クラブ同窓会~陽だまりの中での再会を

    作者:カンナミユ

    ●2028年の午後
     爽やかな秋空を眺め、封筒を手にした水瀬・ゆま(蒼空の鎮魂歌・d09774)はふうとため息を一つ。
    「どうしたの?」
    「りっちゃん」
     義兄の声に振り向き、ゆまは先程届いたばかりの封筒を手渡した。
     それは、ゆまの亡き父の恩師のイギリス人建築家――の、親族から。
     手紙にはイギリス人建築家が亡くなったという事と、老朽化によりその建築家が所有していた洋館の取り壊しが決まったという事が書かれていた。
    「取り壊しちゃうのか……」
     読み終え呟く声には様々な感情が入りまじっていた。
     その洋館は、かつてゆまがクラブの拠点としていた場所。
     仲間達と苦楽を共にした場所が、なくなってしまう。
     ただ、館は取り壊しても、自慢だった庭――イングリッシュガーデンだけは寄付をし、後に公園として公開される予定だという。
    「寂しくなるね」
    「そうね……」
     久しく訪れていないあの場所がなくなってしまう。
     そう思うとまるで走馬燈のようにあの場所での思い出が、数え切れないほどの思い出がよみがえってくる。
     楽しい思い出や悲しい思い出もあれば、絶対に忘れられない思い出もある。
     なくなってしまう、あの場所が。
    「ねえりっちゃん、せっかくだから同窓会やらない?」
     ふと、ゆまはぽつりと口にした。
    「あれからもうずっと行ってないでしょ? きっと埃っぽくなっているわ。皆で綺麗にしてお見送りしましょ。もしかすると部屋に忘れものとかあるかもしれないし」
    「うん、悪くないね」
     義兄の言葉にうんうんとゆまは頷き、
    「そうでしょ? 悪くないわよね。じゃあ、そうと決まればさっそく同窓会のお知らせを皆に送らないきゃ。皆来てくれるかしら。……あ、りっちゃんも手伝いよろしくね!」
     先程までの心の曇りはとうに晴れ、軽やかな足取りで同窓会の案内の準備に取り掛かった。

    ●同窓会のおしらせ
    「相馬先輩! 水瀬先輩から同窓会の案内が届きましたよ!」
     三国・マコト(正義のファイター・dn0160)は嬉しさを顔いっぱいにして結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)へ封筒を見せた。
     もちろんそれは、相馬にも届いている。
    「ゆまさんか……元気にしているかな」
     背も伸び随分と大人びた相馬の脳裏にあるのは真摯に説明を聞いていたゆまであり、プールや雪原で楽しそうにすごしていたゆまであり。
     そして――あの、アリアを紡ぐ夜の女王。
    「大丈夫ですって、水瀬先輩ぜったい元気にしてますよ!」
    「そうだな」
     学生の頃から何一つ変わらない、元気いっぱいの声に相馬は頷いた。
    「パーティとなれば何か手土産くらいは持っていかないとな。何もってく?」
    「うーん、どうしよう……あ、飛行機!」
    「もう変更手続きしたよ」
     大人になっても子供のままのようなマコトは何度も読み返した案内状へと目を通す。
     そこには一人一人へ宛てた丁寧な言葉がつづられており、最後はこう締めくくられていた。

