クラブ同窓会~にじいろルーム

    作者:泰月

    ●ジャカランタの咲く頃に
     時は2028年――南アフリカ郊外。
     まさに抜けるような広い青空の下には、アフリカの雄大な自然が広がっている。
    「うん、いい天気。今日は少し暑くなるかな?」
     庭で育てている向日葵に水を遣りながら空を見上げた久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)は、傍に漂うねこさんに声をかける。
     獣医となった杏子は日本を離れ、ここ南アフリカで郊外に建つ家を拠点に、自然動物の生態や健康調査の日々を過ごしていた。
     そんな南の地での日々の中、杏子はある事を思いついた。

     ――お知り合いの皆を呼んで、お花見同窓会を開こう。

     アフリカの大自然。そこに生きる動物達。
     今の自分が共にあるものを、みんなに見せたいと思ったのだ。
    「日本は、紅葉シーズンだよね」
     北半球と南半球では、季節の移ろいは異なる。
     日本では木々の葉が紅や黄色に色づく頃、南アフリカではジャカランタと言う樹に青紫の花が咲いているのだ。
     そして、ジャカランタはこうも呼ばれる――アフリカの桜、と。


    ■リプレイ

    ●紫雲の華
     ジャカランタは、その花の色から紫雲木と書かれる。
     満開のジャカランタの並んだ様は、正に青紫の雲を見ているかのような光景だった。
    「ふわぁ……」
     夢幻のような景色に、神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)は、駆け回る加具土に注意するのも忘れて見入る。
    「確かにこれはアフリカの桜だね。紫がすごくキレイです」
     圧倒される萩沢・和奏(夢の地図・d03706)の横で、加持・陽司(世界の篝火・d36254)が無言でシャッターを切っている。
    「紫色の桜……すごいな」
    「桜の儚さが、生命力に変異したかんじだね」
     思わず魅入る木元・明莉(楽天日和・d14267)の隣で、ミカエラ・アプリコット(青空を仰ぐ向日葵・d03125)も木々を見上げている。
    「どれも大きいな。どれぐらいの間ここに立っているんだ?」
    「私がアフリカに来る、ずっと前から。誰に聞いてもね、そう言うの」
     鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)の疑問に、久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)が眩しそうに木を見上げて返す。
    「ジャカランタの花は若木には咲かないでね、木が大きく成長して初めて咲くの。アフリカの桜は、うん、逞しいの!」
    「うん、力強さ、感じますね」
    「なんと言うか、神秘的だねぇ」
     杏子の説明に、虚中・真名(蒼翠・d08325)と咬山・千尋(十年後は師走崎千尋・d07814)が頷く。
    (「地元の人とも良い関係みたいだね。杏子ちゃん、頑張ったんだな」)
     三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)は、その説明の中にアフリカの日々を垣間見て、嬉しそうな笑みを浮かべていた。
    「この景色は見れて良かったよ。キョンは本当にお誘いありがとう」
    「此れは美しい。素敵な花を見せてくれてありがとう」
    「どういたしまして。こちらこそ、来てくれてありがとう」
     琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)や、ニコ・ベルクシュタイン(花冠の幻・d03078)の感謝の言葉に、照れたような笑う杏子の元に猫が飛んできた。
    「にゃ」
    「ねこさん。ミイナを呼んで来てくれたのね。皆、この子が私の患者第1号なの!」
     『グルルッ』と喉を鳴らし、ライオンが現れた。

    「すごい! 弥彦さん、すごいです! ね!」
    「……うん、すごい」
     興奮してアクアマリンの瞳を大きく見開く華井・鼓(小春日和・d27536)の隣で、鳥屋野・弥彦(高校生人狼・d27493)は一言、絞り出した。
     と、鼓の霊犬さららの前脚の重さとぬくさが、弥彦の足の甲にかかる。
    「ささら、そこ好きだよね」
    「すっかりお決まりの位置ですね」

