●2018年のクリスマス
「もうじき、クリスマスやん? ウチ、前から武蔵坂学園の皆とやってみたい事があってなぁ」
銭持・みつる(中学生エクスブレイン・dn0202)が皆に向かって、こう切り出した。
「ふぅーん、何をしたいの?」
木梨・凛平(高校生神薙使い・dn0081)が聞き返す。みつるがニッと笑って元気よく答える。
「それはなぁ、プレゼント交換やねん!」
みつるは、ちゃんとやり方も考えているという。
「まず、中央のプレゼント置き場に皆が持ってきてくれたプレゼントを置いていく。全員のが置かれたら、自分の以外のプレゼントの箱を取っていく」
これで、プレゼントがシャッフルされるだろうとみつるは言う。
「でも、それだけやと自分が欲しいものを持ってくだけになるやろ? そやから、次に皆で輪になって。そっからようあるプレゼント交換みたいに音楽をかけて、それに合わせて隣から受け取って隣に渡していく。ほいで音楽が止まった所で自分の手元にあるプレゼントが自分のものになる、そういう段取りや」
「なるほど」
みつるが口元を隠し、肩を揺らしながら言う。
「ウチもちゃんとプレゼントは用意しとくしな、ヒヒヒ」
「何か悪い顔で笑ってるな……僕も何か持っていこう」
凛平は場をとりなすように、言葉を続ける。
「プレゼントはその場で開けてもらってもいいですし。プレゼント交換の後にお茶会予定してますので、その時にお茶やケーキを食べながら、それぞれのプレゼントを見せ合うなんていうのもよいかもしれませんね」
みつるが皆の顔を見回しながらポンと手を打ち合わせ、
「こういう集まりは人数多い方が楽しいやろ、せやし、ウチラと初顔合わせの人も、団体で来はる人も一人で来はる人も、大歓迎や、是非遊びに来てや、よろしゅう頼むで!」
●
誰が何を持ってきたかわからないようにプレゼントが集められた部屋に入ると、皆は各々の箱や袋を手にする。
「……まぁ、なんだ。交換始めるか」
自分のプレゼントにどんな反応をしてくれるか少々不安なのか、とりあえずの切っ掛けのように言うアトシュ・スカーレットに対し、
「プレゼント交換会……そうだな、今年は色んなことがありすぎた! 最後くらいはにぎやかに楽しくパーッと行こうか!」
加持・陽司のテンションは高い。
「プレゼント交換なんて小学生以来だけど、どきどきするのは大人になっても変わらないね」
静堀・澄も言う。
軽やかなクリスマスソングが鳴り出すと、皆はプレゼントを回し始める。綺麗な箱に入ったもの、大きな袋に入ったもの、色々なものを受け取っては隣に回す。
音楽が止まった瞬間、皆も動きを止める。今持っているのが、それぞれへのプレゼントだ。
「あー待ち遠しい! 早く開けちゃおうぜプレゼント!」
「少しは受け取った余韻とか、開ける前のわくわくとかも楽しみましょうよ」
陽司が即座に騒ぎ出すのを月影・木乃葉がたしなめる。
風峰・静が自分が手にしたプレゼントを眺めながら、
「そうだよ、ラッピングを見たりとか……あ、このラッピングの柄、凝ってて、かわいいね。リボンもよく合ってるし、箱もいい感じっぽい」
その言葉に澄が嬉しそうに、
「わかってくれた? とっておきの使ったの。嬉しいな、もしかしたら、中身選ぶ時より気合入ってたかも」
「へー、中も楽しみだな」
陽司がフフフと笑いながら、
「……俺のプレゼントはなんと赤のラッピングが! されていないのか! いるのか! さあ分かるまい!」
「これが陽司さんのですね」
七ノ香が自分の手元に来た赤いラッピングの箱を陽司に掲げて見せる。
「いるのか、いないのかって言ってるだろ」
「だって、赤いですし」
「陽司様の考えは丸わかりですわ」
坂崎・ミサと小向・残暑が当然といった口調で言う。
「んぐぐ、まぁいいや、開けて開けて」
七ノ香が陽司に促されて開けると、
「わあ、ありがとうございます!」
現れたのは、アンティークの卓上ランプ。きっと、暖かで柔らかな明かりがともるだろう。
「これからどうなるか分かんない世の中なんだ、お手元くらいは明るくしたいじゃない?」
「本当に、そうですね」
