クラブ同窓会~バナナと靴下を宇宙に飛ばす暴挙

    作者:空白革命

     うちゅう!
     軌道衛星デスソックスター。
     地球の衛星軌道上をまわりつづける巨大な靴下型拠点の内部にて……。
     靴司田・蕪郎(靴下大好き・d14752)はお立ち台の上で靴下を振りかざした。
    「ソーックス!」
    「「ソーックス!!」」
     同じく靴下を掲げる靴下ロボット兵たち。何のための兵隊なのか全然わかんないが、頭から靴下被って一糸乱れぬ不思議な踊りをするのが主な仕事らしい。バックダンサーかな?
    「諸君、私たちの活動によってジュンイッチー氏に靴下をはかせることに成功しました」
     わき上がる歓声。両手を挙げて見せる蕪郎。
    「ここでお知らせがあります。我々が大戦に勝利してからおよそ10年。長い時間が経ちましたが……このたび!」
     バッと振り返ると、大きな横断幕が現われた。
    「スーパー銭湯部のスウィート・テン・アニバーサリーを開催しマァス!」

     おなじくうちゅう!
     衛星軌道バナナワニ園。
     地球の衛星軌道上を回る巨大なバナナの内部にて……。
     難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)はスマホ片手にバナナを食っていた。
     好評発売中のスタンプを五連打くらいしておく。
     『そんなことよりバナナだ!』という絵と声がうるっさいくらい響いた。
     投下したのは勿論古巣ことバナナクラブのグループチャットである。
    「えーっと、もぐもぐ……ナマステさんちで10周年オフ会しようぜ……っと。あ、同窓会か同窓会。あっナマステさんおかわりー」
     バナナの皮をひらひらやって、ナナコはむっくりとバナナベッドがら起き上がった。
    「あ、でもただやるだけじゃつまらんな。よし……」
     ナナコはくっそうざいスタンプをまたチャットに連続投下してから、ぽちぽちと書き込み始めた。
    「一番インパクト出したやつが優勝……っと。これでよし!」

     かくして、衛星軌道上を回り続けるカオスなオブジェこと靴下&バナナで、武蔵坂学園灼滅者による10周年同窓会が行なわれることとなった。
     あれから10年たって、彼らはどんな人生を歩んでいるのか。
     さあ、ぶっちゃけトークといこーじゃないの!


