●這いずりよりし者
「……ギ、ギギギィ……」
人のものではない何かの物音が響き渡る、夜の廃工場。
当然廃棄されたものであるから、人が訪れる事も無い。だからこそ……こんなモノが現われてしまう。
「……ギギィィ……」
その姿は、端的に言い表せば……イモムシ。
しかしイモムシにしては大きすぎる……人の体躯と同じくらいの大きさ。
……と、その時。
『あーあ……ったく、ついてねぇよなぁ……』
舌打ちを打ちながらは、廃工場へとやってきてしまう……ゴロツキの男。
そんな男をターゲットに定めた巨大イモムシ……いや、チェインキャタピラーは、、彼を前後から這い寄り……喰らうのであった。
「みんな、集まってくれてありがとうね! それじゃ説明始めるよ!」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は、集まった灼滅者達に元気な笑顔を浮かべながら説明を始める。
「今回みんなにお願いするのは、廃工場に現われたはぐれ眷属を倒してきて欲しいんだ。そのはぐれ眷属は大きな身体のイモムシ……チェインキャタピラーって呼ばれている奴らだよ」
「彼らは廃工場の中に巣くい、そして被害者が訪れるの待ち続けている。基本的に全個体が集まってて、敵の奇襲を知ると二手に分かれて挟撃を仕掛けてくる様なんだ。恐らくみんなも同じような目に遭う事になるだろうね……」
「無論、イモムシの身体をしたこのチェインキャタピラーは防御力が高くて体力もある頑丈な奴ら。攻撃手段は頭にあるチェーンソー位だけどね」
「とは言えそんな奴らが6匹、前後から徒党を組んで仕掛けてくるとなれば絶対に油断出来ない敵だよ。みんなで強力しないとダメだからね!!」
そして最後にまりんは。
「決して油断出来ない敵だけど、でもみんななら絶対に倒してこれると思ってる。だから張り切って、しっかり頑張ってきてね!! きゃぁっ!!」
ジャンピングで励ます彼女だが……そのジャンプで足下の箱台がガタンと崩れて、ガッタンゴロゴロと足を踏み外す……いつもの彼女なのであった。
参加者 | |
---|---|
新海・マキナ(生臭坊主・d00598) |
黒洲・智慧(九十六種外道・d00816) |
灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085) |
鴻上・巧(灰塵と化した夢と欲望・d02823) |
上條・和麻(漆黒の狂刃・d03212) |
イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788) |
アリス・ドルネーズ(バトラー・d08341) |
暁・紫乃(悪をブッ飛ばす美少女探偵・d10397) |
●薄汚れし廃の中
とある郊外の地……灼滅者達の目の前に不気味に深夜の闇に映るのは、廃工場。
「うーん……これはまさに、季節外れの肝試しって感じなの!」
「そうですねぇ……確かにこれは肝試しに来た、と言ったところかもしれませんね。まぁ無人の施設ですし、そういう場所には害虫はつきものです。とはいえこの害虫は駆除業者任せに出来ないレベルですしねぇ……さっさと処理しないといけませんね」
暁・紫乃(悪をブッ飛ばす美少女探偵・d10397)に、灯屋・フォルケ(Hound unnötige・d02085)が苦笑しつつ頷く。
この廃工場に現われてしまったはぐれ眷属、巨大芋虫こと、チェインキャタピラー。
そのはぐれ眷属を倒すが為に、灼滅者達はこの場へと集まった訳で……陰鬱たる気配と、秋の夜空に吹きすさぶ風が頬を刺激してくる。
「しかし今回の相手はイモムシとは言え、挟み撃ちをしてくるのよね?」
「ええ。挟撃された状況……まぁ知恵の回る相手ならば厄介ですが、相手は知恵の回らないイモムシですしね。此方も遭わず、騒がず、確実に数を減らして行けば大丈夫でしょう」
新海・マキナ(生臭坊主・d00598)と、アリス・ドルネーズ(バトラー・d08341)の会話に。
