クラブ同窓会~武蔵野学園ロイヤルお茶会

    ●寂れた商店街
    「……何だか悪いな」
     八百屋の親父が申し訳なさそうに頬を掻く。
     最近、近所にスーパーが出来たせいか、八百屋は常に閑古鳥。
     幸い常連客達に支えられてはいるため、何とか生活は出来ているものの、それでもギリギリ。
     何とか生活する事が出来るレベルであった。
    「別に気にせんでええ、困った時はお互いさまや」
     風上・鞠栗鼠(螺旋街の若女将・d34211)が、色々と察した様子でニコリと笑う。
     それが分かっているからこそ、この企画を持ってきたのだから、ある程度は想定内。
     だからこそ、今やらなければイケナイ事。
    「まあ、お嬢ちゃんが一肌脱いでくれたんだから、俺達も頑張らんとな」
     ラーメン屋のオヤジが、タヌキのような腹をポンと叩く。
     今までは『伸びたラーメン』と皮肉られていたが、これからは違う。
     彼女の期待に応えるためにも、度肝を抜くほど美味いラーメンを作るつもりでいるようだ。
    「その通りじゃ。わしも若い頃を思い出して一肌……」
     駄菓子屋のババアも、文字通り服を脱ぐ。
     恥ずかしがる事なく、すぱぱぱあーん、と!
    「「ババアは脱ぐなッ!」」
     それに気づいた男達が、駄菓子屋のババアにツッコミを入れた。
     文字通り、地獄絵図。
     色々な意味で、男達の気持ちがひとつになった。
    「何を言っている! わしだって脱いだら……」
     それでも、駄菓子屋のババアは、考えを曲げない。
     ババアの中の女が目覚め、『むしろ、見ろ!』と言わんばかりで、男達に迫っていく。
    「分かったから! 違う意味で凄いのは分ったから、頼むから脱ぐな!」
     花屋の主人が涙目になって、逃げ惑う。
     これには、花屋の娘も、苦笑い。
    「お前達は何も分かっていない。いまこそ、サナギが蝶になる時じゃ」
     そのため、駄菓子屋のババアも、ハイテンション!
     わしはまだ3回分の変身を残していると言わんばかりに、脱ぎまくっていた。
    「誰か、このババアを黙らせろおおおおおおおおおおお!」
     そして男達の悲鳴が、辺りに響いた。

    ●鞠栗鼠からのお願い
    「……という訳で、武蔵野学園で地元の方々と灼滅者の交流かねての同窓会企画や。10年経ったのに地味な内容とか思ったらアカンで。最近、学園周辺の商店街に活気がないんや。昔は学生も沢山きとったけど今はまばらや。みんな、昔は地元の人に御世話になったし。今こそ! 学園&地元に恩返しするときやで。内容的には、学園と地元商店街を巡りここぞとうまいもん見つけて。宣伝してほしいんや。当日は、地元や世界各地の取材記者が来てくれはるからアピールにはかっこうのチャンスやで。……えっ、なんで其所は凄いんか? 権力はここぞと云うときにつかわんとあかん。ほな、みなさん宜しくな♪」
     そう言って風上・鞠栗鼠(螺旋街の若女将・d34211)が、物凄くイイ笑顔を浮かべるのであった。


    ■リプレイ

    ●商店街の入り口
    「……10年か、早いものだ」
     鑢・七火(鬼哭伐破・d30592)は妻である有馬・南桜(決意の剣鬼・d35680)を連れ、クラブの仲間達と会うため、とある商店街にやって来た。
     商店街は店主達の高齢化が進んでおり、半ばゴーストタウンと化しているという噂があったものの、それを吹き飛ばす程の活気に溢れていた。
    「戦いが終わって10年……ですか」
     南桜が昔を懐かしむようにして、何処か遠くを見つめる。
     先月、挙式を上げて、今は新婚旅行中。
     何となく恥ずかしい気もするのだが、それだけ幸せである事は間違いない。
    「皆さん、お久しぶりですぅ」
     佐藤・一美(美獣語る・d32597)が二人に気づいて、親しげな様子でニコッと笑う。
     ふたりとも見るからに幸せそうで、眺めているだけでも幸せな気持ちになった。
     今は大学の教員として働いている一美も、いずれは幸せな結婚を……と夢見ているものの、今のところ予定はない。
    「みんな、久しぶり」
     清水・式(愛を止めないで・d13169)も巫女服姿で、仲間達に手を振った。
    「確かに、クラブの皆と会うのは久しぶりね。大学で忙しかったから、ついつい商店街に行く機会も少なくなっていたし……。まあ、武蔵野アイドルグループをプロデュースしているBIG SEVEN社長であるボクの手に掛かれば、ゴーストタウンもパラダイスに早変わりだけどね」
     鑢・琳朶(残念系稲荷姫・d32116)がきゅぴーんと瞳を輝かせ、ドンと来いと言わんばかりに自分の胸を叩く。
     午後から商店街にやってくる取材陣に、武蔵野学園巨乳エスパーアイドルグループをお披露目する予定なので、活気に溢れる事は間違いなしである。
    「……結婚したやつ。就職したメンバー……。後は大学に行ったやつか。様々だけど今日は皆でお世話になった人達に恩返しをするぞ」
     イヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488)もアイドルグループを引き付け、上機嫌な様子でガッツポーズ。
     最近の女子は発育がいいため、イヴ的には満点を上げたい気分であった。
    「また妖しげな……」
     南桜がアイドルグループを、マジマジと眺めた。
     みんな胸が大きく、ボリューミィ。
     そのため、行きかう人々が、彼女達の胸元をガン見である。
    「まあ、みんな緊張していると思うけど、元気良く歌って……ん? なんだ、あれ……」
     イヴがハッとした様子で、垂れ幕に視線を送る。
     そこには『奇跡の女体盛り』と書かれていた。
    「……何やら嫌な予感がしますねぇ……」
     その途端、一美が気まずい様子で汗を流す。
     この時点で嫌な予感しかしない。
     おそらく、あんな事や、こんな事。
     言葉には出来ない程、イケナイ予感。
     あれは間違いなくフラグである。

