クラブ同窓会~光画部部室にて

    作者:陵かなめ

    ●光画部同窓会のお知らせ
    「……と、言うわけで、光画部同窓会を機に部室のリフォームを行います、と」
     保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)は、案内状の文面を見返し、頷いた。
     あれから10年。仲間達へ送る同窓会の知らせだ。リフォームした部室での立食パーティーを企画している。
     久しぶりの再開となるメンバーも居るだろう。あの頃のように、楽しくみんなで語り合いたい。現在の様子やあの頃の思い出話など、話が尽きることは無いだろう。

     案内状を受け取った千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)の頬が緩む。
    「懐かしいなぁ! 確か2017年の学園祭だったよね。目の前で積み上がっていたマグロ、思い出すな」
     光画部のマグロ積みゲームがライブ&ゲーム部門で3位入賞した時、太郎が報告に訪れた思い出がある。
    「楽しみだな。ぜひお邪魔しよう」
     そう言って、太郎はいそいそと参加の準備を始めた。


    ■リプレイ

    ●開会式
     光画部部室のリフォームが終わり、今、いよいよ最後の釘打ちが行われようとしていた。職人による最後の釘打ちを見ながら、集まったメンバーが飲み物を手に持つ。
     皆が見守る中、釘を打つ音が大きく部室内に響いた。
    「それじゃ、みんなが元気にいてくれたことを祝して!」
     それを見届けて保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)がグラスを掲げる。
    「かんぱーい!!」
    「「「「「かんぱーい!」」」」」
     まぐろの声にあわせて皆で乾杯し、光画部の同窓会が始まった。