「そうですね。数をさっさと減らせば挟撃も恐れるに足らずでしょう。という訳でスピードが大事だとは思いますよ」
「……まぁ、そうだよな……ったくめんどくせぇ。さっさとぶっ倒してやる」
黒洲・智慧(九十六種外道・d00816)に、猫耳、尻尾付の全身キャットスーツに身を包んだ鴻上・巧(灰塵と化した夢と欲望・d02823)が面倒くさげに舌打ちを打つと。
「ああ……こんな陰気くさい所にあんまり永く居たくは無いしな」
「……と言う訳で皆、さっさと行こう」
上條・和麻(漆黒の狂刃・d03212)、イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788)がそう言葉を繋ぐと共に、灼滅者達はそれぞれの頭にヘッドランプやペンライトを装備する。
そして。
「……終極ノ國」
静かに一言、智慧がスレイヤーカードを解除。
全ての能力者達が準備万端整えて、廃工場の中へと向かうのであった。
●硬き故に
そして灼滅者達が、廃工場の中を歩く。
当然周囲には多分に注意を払い、奇襲を受けることの無い様に、出来る限り音を立てぬ様に抜き足、差し足で進んでいく。
……そして、ある程度進めば立ち止まり、はぐれ眷属が何か呻いていないか耳をそばだて、方向を毎回修正していく。
勿論、いつ戦う事になるかも判らない……だからこそ足下も踏み固めながら、一歩一歩確実に……。
「……余り大きくなさそうだし、そんなに時間かからずに見つかりそうなの」
「ええ……」
小声の紫乃に頷くアリス。
そして……暫く廃工場内を歩いていると、灼滅者達は……ゴーストの強い気配を次第に感じる事が出来る。
「……どうやら近づいてきているみたいだね」
「ああ……さぁ、左から来るか、右から来るか……先手を取るか取られるか……だな」
イリヤに静かに巧が紡ぐ。
……そして……。
「……ストップ。Feindkontakt、芋虫、確認」
立ち止まったフォルケが、静かに指差す前方……其処には蠢くチェインキャタピラー達。
正直言って、その蠢く姿は気色悪い、の一言で形容できるような状態。
紫乃も。
「うーん……あれが今回のターゲットなの? 解体し甲斐はありそうだけど……」
と、そんな言葉を呟いてしまう。
とは言え彼らを倒さねばならない……という訳で。
「……それじゃ、やろうか」
「よし。じゃあ一気に仕掛けるぜ」
気合いと共に、イリヤと和麻の言葉に頷き、フォルケが己にブラックフォームで自己強化。
そしてフォルケを除く7人の灼滅者達が、一気にチェインキャタピラーの元へと駆けつけていく。
そんな灼滅者達の動きに、チェインキャタピラーはうぞぞぞ、と蠢めく……その数は3体。
更にその後方を、待ち構えていたかの様に残る三匹のチェインキャタピラーが取り囲む。
前後挟撃の状況……それを敢えて作り出す。
そして……取り囲んだチェインキャタピラー達は、シィシィ……と警戒し、威嚇しているかの様な鳴き声を上げる。
「アリス・ドルネーズ。九条家執事兼、九条家ゴミ処理係。チェインキャタピラー……なるほど、その頭部のチェーンソーと言い、身体と言い頑丈そうだが、ただそれだけですね」
「ええ……さて、この一撃、防ぎきれますかね……?」
アリスの言葉に頷きながら、智慧は狙い澄まして、自分達が立ち入った方のチェインキャタピラーへ一撃。
その一撃に続き、クラッシャーに立つマキナ、和麻、紫乃の三人も次々と、同じ敵へ向けて集中攻撃。
「コレでも喰らいなさい」
「……さっさと倒れるんだな!」
マキナ、和麻も次々とティアーズリッパーを仕掛けていく。
そしてそれに続けてディフェンダーの巧、イリヤも。
「……炎纏装創、断斧」
「……この一閃で、一気に撃ち抜く」
バイオレンスギターを構え、レーヴァテインを放つ巧と、ギルティクロスに仕掛けるイリヤ。
とは言え流石に防御の硬いチェインキャタピラー。それら攻撃でコロリと倒れる程柔な相手ではない。
「……流石ですね」
ぽつり、フォルケが一言。
やはり……はぐれているとは言え眷属は眷属……その能力は、決して油断ならぬ敵。
そして対するはぐれ眷属の行動。
