クラブ同窓会~百合水仙の花咲く部屋で

    作者:三ノ木咲紀

     空き教室の窓から百合水仙のブーケを掲げた百合ヶ丘・リィザ(水面の月を抱き締めて・d27789) は、支度の整った空き教室を見渡した。
     机を集めて、おろしたてのテーブルクロスをかけて、お菓子と紅茶を準備して。
     壁には学生時代の皆の絵なんか、かけちゃったりして。
     今は武蔵坂学園の美術教師になったリィザは、十年ぶりに会う懐かしい部員達の顔を思い浮かべながら招待状を手に取った。
     百合水仙の絵が描かれた招待状。連なる名前。皆どんな十年を過ごして来たのだろう。
    「さ、皆様の「今」のお話、聞かせてくださいな?」
     一人呟いたリィザは、教室を訪れる懐かしい声と足音に笑顔を浮かべて立ち上がった。


    ■リプレイ

     窓際の百合水仙とリィザの姿に、フィオルは微笑んだ。
    「リィちゃん、久しぶり……って感じもしないかな」
    「そうね。再会という気もしないわね」
     微笑みあう二人に、沙耶々は声を掛けた。
    「リィちゃん、こんにちは。……あ、ふぃおるんも! ……この呼び方、懐かしい」
    「やっほ、さーやちゃん。ふふ、そうだね懐かしいなー」
    「振子さん、お久しぶりです。今何してるのですか?」
     リィザに呼び止められた振子は、嬉しそうに答えた。
    「フィオルの財団の天文学部門で研究者をしています。沙耶々さんは?」
    「忙しい旦那様の分まで家で頑張ってるよ。サロメちゃんも小学生だもん。皆にご挨拶して?」
     沙耶々のスカートの裾に隠れていたサロメは、ぺこりと頭を下げた。
    「ごきげんよう、お姉さまがた」
    「生まれたばかりの時、抱っこしてくれたよね。いい機会だから、もう一度抱っこしてみる?」
    「あら是非」
     両手を広げるリィザに、サロメは頬を赤くした。
    「……もう。そんな歳じゃ、ありません」
     サロメを愛おしそうに抱き上げたリィザは、微笑みながら語りかけた。
    「将来は武蔵坂ですよね?」
    「残念ながら、一貫教育の学校だからリィちゃんのお世話にはなれないわ。それにしても、振子は本当に変わらないわね」
    「えっ……」
     沙耶々の声に、振子は気まずそうに俯く。表情を察したフィオルは、サロメの頭を撫でた。
    「すっかり母親としての姿が板についてるよね。私はまぁ色々と忙しいというか、気が回らなくてー……むぅ、ホントだぞー?」
    「ふぅーん、貴女らしいけれど」
     あちこち視線を動かしながら答えるフィオルに、沙耶々は笑顔をこぼした。

    「リィザ先輩、お久しぶりー! 元気そうでなによりだね!」
    「お陰様で」
     笑顔で手を振る彩に、リィザは手を振り返した。
    「今わたしは、世界中あちこちを旅してるんだ。その場所で採れる食材を使って創作料理を作って、地元の人たちに振る舞うさすらいの料理人……人よんで、辻料理人だよ!!」
    「おお奇遇だな! わたしも学園を卒業してから世界中を冒険(という名の旅行)してたんだぞ!」
     胸を張るオメガに、彩は嬉しそう微笑んだ。
    「仲間だね! そうそうこれお土産! フルーツケーキ! 南国とかの珍しい果物いっぱい入れたから美味しいはず! 結婚祝いってことで!」
    「リィザも、皆も結婚おめでとうだな! ……このフルーツは、あの国だな! あっちでは山の上から見た景色が綺麗だったんだぞ!」
    「あの山綺麗だよねー!」
     オメガと共に海外冒険話に花を咲かせた彩は、皆のためにいっぱい料理を振る舞うのだった。

    「千巻さん久しぶり。でもないわね」
     現在児童福祉司として働いている千巻は、仕事柄リィザとはよく顔を合わせているのだ。
    「そうね。……ねえリィザ、あの件だけど」
     本当はプライベートの話をするはずが、いつの間にか仕事の話になっている。一通り話を終えた千巻は、思わず微笑んだ。
    「もう、これは……」
    「「職業病!」」
     目を見合わせて笑いあう。笑いを収めた千巻は、リィザに微笑んだ。
    「また、これからも公私ともによろしくねっ!」
    「こちらこそ」
     差し出す手に、二人は改めて握手を交わた。