     皆様とお会いできる事を心よりお待ちしております。
     水瀬・ゆま。


    ■リプレイ


     爽やかな秋空の下、さわりと流れる風が髪を揺らし。
    「…………」
     ゆまはかつて仲間達と過ごした洋館を眺めていた。
    「義妹とはそこそこ連絡取り合ってるから新鮮味もねぇけど、洋館は久しぶりだ」
    「ここに来るのは初めてですね」
     懐かしさに洋館を見上げる律の傍で妻のシャルロッテも洋館を見上げ、
    「あれから10年ですか……」
     過ぎ去りし日を思い出し碧も懐かしむような声で洋館を見る。
     数え切れないほどの思い出がいっぱい詰まったこの場所がなくなってしまう。
    「……そうでしたか。老朽化には勝てませんでしたか」
     今回の同窓会のきっかけとなった一端を聞いた佐祐理は寂しそうに瞳を伏せ、
    「思えば。人造殲滅者故の経過観察で、こちらには年に何度かは来てはいましたが、こちらに足を向けることはなかったのが残念です」
    「ここのクラブは本当にお世話になったね。もう10年も経っちゃえばそりゃ老朽化も進んじゃうよね……」
     未だに子供っぽい性格の蛍姫も寂しそうな顔をする。
    「思い出深いこの洋館も取り壊されるのね……」
    「取り壊しになるのは寂しいですけど、だからこそ、綺麗にしてあげたいですね」
     愛莉と碧に薫も頷き、
    「最後は真面目に綺麗にして見送ってあげよう!」
     元気いっぱいの蛍姫の声が秋空に響く。
     そう、今日はクラブで使っていた洋館を綺麗にし、そして見送る為に集まったのだ。
    「久しぶりだな、ゆま、それに律」
     ふわりと香る薔薇と共に、男装しタキシード姿の命がやって来た。
    「久しぶりね」
    「元気そうで何よりだ」
     薔薇を手渡し他の仲間達とあいさつをしていると、わいわいと楽しい声が聞こえてくる。
     振り向けば空凛、双調夫妻と燐、陽和、朔夜が家族と共にやって来ていた。
     子供達の無邪気な様子にほっこりしつつ、ふとゆまは雄哉がいない事に気が付いた。
    「夫は仕事の都合で遅れて来るって言っていたわ」
     愛莉の言葉にほっと胸をなでおろす。ひとまずは今日の参加者は遅れる雄哉以外は全員集まった。
    「皆さん、今日は来てくれてどうもありがとう」
     集まってくれた懐かしい仲間達へと感謝の言葉を述べ、ゆまは微笑んだ。


    「まずは手分けしてお掃除ですよ! かつての日々のお礼を込めて、最後に綺麗にしましょう!」
     入口に準備してきた掃除用具を並べ、ゆまは懐かしい鍵を長年閉じられていた玄関の鍵穴に差し込んだ。
     すると、すうっと新鮮な空気が洋館へと入っていく。
     柔らかな日の光が差し込み宙を舞う埃がちらほら見え、外へ出ていく埃と入れ替わりに掃除用具を持った仲間達が洋館へと入っていった。
    「掃除か……めんど……」
    「シャル義姉様、りっちゃんの監視お願いします」
    「せっかくお世話になった建物、最後は綺麗にしないとですもんね」
    「って監視って何だよ! シャルも笑顔で引き受けない!」
     義妹からの容赦ない一言に言い返す律だが、掃除用具を持つシャルロッテと共に掃除に取り掛かる。
    「いっしょにやりましょ、せっかくですしね」
    「そうだな」
     夫婦仲良く掃除用具を持ち、どこから手を付けようかと考えていると、
    「三国さんと結城さんは、重いものを退かしてくださいね!」
     ゆまの指示に動く相馬とマコトが視界に入った。
    「久しぶりやね、元気してた? 二人ともいい男に育っちゃって」
    「お久しぶりです、神堂先輩」
    「遅くなったけど、結婚おめでとう」
     10年経った事もあり、それなりに二人は成長していた。それでも面影は変わらずで、学生と言われても信じてしまいそうだ。
    「あ、なぁ、お前ら彼女とか嫁とかいるの? いなかったらどっちかあのボケ、引き取ってくんね? アイツ、いい歳して男のおの字もなくてさ。義兄貴としたらこの先心配で……」
     結婚、という言葉にそそっと二人に近づき冗談半分本気半分で言えば、遠くから何やら嫌な気配を感じたような。義妹のような気もするが気のせいだと信じたい。
     そんな気配から遠ざかる為にもシャルロッテと共に掃除に取り掛かる。
    「ん、どうしたシャル」
     ふと掃除をしながらのシャルロッテの視線が庭園に向けられている事に気が付いた。
     綺麗な自慢のイングリッシュカーデンを目にし、愛されていたんだろうなと息を一つ。
    「今度遊びに来るのもいいかもしれません」
    「そうだな、今度また来よう」
     洋館はなくなってもイングリッシュガーデンは残るという。
     二人は手を止め、しばらく庭を見つめていた。