    ■リプレイ

    ●チキチキ、バケモンだらけの同窓会!
    「クラブの未来を彩る真面目なモノローグが始まるかと思ったか……?」
     同窓会の横断幕を突き破り、クロスアームバナナでナナコが飛び出してきた。
    「残念だったな! バナナだ!」
     バナナだらけの床をごろごろ転がるナナコ。
    「いやー同窓会とかいっても大して人こねーな。おかげで基本の口調もわすれたぜ! ヒュー! おいモモンガ! 新年号バナナにしたか!?」
    「フェレットだけどね! 無理だけどね! 大体そんなに声かけてないんだから沢山くるわけないじゃん。9割ナマステさんだし1割ジョニーだし」
     咲良が両腕を広げながら叫ぶと、横で色々準備していたサンちゃんが慌てて振り返った。
    「合計10割じゃん。なに、私たちそのうちのどっちにカウントされてるの? ジョニー?」
     野外(てか宇宙空間)につないでいたスペースルドルフと宇宙トナカイズが中に入ってきて急にポージングを始めた。
    「「ハァイ! ウィーアージョニー!」」
     こいつらがジョニーだった。
     軽く無視してバナナチクワプリンとかいう魔の喰いもんを配るサンちゃん。
    「まー実質三人だけど楽しくやりましょ。踊って騒いで、レッツ・パーリーナーイッ!」
     拳を突き上げたその瞬間。
     ズガーンという音と共に激震が走った。
    「NANIGOTO!?」
    『緊急警報。衛星軌道上より靴下型要塞の衝突を確認。強襲管より侵入してきます』
    「ソオオオオオオオオオオオオオオックス!」
     クロスアーム靴下で壁をぶち破って登場する靴下妖怪蕪郎。
    「折角衛星ごと分けたのにとお思いですか? アンマァーイ! 30年モノの靴下のようにアマァーイッ! このバナナワニ園も靴下となるのです!」
    「ドッキング完了。宇宙忍者となった拙者にこの程度朝飯前でござる」
     天井からぶらさがってくるハリー。
    「今からこの宇宙バナナワニ園はソックスの配下となるのでござる」
    「させるかー! 行けモモンガ!」
    「フェレットだけどね! フェレットパンチ!」
    「宇宙忍者(三十路魔法使い)パンチ!」
     繰り広げられる激戦。衛星要塞デスソックスターよりなだれ込む人々。
     ああ、宇宙は靴下によって占領されてしまうのか。
    「さあゆくのです。我がソックスター帝国ぐ――」
    「忍法デスソックスター落とし!」
     自らを靴下とかしたエイジの必殺技である!
    「ぎゃああああああああああああ☆☆☆☆☆!」
    「あれはっ」
    「大悪魔デカラビアちゃんが復活したその日にもてあそばれてボコボコにされた時のモノマネ!」
    「というわけでシュークリームである!」
     ホラァ! とかいいながらシュークリームを叩き込むシュクリーム。じゃなかったシュクレーム。
    「もうこの技が軽く都市伝説化して流行語大賞にノミネートしたのである。どういうことであるか?」
     シュークリームでお手玉するシュクレーム。その後ろでバナナジュースちゅるちゅるしていた優雨が世にも微妙な顔をした。
    「あの場にいたせいで私も大悪魔をギャグの限りをつくしてもてあそんだ一人として扱われてるんですけど、どうしてくれるんです?」
    「主犯の三人がここ(衛星軌道上)にそろってるとかある意味奇跡でござるな。ふぉっふぉふぉ」
     ダブルピース(ハサミ)で高笑いするシルヴァーナ。関係ないけどあの高笑いのポーズは中指と薬指の間を開くようにやるらしいよ。
    「えっなんでござるかこれ」
    「忍者オフ会でござるか」
    「出しちゃうござるか? 拙者の新作忍法」
     エイジとハリーとシルヴァーナが勝手に盛り上がり始めた。
    「あの、一応同窓会と聞いてるんで脱線するのは……」
    「ふ……宇宙サンタ業も大変でござるな」
    「サンタと聞いて!」
    「またややこしい人が!」
     ケーキをサ○エ割りして飛び出したサンちゃんを強引に戻す優雨。
     と、そこへ。
    「全人類が靴下化したらそれは新たなサイキックハーツといえる。可愛らしい男の娘なお婿さん見つけるまで死ねるか!」
     明日香が窓をクロスアームでパリーンしながら参上。
    「悪の帝国と聞いて! ヒーロー兼遺跡荒らしスレイヤーアマネ! 参上だぜ!」
     周も隣の窓をパリーンして参上した。
     宇宙空間のどっからパリーンしてきたかなんて新時代の灼滅者にするもんじゃねえぜ。
     二人がかっこよく着地した頃には靴下おばけは巨大なバナナパフェに足だけ出して沈められ忍者とサンタのオフ会が始まっていた。
     なるほど荒事は終わったなと察した二人はそっと席に着いた。
    「じゃあ焼きバナナください」
    「こっちはカクテルなー」
    「分かってたけどマトモな状況じゃあなかった……」
     律が悟りを開いたような顔で同じく席に着いた。
    「はい、とりあえず持ってきた。宇宙っぽいチョコ」
     円錐型のチョコをそっと出してくる律。
    「なあにこれ」
    「両端からくわえてチョコスティックゲームでもするの?」
    「やめて、始めた瞬間に終わるから」
    「みなさん! 靴下事件と聞いて来ました! どういう事件ですか!」
     紗里亜がばーんと扉を開けて入ってきた。
     なんかESP関係のとっても難しい話に呼ばれた筈だがどこで靴下が混ざったのか。
     さておき。
    「待っててくださいね。今シャドウを倒した必殺技を出すので……んっ、ん……と」
     ストッキングを両手ですっと下ろして片足を抜く紗里亜。
     そのあまりにフェティズムあふれる様子に一同が二秒くらい停止した。
    「あれ? もしかして必要なかったりします……か……?」
     これは失礼しましたといってストッキングをはきなおす紗里亜。
     それはそれでフェティズムあふれる有様なのでじっくり見ていると、シャルロッテが扉をばーんと開けて飛び込んできた。
    「シャドウはどこだ。奴か……? 奴がいるのか……?」
     完全にやばい人になっていたが、シャルロッテがやばいのは今に始まったことではないので皆ノーリアクションだった。
     妖怪バナナ女がバナナ食ってるくらいに普通のことである。