    「お久しぶりの人はお久しぶりだよー」
     挨拶しながら入室した有栖は、席につくとお菓子に手を伸ばした。
    「有栖さんはそんなに変わってないですね」
    「高校、大学を卒業後は実家の喫茶店に戻って看板娘として働いたりしてるからかな。お店のバイトさんたちにはお姉さまとか呼ばれてるけど……なんでだろうね?」
    「有栖さんは大人っぽいから」
     微笑むリィザに、有栖は天井を見上げた。
    「結婚どころか恋人もまだいないのにねー。まあ、来年には小学生になる年の離れた妹なら増えたけどね」
    「まあ素敵。今度会わせてね?」
    「もちろん」
     微笑みあった有栖は、ティーカップに手を伸ばした。

     幽と話す英瑠に、狐狗狸子は後ろから腕を回した。
    「英瑠じゃなーい、おひさ! ……うッわ。相変わらず、無駄に豊かな……」
     その拍子に揺れた英瑠の胸を見て、思わず目が据わり腕に力が入る。
    「あは、コクリコさんも相変わらずのご様子で、お元気そうで何よりです!」
     貧乳コンプレックスに首をガクガク揺す狐狗狸子に、幽は手を挙げた。
    「英瑠は成長したってのに、お前は相変わらず……はぁ」
     ため息をつく幽に、狐狗狸子は回し蹴りを入れる。
    「っさいわね、今更育つかっつの!」
    「いて。で? 英瑠は何してんだ?」
    「今はアメリカでプロのチアリーティング活動中だよ。えへへー、今はあちらでお付き合いしてる方が居るんですけど。活躍したらとびっきりエールを送っちゃったり」
     アメフト選手の彼のノロケ話に、幽は口笛を吹いた。
    「おうおう、お熱いこって。アメリカに行ったって聞いた時は驚いたが、楽しそうで何よりだ」
    「幽とコクリコは何してるの?」
    「私は……あー、あれから幽と海外をて……や、別に変な意味じゃなくて! ちょ、ちょっと、アンタも何か言いなさいよ!」
    「なんだよ、一緒にあっちこっち回ってたのは本当だろ? ま、確かにそういう関係とかじゃねぇさ。……今はな」
    「ああもう、一言余計!」
     狐狗狸子は顔を真赤にしながら、幽をポカポカ叩いた。

     懐かしい雰囲気に微笑む葎に、リィザは声を掛けた。
    「お久しぶりです。今はなにをされているんですか?」
    「私は、友人のお手伝いのかたわら、時折こどもたちに水泳のコーチなんて勤めていたり。ふふ、ですから。ちょっぴり親近感」
    「本当に」
     微笑みあった葎は、小さく首を傾げた。
    「もし部長のお子様も、なんて思われたときは、どうぞご贔屓に……ふふ、なんちゃって」
    「その時はぜひ」
     頷くリィザに、葎は微笑んだ。

     紅茶を手にした未来は、くるくる動き回るリィザに話しかけた。
    「お久しぶりです……最後に会ったのは、街風さんの披露宴ぐらいでしたっけ?」
    「お久しぶりです、未来さん。今は確か、海洋学を勉強されているんですってね」
     笑顔のリィザに、未来は嬉しそうに頷いた。
    「はい。最近は主にヒトデの研究をしてますね。なんだか、縁があるようで」
    「あちこち行かれるんですか?」
    「この間、沖縄の方での調査が終わったばっかりです。なのでこちらの方に参加できてよかったです」
    「楽しんでいってくださいね?」
     微笑むリィザに、未来は頷いた。

     遅れてやってきた真羅に、リィザは声を掛けた。
    「お久しぶりです、真羅さん」
    「ふふ、遅ればせながら御結婚、おめでとうございますわ」
    「ありがとうございます。真羅さんは今何を?」
    「普段は隠棲しています。ですからお声掛けいただいた事、本当に嬉しく思っていますの。こういった場でも無ければ、人前に出る事もありませんので」
     懐かしい思い出に遠くを見た真羅は、静かに一礼。
    「本日はお招きありがとうございました。昔日の思いに浸る事が出来て、嬉しく思いますわ。また、縁が『遭』ったならば、お会いしましょう、街風さん」
     吹き上がる一陣の風に、リィザは目を細める。風がやんだ時、そこには鷲の羽根だけが残されていた。

