●野外ステージ前にて
「特別ステージですか♪ 素敵ですね♪」
かつて学園の芸術発表会に使っていたステージを眺めラブリンスター・ローレライ(大学生エクスブレイン・dn0244)はにこやかな笑顔を浮かべた。
「はい。ぜひラブリンスターさんにも出演いただいて、楽しいステージになるようにしたいです」
隣で椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)が頷く。
あれから10年。
有名な歌手を輩出した星空芸能館は、世間に広く知られる存在になっていた。新生ラブリンプロとの協力も順調だ。
「ステージも楽しそうだし、その後パーティーもするんだよね?」
そこに空色・紺子(大学生魔法使い・dn0105)もやってきた。
「はい。パーティー会場で、皆さんと楽しくお話できれば」
紗里亜は答える。
10年経った今、星空芸能館の特別ステージを行うことになったのだ。ステージではブリンスターも出演し、思い出の応援歌『がんばれ がんばる 武蔵坂』も合唱されるという。懐かしい当時の曲を歌い、学園に居たころを思い出すことだろう。当時と変わらぬ、いやそれ以上の華やかで楽しいステージに期待が膨らむ。
そして、その後はみんなで思い出を語り合うパーティーも開かれる。
星空芸能館の同窓会はここ、武蔵坂学園のステージで。懐かしい歌と思い出話に花を咲かせよう。
●一日限りのステージ
学園の芸術発表会にも使用しているステージが、今日はいっそう華やかに飾りつけられている。
「同窓会で……特別ステージ……、何とも……皆さんらしい……ですね……」
ステージを見上げ、西院・玉緒(鬼哭ノ淵・d04753)が微笑んだ。
近くでは猫柄のエプロンを身につけた鴨宮・寛和(ステラマリス・d10573)が園児たちを連れて客席につく。
「はい。さあみんな、歌の上手なお兄さんお姉さんたちにありったけの頑張れと大好きを贈っちゃいましょう」
かなちゃん先生と呼ばれながらサイリウムを準備する姿は、しっかりと保育士として頑張っている姿そのものだ。
客席には、ペンライトを準備した三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)の姿もあった。
「星空芸能館さんのライブ、学園祭でも毎年楽しみだったな」
思い出されるのは、毎年盛り上がったライブの数々だ。
それが、今日復活すると言うのだから心も躍るというもの。それに、今日のステージには、あのラブリンスター・ローレライ(大学生エクスブレイン・dn0244)の姿もある。これは、見逃せない。
ステージに並ぶ皆の衣装は神崎・結月(天使と悪魔の無邪気なアイドル・d00535)がデザインした新作だ。
「わたしはステージを応援してるね」
芸能界を20歳で引退した結月は、もう芸事の世界には戻らないと決めているようだ。観客席から、ステージを見守っている。皆が着ている衣装は、星のチャームや星を連ねたベルトなど、星をポイントにしたデザインだ。ノーカラーの白シャツもまぶしい。服飾デザイナーとなった結月のセンスが光る衣装に仕上がった印象だ。
開演のアナウンスが流れ、会場が一気に熱気を帯びる。
10年ぶりの特別ステージが始まろうとしていた。
「やっぱり、この瞬間から盛り上がるね」
咬山・千尋(十年後は師走崎千尋・d07814)は客席から立ち上がり、ステージ上のメンバーそれぞれの表情を順に見る。今は師走崎・徒(流星ランナー・d25006)の妻となった彼女は、夫を見つけ手を振ってみせる。
「うんうん。この感じ、あの頃を思い出すんよ」
桜庭・智恵理(チェリーブロッサム・d02813)はそう言って、マイクを手に取った。
どうやら本日のMC役の様子。
ステージからの明るい歌声と共に、一日限りのステージが始まった。
●第一部
第一部は個人ステージ。
「10年ぶりの全員集合! みんなとの再会そのものが私、楽しみだよ!」
羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)はステージの仲間達に合わせ歌い上げている。
「どうかこの機会に感謝を!」
手を振ると、観客席のペンライトが大きく揺れ動いた。
新たにステージに出てきたのは榊・くるみ(がんばる女の子・d02009)と晶石・音色(水晶細工の姫君・d30770)だ。
「音色ちゃん、よろしくね♪」
