咲き誇る椿の姿をに、コルネリアは改めてそう思う。
     西に傾いた太陽は、すでに地平に沈み始めていた。もうすぐ完全にその姿を消すだろう。
     緊迫した空気の中、朔夜は自らが羽織っている黒いコートにそっと触れた。
    (「仮初のものでも、もう一度……そう思う気持ちは、理解できるの」)
     そして、彼は待っている。日が沈み、都市伝説の具現化されるのを。それに必要な形見の品はこのコート。そして、呼び出される人物は――。
     椿を真っ直ぐに見つめる彼の横顔をチラリと見て、コルネリアは僅かに目を伏せた。
     コルネリアにも、会いたい人がいた。
    (「けれど、自分には会う資格すらない――」)
     何故ならその人を手にかけてしまったのは他ならぬ自分なのだから!
     胸に浮かぶ悔恨とも自責ともつかぬ思いを振り払うべく、彼女はゆるゆると頭を振った。
     日が沈む――都市伝説が具現化し、椿の前に人影が現れる。
     それは、20代と思わしき女だった。
     灼滅者に対して半身に構える女は強く、凛々しく……そして、殺す者の目をしていた。
     かつて在りし日のままの姿に、朔夜は僅かに目を細める。
     修央が一瞬だけ朔夜に視線を送った。朔夜とこの人物がどんな関係だったのかはわからない。けれど、やるべきことは決まっている。
    (「どんな姿で現れても容赦はしねェ、必ず消す」)
     ニヤリと笑う彼女の手にはスレイヤーカードがある。
    「お目覚めかい? 伝説サンよォ。さァ、ヤろうか!」
     言葉と共に現れたチェーンソー剣のモーター音をブウン! と唸らせ、彼女は女性をにらみつける。
    「星火燎原」
     友梨の言葉が響き、菫色の瞳が顕になる。
    「神よ、我を許し給え」
     ニコロが静かな声で告げる。
    (「新たな悲劇を生まないためにも頑張らなくてはなりません」)
     戦いの気配に湧き上がる好戦的な気分。それに負けぬよう、ニコロは自分自身に言い聞かせる。
    「……想いを砕くような真似はさせないよ」
     自らの生まれ月を刻んだ妖の槍を構え、かえでが呟く。
    「黒路当主候補・瞬! いざ参る」
     瞬も手にした鋼糸を煌めかせ、都市伝説に対峙する。
    「さあ、風を吹かせよう」
     風のごときバトルオーラを纏い、達人が小さく笑った。

     あの子が、無事に気持ちに区切りをつけられる様に。
     これからもちゃんと、生きられるように――。


     具現化した都市伝説――女の体が不意に沈み込む。そのままかえでの胸元に潜り込み、鳩尾目掛けて拳が飛ぶ。
     ズンと体に響く衝撃に耐えるかのように歯を食いしばり、かえではその拳を握りしめた。飛びずさり体制を整えようとする女の間合いに飛び込み、雷を宿した拳でお返しとばかりにアッパーカットを叩きこむ。
     顎を殴られた女が灼滅者たちへと視線を戻すその一瞬の隙を突き、朔夜は彼女の死角へと回り込む。「晦」と名付けられたガンナイフの切っ先が、女の足の腱を絶つ。
     その瞳にバベルの鎖を集中させるコルネリア。彼女のナノナノ「ふぃーばー」が、傷ついたかえで目掛けてふわふわのハートを飛ばす。
    「後の回復はこちらで」
     短く告げて、友梨は綺羅星と呼ばれる弓に緑に煌めく矢を番える。癒しの力を乗せた矢がかえでを射抜き、その傷を癒していく。
     鋼糸を構える瞬の体からどす黒い殺気が噴きだし、女の体を覆い尽くす。続いて彼のライドキャリバーが唸るようなモーター音をあげた。
     修央の生み出すヴァンパイアの魔力を宿した霧が前衛を務める灼滅者やサーヴァントに狂戦士のような力を授ける。
     灼滅者たちの後方、達人が結晶状のサイキックソードを振り下ろす。それと同時、激しく渦巻く風の刃が女目掛けて襲い掛かった。
     女を切り刻む風が収まると間髪入れずに達人のライドキャリバー「空我」が女に突撃していく。
     す、とニコロが女に向けてチェーンソー剣を翳すと赤いオーラでできた逆十字が現れ女の体を引き裂いた。
    「悲しみに沈む人々がこれ以上心を乱すことのないように、ここで消えてもらいます」