     一方その頃。
    「わたくしお嬢様ですから木登りも得意で良かったですわ!」
    「残ちゃん、何でそんなトコでセミ化してるのー!?」
     相棒の大和と2人、アフリカの空気を満喫しながら歩いていた榎・未知(浅紅色の詩・d37844)が見つけたのは、ぽつんと立つ巨木に何故かしがみつく小向・残暑(絵本の魔法・d36555)だった。
    「どうするか……大和、も流石に無理だな――んん?」
    「何だか動物がいっぱい――あら?」
     高さに悩む未知の後ろから、仕事の都合で到着が遅れた椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)が現れた。
     すぐに事情を察して、ふわりと箒で舞い上がる。
    「ところで、残暑さんも魔法使いでしたよね?」
    「ですわ!」

    ●がうがう
    「お前がミイナか? 宜し――」
     杏子の足に擦り寄るライオンに、脇差が手を伸ばす。
    「あ、脇差。ちょっと待――」
     輝乃の静止よりも早く、ガブリとその手が飲み込まれた。
    「腹が減った? 遊びたい? 分かったから噛むなって!?」
    「鈍、少しそのままで」
     手をかじかじと甘噛みされる脇差に、ニコがカメラを向ける。出産間際の奥さんがいて来れなかったライオン好きの後輩に、後で自慢する気だ。
    「いやぁ、野生の楽園だねぇ~」
    「いやぁワイルドっスね~あかりん。俺を前に出さないでくださいよ!」
     明莉と陽司は、脇差の次になるまいと、互いに盾にしようとポジションの取り合い。
    「多分、1回噛まれておくといいぞ?」
    「摩利矢先輩の言う通りなの。皆、灼滅者だもの、大丈夫」
     何故か嬉しそうに噛まれてる摩利矢の言葉を、杏子が笑って頷いた。
    「ミイナちゃん、よろしくね」
     ならばと勇弥も、物怖じせずに近寄って、やっぱりガブリ。
    「うお、リアルライオン!?」
    「イテテ、じゃれてくれるのはいいけど、結構爪が鋭い……けど、かわいいね!」
     未知達が合流した時には、千尋の手に爪が食い込んでザリザリの舌でペロペロされているところだった。
    「ミイナも皆が気になるお顔だね?」
    「ここでも、愛されてるね」
     ミイナの表情を読む杏子の様子に嬉しくなって、手に歯型を付けた渚緒がぽつり。
    「ジャカランタ、とても綺麗でした。ミイナさんですね。こんにちは♪」
     空からジャカランタの眺望を堪能してきた紗里亜が、苦笑しつつ舞い降りる。
    「ミカエラでっす。ん、いい子だ、もふもふだ♪ 撫でていい? よしよし♪」
     実にワイルドなふれあいが続く中、すたすた近寄ったミカエラが、太い首元にもふっとしがみ付く。
     すると、ミイナがすとんと腰を下ろした。
    「ミイナ、初めまして。私とも仲良くしてくれると嬉しいな」
     和奏がそっと手を伸ばして撫でてみても、大人しくしている。
    「ミカエラさん手際良いなぁ、主婦力ってやつ?」
    「んー、ま、きょんのお母さんだから? キミのお祖母ちゃんだね~♪」
     未知の賞賛に返しつつ、ミイナを撫でるミカエラがふと真顔に戻る。
    「……おばーちゃん?」
    「そうなると、おじーちゃんは……?」
     真名の一言に、皆の視線が明莉に集まった。

