クラブ同窓会~Promenadeの時を過ごし~

    作者:幾夜緋琉

    ●クラブ同窓会~Promenadeの時を過ごし~
     あの日から、10年が経過した、秋の一日。
    「さて、と……皆、来てくれるかな?」
     武蔵坂学園からほど近い所にある、小洒落たレストラン。
     海堂・詠一郎(ラヴェイジ・d00518)は、ちょっと不安そうにしながらも、店内の飾り付けに余念が無い。
     修学旅行等で撮った写真や、思い出のアイテム、そして……武蔵坂学園を卒業する仲間達の、沢山の卒業アルバムが並んでいくと、それだけの年を刻んできた事が、形になって現れる。
     そして、レストランのシェフが腕によりを掛けて作った、沢山の料理がそれに花を添える訳で。
     それらを見て……十年一昔とは良く言うものと実感。
     『Promenade』の仲間達も、彼の友人達も……それぞれの未来を見つけ、それぞれの将来へと歩みを進めている。
     そんな仲間達と、十年目の同窓会をしよう、と思い立った詠一郎。
     思い出の地であり、大切な場所、武蔵坂学園。
     そこからほど近い小洒落たレストランを貸し切りにして、折角だから、10年の想い出話に花を咲かせようと考えたのだ。
     そして一月前に、そんな彼から発信された招待状は全国各地……いや、世界各地に飛んでいき……そして、今日この日を迎える。
     ……そして、そんな詠一郎から手紙を受けたクリス・ケイフォード。
    「ここだね……詠一郎さん、元気にしてるかな……?」
     くすりと笑うクリス。
     静かにドアを開けると、『チリリン』と鈴が鳴る。
    「……あ、クリスさん、来てくれたんだね」
     手を上げ、微笑む詠一郎。
    「お久しぶりだね、詠一郎さん、元気……みたいだね」
    「ええ、まぁ。クリスさんもお元気そうで……ほら、どうぞどうぞ」
     そして店内へ……先に来ていた仲間、友人達と共に、10年目の同窓会が始まるのであった。


    ■リプレイ

    ●時は流れて
     あの日から、10年という月日が過ぎた、秋のとある日。
     武蔵坂学園からはほど近い所にある、海堂・詠一郎(ラヴェイジ・d00518)の見つけたオススメなオシャレなレストラン。
     そこを借り切って、Promenadeの旧友と、知り合いと共に過す十年目の同窓会……そこへの招待状が発信されたのは、大体一ヶ月前。
    「……ここ、かな……?」
     と、招待状に記された店名と、住所を何度も確認する様に見比べるクリス・ケイフォード(高校生エクソシスト・dn0013)。
     ……そんなクリスの背中をポン、と叩く杉本・沙紀(闇を貫く幾千の星・d00600)。
    「クリスくん、お久しぶり! どうしたの、そんな所に立って!」
    「わ、わっ!? え……あ、沙紀さん……でしたよね……?」
     元気な沙紀の言葉に、ちょっと驚くクリス。
     ……10年も経過していると、ちょっと印象も変る訳で。
     ただ、学生時代から続けている弓道……その弓を収納した弓袋を脇に抱えているので、思い出す。
     更に綺麗になった沙紀は、クリスにクスッと笑いながら。
    「そうだよ。ほらほら、もうすぐ時間だから、行くよ!」
     手を引く沙紀に引っ張られる様にして……お店へ入店。
     中では主催者の詠一郎に、その妻の安曇野・乃亜(ノアールネージュ・d02186)も一緒になって飾り付けをしていて……。
    「あ、いらっしゃい……クリスさん、沙紀さん」
    「おお、クリスさん、来て頂けたんですね! 嬉しいです!」
    「そういえば……イギリスに戻られたんですよね? 長旅大変だったでしょう」
     満面の笑みを浮かべ、迎える二人、と、その背中を押していた沙紀が。
    「本当、二人共いつも仲睦まじいわね~。それに乃亜ちゃん、何か話し方が柔らかくなったような? 前はもっと凜々しい感じだったわよね?」
    「ええ……まぁ、一応これが素なんですよ」
     頬を軽く染める乃亜。