くるみの言葉に音色が頷く。
二人は息を合わせて『光と影のシンメトリー』を歌い始めた。
二人で作った、今までの集大成とも言える大切な一曲だ。
♪ ぐずぐずしないでよ ♪
♪ まだまだ欲しいものはあるんだから ♪
♪ わたしのショッピングに ♪
♪ つきあわせてあげてるのよ ♪
♪ 感謝してよね ♪
これは素直になれない女の子の歌。くるみはそんな女の子の建前を歌い上げる。現在、くるみはアイドル活動を経てシンガーソングライターとして活動の場を広げている。
くるみがバトンタッチをするように音色を見た。
♪ でもねきっと知らないよね ♪
♪ 一番欲しいものはあなたのハートだなんて ♪
♪ カゴに入れてカートに乗っけて ♪
♪ 『これくださいっ!』 ♪
♪ ってできればいいのにね ♪
二人は見つめあい、音色の歌声が会場に響いた。音色が歌うのは女の子の本音の部分。ステージの後方で、新生ラブリンプロのアイドル達がコーラスに入る。
ラブリンスターがにこやかにウィンクして音色を見た。
音色は今は音楽プロデューサーとして活動しているのだ。
二人のステージに向けて、渚緒が両手に持ったペンライトを振りかざす。
「盛り上がってきたね」
渚緒が言うと、智恵理がうんうんと同意を返した。
「あれから10年やけど、皆のステージには刺激があると思うんよね」
そう言う智恵理は、田舎に帰って絵の仕事をしているようだ。なお、今日は編集から逃げ……いや、お休みを貰ってきたと言う。
くるみ達の曲が終わると、徒がステージの前方へ飛び出してきた。
エアシューズを煌かせ、空中で器用に身体を繰る。
「おっと、千尋か!」
宙で舞いながら、妻である千尋の姿を客席に見つけ、視線を送った。
「徒くん、がんばれ」
千尋も大きく手を振り徒を応援する。
徒は千尋にだけ分かるように首を傾け、ウィンクを返した。
会場の熱がさらにあがり、声援も多数聞こえてくる。
「今までの思い出を胸に、みんなと楽しむよ!」
次にジヴェア・スレイ(ローリングエッジス・d19052)がスターズ・グロッケンを奏で始めた。美しい音と共に、新生ラブリンプロのアイドル達も自身も一緒になって踊りステージを盛り上げる。
「いいですね♪ とても楽しいです♪」
ラブリンスターも一緒になって踊っているようだ。
ジヴェアは、最後に大きなアクション、高速回転を披露してステージを終えた。
●第二部、そしてフィナーレ
ステージの端でスタンバイをしていた椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)が、皆を鼓舞する。
「海外公演中のえりなさんにも届けたいですね」
世界的に有名になった仲間にも、この声が届きますようにと。皆も頷き合う。
「いよいよステージも第二部に突入やね」
智恵理がマイクを通して語り始めた。
ステージ第二部は、天ノ川星歌隊メドレーだ。
「天ノ川星歌隊は学園祭の度にオリジナル曲を発表してきました。それはいずれも幸せを願い、未来を信じる希望の歌」
智恵理の声にあわせて、ステージにメンバーが並ぶ。
星歌隊の新しい制服、女子たちのネイビーのミモレ丈フレアスカートが風に揺れた。男子は皆ネイビーの長ズボンをはいている。
「そういえば私はいつも観客側でステージに立ったことはなかったと思う」
ギターを構えた明石・華乃(悠久恋歌・d02105)は、やや緊張した面持ちでセーラーカラー風になる付け襟を正した。でも、今はステージの上、皆と同じ制服に身を包んでいる。付け襟の結んだ先端の星型のチャームが、きらりと光った。
「今日歌う歌は、ちゃんと覚えてきたんだよ、ね?」
夢前・柚澄(鮮やか振りまく歌声銀河特急便・d06835)は子供たちの手を引きステージに上がった。夫であるファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)との間に授かった5歳の娘と2歳の息子だ。
「パパ、マイクは持たないでね♪」
隣のファルケからマイクを取り、一歩前へと進む。
『夢見る光、あなたの灯り』『勇気の翼にのって』とオリジナル曲が続いていく。
「この歌はね、ママが初めてステージに立った時の歌なのよ」
柚澄は、お揃いの衣装を着たわが子たちに、優しくそして少し照れながら語りかけた。柔らかい力で握った、小さな手が、とても温かく感じる。