    「感謝を込めて拭き掃除ですね。……ここで、ほんとにいろいろなことがあったなって」
    「ああ、色々ありましたね。なくなっちゃうの、寂しいです……」
     懐かしさを胸に埃をかぶる床を拭き、碧と薫の胸に過るのは懐かしい日々。
     簡単な掃き掃除を一生懸命していると、蛍姫の脳裏にもだんだんと昔の記憶が蘇る。
    「あぁ、昔はよくゆまさんに悪戯をしかけたなぁ。パニックになる所が面白かったんだよねぇ」
     浮かんでは消えてゆく懐かしい思い出に思わず笑みがこぼれ、
    「ま、今でもゆまさんは弄りがいがある面白い人だけど。ちょっとしんみりしちゃうけど、頑張らないとね……!」
    「ここは頑張って掃除しちゃいましょう!」
     佐祐理も蛍姫に頷き掃除に取り掛かる。
     10年間の汚れという者は床だけではない。壁紙や天井の傷みが気になって仕方がない佐祐理は気になったヵ所から丁寧に直していく。服が汚れないよう気は付けているが、ちゃんと汚れた時の事は考えてあるから心配ない。
     ――と、たたた、と軽やかな足取りが碧と薫を横切った。佐祐理が見れば子供達が駆けていく。
    「お子様達はこっちで遊んでてね?」
     ゆまの声にはーいと元気な声が響き、その姿を親達は目で追うがまずは掃除。
    「大きな館ですから、掃除しがいがありますね。体力だけは有り余ってますから、拭き掃除はお任せを」
    「お掃除は大変だろうね。力仕事はお任せ」
     張り切って腕まくりする陽和の隣で朔夜は大きな館を見渡し、指示を聞きながら荷物運び。
    「いつみても見事で綺麗な館ですね。お掃除は慣れてますのでお任せを。拭き掃除、すぐに終わらせちゃいますね~」
     がらんとしつつも10年前と変わらぬ館を見上げ、燐もせっせと拭き掃除。
    「お掃除には手間がかかるでしょうね」
     掃除用具を手に双調はどれくらいかかるかと思案を巡らせるが、隣には空凛がいる。
    「子供3人を持つ母親ですから、お掃除は慣れたものです。お任せを。手早く終わらせちゃいましょう」
    「力仕事はもちろん、お掃除の細かな作業もお手伝いします」
     顔を見合わせ、二人も掃除に取りかかった。
     遠くに聞こえる元気な声を耳に掃除を続けていると――、
    「あれ? 有城さん、いつの間に?」
    「お、お久しぶり……です」
     双調と朔夜に引き込まれた雄哉がゆまの前にひかれてやって来た。愛莉が言っていたように仕事が終わってから駆けつけてきたらしい。
     10年前に別れを告げずにこっそりと学園を去った事もあり、クラブの皆と今更合わせる顔もないと思っていたが……。
    「いや……遅れてきたので、できるところから始めようかと」
    「それで外を掃き掃除?」
     愛莉に問われ頷く雄哉。容姿は10年前とほぼ変わっていないようだが、精悍な印象が伺える。
    「じゃあ重い荷物運びは男性陣にお任せするわよ」
     力仕事は慣れていると雄哉は手近な荷物を持ち運ぶと、新たな荷物を手に取った。
     こうして掃除は滞りなく進み、10年分の埃や汚れはきれいさっぱりなくなった。
    「服が汚れてしまいましたね……」
    「埃まみれだね」
     掃除をすれば服や手が汚れてしまうのも仕方がない。
     綺麗になった洋館とは対照的に汚れてしまった薫と碧は顔を見合わせ、達成感に律とシャルロッテも汚れた顔で笑いあう。
    「汚れは私に任せてください!」
     掃除が終わり集まった仲間達に佐祐理は笑むと、ESPでさっと綺麗な姿に元通り。
    「皆お掃除ありがとう、すっかり綺麗になったわ」
     ちり一つない綺麗な洋館を見渡し、ゆまは全員に礼を言うとにこりと微笑んだ。
    「これから最後のパーティね。さあ皆で準備をしましょ!」