    ●歓談
    「部室リニューアル完成でごにゃるな!」
     楽しそうにクラッカーを鳴らす山田・萌絵(にんにんにゃんにゃん・d01326)を見つけてまぐろが声をかけた。式次第には開会式の後は歓談・芸披露となっているので、周辺では参加者達が楽しげに昔話に花を咲かせている。
    「それで、萌絵は今は何をやっているんだっけ?」
    「萌絵は忍びの嗜みダンボール職人兼忍術教室の先生をやってるでごにゃるよ☆」
    「ダンボール職人兼忍術教室の先生?」
     萌絵によると、生徒は一人のようだが、ご主人様がお小遣いをくれるとのこと。話しているうちに萌絵はいそいそとダンボールから山ほどの冊子を取り出した。
    「これは歴代ダンボールの思い出アルバムでごにゃる♪」
     かなりの数があるようだ。
     しばし、アルバムを見ながら話し込んでいると、今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)がやってきた。26歳になった紅葉は研究者としてがんばっている。
    「まぐろさんもずいぶんと、大人になったね。お元気ですか?」
    「元気よ、とても。紅葉のほうはどうなの?」
    「最近はね、ブレイズゲートの消滅を見送ったり、久しぶりに会った友人とハロウィンパーティを楽しんだり、かな」
     紅葉の話を萌絵が興味深そうに聞く。
    「そういうことがあったでごにゃるか」
     と、その時。
     ドタドタと忙しい足音が聞こえてきた。
    「みんな久しぶりー! 元気だった?」
     少し遅れて到着した卯月・あるな(ファーストフェアリー・d15875)が扉を開ける。
    「ちょっと遅刻しちゃったけど大丈夫だよね?」
    「今始まったところよ。近況報告をしながら歓談しているわ」
     まぐろはそう言ってあるなに手を振った。
    「近況かー! ボクは実家に戻って種子島の宇宙センターで働いてるんだ」
     学校の成績が悪くてもがんばれば夢は叶うとあるなが胸を張る。
    「まぁ、見ての通りドジなのは相変わらずだけど、でも向こうでお相手さんも見つけたんだー☆」
     えへーとあるなの頬が緩む。
     そこへ椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)とメイニーヒルト・グラオグランツ(椎葉愛衣・d12947)が並んで歩いてきた。
    「あっ! 武流くんにメイおねーちゃん、結婚式以来だねっ」
     さっそくあるなが二人へ駆け寄る。
    「ねぇねぇ、あれから子供は大きくなった?」
    「写真、見るか?」
     武流は子どもの画像をいくつか選び皆に披露した。
    「それから、武流と結婚した際に帰化して名前を『椎葉愛衣』に変えたこと、報告する」
     メイニーヒルトが言うと、それを聞いていた仲間達から二人に視線が集まる。
    「あ、話してなかったっけか。結婚した時に帰化して今は『椎葉愛衣』なんだ」
     武流も同様に説明した。
     それから、武流は灼滅者犯罪を取り締まる組織に所属していることやメイニーヒルトが主婦の仕事が色々忙しいことなどを報告する。
     あれから10年が経った。
     結婚した仲間も多くいるようだ。
    「やは、或田ですよーうふふ」
     にこやかにまぐろの隣に立つのは或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)だ。
     仲次郎いわく、結婚して5人の子宝に恵まれた、絵に描いたような幸せ家族を満喫しているらしい。
    「それはまぐろさんが一番ご存知のはずですよねーうふふ」
     と笑う。とにかく、まぐろの起業を手伝いながら、サポートしているようだ。
     咲哉もまた、子どもについて語っているところだった。
    「5歳の娘もいる。これがまた超可愛くてな」
     と、子持ちの仲間達と子どもの様子などを話し合っている。周りからは、親バカぶりを指摘する声もあるのだが。
    「親バカ? そりゃあね♪」
     返ってくる笑顔で、皆が察する。
     それは、賑やかで幸せな毎日なのだろう。
     イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)と結婚した夢築・遥(両性類コスプレイヤー・d22136)は、現在はトルコ在住とのこと。そして、二人の間には岩永・静香(苺砲少女パフュームラヴァー・d16584)の姿もある。
     つまり――。
    「どうしてもみんなで幸せになりたかったので、イルルちゃんの故郷にある一夫多妻制を使ったんです」
     と静香が皆に説明をする。
     現在は遥の第二婦人という立場にある。
    「遥は妾の故郷へ婿入りした旦那様じゃ。彼処は一夫多妻制があるため後から来た静香が第二婦人に……と言うながれじゃの」
     イルルが説明を補足する。
     それも、どうやらイルルと遥の結婚式のときから仕込んでいたらしいから驚きだ。
    「俺とイルルの結婚式の時から、この仕込みしてたんだから、女って怖いよね?」
     そう言って苦笑いを漏らす遥だが、その実言葉の隅々に幸せを実感している気配が漂っている。
    「だから今の私は『シズカ・タワナアンナ』ですよ♪」
     静香が笑顔を浮かべる。
    「今は故郷の顔役として写真館をやっとるぞよ!」
     そう言うイルルもとても幸せそうだ。
     この10年間で急成長し、今やイルルは巨乳美女。静香も昔から大きなほうだったので、そんな二人に囲まれた遥は、本当に幸せなのだろう。
    「結婚とか近況が変わった人もいれば、昔のままの人もいて……こういうの見てるのも楽しいです」
     そう言って、仲間達の報告に聞き入っているのは水無月・カティア(仮初のハーフムーン・d30825)だ。嫁も一緒に参加できればもっと良かったかもしれないが、こればかりは仕方が無い。
     しかし、懐かしいと感じる場所があると言うことは、とても嬉しいことだと思う。
    「みんなが幸せそうで良かったかな」
     曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)は幸せそうな仲間達を見て頷いた。
    「華琳さんは、今は何をなさっているんですか?」
     結婚の話に聞き入っていた神無月・佐祐理(硝子の森・d23696)が華琳を見る。
    「私は今では台湾で隠棲してのんびり暮らしているよ」
    「隠棲ですか」
    「それで、地域の子どもたちにいろいろなことを教えて暮らしている」
     そう言う佐祐理の近況は、どのようなものだろうか。ずいぶん結婚の話を真剣に聞いていたようだけれどと華琳が話を振った。
    「……婚活、頑張ります……」
    「なるほど」
    「二つ三ついい話はあるんですがね~」
     佐祐理は子どもについて色々思うところがあるようだ。