その頭にあるチェーンソーをフル回転させ、甲高い音を響かせて前後左右から、一気に仕掛けてくる。
「……!」
その動きを鋭く察知したアリスが、身体を逸らしてその一撃を回避。
更に……数撃に対しては。
「ポジション、有効活用しないとね」
イリヤ、巧が後衛及び互いにかばい合う事をしながらダメージを分散させるように動く。
そして第二ターンになれば、8人の灼滅者中七人が前衛という、超前衛的な動きで以て再度一体のチェインキャタピラーへと猛攻。
……そして、二ターンの攻撃を以て、やっと一匹目を打ち倒すと。
「今よ」
マキナが叫び、その開いた穴を一気に灼滅者達は通過。
前後挟撃の体制から、片方のみの対峙体制へと戦列を改めて取り直す。
「さて……中々硬い様ですね。切断するのは容易ではなさそうですが……ならばこれでは如何でしょうか?」
アリスはそう言い放ちながら斬弦糸を放つ。
絡みつく糸がジグザグの効果……先の服破りの効果が一層強力にチェインキャタピラーの身体を蝕むと、その分ダメージも多くなる。
「どうやら、防御を少しでも下げると良さそうなの。さて……せいぜい少しでも永く抵抗してみろなの」
そして紫乃は、封縛糸を更に追加し、捕縛を追加。
幾重ものバッドステータスに囚われたチェインキャタピラーを作り出しつつ、クラッシャーの雨嵐で二体目、三体目……とチェインキャタピラーを倒していく。
……そして、残るチェインキャタピラーは後三体。
前線を少し引き上げながら、敵陣の状況を再度確認する。
灼滅者達の強さを多少は認識した風ではあるが、知識がある訳でも無く、ただ目の前に居る灼滅者達を威嚇し……そして攻撃するのみ。
「全く……お前達に祈る神などいないのだろう。もうこれ以上命乞いをする間もなく、殺してやる」
そんなアリスの通告……その視線が何処か冷たいものになる。
「まぁ確かにその装甲は分厚い……私如きには貫けないかもしれないとは思いましたが、残念ですね」
「全くだ」
智慧に僅かに苦笑するマキナ。
ポジションから来る、高攻撃力から繰り出される一撃は、装甲を確実に削り去って行った。
そうして10ターン程、過ぎた頃には残るチェインキャタピラーは後二匹。
「後少し。テンションをあげていく! ヒート・ビート!!」
巧は、何処かその状況を楽しむが如く……ソニックビート。
紫乃、智慧、和麻、マキナが服破りの効果を次々と叩き込む事で防御力を押し下げていくと、アリスとフォルケの黒死斬がジャストヒット。
……キィィィ、と鈍い音と共に、チェインキャタピラーが崩れ落ちると、残るはあと一匹。
「後はこいつだけだ。さぁて……んじゃ、ひと思いに殺すとするか」
和麻の宣告……周りの灼滅者達も、その言葉に改めて武器を握り直して構えると……全員が一斉攻撃。
「全く、うっとおしいよ」
「そうだな……さぁ、攻撃に遭わせて叩き付ける!」
巧のロケットスマッシュと、イリヤのジグザグスラッシュがチェインキャタピラーの身体を貫き穿つと、チェインキャタピラーは断末魔の鳴き声と共に……崩れ落ちるのであった。
●安らげずに永久に
「……っ」
静かに再度封印する智慧。
他の灼滅者達もスレイヤーカードに再封印する。
「……さて、と……他にイモムシは居ないですよね?」
「うん……多分、大丈夫なの。まりんちゃんの言っていた六匹はしっかり倒せたハズなの」
「まぁ……はぐれ眷属だからな。一匹二匹隠れていたとしても不思議じゃねぇしな」
フォルケに紫乃と和麻がそう言葉を加え、灼滅者達は廃工場の中をぐるりと一回り。
……改めて、はぐれ眷属達がもう居ない事を確認して。
「では、全て完了という事で宜しそうですね。皆さん、お疲れ様でした」
「そうね……」
アリスに頷くマキナ。
……そしてマキナは軽く、このチェインキャタピラーに殺された被害者達に対して弔い、そして廃工場を跡にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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