    「今日は昔のアルバムを持ってきたんだみんなで見ないかい?」
     パーティが盛り上がる中で命が広げるアルバムに、皆は懐かしさと共に写る写真へ目を通す。
     そこには薫がコスプレし魔法少女まじかる☆かおるんになっている写真があり、愛莉が浴衣コンテストに出て可愛らしかった写真などがあり、ページをめくるたびに誰かしらの声が上がった。
    「ま、まじかる☆かおるんは恥ずかしいので、その……」
     恥ずかしそうにし薫は持参した自家製コーンスープを一口。そして、バスケットいっぱいに詰め持ってきたシャルロッテの軽食に手を伸ばし、ぱくり。
     アルバムをめくりつつ命の脳裏に蘇るのは律がいつもゆまに絡んではぶっ飛ばされていた事や、ゆまが闇落ちしたときたくさんの人が集まって一丸となった事。自分が大胆な水着姿でバレンタインにチョコを配ってちょっと恥ずかしかった事。
     そして、今日は集まれなかった、刹那の幻想曲の仲間たちの事。
    「ゆま先輩達にはまだまだ敵いませんけど」
    「ありがとう、碧」
     ガトーショコラと飲み物を受け取り命は給仕に回る碧へ礼を言い、それを口にすれば甘い味が広がっていく。
     楽しい事や辛い事。笑ったり泣いたり思い出の花は絶え間なく咲き続けた。

    「昔の話もいいけど、皆さんの今も知りたいです。お話しして、くれませんか?」
    「うんうん、聞きたいな!」
     ふわりと香る紅茶を口にし、ゆまの一声に手作りケーキを食べていた蛍姫も言い、話題は懐かしい昔話から今の話題へ。
    「今は、パティシエの卵としてケーキ屋さんで働いていますよ。まだ、素敵な方とは出会えていませんけどね? 皆さんは、どうですか」
     碧が持参したガトーショコラは好評で、もう残り少ない。
     飲み物や食べ物を給仕しながらの碧の声に最初に応えたのは陽和たち。
     陽和と朔夜は武蔵坂の医学部で4年学んだ後、故郷の医大で2年勉強し、2年間の研修期間を経て二人同じ病院に勤務しているという。
    「私の専門はリハビリテーション科です」
    「僕の専門は内科。東洋医学も専攻したから、漢方とかも取り入れてるよ」
     飲み物を飲みながら話す陽和と朔夜は共に働く職場の事に軽く触れつつ更に話す。
    「忙しいんだけど、充実してるよ。こうして、皆とも会えたしね」
     朔夜は集まった仲間達をぐるりと見渡し、
    「ええ、忙しいけど、充実してますよ。子育てもありますし、ね」
     遊んでいる子供達を陽和が見守れば、教師となった燐も語りはじめた。
    「私が当主をしている神凪家は人の出入りが多いですよ。悩み相談も多いんで。小学校で子供達を教えています。未来を担う仕事をする事は、実り多き人生でしょうね」
     そう言いながら、ふと燐は視線を外へと向け。
    「……あ、家に関する厄介事も解決しましたね。裸眼で過ごせるようになりました。この素晴らしい館の風景を素通しで見れる事には感謝せねば」
     さらさらと流れる風に草木が揺れ、続くのは音楽一家。
     双調と空凛は演奏旅行で海外に行くようになったらしく、子供達にも影響があったようだ。
    「最近、9歳の長男が津軽三味線を弾き始めたのですよ」
    「2人の娘がピアノを弾き始めて、その指導もしてます」
     子供達もいずれは双調と空凛のように世界に羽ばたく日もくるに違いない。