    ●芸披露
     さて、会場に突然スモークが噴出してきた。
     そして、光るスポットライト。その中心に黒岩・いちご(ないしょのアーティスト・d10643)、墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)夫妻がいた。
    「……考えてみたら、部長の陰謀で2人でクリスマスのステージに立たせられたのが私たちの始まりでしたっけ」
     いちごが懐かしそうにそう言って、ステップを踏み始める。
     スポットライトが二人の姿を照らし出す。
     現れたのは、アイドルデュオ『ダブルいちご』……と言いたいのだが、なんといちごの隣に立っているのは由希奈である。
    「初年度のクリスマスに部長の陰謀でステージに立たせられた時のと同じデザインなんだ」
     そう言い顔を赤らめながらも、由希奈の姿もしっかりと様になっている。
     二人は『30過ぎても10台少女で通じると噂の奇跡の性別不詳アーティストICHIGO』の歌に合わせて歌い踊って見せた。特に由希奈は慣れないながらもしっかりと練習を積んできたようで、危なげないダンスを披露していた。
     会場から手拍子が巻き起こる。
    「せーんきゅー♪」
    「せーんきゅー♪」
     二人が踊り終わると、会場からは惜しみない拍手が寄せられた。
    「そろそろ解体ショーの時間ね」
     二人の芸披露を見て、まぐろも袖を捲り上げた。
     いよいよか、と、仲間達がまぐろの周辺に集まってきた。10年経って、さらに磨きのかかったまぐろによるマグロ解体ショーの始まりだ。
    「マグロ解体懐かしいでごにゃるな!」
     学園祭で食べたマグロ丼のことなどを思い出しながら萌絵が見つめる。
    「まぐろがマグロを解体する……」
     紅葉がそっと呟くと、それを聞いていた者たちの口元に笑みが浮かんだ。
    「とは言え、まぐろといえばやっぱこれだな」
     鮮やかな技を改めて見て、咲哉が感嘆する。
    「変わりませんねー……」
     まぐろの勢いと言おうか、解体ショーと言おうか、とにかく変わりない。カティアも懐かしさを思い出しながら解体ショーを眺めていた。
     手際良く解体されていくマグロに向けて沢渡・千歌(世紀末救世歌手・d37314)が指笛を拭く。
    「ひゅー相変わらずグッジョブっす!」
     仲間達も、その技に感服するのだった。
     さて、解体された新鮮なマグロは武流とメイニーヒルトの手により次々にマグロ料理へと調理されていく。
    「よし、どんどん調理していくぜ」
    「そのまま鉄火丼、ごま油と辛料を和えてユッケ丼、たれに漬けてのづけ丼と、他にも注文があるなら作ってあげるよ」
     でき立ての料理に仲間達の手が伸びる。
    「それじゃあ、あえて、マグロのステーキが食べたいかな」
     華琳のリクエストにも、笑顔で応じてくれた。味付けは塩コショウ。分厚くカットされた、マグロのあぶり焼きがしみるほど美味かった。
     まぐろの技に拍手を送っていた紅葉も取り分けなどの手伝いをしているようだ。
    「たくさんあるから、みんなで美味しくいただこう」
     そう言って、次から次にと取り分けていく。
    「部長さん、また腕を上げたねー」
     あるながもぐもぐとマグロ料理を口に運んでいく。
    「ほっぺたが落ちそうです~」
     佐祐理が至福の表情を浮かべる。
    「うっま!」
     千歌も新鮮なマグロ料理に舌鼓を打った。
     マグロ料理が振舞われる傍ら、桃井・赤(倉庫番狼・d30754)からの差し入れにも仲間達が集まってくる。
    「鹿の肉を熟成させて作ったローストだ」
     と言うのも、あれから10年、赤は猟師をしており、何とこれは自分で狩った鹿の肉だと言う。
    「へえ、これ凄く美味い」
     一口食べた犬塚・沙雪(黒炎の道化師・d02462)が頬を緩ませた。
     しかも、熟成させて作ったローストである。旨みがぎゅっと詰まった鹿肉に仲間達も笑顔で頷いた。
     そのうちの一人が赤の持っていた写真を指差す。
    「ああ、在学中の写真を持ってきたんだ」
     せっかくの部室一新である。以前の部室と比べてみると、色々発見があるかもしれない。
     早速、昔の写真を見ながらアレがない、コレはどこに行ったと話が弾む。
     写真を見ていた守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)がポツリと呟いた。
    「それにしても、10年か。何かをするには短く何かをしないには長い年月やね」
    「10年か。神楽は今は何を?」
     沙雪に尋ねられ、神楽が穏やかな笑みを浮かべる。
    「僕? 別府の為に頑張っちょんよ」
    「へえ」
    「公務員になって色々頑張るっち思っちょたけど、それどころやなくなっちったもんな」
     神楽によると、実家の高級旅館もボロボロにはなったが、家族でしっかりと踏ん張っているとのこと。神楽自身は、温泉日本一の座を取り戻すため頑張っているらしい。
    「そう言う沙雪は、何しちょん?」
    「俺はこの10年で獣医になったりしていたね」
    「はー」
     沙雪の方は、世界の動物の面倒を見なければならないためカピバラの飼育は今はしていないようだ。かつて飼育していた子の子孫は動物園にいるので、たまに様子を見に行く程度だ。
     そして、入籍は済ませていたが、最近式も挙げたと言う。
    「はい、そこー! 飴玉めっちゃ持って来たっす!」
     二人の間に千歌が元気良く入ってきた。
     差し入れの飴玉を配り歩いているようだ。
    「僕も大分県の美味しい物持って来たんよ」
     お返しにと神楽が大分県の海の幸山の幸を振舞う。
     ところで千歌は今は何をしているのだろうか。誰かが問うと、千歌は嬉しそうにCDを取り出した。
    「んっふっふっふよくぞ聞いてくれたっすね……あたし歌手やってるっす! これ新譜な!」
     インディーズではあるが、夢を追いかけている姿はキラキラと輝いているよう。たとえマイナーであっても、幸せなことだと皆が思った。