    ●商店街
    「今日は、武蔵野学園と商店街の交流会やから、頑張って気張るで! 笑いあり涙ありの感動ドキュメント! イベントの企画はアイドルプロデューサーしとるリンダとイヴに任せとるから、大成功間違いなしやろ!」
     一方、風上・鞠栗鼠(螺旋街の若女将・d34211)は打ち合わせをするため、商店街を走り回っていた。
     半ばゴーストタウンと化していた商店街の活気を取り戻すと言う事もあって、店主達はヤル気満々。
     自分達から進んで協力を申し込んできたため、何から何までスムーズにコトが運んでいた。
    「……まったく、10年経っても風上先輩は鬼どすな」
     中板・睦月(高校生七不思議使い・d37498)が、深い溜息をもらす。
     久しぶりに会ったのはいいが、問答無用で強制的に連れてこられたため、気持ちは複雑。
     別に嫌だった訳ではないのだが、素直に喜ぶ事が出来ないと言うのが本音のようだ。
    「そう言えば、まりりす先輩と会うって久しぶりだね。イヴも海外に留学して余り会わなくなったから、積もり積もったお宝話が出来そう♪」
     翠川・パルディナ(吠えよスイカップ・d37009)も鞠栗鼠達に合流して、楽しそうに鼻歌を歌う。
     パルディナは漫画家になって、スイカガールを連載中。
     そう言った意味でも、スイカが美味しい八百屋をアピールするつもりのようだ。
     八百屋の親父もパルディナが来る事を知って、わざわざ美味しいスイカを用意して待っていたようである。
    「お久しぶりなの」
     それに気づいたジヴェア・スレイ(ローリングエッジス・d19052)が、両腕を広げて超光速回転でパルディナ達に挨拶をした。
     ジヴェアのまわりには沢山の通行人が集まっており、『凄い』、『可愛い』と言いながら興奮気味にスマホを向けていた。
    「戦いが終わって10年も経つんですね。あ、よろしかったら、これを……」
     鑢・真理亜(月光・d31199)が、ニコッと笑って鞠栗鼠達に鼻を渡す。
     真理亜は現在、花屋でアルバイトをしながら、大学に通っている。
     そのため、花屋の娘とは、大の仲良し。
     花屋の主人が胸元ばかり見ている事が気になるものの、それ以外は全く問題ないようだ。
    「真理亜も頑張っている……ん?」
     そんな中、七火が南桜を連れ、真理亜が働く花屋にやって来た。
     そこで花屋の主人の視線に気づき、何となくイイ笑顔。
    「いや、俺はその……」
     花屋の主人も、その視線に圧倒され、何も言えずに店の奥に退散した。
    「みんな久しぶり………10年ぶりなりよ。みんなは元気にしてるなりか?」
     華上・玲子(は鏡餅を推します・d36497)も騒ぎに気づいて、近くの餅屋からひょこっと顔を出す。
    「おっ! 玲子ちゃんの友達か。だったらウンとサービスしないとな!」
     餅屋の親父もニカッと笑いながら、大量の餅を抱えて現れた。
    「鏡餅は無いけど、三色団子や、柏餅は絶品なりよぉぉぉ」
     玲子がそれを手に取り、魂の叫びを上げる。
     彼女が店に立ってからと言うもの、餅の売り上げが伸びまくっているせいか、餅屋の親父も上機嫌。
     このままイメージキャラクターにする計画まであるらしく、グッズ販売まで目論んでいるようだ。
    「だったら、ラーメン! ラーメンぜよ! ここはわしが中学校の頃からの行きつけ。味には問題ないものの、伸びすぎなのがタマにキズぜよ」
     鑢・凍華(炎拳・d36691)も反対側のラーメン屋から顔を出し、伸びたラーメンを全力アピール。
    「おいおい、今日のは伸びていないだろ? 嘘だと思うんだったら、喰ってみろ」
     その言葉にムッとしたのか、ラーメン屋の親父がツッコミを入れた。
    「お、おお……これは美味い! 美味いぜよ! 親父さん、やれば出来る人だったとは……。今度、大豪院先輩と一緒に、ここに来るぜよ!」
     それを一口食べた凍華が、感動した様子で涙を流す。
     美味い……美味すぎる!
     おそらく、凍華のために努力を重ね、『そんなに伸びないラーメン』を完成させたのだろう。
     ラーメン屋の親父の瞳にも、薄っすらと涙が浮かんでいた。
    「ずっと頑張っていたものね」
     式も箒をギュッと握り締め、力強くウンウンと頷いた。
     それは、この辺りを掃除していた式だから、分かる事。
     今日も朝早くからラーメン作りをしていたため、試食を頼まれていたのだが、ラーメン屋の親父の腕は、この数日でメキメキと上がっていた。
    「確かに、美味しかったの」
     ジヴェアも身体を丸めて凹凸のないボール状に変形し、猛スピードで転がりながら、ラーメンの味を絶賛した。
     この様子では、沢山の人々がラーメン作りに関わり、料理の味と腕を上げたのだろう。
     それ故に、絶品。
     誰もが好む味になっていた……!