    「街風先生」
     呼び止めたレイチェルに、リィザは振り返った。
    「ズムウォルト先生。お久しぶりです」
     駆け寄るリィザに、レイチェルは目を細めた。
    「私も医学部を経て、武蔵坂で保健体育の教師として中等部で担任を持っているが。そういう年頃の生徒を持つと視線やら色々と大変だ」
     男子の人気は言わずもがなとして、女子もかなり懐いてくれる。教職を退くまではこの美貌を維持しなければ。それに、そういう目で見てくれる方が刺激的でいい。
    「ともあれ、久々の再会だ。今の楽しさも語りたいな」
    「同じ教員仲間ですものね」
     頷くリィザは、二人で色々なことを話すのだった。

    「やあ部長さん、久しぶり。ってほど久しぶりじゃないね」
     手を挙げて挨拶するノエルに、リィザは会釈した。
    「そうですね。ノエルさんの古書店前でたまにお会いしますね」
    「経営が上手に軌道に乗ったからね。あと、たまに探偵じみたこともしてるね」
    「探偵ですか。楽しそう」
     名探偵風の姿を想像したリィザは微笑んだ。
    「そうそう、子供は二人いるよ。絵里琉に似て器量は良いけど、少しお茶目なところは僕に似たみたいだ。武蔵坂に入学したら、その時は宜しく教育してあげてほしいな」
    「その時はぜひ」
    「頼むよ百合ヶ丘……じゃないね、街風先生?」
    「もちろんです」
     頼もしいリィザに、ノエルは頷いた。

    「そういえば部長殿。最近懐中時計を手に入れたのだが」
     声を掛ける百々に、リィザは振り返った。
     百々は今、古物商見習いをしている。跡継ぎのいない古物商のお店を受け継ぐのだ。お店は和風の古い物を扱う骨董屋で、百々によく似合っている。
    「何ですか?」
    「明治時代に作られたものでな、持ち主は非業の死を遂げるという曰く付きだ」
    「大丈夫ですか?」
    「人類全員エスパー化しているから問題ない」
     自信満々に請け負った百々は、その曰くをリィザに語って聞かせた。

     ふわりと柔らかい、大人の女性のドレス姿で現れた小笠に、リィザは声を掛けた。
    「お久しぶりです、小笠さん。今は何を?」
    「ふふふ、じゃーん! 巫女さんです!」
     くるり回った小笠は、巫女服に衣装を変えた。
    「大学卒業後は地元に戻って神社の巫女さんをしています。天狗を祀る歴史ある神社なんですよ」
    「奇遇ですね。私も少し前までは巫女さんだったんですよ」
     シャルロッテの言葉に、小笠は目を丸くした。
    「シャルロッテさん、日本語うまくなりましたね!」
    「はい。今はスムーズにしゃべれるようになったんです。それと、結婚して神堂・シャルロッテになりました。今は向こうの神社の手伝いを……」
     微笑むシャルロッテの耳に、ピアノの音が聞こえてきた。
     片隅のピアノを爪弾くジュリアンは、目が合ったシャルロッテに微笑んだ。
    「久しぶり。みんな、オトナになったんだね。オレだけ取り残されないようにしないとね」
    「久しぶりです。ジュリアンさんは今何を?」
    「今は探偵の真似事みたいのをしているよ。困ったら連絡して。あと気が向いたときに路上ライブしてる。興味持ってくれるようならどうぞ」
     渡される名刺に、シャルロッテは笑顔を浮かべた。
    「私も音楽もまだ続けています。やっぱり歌うのは心地よくて……。今は日本の歌だってばっちりです、ほんとですよ?」
    「そうなんだ」
     ぎこちないけれど笑顔を浮かべるジュリアンは、小さく一礼した。
    「今日はどうもありがとう。いつか、また。街中で」
    「私も歌わせてくださいね?」
     シャルロッテの申し出に、ジュリアンは嬉しそうに微笑んだ。