     紅い椿の花が舞う。花弁が灼滅者の体を傷つけ、その身に毒を流し込む。
    「そっちが花びらで戦うならこっちは糸で戦ってやるよ」
     言い返す瞬の鋼糸が女の体に巻きつく。
     友梨が「綺羅星」という名の天星弓の弦を鳴らす。招かれた優しい風が、灼滅者たちを蝕む毒を浄化していく。
     かえでの繰り出す拳の連打が女を幾度となく襲い、女の纏う黒いコートの裾が舞う。
    (「……痛くて辛くて苦しい毎日だったけど。それでも、あなたには感謝していたの」)
     胸の内でそう囁くと朔夜は晦に影を纏わせた。女に駆け寄り晦のグリップでその体を思い切り殴りつける。
    『――――』
     次々と自らを襲う攻撃にも、女は悲鳴1つ漏らさない。そもそも声を出すことができないのか、あるいはそういう性格の人物だったのか……。
     チェーンソー剣を構え女に切り掛かるニコロの脳裏を、ヴァンパイアに殺された家族の顔が過ぎった。
    (「もう一度会えると言われたら……自分はその誘惑を振り払えただろうか」)
     湧き上がる問いを振り払うかのように、彼はチェーンソー剣を振り下ろす。
    (「死んだ人に会いたいって気持ちは、わからないわけじゃない」)
     達人の両手にオーラが集まってくる。
    「でもそれで、生きてる誰かを泣かせるわけにはいかない」
     彼の手から放出されたオーラが女の体を打ち、空我がバラバラと機銃掃射をかける。
     女の視線が、ふと後衛を務める灼滅者たちに移された。
    「こっち向きな!」
     とっさに叫び、修央が駆け出す。振り上げられたチェーンソー剣の斬撃が、女の足を更に鈍らせる。
    「終わりにしましょう……共に逝くことが、喜劇とは言えませんから」
     幾つもの傷を負い満身創痍となった女に、コルネリアが告げた。彼女がマテリアルロッドを振り上げると、魔術によって引き起こされた雷が女目掛けて落ちくる。
    「――参る!」
     瞬が高速で駆け、女の死角へと回りこむ。彼の繰り出した鋼糸が女の体を纏ったコートごと斬り裂き、黒いコートの切れ端が宙を舞う。
     女の周りに舞っていた椿の花が、ポトポトと地面に落ちた。
     一言も発することなく、その顔を苦痛にゆがめることもなく。都市伝説が生み出した女が消えていく。
    「偽物でも……初めて、勝てたの」
     囁きかけるようにそう言って、朔夜は黒いコートをそっと撫でた。
     女の姿が完全に消滅したことを確認し、コルネリアが呟く。
    「――灼滅」


     少女の体を修央が軽く揺すると、少女はゆっくりと目を開けた。一瞬の間の後、バッと慌てて起き上がりあたりを見回す。
     自分を足止めした人物に加え、更に見知らぬ人間が増えていることに気付いたのか、少女の表情が一気に険しくなった。
    「……なんで……」
     低い声で呟く少女に朔夜が声をかける。
    「……どんなに会いたい人がいても、他の人と会えなくなってもいいなんて……それは、駄目なの」
    「第一、その噂デマだぜ。試してみたけど何も起こらなかったし」
     さも残念といった素振りで瞬が続けさらにこう付け加える。
    「大体、会いたいって気持ちも分かるけど君が居なくなったと知ったら君と同じように思って椿に願いに来る人は大勢いる。その人達を悲しませてもいいのか?」
     瞬の言葉に同意するかのように頷いて、朔夜が言葉を紡ぐ。
    「これからあなたには、きっと沢山の出会いがあるから。その中で、いなくなった人の事も覚えていればいいの」
    「あなたのお友達は、きっとあなたのことを天から見守っていてくれます。あなたを大切に思っている人たちと健やかに生きていけるように。……だから、あなたは元気いっぱいに生きてください」
     少女の心を少しでも和らげることができるようにと、優しい笑みを浮かべてニコロも諭す。
    「あなたには生きていてほしいと、私は勿論……彼女もきっと、そう願っているはずですよ」
     コルネリアがそう言った直後、少女は激しく頭を振って怒鳴るような声を上げた。
    「そういう問題じゃない!」
     少女の激しい否定に、離れた場所から状況を見守っていた達人と友梨が一瞬顔を見合わせる。
    (「今目の前にいる子は自分だったかもしれない」)
     小さく息を吐き、友梨は再び少女へと視線を戻した。彼女自身、頭では理解していても心が納得していない――そんな自分に少女に声をかける資格はないと、彼女はそう思っている。
    「君が会いたかった子は、君が他の人に会えなくなっても君と会いたいって思うかな」
     めげることなく、かえでが少女に問いかける。
    「嬉しいかもしれない。でもそれと同時にとても悲しい気持ちにさせちゃうよ。だから、自分を犠牲にしちゃだめだ」
     生きていても会えない人だっている。それが死んだ人なら……。
    「伝説信じてんなら確かめて来なよ。何も起こらねェとは思うがね」
     まだ納得していないのか、ギリ、と拳を強く握り締める少女に、修央がひどくぶっきらぼうな声で言った。都市伝説の妁滅は済んでいる。そういった意味での危険はもうない。
    「言われなくったってそうするよ!」
     言い返すと、少女はひらりと身を翻し駆け出した。寺ではなく、もと来た道を走り去っていく。
    「諦めてくれたのかな?」
    「諦めてはいないのかもしれません」
     仲間のもとへと歩み寄った達人の発した問いに、友梨が返す。
     少女が走り去った理由は単純に日没を過ぎてしまったからかもしれない。少なくとも少女の様子見る限り、諦めたような気配はしなかった。
    (「納得するまで行動してそこから見える自分なりの答えだってあるだろうから」)
     少女が走り去った先を見つめ、友梨は思う。本当は少女が噂を試すというのなら付き合いたいところなのだが、少女がいつそれを実行するかわからない以上、それは難しいだろう。
    「会いたいと思う強い気持ちがあったからこそ、この都市伝説が生まれたんだろうな」
     寺に続く階段を見上げと瞬がポツリと呟いた。
    「……帰りましょうか」
     誰からともなくそう言って、灼滅者たちはその場所を後にする。

     少女が納得したのか否か、それは少女だけが知る話――。

    作者:草薙戒音 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年1月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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