●
「今度の文化祭、2組のマリーちゃんが『占いの館』するって」
「ほんと? マリーちゃんの占いすごいけど、2時間待ちだもんね」
マリー・レヴィレイナ、金の巻き毛の異国の子。
いつも放課後にタロット占いをしてくれる。
美人だし優しいし、神秘的な雰囲気で、マリーのファンは他校にも多い。
最近は『偉い大人の人』の占いもしているらしい。
「しかも、クラスの出し物だって。男子とかカフェ係だって言ってたよ」
「素敵、ケーキとか食べながら待てるんだ。ママ誘おうかな、占い好きだし」
文化祭まで、あと数日。
●
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)がぺんぎんタロットを手に、ふわりと微笑む。
「小5のマリー・レヴィレイナさんが、ソロモンの悪魔に闇堕ちをしました」
闇堕ちしたのは、異国から転校してきた少女。
ソロモンの悪魔の力を持ちながら、ソロモンの悪魔になりきっていない。
つまり、ソロモンの悪魔のなりかけだ。
「日本語にまだ慣れていない時に、マリーさんは得意のタロットカード占いをしてクラスメイトになじもうとしたようです」
その努力は功を奏し、マリーはすっかり学年女子の人気者となった。
今や違う学年の子はもちろん他校の子まで、放課後にマリーのクラスへ来る。
マリーへの少女達の熱狂ぶりは、人気者を通り越して一種の教祖の様だ。
「最近ではマリーの人気を知った大人達が、重要な判断をしなければならない立場の『偉い大人』と会わせるようになっています。……それだけなら、素晴らしい事なのですが」
大人の社会にいきなり放り込まれたマリーの、善悪の基準が曖昧になってしまっているという。
マリーの占いは、何人かの大人の前で行われている。
多くの『偉い大人』本人は、一つの参考としてマリーから率直な占いの結果を聞きたい。
だが、『偉い大人』の考えと『占いの結果』が異なった場合が問題だ。
周りの大人達が「事実を曲げて伝える様に」と『諭す』のだ。
もちろん、言葉はもう少しまわりくどいが。
結果として、マリーの善悪の基準も、純粋ゆえにすごかった占いの腕も、鈍り始めている。
マリー自身その事に気づき、独りで悩み始めている。
姫子はぺんぎんファイルから、赤丸つきの地図を出した。
「マリーさんは今度の文化祭で『5年2組・マリーの占いの館×カフェ』というお店をします」
クラスの男女比が偏っていた為か、女子の発言力が強かった為か。
それはわからないが、クラスの出し物として堂々と出店する。
場所は西棟3階の5年2組。
教室の中は占いの館らしく暗幕で覆われ、キラキラとした夜の飾り付けがしてある。
「マリーさんは、配下の女の子3人を連れています」
力を与えられた配下の3人はクラスメイトで、マリーの熱狂的なファンだ。
マリーと配下のいる占いの場所は教室の最奥、天蓋を二重にした作りだ。
マリーとお客様だけの、半径約1mの内天蓋『占いの部屋』。
その周りには、話の内容を聞かれない為と配下3人が待機するための幅約1mの外天蓋。
天蓋は天井から吊られ、アラビアンナイトのような雰囲気だ。
他のクラスメイトは『暗幕の中、天蓋の外』で『カフェ係』をしている。
教室の出入り口は前と後ろの2カ所で、占いの受付もカフェ係だ。
「皆さんには『5年2組・マリーの占いの館×カフェ』へ、お客様として行ってマリーさんと接触して頂きたいのです。同じグループだと言えば、占いの部屋へ一緒に入れます」
マリーを救出するにせよ、灼滅するにせよ、一度は戦って倒す必要がある。
配下の少女3人は、戦って倒せばソロモンの悪魔の呪縛が解け、一般人に戻るので安心して倒して大丈夫だ。
「ただ問題は、小学校の文化祭の最中だということです」
マリーのいる教室内にも『カフェ係』をしているクラスメイトがいるし、カフェでくつろぎながらマリーの占いの順番待ちをしている学校内外の子ども達や保護者も沢山いる。
両隣の教室でも出し物をしている。
問題は、とにかく文化祭のまっただ中だ、ということだ。
「マリーさんは、理性的な思考が出来るタイプですから、心に響くような言葉掛けができれば、あまり派手な戦闘をしなくても済むかもしれません」
それでも、戦闘となれば周囲への被害なしで終われるかどうか。
姫子を見れば、ぺんぎんタロットを扇状に開いて満面の笑み。