     まじかる☆かおるんは昔の話。現在の薫は子供が3人生まれ、主人も含めてのんびり過ごしている。
    「主人の洋菓子店のお手伝いをしたり、児童学部出身を活かして地元で学童保育を時々やっています。すみません。今日はどうしても一人でここに来たくて……。家族の写真ならありますよ」
     そう言い、テーブルには幸せな家族の風景が収められている。
     一枚一枚大切に家族の写真を並べる薫の表情は柔らかい。
    「弓道は続けているの?」
    「はい、続けています。来年こそ昇段したいですね」
     ゆまに聞かれ応える薫は微笑み、何となく義妹の視線を感じた律。結局神社を継いで現在は宮司をやっているという。
     最愛のシャルロッテの手伝いもあり、順調のようだ。
    「俺には過ぎた嫁です」
     妻が用意した軽食を口にしちょっとだけ自惚れる律に愛しい人はにこりと微笑み、
    「素敵で大事な旦那様ですよ」
    「ちょっ、シャル」
     腕をキュッと抱き寄せ、幸せいっぱいの夫婦である。
    「りっちゃんをよろしくね」
    「はい」
     ゆまに笑顔で言い、そして、旦那様にも笑顔を向け。
    「これからもよろしくお願いします」
    「ああ、よろしくな」
     見つめ合う二人はふわりと漂うコーヒーの匂いに見れば、それは愛莉が淹れたもの。
     愛莉は三重県でカフェを経営しているそうで、テーブルに並ぶロールケーキとサンドイッチは彼女が提供したものだ。
    「8年前に夫と結婚したけど、皆さんに報告できなくれごめんなさい」
     妻の隣でコーヒーを口にする雄哉は三重にある養護施設で子供の世話をしていると近況について話していると、テーブルにアルバムが並んだ。
    「8年前の挙式とつい先月学園生向けに披露宴を開いた時のアルバムを持ってきたわ。皆さんで見ましょう?」
     にっこり笑顔でアルバムがめくられ、その度に様々な声が上がる。その様子を佐祐理は見、そしてみんなの話を聞いていた。
     佐祐理がクラブに入団したのは大戦終了後。そんな事もあってかひたすら聞き役に回っている。
     集まった大半は既婚者だからか、近況として聞くのは結婚して充実した日々の話ばかり。なんだか複雑な心境になったりならなかったり。
    「……婚活、頑張ります」
     佐祐理は溜息をつきほどよく冷めた飲み物を一息に飲み干していると、命が子供達にお菓子をプレゼントしてるのが見えた。
     嬉しそうにお菓子を受け取る子供達。
     頭を撫でたく、そっと手を伸ばしつつ子供達の親達へと視線を向け――。
     お菓子を手にし、頭も撫でられ子供達は嬉しそうに笑っていた。


     思い出話に花が咲き、互いの近況を伝えあい更に話は盛り上がるが時間は刻々と過ぎていく。
     ああ、時間は止まらない。
    「最後、記念撮影をしませんか? 取り壊される前に、思い出として残るように……」
    「あ、そうだ! ここで集合写真撮りません?」
     洋館が取り壊される前の最後の記念に提案する碧に佐祐理は大切にしているカメラを取り出してみせた。
    「記念撮影! いいですね!」
     嬉しそうにゆまは頷き、
    「記念の一枚になりますね」
     陽和の隣で朔夜はつと雄哉の腕をとる。
    「ほら、雄哉さんも入って」
    「……逃がさないわよ?」
     愛莉からも腕を掴まれては逃げようもない。妻がいるかぎり、逃亡など最初から不可能だったのだ。
    「最高の一枚にしたいですね」
     双調の傍らに空凛が立ち、
    「記念撮影、いいですね」
     燐もみんなと一緒に並ぶと子供達もわいわいと並び出す。
    「もう少し……ああ、ちょっとそこを右……はい、ストップ!」
     三脚を立てて、ファインダー越しに出す佐祐理の指示に皆は寄ったり離れたり。
    「じゃあ撮ります」
     セルフタイマーをセットした佐祐理は駆け、急いで並び、
    「皆ではい! チーズ!」
     蛍姫はにっこり笑い、シャッターは切られた。
     一か所に集まった仲間達がバラバラに散り、振り返り洋館を見上げて碧が最後に思うのは沢山の出会いと思い出への感謝の気持ち。
     思い出がいっぱい詰まった洋館ともこれが最後――。
    「今日は本当にありがとう」
     揺れる髪をそっと抑え、ゆまは来てくれた仲間達へ笑顔と共に感謝を告げた。
     命が今までの感謝をゆまに告げ、碧や薫、蛍姫もありがとうと感謝を述べ。佐祐理や愛莉、空凛達からもまた感謝の声。
     柔らかな陽だまりの下、感謝の声が重なって。
    「お疲れさん」
    「ありがとう、りっちゃん」
     義妹へと向けた律の声にゆまは笑顔で応え、
     そして洋館を仰ぎ――。

    「ありがとう」

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月29日
    難度:簡単
    参加:15人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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