    ●イケナイ御祭り
    「そう言えば、リンダから会場に来てほしいと言われていたから、いってみるかな?」
     パルディナが案内図を確認しながら、商店街の中心部に向かっていた。
     何をするかは、そこに来るまでの、お楽しみ。
     そう言われて、中心部に向かっているのだが、色々な意味で嫌な予感しかしなかった。
    「リンダ! 何するんや。何処につれていくねん~~」
     そんな中、鞠栗鼠がオトコ達に抱えられ、涙目になって琳朶を睨む。
    「そりゃあ、まあ……分かるでしょ?」
     しかし、琳朶はニンマリ顔。
     あえて何も語らない。
    「……って、私も連行されるんですか!?」
     睦月もオトコ達に抱えられ、色々な意味で身の危険を感じた。
     この状況で、何もない訳がない。
     むしろ、何かある。
     何かあって、当然の状況であった。
    「これから一体、何が起こるのでしょうか? そう言えば、花屋の店長様も、何やら意気込んでいましたね。駄菓子屋のお婆様も、何故か乗り気だったような感じですが……」
     真理亜が睦月達を眺め、『はて……?』と言わんばかりに首を傾げた。
     何やらイベントがあるようだが、真理亜は花屋でお留守番。
     どうやら、オトコ達にとっては、宴であり、祭りのようである。
     それが何だか分からないが、花屋の主人がハイテンションで、商店街に中心部に向かっていた。
    「……って、お婆ちゃん、脱がなくていいべさ。娘さん泣くからやめるだべ」
     そんな中、吾門・里緒(リンゴもっちぁ・d37124)が、慌てた様子で駄菓子屋のババアを掴む。
     だが、駄菓子屋のババアは、ヤル気満々。
     垂れた乳を丸出しにしたまま、商店街の中心部を目指して、ズンズンと進んでいた。
     それでも、里緒は説得した。
     自分が代わりに駄菓子屋をアピールしてくると……!
     そう言われても、駄菓子屋のババアが納得する事はなかった。
    「ええい、離せ! 離すんじゃ! いま脱がなくて、いつ脱ぐんじゃ! これでも、昔は南国の果実と言われたほどの我儘ボディ! みんなわしを待っとるんじゃあああああああああああああああ!」
     駄菓子屋のババアが吠えた、ケモノのように……。
     しかし、まわりはドン引き。
     もしくは、リバースであった。
    「お婆ちゃん、脱ぐのもういいべ。南国の果実って言うより、腐った葡萄になってるべ。だから……これ以上、犠牲者を増やしたら駄目だべさ」
     里緒が駄菓子屋のババアを押さえ込み、そのまま簀巻きにして、アスファルトの地面に転がした。
     それでも、駄菓子屋のババアは、ぴょんぴょんと飛び跳ね、商店街の中心部に向かっていた。
     そんな事をしなくても、里緒が昔馴染みな駄菓子屋のまま、お洒落に店内をカフェ風にコーディネートしたおかげで客足は増えているのだが、それでは納得がいかないようである。
    「いや、婆さんじゃなくて、うちの部長で女体も……ぐは!」
     その行く手を阻むようにして、琳朶とオトコ達が陣取った。
     次の瞬間、後頭部に鈍い痛みを感じた琳朶が、ヘナヘナと崩れ落ちていく。
    「ほら、帰るぞ!」
     そう言ってイヴが気絶した琳朶を抱え、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年11月22日
    難度:簡単
    参加:14人
    結果:成功!
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