「皆さんの中に、タロット占いやそれらしい『占い』の出来る方は、いらっしゃいますか? どなたかにマリーさんの影武者となって頂いて、マリーさん本人を上手く『マリーさんだとわからないように』ひとけの無い所に連れ出せば、周囲への戦闘での被害を少なくできるでしょう」
マリーは頭からヴェールをかぶった、神秘的な衣装だ。
配下の3人を上手く誘い出した後に『休憩中』のふだをかければ、影武者も戦闘に合流できる。
文化祭ゆえに、人の多い所と人の全くいない所の落差は激しい。
このまま放っておけば、文化祭でますますマリーの『信者』は増えるだろう。
「闇堕ちしたまま、マリーさんが『占い』を重ねれば重ねる程、マリーさんの人間の意識は消えて行き、そう遠くない未来、完全にダークネス・ソロモンの悪魔となってしまいます」
普通なら闇堕ちと同時に人間の意識は消え、すぐに完全なソロモンの悪魔となってしまう。
そうならないということは、マリーには灼滅者の可能性があるのかもしれない。
「マリーさんは、目の前の人の不安を取り除きたい、願いを叶えてあげたい、素敵な未来を歩いて欲しい。そんな純粋な心で占いをしていました。だからこそ占いも人気もすごかったのでしょう」
そのぶん今のマリーさんを見ると、いたたまれない気持ちになる、と姫子。
姫子は手元のぺんぎんタロットに目を落とす。
縁起の良さそうな一枚を抜いて、灼滅者へと向き直る。
「ほら、皆さんの未来は明るそうです」
ぜひマリーさんを学園に連れて帰って下さいね。
ほんわりと微笑むと、姫子は灼滅者達に丁寧にお辞儀をした。
参加者 | |
---|---|
日渡・千歳(踏青・d00057) |
龍海・光理(きんいろこねこ・d00500) |
響・澪(小学生魔法使い・d00501) |
各務・樹(陽焔・d02313) |
流鏑馬・アカネ(霊犬ブリーダー・d04328) |
守咲・神楽(地獄の番犬・d09482) |
ケテブ・メリリ(燃えさかる矢・d09673) |
浜地・明日翔(物理狂騒曲・d10058) |
●文化祭当日
沙漠の音楽が聞こえる。
5年2組は暗幕で覆われ、金銀の星が天井から散りばめられる。
カフェの給仕少年は、黒地に金刺繍のベストと揃いの帽子に太長ズボン。
さながら千夜一夜物語。
「けっこう雰囲気ありますね。上手に作ってます」
星空好きの龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)。
濃い蜜漬けの甘いトルコパイを、熱いチャイと共に頬張る。
「お待たせいたしました、各務さま」
先程の給仕少年が、各務・樹(陽焔・d02313)へ占いの順番が来た事を告げる。
手元のお菓子を食べ切ると金髪に赤いケープのフードをぱさり、とかぶる。
「大人の勝手な事情で闇墜ちさせられているなんて……そんなことは絶対にさせたくないわ」
「ええ……大人のしがらみに若い芽が捻れてしまうのは忍びないわ。叶うなら、取り払って差し上げましょう」
霞むように声を紡ぎ、日渡・千歳(踏青・d00057)も涼やかに席を立つ。
流鏑馬・アカネ(霊犬ブリーダー・d04328)と守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)が2人に続く。
「占いの部屋は大きくないですし、わたくしは外で待ちます」
光理は席を立つと、教室の外へ。
マリーの配下3人の、戦闘場所への案内役を買って出る。
ケテブ・メリリ(燃えさかる矢・d09673)と響・澪(小学生魔法使い・d00501)はテーブルに座ったまま皆を見送り、お菓子を追加オーダーした。
教室の最奥にある占いの部屋は、天蓋を二重にした作りだ。
その流れる様なドレープが、神秘的な雰囲気をいっそう盛り上げる。
天蓋の入り口には、碧と紫のベリーダンス風衣装の少女2人。
マリーの熱狂的なファンで配下だ。笑顔で樹達を中へと迎え入れてくれる。
幻惑的なお香で満ちた天蓋の中で、ヴェールをかぶり目だけを出した少女がゆったりとした衣装で座っていた。
ソロモンの悪魔に闇堕ちをした、マリー・レヴィレイナだ。
配下の2人は、外へと消えた。
赤いケープの樹がマリーの前に座り、アカネと千歳と神楽は後ろに立つ。
マリーが「何を占いたいか」というように、タロットカードを樹の前に差し出し微笑んだ。
それに応える様に、樹が『運命の輪』のタロットカードを逆位置にして机の上に置く。
「マリーちゃん。最近、思うように占いができてないんじゃない?」
ピクッとするマリー。
「大人の事情で曲げられてしまった占い、辛かったでしょ?」