「ああ、懐かしいわね……10年前、学園祭でこうしてみんなと歌ってたなぁ」
結衣菜も、皆のハーモニーに合わせて歌い続けていた。
『未来の星座』『飛び立つ朝に』『君の帰る場所』と曲は進む。
「どんな時でも……皆さんは歌と共……に……ありました……」
ステージを応援しながら玉緒は10年前に思いをはせた。
闇堕ちした仲間を、歌で助けたこともあった。もっとも、玉緒は拳で説得したくちだが、それでも、あれは思い出だ。二人を助けた歌が響く。
自ら歌うことはなかった玉緒だけれども、歌で二人を救ったわけではないけれども、やはり感慨深い。
これは、ガイオウガ決死戦で闇堕ちした仲間を救うため、皆で作った曲だ。
華乃は歌いながら、隣の紗里亜を見る。
紗里亜もふわりと微笑んだ。
「いやはや、偉人は言いましたねぇ……、全ては歌で終わると……」
天ノ川星歌隊の制服を着て、ウクレレを構えた紅羽・流希(挑戦者・d10975)が皆の様子を眺めて言った。
「ですが、皆さんの場合は、次の一歩、なのでしょうねぇ……」
ライブハウス観戦会のオープニングを飾ったロックナンバー『Fight on Slayers!』が終わり、いよいよステージ第三部が始まる。
ラブリンスターとアイドル達もステージへ上がってきた。
「この年になってステージ衣装とか照れ臭いな。上手く歌えるかなこれ」
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・d21200)は、今は通訳の仕事が忙しく、カラオケですら歌っていないとのこと。しかし、そんな彼の手を仲間達が引く。
「それでもいいっつーんなら歌うぞ!」
「はい。一緒に歌いましょう。会場の皆さんも、ぜひ!」
紗里亜が笑顔で皆に呼びかける。
「さて皆さん、ここにいる全ての人を巻き込んで、盛り上げていきましょう……」
流希が答えるように頷いた。
「いやぁ、久しいなぁ皆!
星空芸能館にはほんま世話になったさかい、これは参加するっきゃないやろ!」
月園・囃子(ヒートアップミュージック・d02960)はギターを抱えステージに立った。
あれから10年。大学を卒業した後、囃子はプロとしてバンドを組んでギターを演奏している。テレビでその姿を見た者もいるだろう。
「っちゅーわけでギター伴奏と歌で参加させてもらうで!」
当時からさらにギターのテクニックに磨きがかかっている。
「皆さん、ノリノリですね♪ 一緒に歌っちゃいましょう♪」
ピンクの髪をはねさせながら、ラブリンスターも笑顔を振りまいた。
「ラブリンスターは相変わらず可愛いよね。彼女の姿は10年前のまま、今日もステージの上で輝いてる」
その姿を見て、千尋が手を叩く。
「思い出すな、この曲を学園で聞いていた頃を」
渚緒は一段と大きくペンライトを振った。
「お歌を歌えるお友達は、一緒に歌ってもいいんですよ」
園児達に囲まれながら、寛和は声をかけ盛り上げる。
星空芸能館といえばこの曲『がんばれ がんばる 武蔵坂! 2028』だ。
仲間の演奏と共に、ステージ最後の曲が始まった。
♪ がんばれ がんばる 武蔵坂! ♪
♪ がんばれ がんばる 武蔵坂! ♪
皆の様子を見ながら、紗里亜は歌う。いつだって、10年経った今だって、この曲は盛り上がる。
♪ ファイト ファイト ファイトオー! ♪
♪ ファイト ファイトオー! ♪
あの頃の、思い出が胸にあふれる。
「ああ、この懐かしい感じ……! やっぱここの皆と音楽やるんは楽しいな……!」
囃子はステージの上で曲を感じながら思いをはせる。
♪ 戦いの日々は この胸に ♪
♪ 共に手を取り 歩み行く ♪
♪ 愛と希望と 笑顔を持って ♪
「ちゃんと10年経っても歌えるよ!」
千尋たちは観客席から一緒に歌う。
♪ 子供たちも ♪
「「「がんばれ」」」
寛和と園児達が合いの手を入れる。
♪ 大人たちも ♪
「「「がんばれ」」」
ラブリンスターが大きくジャンプ。
♪ この地球に 生きているもの ♪
♪ みんな がーんーばーれー!! ♪
「音痴は変わらず治んないけど聴けーい!」
マサムネの気持ちの良い笑顔が会場を見る。
『がんばれ がんばる』と、何度も繰り返す智恵理。
会場皆で作り上げる応援歌は、あの頃と何も変わらない。
大合唱と大きな拍手でステージは幕を閉じた。
「輝く笑顔と響く歌声、楽しいって気持ちがいっぱいに伝わってくる素敵なステージをありがとう!」
何年経っても、何度聞いても、素敵な曲だと。