    ●懐かしさと新しさ
    「持って来たの?」
    「着ぐるみパティシエの屋台は、汎用入国許可有りだからね~♪」
     驚く和奏に、屋台の中から返すミカエラはヒマワリ姿。
    「ほいっと、懐かしの明石焼き風人形焼き、焼けたよ~♪ フォンデュ用チーズも、準備完了~♪」
    「ひまわりジャムもあるから、良かったらどうぞなの」
     ミカエラが作った懐かしい菓子に、杏子が持ってきた新しい味が添えられている。
    「ひまわりのジャムとは、また珍しいな」
    「ひまわりって、ジャムにもなるんだね」
     ニコと和奏がそれぞれ、自分の顔の人形焼にジャムをつけて食べてみると、程良い甘酸っぱさが口に広がった。
    「うん、自然の甘さは悪くないな」
     しれっとミカエラ顔を取り、明莉もひまわりジャムをつけていた。
    「あかりん先輩、ジャム食べられたの?」
    「だってひまわりだし」
     それを食べながらだったから、だろうか。
    「飲み物も出来たよ。明莉くんは、砂糖抜きだね」
    「マッチョラテ、ありがと」
     勇弥からカップを受け取る明莉の舌が、何かを間違った。
     正しくは抹茶ラテ。
    「俺もマッチョラテ!」
     自分と大和の人形焼きを確保しつつ、未知がニヤリと笑って乗った。
    「カフェオレは僕だね」
    「小豆ラテ、頂きます」
     いつも穏やかな渚緒と、普段はツッコミ鋭い真名も、敢えて触れない優しさ。
     陽司は笑い転げてるけどな。
    「脇差くんは……珈琲飲める?」
    「……多分」
     ミイナに頭を、何故かねこさんにも左腕を、ダブルかじかじされてる脇差は、唯一フリーな右腕でカップを受け取る。
    「ねこさん、お友達できてよかったね」
     お茶を受け取りながら、ダブルかじかじを眺める千尋。
    「ふふ。脇差、懐かれたね。頑張って」
     ワイルドなふれあいをハガキに色鉛筆で書き残していく輝乃の傍に、勇弥がそっとカフェオレを置いていく。
    「あ、これ佐渡の時だね」
    「ウサミミメイドで和食屋台を開いた時の絵もあるの」
     その後ろでは、渚緒と杏子と輝乃がお土産に持ってきた、糸括の活動を纏めた絵本の頁を捲っていた。
     杏子の指が懐かしそうに撫でる頁の中には、今日はいない友人達も描かれている。この絵本は、杏子の家の本棚に置かれる事になる。
    「これは、視察で行ったノルウェーの森ですね」
     紗里亜もすぐ傍で、ひまわりジャム乗せの人形焼の味に頬を緩ませながら、別の頁を捲っていた。
    (「これは図書室に欲しいな」)
     ニコは司書の顔になって、頁を捲っている。
    「ミイナ、こちらで我慢して下さいね」
     真名は脇差顔の人形焼を生贄――もとい本人の代わりに差し出すが、ミイナは脇差の頭を離そうとしない。
     そんな時だった。
    「わたくし巨大タコさんウインナー持ってまいりましたわ!」
     残暑が、それを取り出したのは。
    「10年前のお弁当だ……ね?」
    「だが10倍以上でかくなった……な?」
     残暑の手にあるそれの大きさに、杏子と摩利矢が目を瞬かせる。
    「チーズ付けたら美味しそ――大きすぎましたわ!」
    「残は、何で海外の度にでっかいもん持ってくるの?」
     フォンデュ鍋に入りきらないタコさんウインナーに10年前の大根を思い出し、思わずつっこむ陽司の横を、のそりと横切る影。
    「あれ?」
     そして消えるタコ。もとい、肉。
    「あーれー」
     もっと欲しかったのかな。じゃれ付いたミイナに残暑が押し倒される。
    「ちょっとかじかじされてますが、わたくしは、今日も元気ですわ!」

    ●訪問
     暮れなずむ頃、暗くなる前に一行は杏子の自宅に案内された。
    「突撃、きょんのお宅~♪」
    「ここが杏子様のお城!」
    「お城って。よく遠出するからお部屋は殺風景だよ」
     珍しそうなミカエラと残暑の言葉に、杏子がくすぐったそうに笑う。
    「ふふ。こう言うのは、簡素って言うんですよ」
    「キョンらしさはあると思う。夕飯、出来たよ」
     そこに、紗里亜と輝乃が台所から出てきた。
     紗里亜作の飾り切りを駆使した果物と野菜のサラダと、輝乃作の人参入りハンバーグが食卓に並ぶ。
     そしてもう一品。
    「ワニじゃがだ」
     摩利矢が湯気の立つ鍋を置いた。
    「これ、どう見ても……」
    「人参、ごろごろ入ってるね」
     ワニ肉ではなく人参に、千尋と和奏が顔を見合わせる。
    「まさか上泉にまで、人参克服が伝わっている……?」
    「風の噂をちょっとね」
     考え込むニコに、柊子が小声で答えた。
    「おい、何だその顔」
    「ん? 何のことだ?」
     何か企んでそうな明莉を、脇差が横目で睨む。
    「どれも美味そうじゃん! 俺は、食べる専門で行かせて貰おうかな!」
     陽司の一言で、アフリカの晩餐が始まった。