「……アナタ、だぁれ?」
上目遣いで樹を見るマリー。
だが、樹はふわり微笑むばかり。
「このままでいたら本来のあなた自身でもなくなっちゃう。……前のように自分の読み解いた運命を伝えたいとは思わない?」
突然の事に混乱し、固まるマリー。
「あなたが見たものをそのまま伝えたいなら一緒に来て。わたしたちと一緒にくれば解決策がきっと見つかるわ」
手元の『運命の輪』を正位置にする。
「運命は自分の手で変えられるのよ」
「白馬の王子様ってわけじゃないけどね。悩んでる人がいれば力になりたい」
神楽がにこりと笑う。
「な、マリー。ここから少し抜け出さないか? 息抜きも大事だよ」
「デモ、占い待ってる人タクサン」
「大丈夫。それを何とか出来る魔法が僕らにある。魔法使いもヒーローもこの世にはいる。素敵だろ?」
八重歯を覗かせ、笑う神楽。
「大丈夫。マリーちゃんほどの腕はないけど、わたしも占えるわ」
ーーいい暗示の時はそのままに。悪い時はそれを変えて良くしていけるように。
精一杯頑張ると、樹が自分のカードデッキを机に乗せる。
そして樹は自分の赤いフード付きケープと、マリーのヴェールを交換した。
●影武者の時間
「ワタシ、出てきてホントにヨカッタ?」
後ろを振り返りつつ、少し不安げなマリー。
「いいっていいって。ほら、座ってばかりいないであんたも楽しまなきゃ!」
樹1人を占い部屋に残し、5年2組を上手く抜け出したマリー達。
アカネと神楽と千歳に連れられ、赤いフードで顔を隠すマリー。
「ワタシ、文化祭、ハジメテ」
日本に転校してきて、初めての文化祭。
赤フードの隙間から、珍しそうに各教室の出し物を眺める。
「雲、フワフワ。月と星乗っテル……」
パチパチと弾ける飴がトッピングされた、わたあめに釘付けになるマリー。
「それ、あたしが買ってあげるよ」
打ち解けて欲しいんだ、とアカネ。
わたあめを手に、嬉しそうなマリー。
独り悩み苦しみ……ソロモンの悪魔につけ込まれた少女。
「真剣に向き合うことは大切なことだと思う」
神楽が優しい声を出す。
世の中は腐ってるし、それに心を痛めるって事は立ち向かう優しさがあるって事だから。
「だから、今の君は間違っていない」
「大人たちが欲しがるのは、結果という名を借りたただの口実だわ」
愛想笑いの苦手な千歳が、マリーを怯えさせぬよう真摯に話す。
「……思い出してご覧なさい。ひとを占うとき、貴女はどんな気持ちでいて?」
手元のわたあめを口に運ぶマリー。
「そうだよあんた。占いにはイメージが大切。愛がなければイメージは見えない。占いが楽しかった頃を思い出して」
お日様のように笑うアカネ。
「私はイメージする。マリーと笑い合う未来を。マリーもイメージして」
アカネの笑顔に、マリーがわずかに顔を上げた。
ひとり窓際へと離れた千歳が、耳に手を当てハンドフォンをかける。
「ケテブくん? そちらの様子は如何?」
「影武者はまだ露呈していない」
5年2組のカフェでケテブが携帯をとる。
万が一、樹の影武者がばれた場合に備え、澪とカフェに残っていた。
「単純な討伐でないのが難しいね。可能なら、会話で穏便にしたいところだけど……マリーちゃん、きっとかなりこちらを疑ってるだろしね」
真ん中にナッツの入った、鳥の巣の様なお菓子を楽しげに頬張る澪。
「占いか、娯楽とする分は一興だが、その結果を自らの矜持とするのは理解出来ぬな」
ドロドロの青汁の様な液体を飲むケテブ。
檸檬皮とミントを撹拌した、爽やかなフレッシュジュースだ。
占いの部屋の方を見れば、天蓋から小さなお客様が出てきた。
それからすぐに紅、碧、紫のベリーダンス風衣装を着た、配下3人が教室の外へと出て行く。
そして天蓋の隙間から白い手が出て、『休憩中』のふだをかけた。
影武者・樹の占いの時間が、終ったようだ。
「ケテブくん、いこう」
甘いハイビスカスティーを飲み干すと、澪とケテブが、立上がった。
●秋晴れの屋上
小学校の屋上で、浜地・明日翔(物理狂騒曲・d10058)は暇をもてあましていた。
屋上は皆との合流場所、そして戦場だ。
「キヒヒ……この見た目で小学校は怪しいからな」
見た目の怖さは自覚している。
明日翔はベンチで屋上花壇を眺めつつ、暇にまかせてASK-MODEL96をつまびく。
(「今度は、救ってみたいかもな」)
過去の依頼で救えなかった男が頭をよぎる。
自身と似た、音楽才能がなくとも音楽を愛していた半堕ちの人間。
ーーバタン!!