渚緒はステージの皆に手を振った。
●未来へ続く道たち
ステージが終われば、パーティーの始まりだ。
「皆さんお疲れ様ですよ~♪」
パーティーを楽しむくるみの声が聞こえてくる。
「ねえねえ、ジヴェアにはどんな格好が似合うと思う?」
ステージを終えたジヴェアが紺子の姿を見つけて寄っていった。
「うーん。やっぱり、持ち味の身体のやわらかさを出していくのがいいのでは?」
とか何とか、料理を取り分けながら紺子はいう。
「ステージお疲れ様! 最後の合唱、すごく良かったね!」
紺子はそう言って、ジヴェアと笑いあった。
「また二人で何かしたいね……て、いうかやろうよ♪」
「嬉しい! また一緒に、曲作りして、歌おうよ、くるみちゃん!」
くるみと音色はこれから続いていく二人の未来を約束した。
「あれからオレも落ち着いたぜ。みんな元気にしてたか?」
パーティーが始まり、マサムネら他の仲間達も、近況を報告しあっている。
「わたしは、オリジナルブランドを立ち上げたばかりなのよ」
大学で服飾の勉強をしていた結月は、20歳で芸能界を引退。その後、留学を経て服飾デザイナーの道へと進んだ。立ち上げたばかりのオリジナルブランドは、大人ガーリーをコンセプトにしている。
「私は法学者になった紗里亜の手伝いだね」
華乃はそう言って、踊りながら調理している紗里亜を見た。そう言えば、紗里亜のクッキンミュージカルを見るのは久しぶりかもしれない。いつ見ても、楽しくてワクワクする紗里亜の姿だ。
「わたしは……神社で……宮司になりました……」
そう話すのは玉緒だ。
彼女は大学を卒業後、神道学科に進み神職の資格を習得したと言う。
「オレは世帯持って嫁と息子と娘が可愛い」
と、マサムネが持参した写真をチラッと見せたりなど。
今は通訳の仕事が忙しいが、今後は英語の歌詞を和訳したりと、何らかの形で音楽にも関わりたいと思っているのだと言う。
「ノーミュージック、ノーライフ!」
いつだって、仲間の心には寄り添っているつもりだ。
「あれから皆それぞれの道に進んだんやねぇ。せやけどこうして集まれたん最高に嬉しかったわ! またやりたいなぁ!」
囃子が言うと、皆が笑顔で頷く。進んだ道は違うけれど、歌えば心が一つになるのだ。
そこへ寛和がやってきた。
「ご結婚おめでとうございます」
そう言って、マサムネに声をかける。
「うんうん。嫁と息子と娘はかわいいぜ!」
と、マサムネも笑顔で答えた。
その場に徒と千尋もやってきた。結婚式のお礼なども伝えて回っている様子。
「皆、変わんないねー♪」
徒は上機嫌で皆を見る。
「懐かしいお料理も並んでるよね」
柚澄は子供たちの手を引いている。立食パーティーに並ぶのは、星座モチーフのメニューたち。
「こっそり、レシピを貰ってきてよかったです……」
流希はほっと胸をなでおろす。
学園祭で作った思い出のメニューを、彼なりに再現しているのだ。
「あ、このメニュー! 覚えてるで!」
懐かしいメニューを見て、囃子も興奮気味に声を上げた。
学園祭と言えば、囃子も衣装を着てウェイターをした思い出がよみがえる。
「コップ座のグレープジュースや、いて座のチョコパンケーキがほしいな!」
結衣菜がにこやかに流希から料理を受け取る。
「あら、良いんですか? そんなにたくさん」
パフォーマンスの合間に、紗里亜が結衣菜の手元を覗き込む。
「デザートは別腹だよ~」
「確かに」
と、周辺の仲間達が頷いた。
「やっぱり美味しいです。毎日食べたいくらいですね」
寛和が言うと、皆が懐かしい味を噛み締める。
楽しい立食パーティーは、その日遅くまで続いた。
渚緒は皆の輪に入り、お疲れ様を口にする。
学園時代から、彼女たちの歌にたくさん元気付けられてきた。
他にも、星空芸能館のライブで勇気を貰ったものもたくさんいる。
だから――。
「どうもありがとう、これからも応援しています」
渚緒は言う。
いつまでも、思い出を抱きながら。仲間達は、続いていくのだから。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年11月22日
難度:簡単
参加:18人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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