    「凍道さんは神話研究者だそうで」
    「そうだよ。この後、マプングブエやヴォルビリスに行こうかと思ってる」
    「僕も神にまつわる遺跡調査で世界を巡っています。何処かの遺跡ですれ違う事があるかもですね」
    「遺跡巡りの話、聞きたいな」
     真名とリストの話に輝乃も加わり、始まる遺跡談義。
    「そうだね。スコットランドのビューカッスルという小さな村にある、古い石碑があるんだけど――」

    「じゃあ、まずは今どんなことをしてるのか、から」
    「今してる事はね――」
     ジャーナリストの顔になった陽司から、杏子へのインタビューが始まって。
     アフリカでエスパー増加による生活への影響を調べる目的、色々楽しくて忘れてたなんてそんな。
    「じゃ、最後に――アフリカで活躍中の獣医さんとしての杏子さんにお聞きします。今、あなたの生活は何色に輝いていますか?」
    「空……うん、海色! 離れても一緒、ひとつに繋がってるもの」
     陽司のインタビューが終わる頃、台所から湯気が昇った。
    「珈琲と各種ラテ、出来たよ」
     勇弥が淹れた暖かい飲み物を手に、アフリカの星空の下へ。

    ●南天の星空に
     広い夜空に、数え切れない程の星が瞬く。
    「すっごい星だな……動画で伝わるかな」
     その光景に息を呑み、未知はカメラを向けた。
    「じゃあ、天の南極を探してみましょうか」
     柊子の指が、南東。花見をしたジャカランタの上空を指す。
    「あれがりゅうこつ座で一番明るい星、カノープス。そこから斜め上に視線を動かして――もう1つ明るい星があります。それがエリダヌス座のアケルナル」
     カノープスとアケルナルを結んだ線から、地平線へ向け正三角形を描くと3つ目の点となる星が天の南極になると、柊子の解説が続く。
    「その三角の間に、二等辺三角形が見えるかな?」
    「それはきっと、みずへび座ね。周りに、ほうおう座、とけい座、きょしちょう座、などがあるわよ」
     勇弥の疑問に答える形で、柊子は空に向けた指を西へ滑らせる。
    「南十字星ってなかったっけ?」
    「南十字星は1時間で見える高さになるわ」
    「おや? では、カノープスの下に見える十字は?」
    「それは、ダイヤモンド十字ね」
     千尋とニコの問いにも、柊子は淀みなく答えるけれど。
    (「良かった、何とかなりそう。アフリカの星空、初めてだったけれど」)
     内心ドキドキでした。

    「平和ですねぇ」
     寝転んで星空を眺め、真名がぽつり。
    「なんだか、アフリカの空と大地の広さにぴったりな、のんびり時間ですね」
     見慣れぬ角度の天の川を見上げ、和奏がぽつりと呟いた。
    「広いなぁ……」
     遮るものが何もない夜空を見上げて、渚緒も小声で呟く。
    「皆、繋がっているんだね、この空の下で」
     アフリカの空と大地は広く、そこに生きる命が沢山あると判った。そこで生きる道を定めた友人を、渚緒は誇らしく思う。
    「遠くとも、何年経っても。空は繋がっているんだな」
     渚緒と同じようなことを呟いて、脇差が北の夜空に手を伸ばす。その先にある星は、おうし座のアルデバラン。
     柊子は日本では見えない星が多い南の空を選んだが、方角を変えれば日本でも見える星がそこにある。
    「『巡り廻るは星の海。樹は道標となりて軌跡を残す』……なんてね」
     脇差の肩に寄りかかり、輝乃が浮かんだ詩を口ずさむ。
    「時と一緒に星も海も巡るけど。自然の樹のように、何かの軌跡は残せたらいいな」
    「きっと、何か残せる。その……俺も探すからさ」
    「うん」
     やがて、星が巡り南十字星が見えて来た頃に、懐かしいメロディが響きだす。
    (「幸せに、な」)
     紗里亜が唄い出したそれに、音を合わせて唄い出す杏子の姿に目を細めながら、明莉は願いを込めて胸中で呟いた。