明日翔がギターの手を止め、顔を上げる。
わたあめを持った少女が、屋上の入り口に立っていた。
千歳、アカネ、神楽に連れられたマリーだ。
すぐに光理に先導されたマリーの配下3人が、一瞬遅れてケテブ、澪、樹が現れる。
「マリーちゃん?」
マリーの配下3人が、教室にいたはずのマリーに気づく。
その瞬間、アカネが殺界形成する。
「遠くまで悪かったね。誰も巻き込みたくないんだ」
マリーと配下3人は、事態を飲み込めないまま立ち尽くす。
灼滅者達は花壇を避ける様に、素早く陣形を整える。
(「こちらの気持ちが、会話だけじゃ上滑りしそうだよね。だから、拳で語るしかないかな? 何が間違ってるか、何を正せば、マリーちゃんの悩みを解消できるのか」)
澪がふむ、と考える。
あまりの事態の急展開に、ついてこれないマリー達。
闘志どころか棒立ちだ。
ならば、こちらから仕掛けるしかない。
「クァム・マニフィカト・スント・オペラ・トゥア・ドミネ・ニーミス・プロフンダエ・ファクタエ・スント・コギタチオネス・トゥア!」
解放呪文を唐突に叫ぶケテブ。
スレイヤーカードを天にかざせば、神楽の身体が真紅に輝く。
「チェーンジ、ケルベロスっ! Style:Bloodpool」
九州某温泉都市、ご当地ヒーロー・ケルベロス見参!
ーー説明せねばならない! 八つの地獄の力を力の源とする地獄の番犬ケルベロスの体が真紅に輝くとき、その体は地獄の炎……血の池地獄の力を身に纏うのだ!
「ね、マリーちゃん。占いの結果を以前の状態に戻す方法を教えてあげよっか♪」
考えるのをやめた澪が、拳をかためマリーへと走り込む。
マリーが反射的に赤いケープをひるがえす。
その手から澪へ、魔法の矢が撃ち込まれる。
澪はWOKシールドを展開するも、間に合わない。
マリーのヴェールをつけたまま、樹がバベルの鎖を瞳に集中させる。
一番近い紫色の、ベリーダンス衣装の少女が突如凍りつく。
明日翔と千歳のフリージングデスだ。
ソニックビートを放ちたかったが仕方ない。
薄い生地、腕もお腹も出たベリーダンスの衣装。
体温、熱量が急激に奪われれば、青白くなる少女の肌。
畳み込む様に撃ち込まれる、アカネのガトリング連射。
マリーへと、心をこめて叫ぶ。
「一緒に戦おう! マリーの戦いは、自分の闇に塗り潰されない様心を強く持つ事……あたし達はその間に闇を追い払う」
「がる……」
攻撃の気配を見せた碧色のベリーダンス少女。
アカネの霊犬わっふがるが斬魔刀で先手を打つ。
「あなたが占いを始めた時の気持ちを思い出して。あなたが自分の心を信じることが大事なの、あなたの占いはあなたのものよ」
光理がマリーへの想いを、神秘的な歌声にのせる。
斬られ転がる碧色少女へ走り込む神楽、少女をぶわり天高く持ち上げる。
第三の御使がラッパを吹き鳴らす。
「ワームウッドッ!」
叫ぶやいなや少女を地面へ叩き付ければ、九州泉都パワーで大爆発する碧色少女。
そのマグマの如く激しい力に、碧色少女はあっけなく動きを止めた。
●白黒、金色
倒れた碧色少女へ目線を流す明日翔、目測で体力を測る。
その前方で、澪がバベルの鎖を瞳に集める。
「穿ち、貫き、其に我が力を刻もう」
ケテブの槍が螺旋の如き捻りを加え、紫色少女を穿つ。
シャンシャン、と音を立てる少女の腰のコインベルト。
次の瞬間、少女はドサリと地面に伏せた。
紅色少女が、倒れた級友2人を見やる。
そして灼滅者達へと向きなおるや、中衛に向かってフリージングデス。
まともに喰らう明日翔、千歳、わっふがる。
とどまらない紅色少女。
シャラン、と衣装を舞わすや後衛へフリージングデス。
体温、熱量を急激に奪われる光理。
赤のポニーテールを残像に、華麗にかわすアカネ。
「……ドウシテ、戦う……?」
赤いフードの目線を、下へと落とすマリー。
その手にタロットカードを広げる。
「戦う、好きチガウ……!」
前衛へとタロットカードを鋭く放つ。