    「お、遅くなってごめん!」
     仕事場から直帰で会場に駆けつけた透は、まだ終わっていない同窓会に安堵の息を吐いた。
     そのまま、懐かしい面々に挨拶をして回る。ふと、壁際で空気を楽しむ明人と目が合った。笑顔で穏やかに皆を見つめる明人の隣に立つ。
    「久しぶり。来ないかと思ってたよ」
    「ようやく一区切りがついたのでね」
    「何に?」
     透の問に、明人は微笑むばかり。頷いた透は、自分のことを話した。
    「僕は今、幼稚園で保父をやってるんだよ」
    「そうだと思った」
     透は十年前と変わらぬパーカー姿の下に、ひよこさんのアップリケが可愛いエプロンをつけたまま。
    「皆言ってくれたらいいのに」
    「似合ってるから?」
     明人の指摘に、透は苦笑いをこぼした。

     机上のサイキックなテレビ電話が、突如鳴り響いた。リィザが受話器を上げると、クリスティアベルの声が響いた。
    「久しぶりリィザ先輩!」
    「クリスティアベルさん! 今どこですか?」
    「現在地は宇宙です! 銀河的な平和目的の組織の結構お偉い立場で、宇宙人との対話や交渉をしてます!」
    「どんな組織ですか!?」
     思わずツッコむリィザに、クリスティアベルは視線を逸した。
    「えっ? 未知の生物と第一種接近遭遇? はーいはいはい! わたしが第三種接近やりまーす! おはなししましょーー! それじゃあリィザ先輩! またこんど宇宙マグロ漁いきましょー!」
     突然切れる通信に、会場は沈黙に包まれた。

     洋子はリィザを呼び止めると、紅茶のカップを差し出した。
    「あら、相変わらずお綺麗ですわね。それでご結婚は?」
    「学生の頃からのお付き合いがある方と。今は街風・リィザです。洋子さんは?」
     幸せそうなリィザに笑みを崩さない洋子は、傷つく心を抑えながらも誇らしげに微笑んだ。
    「私はまだ自由ですわ。高ランクのお見合いパーティーに参加したりしていますの」
    「素敵な人が見つかるといいですね」
     微笑むリィザに、洋子は苦い紅茶を飲み込んだ。
    「……同窓会の後、お時間ありますの? よろしければ飲みに行きません?」
    「喜んで!」
     微笑むリィザに、洋子はそっと目を伏せた。

     自社のワッフルを配って歩いていた華穂は、挨拶回りを終わらせて一息入れていたルーシーの隣に座った。
    「おや、ルーシーさん。やっほっほ! こういう場だと不思議と懐かしく感じますねー」
    「華穂もやっほ。確かにここだと、華穂の顔もなんだか懐かしい気がしてきちゃう。一昨日会ったばかりなのに」
     語り合う二人に、ありすが会釈した。
     お菓子を食べるだけではいけないと紅茶を振る舞っていたありすは、姫華のカップに紅茶を注いだ。
    「久しぶりです姫華さん」
    「ありすか」
     同い年でギリギリ大学生な姫華の隣に座ったありすは、ため息をついた。
    「姫華さん最近どうです? わたしは先生にはなりたいけど、今でも働いてるみんなを見るとこれもまたわたしにしかできない事なんじゃないかなって思うんだよ。でもきれいなお嫁さんになれたらずっと幸せでいられるのかなー?」
    「お嫁さん……そうじゃな。そのためにも、妾に金持ちの男を紹介してくれてもよいぞ」
     顔を上げた姫華に、ありすは知らないと首を横に振った。
    「いやじゃ……妾、恋人も出来ぬまま大学を卒業しとうない。……この後皆で合コンじゃあ!」
    「ちょ、ちょっと、先生許しませんよッ!」
     拳を振り上げる姫華を、リィザがたしなめる。その声に、隣の瑞葉が立ち上がった。
    「リィザ私より年下なのにもう結婚してるし、沙耶々ちゃんなんて子供もいるし! いいじゃん!」
    「そ、そうね」
     昔の癖で思わず子供扱いしてしまったリィザが、瑞葉の剣幕に頷く。
    「あーもう、私も彼氏とか欲しい! もう兄貴夫婦のイチャラブ見せられながら独り酒とかしーたーくーなーいー!!」
    「行っちゃいましょう! 都会ならかっこいい男の子もいるはず!」
     巫女服姿の小笠も賛同し、有志が部屋を後にする。
     その背中を見送ったルーシーは、華穂にそっと話しかけた。
    「合コンだって、華穂どうする? 私は、うーん……あんまり興味ないかも」
    「ほほう、合コンですか。私もあまり……という感じですね」
     どちらともなく頷き合った二人は同窓会をそっと抜け出すと、夜の街へと消えたのだった。

    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:29人
    結果:成功!
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