     と、そんな会話をしていると……。
    「お久しぶりー!!」
     ドアをガタンと開き、入店してきたのは桐生・桜(薄紅の炎心・d06705)と鴨宮・寛和(ステラマリス・d10573)、無道寺・藍(ワールウインド・d04139)、そして学園の教師、基山・和臣先生。
    「ん、ああ、桜さん、寛和さん、藍さん、そして基山先生、いらっしゃいませ!」
     と笑顔と共に歓迎。
    「久しぶり! ……あ、ネクタイ要らなかったよな?」
     と苦笑しながら、ネクタイを外す桜。その横から。
    「皆さん、お久しぶりです。何年経とうとも、こうして共に過ごせる仲間が居る事、本当にありがたいことですね」
    「そうだな! ええっと、後は誰が来るんだっけ?」
    「んー……なこたさんだけかな? でも、なこたさんはちょっと遅れるってさっき連絡があったよ」
    「そうですね……時間も丁度ですし、十年目の同窓会、始めるとしましょう」
     詠一郎にそっと勧める乃亜……十年目のPromenadeの同窓会が始まった。

    ●十年の時に
    「それじゃ改めて……今日ここに十年目の同窓会に集まって頂き、ありがとうございます。それぞれ、色々な十年間を過ごして来たかと思いますが、今日は思う存分語らい、楽しみましょう。それでは……乾杯!」
    『乾杯ー!!』
     詠一郎の挨拶に、声が重なる。
     グラスのチリン、と鳴る音と共に、グラスを傾け、先ずは一杯……そして拍手。
    「それにしても、皆元気そうですね……取りあえずこうやって、巣立っていった子達を見る事が出来て、嬉しいよ」
     と、和臣先生は目を細め、懐かしそう。
    「基山先生、お久しぶりです……まだ学校で教鞭を執られているのですか?」
    「ん、ああ、うん。いやはや、教師というのは私にとって適役なのかもねぇ……色んな学生達に囲まれ、刺激的な毎日を過ごしているよ」
    「そうですか……それは、面白そうですね」
     基山先生の言葉に、くすりと笑いつつ、先生のグラスに注ぐ。
    「ありがとう、藍ちゃん……いや、もう大人だから、藍さん、だね」
     40程になった基山先生は、藍の担任だった時よりずっと大人っぽく、そして……イケメンになった。
     ……そんな先生と、嬉しそうに会話する藍を横目に見ながら、クリスは詠一郎と乃亜の元へ。
    「それにしても、お二人とも結婚して、子供も授かっていたのですね……本当、おめでとうございます。お二人に、神の祝福があらん事を」
     眼を閉じ、祈るクリス……そんなクリスの動静に、詠一郎は。
    「ありがとうございます。大学卒業と共に、結婚したんですよ。もう子供も、結構大きくなりましてね……ほら、」
     スマホで撮った写真を見せる詠一郎に、柔和な笑みで微笑む乃亜。
     ……学園にいた頃の、クールビューティーな雰囲気から、優しいお母さんの雰囲気。
    「可愛いお子さんですね。お二人の愛の結晶だというのが、良く分かります」
    「うん。まぁ……今日は子供は義両親が面倒を見てくれてるから連れてきてないんだけどね。『ふたりきりで羽をのばしておいで』って」
    「ええ……久しぶりに、二人だけでお出かけ、といった所です」
     ちょっと顔を赤らめる乃亜。
    「本当、二人共いい夫婦ですね……お子さんも、いい子に育っているのでしょうね」
     と、満面の笑みで祝福するクリスに、乃亜が。
    「ええ……まあ、子育ての大変さに比べたら、ダークネスと戦ってる方が楽かもしれません、ね」
     苦笑し、そして詠一郎が。
    「そうそう、クリスさんの近況を是非お聞きしたいのですよ。クリスさん、英国に渡った今、どんな生活をお送りになっているのでしょう?」
    「私、ですか? えっと……英国の田舎で、神父として皆さんの幸せを祝福させて頂いてます」
    「神父さん……ですか、凄いですね」
    「……そうでしょうか? ありがとうございます」
     乃亜の言葉に、ちょっと照れるクリス。そして。
    「ちなみに詠一郎さんは、今は何をされているのでしょう?」