     そういえばこの人ついに宇宙バナナ大権現に進化したんだね。
    「ふう、気のせいか」
     シャルロッテは気を取り直して屋台ごと持ってきたバームクーヘンをテーブルに並べ始めた。なんかバナナを加えたおいしいおやつを作っている。
    「同窓会と聞いておったのに、一発芸大会の会場じゃったか……」
     一足遅れてやってきたカンナがジオラマセットを抱えていた。
    「バナナの皮とドライバナナを使ったジオラマじゃ。ほれ、バナナの森にバナナワニ……」
    「おー、マジだ。すげー」
     バナナカクテルをちゅるちゅるしていたマサムネがすすっと寄ってきた。
     一瞬動きが止まって右上に『マサムネ・ディケンズ 世界を飛び回り通訳として活躍した。息子と娘をかわいがるさまは完全にいい親バカである』というテロップが流れた。
    「えっ、なに今のアニメ最終回みたいな演出は」
    「ある意味正しい対応だね……」
     鎗輔が『僕はAVの話をモロもってきました』という看板を首から提げて現われた。
    「なにをやろうとしたんだ」
    「いえない
    「なあ聞いてくれこないだ洗濯機の裏から靴下出てきたんだベランダの隅に枯葉と一緒に丸まってたり布団の下から出てきたのもあってしかも全部片方だけなんなん靴下って生きてるの逃げたいのもう足に黒いスプレーで良くないってどう思う?」
     修太郎がとんでもない早口アンドスライドインで割り込んできた。
     右手にフライドチキン。左手に靴下。
    「ねえこれ今日中に帰れる? 明日朝イチなんだけど」
    「安心しろ。俺のちくわロケットに乗せてやる」
     ナハトムジークが腕組み姿勢のまま下から現われた。どうやって?
    「バナナと靴下で二分する戦場にちくわの旋風を巻き起こす……そう、WATASI」
     キリッとした顔で言うナハトムジークに誰も驚かなかった。ナハトムジークがちくわの話をするのはもはや十年以上前からのお約束である。
    「あ、ねえ魔黒ちゃんって今どうしてるの?」
    「10年前に死んだよ?」
    「うっそでしょ!?」
     ほんまやで。
    「なあ、話は変わるんだが……」
     脇差が財布を開いて写真をとりだした。
    「折角再会したんだから現状報告でもしよう。可愛い嫁さん貰って名、子供が生まれたら小太刀って名前にしようと思ってるんだ……なぜだろうな」
     フッとシリアス気味に笑ってみせる脇差。
     闇堕ちした時に猫耳の限りを尽くしてもてあそばれた過去を消し去ろうとする脇差である。
    「現状報告か。オレは相変わらずパンティ被ってるぜ!」
     ビッと親指を立てる藩茶。
    「またいつ会えるか分からない。今日会えた記念にソックスとパンティ、友情の証に渡し合っておこうか。うぉぉおおおおっ、ぱ、パンティぁぁぁぁああああああっ!! ――うっ」
     賢者の目をして虚空を見つめる藩茶にこれ以上触れたらやけどする。
     そう察した七音がさらっとノーマルトークに引き戻した。
    「うち? うちはほら映画や映画。おっさんに黒いのわーってとりついてがーって暴れるあれ、あれやったのうちやで」
     変な話だが、世の中がファンタスティックに様変わりしたからといってフィクションのお話がなくなったりはしない。むしろ七音たちの能力や特性はそうしたフィクションの可能性拡張に活用されることがあった。
    「あの頃から10年にゃねーこれでクロもスペースキャットなのにゃ」
     クロがスペースキャットのポーズ(心の目で見ろ!)で会話に入ってきた。
    「クロはあちこち行ってるにゃね、此方側に来るのも久々だったのにゃ。皆はどうにゃ?」
    「どうって……」
     話をふられたネコとイヌ。
     っていうか流希と銀嶺。
    「まあ、普通に暮らしていましたよ。忙しかったですがね。あ、認め印いいですか? じゃあ帰りますんで」
    「…………」
     ネコの姿のままでいる銀嶺が耳をぴこんと上げた。
    (武蔵坂学園の仲間は相変わらずのようだな……。世界はすっかり平和な娯楽にあふれているが、思えば10年前はこれが日常だった)
     なんだか懐かしそうにする彼らのもとへ、真魔が巨大なケーキと共に現われた。
    「俺もウェディングケーキプランナーとして本気を出させて貰おうッッ! バナナと数多の靴下が織り成す、この巨大ケーキ! 受け止めて、俺の重……思いを……!」
     急にオトメンな顔して突き出すケーキ。同時に現われた天摩が眼鏡(?)をちゃきってやった。
    「売れっ子スク水デザイナーとなったオレからも、このバナナ宇宙スク水を送らせて貰おう。そしてこの足につけた靴下のようにカジュアルなフィン!」
     宇宙進出に宇宙服いらねーなってなった瞬間『じゃあスク水だろ!』てコンペに突入したのはよき伝説である。
    「さあ、みんなで新たな時代にロケットスタートしようではないか! ニュージェネレーション!」
     飛び立ちの姿勢をとったまま本当にロケット噴射で宇宙へ飛び立っていく天摩。そしてウェディングケーキ。
    「なーんだ。10周年の同窓会だってのにやってること一緒じゃねーか」
    「それはそうでしょう」
     蕪郎がムタンガを左右交互にぱちんぱちんしながら腰を左右に振った。
    「わたくしどもは灼滅者。闇を恐れず欲望を受け入れた人類最強の種族。気分が変わることがあっても、何かに脅かされて歪むことなどありません」
    「まっ、そりゃそうだな。じゃあ一発いつものやっとくか!」
     バナナをくるくる回してキャッチすると、ナナコはカメラ目線でウィンクした。
    「バナナ一本あればなんでもやってみせるぜ!」
    「「ヒューッ!」」
     それから、10年たってもいい意味で変わらない灼滅者たちはカオスの限りを尽くし軌道衛星を二個ほど爆破したあと宇宙を漂いながら馬鹿笑いしたという。
     これはある学園の物語。
     宇宙を平和にして、毎日楽しく暮らすハチャメチャなやつらの物語。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:27人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 2
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