    ●夜明け
     早朝。ジャカランタの後ろから、朝陽が昇る。
    「10年以上前――山を下りて学園に来てなかったら、たくさんの人に出会う事も、華井と出会う事もなかった」
     輝く青紫の花を眩しそうに眺めながら、弥彦がぽつりと口を開いた。
    「いつも華井が誘ってくれるから、知らなかったものたくさん見られる。ありがと、来て良かった」
    「ありがとうは、私がですよ」
     わしわしと頭を撫でる弥彦に、にへと笑顔を返し鼓が口を開く。
    「弥彦さんはいつも、したいことを一緒にしてくれます。今回も、初めての外国はひとりだと少しだけふあんだったから。来てくれてよかったです。はじめての友達が、弥彦さんでよかったです」
     頭を撫でる弥彦の手のぬくもりに頬を緩め、鼓は続ける。
    「ね、弥彦さん。またあそびにいきましょう!」
    「そうだね、また……ちょっと、小さくなった?」
    「なってないです。弥彦さんが大きくなったんです」
     その一言にむすーっとした鼓だが、弥彦の口角が少し上がるとすぐに笑顔に戻った。

    ●anytime anywhere
     翌朝、一行の姿は杏子の家から一番近い街の前にあった。
    「一枚いいかな? 獣医さん」
    「昨日の陽司とのやり取りを見てても思ったけど。様になってるよ、キョン」
     カメラを向ける陽司の隣で、千尋が仕事に使う医療道具を持った杏子とねこさんのらしさを素直に褒めていた。
    「ありがとう。もっとゆっくりお見送りしたかったのだけど」
    「急患でしょ? キョンちゃんが、それだけ頼られてるって事だよ」
    「そうそう。アフリカに生きる命の為に、杏子ちゃんは頑張ってきたんだよね。昨日のミイナを見てて判ったよ」
     少し残念そうな杏子に、和奏と渚緒が告げる。
    「すっかり一人前ですね♪」
    「ホント、ちゃんと獣医さんやってんだな」
    「ココがきょんの居場所になったんだね。うん。よかった!」
     肩に触れて笑顔を見せる紗里亜の後ろで、明莉は安心と少しの寂しさが混ざった笑顔を浮かべ、ミカエラも安心したように頷いている。
    「お前達、すっかり親目線だな」
    「鈍さんも、同じようなものですよ。ねこさんに昨日送った日傘を持ったか、何回も確認してたじゃないですか」
     3人につっこんだ脇差に、真名の鋭いツッコミが突き刺さる。
    「杏子様がイキイキしていて、わたくしも嬉しいですわ! 今回はありがとうございましたわ!」
    「私こそありがとう」
     今日も元気な残暑の言葉に、くすぐったそうに杏子が笑み返す。
    「またいつか、ジャカランタのお花見しようね!」
    「力強くて命が溢れて美しくて。ここは良い所だ。また来させて貰うよ」
     そんな杏子の言葉に、勇弥が頷いた。
    「その時は、ちっこい大和も連れて来れたらいいな」
    「そうだな。ポンパドールと、できれば奥様も」
     未知とニコも、確りと頷いた。
    「キョンも、いつでも日本に来てね。あと今回のお花見も、絵本にしようと思うから。出来たら送るね」
    「うん。楽しみにしてるね」
     互いの両目で視線を交し、輝乃と杏子が笑い合う。
     ここから踏み出す方向は、もう皆一緒ではないけれど。
     いつか、はきっと遠い未来にはならない。
     どれだけ離れても、どこかで繋がっている。またいつでも、どこかで逢えるから。
    「いってきます!」
    『いってらっしゃい!』
     満面の笑顔で手を振った杏子を、重なった声が送り出す。

     ――空には、大きな虹が出ていた。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:17人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