     と問いかけ返し。
    「いや、僕は今はエンジニアとして働いてるんですよ。昔の僕は不甲斐なかったですが、子供たちから不甲斐ない父親だと思われたくは無いですしね!」
     ぐっと拳を握りしめ力説すると、それに乃亜も。
    「ええ……私は実家の会社の社長に今年就任させて頂きました。妻としても、社長としてもまだ未熟者ですが……」
     と言いながら、詠一郎に微笑む。
     ……それを見ていた寛和、沙紀、桜が。
    「本当、いい夫婦、って感じですね」
    「そうねぇ……まぁ、乃亜ちゃんの笑顔を見てれば、色々と努力してきたのでしょうね」
    「ああ、もうあれから10年だもんなぁ……そういや、二人は今、どうしてるんだ?」
     桜が首を傾げ、促すと。
    「私は今も現役よ、これのね」
     沙紀は弓袋を手にする……そういえば、テレビのスポーツニュースで、弓術のプロとして見たような気がする。
     更に沙紀は。
    「まぁ競技会とかの他は、伝があった女子校で弓術のコーチをさせて貰ってるのよ」
    「そうか、凄いな!」
    「凄いですね……わたしは今、保育園の先生をしてるんですよ。保育園でたくさん友達が出来て、毎日楽しいです」
    「そうかー。あ、俺は引っ越し屋に就職したんだ、あのアルバイト先の所にな。今はこの仕事、楽しくってしょうがないんだ!」
     三人、満面の笑みで近況を話す。
     ……と、その時に又、ドアの開く音。
     全員の視線が入口に向くと……愛犬のたまと一緒にやって来た紅・なこた(そこはかとない殺人鬼・d02393)。
    「遅れちゃいましたなのです、すいませんなのです」
     ぺこり、と頭を下げるなこた……昔より背は伸びたけど、顔立ち、印象に余り変化は無く。
    「おお、なこたさん!」
    「お久しぶりです。来て頂き、ありがとうございます」
     詠一郎と乃亜が歓迎……なこたは詠一郎には頷くも、乃亜には……一瞬固まる。
     内心、誰……と思うが……数秒の後。
    「あ、乃亜さん……」
    「ええ」
     くすりと微笑む彼女にほっとするなこた……そして沙紀や藍、寛和にも気づいて。
    「本当に、綺麗なのです。それに、皆も元気そうなのです」
     いつもは無表情ななこただが、そこはかとない笑顔で頷く。
    「そうね、本当みんな変わらず元気で良かったわよね」
    「全くだ。でも男どもはあんまり変わらないけど、乃亜と沙紀はずいぶん変わったと思うぜ?」
    「そうですか? 何処が変わったのでしょう?」
     乃亜が首を傾げると、桜は。
    「うん、綺麗になった。な、なこた」
    「そうなのです」
     こくこく、二人頷く。
    「そうそう、みんなで今何やってるか語り合ってるんだけど、なこたは今どうしてるんだ?」
     と桜が促すと、なこたは背負い鞄を開き、アルバムを開く。
     ……そのアルバムは、なこたが綺麗だと思った赤が一杯納められている写真集。
     世界各地の焼けるような夕焼けの景色や、煌々とした赤い果実等々が、愛犬のたまと共に収められている。
    「凄い……綺麗だな。なぁ、良かったら記念に一枚くれないか?」
     桜が目を輝かせると、なこたは。
    「いいですよ。お勧めは……これなのです」
     と、最後のページからぴっ、と取り出す一枚の写真。
     ……それは、学生時代に桜が甘ロリコスをした時の、可愛い可愛い写真。
    「これ、かわいいのです」
    「はは……確かに、こんなこともあったよな」
     苦笑する桜。
     これも、学生時代の良い想い出。
     学生時代に、皆で騒いだりした一幕は、今となっては懐かしい。
     ……そんな懐かしい写真に、詠一郎が。
    「そうそう、皆さんの卒業アルバムも武蔵坂学園から借りてきてます。後、クラブの時の写真も……懐かしくありませんか?」
     部屋の中に飾り付けられた写真、それも一つ一つが大事な思い出。