樹、神楽、澪、ケテブの足を斬り裂き、地面へ突き刺さるカード。
樹が軽くシャウトする。
明日翔の狙いは、まず配下。
紅色少女へと氷死の魔法を放てば、アカネから叩き込まれる瀑炎の弾丸。
凍り、そして焰に貫かれ。
紅色少女の身体は、難なく吹っ飛びそして動きを止めた。
(「あたしの力は命を守る為にあるんだ。それが殺してしまう結果になったら……悔やんでも悔やみ切れない……! 絶対に助け出してみせる」)
残るは闇に堕ちた、マリーだけ。
「あたしはこの銃をあんたに向けたくはないんだ!」
アカネはマリーへと振り返るや、ガトリングガンを突きつける。
その前方で愛犬わっふがるがケテブへと浄霊眼。
光理の小光輪が澪を癒す。
再び第三の御使がラッパを吹き鳴らせば、神楽がマリーの身体を天高く上げる。
赤いフードから零れ落ちる金の巻き髪。
九州某温泉都市。その地獄の如き熱量をもって、地面へと叩き付ける神楽!
それは、まさしく地獄絵図。
「現在の血の池地獄は爆破を起こさないので安心してお越しください!」
ぐったりと地面に横たわるマリーへと、ケルベロス・神楽はヒーローポーズを決めた。
よろり、と立上がるマリー。
「マリーちゃん。原因は、自分でも判ってるでしょ? 大人の言い分に従っちゃった事だよね。こう言うのって、嘘付くのと同じでさ、正すタイミングを逃すとズルズルいくよね」
澪はオーラを拳に集束させ、マリーの懐へと走り込む。
「でもさ、自分の技と思いに誇りを持ってるなら、結果は変えちゃダメだったんだね。たとえ、大人に怒られてもね。……だから、取り戻そうよ、マリーちゃんの誇りをさ♪」
にこ、と笑うや閃光百烈拳を叩き込む澪。
「宙に漂う我が力の欠片、此に集い、其へ集え」
マリーを、ケテブの魔法矢が貫く。
マリーがタロットカードで結界をつくれば、その顔に赤みが戻る。
樹がヴェールをふわりとなびかせ、マリーへ魔法矢を放つ。
「てめぇが欲しかったのは顔色伺ってきて肯定しか言えねぇ狂信者かぁ? 一緒にバカやれるようなダチか!?」
煽る様な言葉と共にデッドブラスターを撃ち込む明日翔。
天星弓を引き絞る千歳。
「人を伺って占いの白黒を変えるだなんて。それじゃあまるで意味が無くてよ。貴女はもっと自由で良い筈だもの」
ささやく声で弓を放てば、矢は彗星の如くマリーを貫く。
赤いケープに金の巻き髪。
ゆるやかに地面へとその身を沈めた。
●心の中の大切なもの
シャ……シャン。
一般人に戻った少女達が、瞳を開けた。
マリーもゆっくりと身体を起こす。
ケテブがマリーの側にしゃがみ、頭を撫でる。
「矜持とは、他者から与えられる物ではない。己の心にある物こそ、真の矜持足りえる物になるのだ」
尊大に優しく、誇り高く。
「故に、貴公のやるべき事は、嘘の矜持を知らせる事ではない、其の者の心に宿る。真の矜持を見つけ出す事だ」
マリーがケテブを見上げれば、空より深い、藍色の髪。
「嫌な事には嫌だと言ってもいいんだよ」
アカネの笑顔が輝けば、赤毛のわっふがるが「わっふ」とごきげん。
「でも、適度にガス抜きしないと駄目だぜ? 風船だって、張り詰めちゃ割れるだけだろ? その息抜きならいつでも付き合うさ。可愛い子のお誘いは歓迎だからね」
神楽は文化祭で、着ぐるみにもらった風船をマリーに渡す。
「男はいつも、可愛い女性の味方なのさ」
その輝く笑顔は、王子様かヒーローか。
「さて、折角だし今度はきちんと占ってもらおうかな。わたしたちの明るい未来でも!」
太陽に煌めく、光理の金髪。
澪がマリーに、天真爛漫な笑顔で手を差しだした。
「灼滅者の世界にようこそ♪」
マリーに笑顔があふれだす。
まっすぐな瞳で、その手をとって立上がった。
作者:atis |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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