    ●マグロ積みゲーム
     さて、各自の芸披露が一段楽した頃、いよいよマグロ積みゲームの始まりだ。
    「わあ、いよいよ始まったね」
     それまでマグロ料理を堪能していた千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)が目を輝かせた。
    「みんなで積んでいくわよ。太郎くんもぜひご参加を」
     いつものあの光景が蘇る。
     着々と準備されていくマグロ。これなるは、ひたすら転がるマグロを積んでいく。抱えるほどのマグロをひたすら積んでいくゲームである。
    「……ああ、懐かしのマグロ積みゲーム」
     早速沙雪がマグロに手をかけた。
    「一つ積んではほにゃららら、二つ積んでは……」
     言いながら、そっとマグロを積み上げた。
     現在0からプラス1で、【1】。積み上げ成功にほっと胸をなでおろす。
    「それじゃあ、僕もいくね!」
     太郎は次を宣言して、マグロを抱えた。皆が見守る中、慎重に積み上げる。多少ぐらついたが、無事積み上げることができた。太郎が一つ積んで、現在は【2】である。
     続いて咲哉が手を上げた。
    「マグロ積みも勿論楽しむぜ」
     ゴクリと咽を鳴らし、そっとマグロを積み重ねる。
    「慎重に積んで……おお、崩れそうっ!?」
     そう言ったが、何とかマグロが収まりを見せた。【3】となったマグロの山は、再び挑戦者を待つ。
    「マグロ積みゲームはもちろん参加でごにゃるよ」
     次に萌絵がやってくる。
     慎重に慎重に、マグロを持ち上げ……あっと思ったときには、マグロたちのバランスが崩れた気がした。
    「!!!!」
     息を潜めて揺れるマグロを見つめるが、祈りむなしくマグロが崩れた。
     残念だが、仕方が無い。これもダイスの神様の思し召しかもしれない。マグロは再び【0】に戻る。
    「それじゃあ、次は紅葉が行くわね」
     何も無くなった場所に、紅葉がマグロを積み上げた。
     まだまだ余裕のある【1】である。
     カティアもマグロ積みゲームへとやってきた。
    「本当に、懐かしいですね」
     言いながら、静かに慎重に一つマグロを積み上げた。
     現在【2】。
     我こそはと思うマグロ積み士たちがゲームに熱中し始める。
     その光景をカティアが穏やかな、しかしどこか遠くを見るような目で見た。
    「えぇ、光画部って確かカメラとかそういう……」
     そういう、アレだった、はず?
    「いえ、今更でした、完全に今更でした」
     自分で言いながら、首を横に振る。
    「楽しければオッケーですし!」
     カティアはそう言って、楽しむ皆を再び見つめた。

    ●記念撮影
    「楽しい時間はあっという間だな」
     ふと、咲哉が時計を見る。
     マグロ積みに興じている者、マグロ料理を食べ続けている者など、皆まだまだ楽しんでいる。
     しかし、記念撮影の時間だ。
     周囲に呼びかけ、皆で写れるように整える。
     ダブルピースで笑顔を見せる者。
     両側からの嫁の胸の谷間に腕を沈める者。
     気の合う仲間同士並ぶ者。
     久しぶりに「正体」披露する者などなど。
     それぞれ思いを込めて、カメラへ視線を向ける。
    「それじゃ、思い思いにポーズしてね! はい、チーズ!」
     まぐろの掛け声で、心が一つにまとまる。
     大切な思い出が、また一つできた。やはり、こういうのは良い。
     仲間達は、また語り合い、話に花を咲かせる。
     懐かしい武蔵坂学園の思い出を抱きながら、光画部の同窓会はその日遅くまで楽しく続いた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:20人
    結果:成功!
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