     それら写真一枚一枚を手に取りながら、暫し語り合う『Promenade』。
     ……そして、そんな写真の中の一枚には……藍が武蔵坂学園に来た時のクラス写真。
     当然その写真には、基山先生も写っている。
     ……その写真を手に撮り、基山先生の下へ。
    「先生」
    「ん?」
     藍に振り返る基山先生、藍はその写真を差し出しながら。
    「先生……武蔵坂学園に来たばかりの頃、いろいろとお世話になりました。もし、今日お会いできたら、言おうと思っていた事があるんです」
     と、切り出す。
     ……それになこた、寛和は視線を向けて。
    「「……」」
     ドキドキしながら、二人を見守る。
    「あの……先生。初めてお会いした時から、基山先生のことをお慕い申し上げておりました。もし宜しければ……あの、お友達から初めて頂けませんか?」
    「「……!!」」
     他のPromenadeの仲間達も……ドキドキしながら、静かに基山先生の答えを待つ。
     ……先生は、暫くそのクラス写真を見つめながら。
    「年の差あるけど、それで良いのかい……?」
     教師と、元教え子。
     でも、藍は。
    「ええ……私は構いません」
     迷い無く、静かに頷く藍……そして。
    「分かった。まずは、お友達から、だね」
     くすりと笑い、手を差し出す。
    「……!! 藍さん、おめでとうございます!!」
    「藍さん、基山先生、おめでとうございます、です」
     寛和、なこたが祝福の言葉、そして周りの仲間達からは、惜しみない拍手が送られる。
    「おめでとうございます。では……次の同窓会は、お二人の結婚式の時、でしょうか?」
    「そうですね……クリスさん、近い内に再度帰日の準備、お願いしますね」
    「ええ……その際には、最上級の神の祝福を捧げましょう」
     乃亜と詠一郎に、クリスは、くすり、と微笑むのであった。

    ●又、いつか
     そして、楽しい時間は瞬く間に過ぎ……空も暗くなり始めた夜半。
    「……さて、と……本当はもっと長く居たい所ですが、そろそろ時間ですね。改めて、今日は皆さん、突然の十年目の同窓会に参加して頂き、ありがとうございます」
     ぺこり、と頭を下げる詠一郎……拍手で答えるPromenadeの仲間達。
    「ん……終わりです? ……それじゃ折角ですし、集合写真、撮りませんです?」
     と小首を傾げつつ、首から提げたカメラをぷらぷら。
     それに藍と詠一郎が頷いて。
    「集合写真、いいですね。是非、皆で撮りましょう!」
    「そうですね。セルフタイマーを使えば、みんなで写ることが出来ますよね」
    「そうなのです」
     こくこく、と頷くなこた。
    「ほらほら、詠一郎と乃亜はこっちに、ね!」
    「桜さんと和臣先生はこっちに……どうぞ」
     沙紀と寛和の二人で、詠一郎と乃亜夫婦、そして藍と和臣先生のニューカップル同士をくっつかせる様に誘導。
     そして、机の上に置いたカメラは幾度かフラッシュライト点滅。
     発光と共に、カシャッ、とシャッターが切られる。
     皆の笑顔が眩しい、一枚の写真が、メモリーにしっかりと記録される。
     ……そして、その写真をメールに添付し、皆に送信。
    「ふふ……いい写真ですね。これから先もまた、こういった集まりが催せるといいですね」
     と笑顔の藍に、乃亜もこくりと頷き。
    「そうですね……詠一郎さん、私たちは本当に良い縁に恵まれたわね」
     と微笑み、そして。
    「さて、と……それじゃ、そろそろ帰りましょうか。これからも、皆さん、宜しくお願いします」
    「もちろんです」
     と、寛和の言葉に、なこたもこくり、と頷くのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:7人
    結果:成功!
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