七ノ香にしみじみと返されると、妙に照れ臭くなり陽司は自分が受け取った包みをがさがさとさせながら、
「俺のも開けようっと、なにかなぁ……これは、うさみっち……じゃない!」
「ふふふ、『サンタうさみっちゆたんぽセット』! だぜ」
当然ながら贈り主は榎・未知だ。
「サンタのおじさんとサンタガールでロングヘアな女子バージョンの2体セット、寒い冬もこれでばっちり乗り越えられるぜ!」
「うん、ぬくもりは大事だな」
そう言いながら陽司が2体を、きゅっと抱く仕草を見て、だろ? と未知も笑って返す。
「私も開けるね」
プレゼントには贈る側の人柄が出るものだと澄は思う、だから。
「誰のものか当ててみせましょう」
入っていたのはアンティークの白金カイロ。きっと空を飛ぶ時にも暖かなようにという思いやりがこもっていて、それに、それを入れるための巾着。手製のFlyHighの刺繍入り。
「お手製の巾着……耀さん?」
「実は私です」
七ノ香が手を上げる。澄は、あっ、と声をもらし、
「七ノ香さんという線もあったよね。外れちゃってごめんなさい。どうもありがとう!」
矢崎・愛梨が声を上げる。
「飛行機図鑑だ!」
澄の隣でナノナノのフムフムがその通りというようにひれをパタパタさせる。
「ええ、フムフムのプレゼントです。私たちFly Highだからフムフムなりに意識したみたいです」
「素敵だね、ありがとう!」
愛梨が本をフムフムに向けてにっこり笑う。
「まあ。良かったわね、フム」
「じゃあ、わたしからはこれをフムフム君にあげるね」
愛梨が渡したのはクリスマスカード、開いてみると、メリークリスマスの文字と共に『あたしたちの冒険はまだまだ続くよ! ガンバロウ!』というメッセージ。
「何枚も作ってきたから、よかったら、皆さんもどうぞ」
「ボクの所には、大きいのが来たなぁ」
木乃葉が大きな筒状の包みを両手で抱え込んでいると、
ホホホと笑い声がする。
「これ、小向先輩から?」
「その通りですわ」
包みの中にはキャリーバッグ、その中に入っていたのは、
「うわ、これって!?」
「寝袋ですわ、しかも歩ける奴、夜に見たらビックリしますわ!」
「本当に。それにあったかそうですね」
「結構いい奴ですのでこれがあれば雪山にも行けますわ……きっと!」
「流石ですね!」
「喜んで、そして、驚いてもらえて何よりですわ! 私のは何でしょう……まぁ、素敵なオーナメント。オルゴールにもなっていますわ」
木乃葉が残暑の手元を見て、
「あ、偶然。それ、ボクからのです。クリスマス飾りのボール風オルゴールでとても綺麗な音が鳴るんですよね」
「素敵ね、お嬢様である私にとても似つかわしいですわ」
試しに鳴らすと澄んだ音が控えめな音量ながらも会場中に響く。
「クリスマスツリーに飾らせてもらいますわ、ウチのツリーか。それともどこがいいかしら」
アトシュも段々と盛り上がりを見せ、
「んー、なんか楽しみだな! 俺のは何だろう、包みで柔らかくて……開けるぜ」
中身は風に靡く長い赤色のあったかマフラーに、赤いニット帽、赤い手袋、それと。
アメリア・イアハッターが声を上げる。
「お、あぎとん先輩、おめでとー! それじゃほら、早速それで暖かい格好に着替えて着替えて、外に行こう」
「え、これ、部長からのか。でも着てって? それにこのカード」
「空中お散歩券って書いてあるでしょ。ほら、私の後ろに乗ってクリスマス空中散歩、行ってみましょう!」
箒に載ってあっという間に二人は空へと。
「うわっ! やっぱり、クリスマスの風景はいつもと違うな、人が多かったり、街路樹がクリスマスっぽく飾られてたり」
「雪もちらついてるみたいね。少し、その辺飛んでくるから、皆は先にお茶会してて!」
下に向かって手を振る二人に皆も了解と答えた。
●
静はクラッカーを構え、
「メリークリスマース」
パァーーーン!
景気のいい音と共にお茶会会場にカラフルなテープが広がっていく。
「最近のは飛び散る中身に紐がついてて引っ張り戻せるんだよほら」
シュルシュルと戻していく。へーという声が聞こえる。
「僕もプレゼント開けよう、何かな……あ、中も綺麗だね」
静が箱を開けると、横から澄が、
「七色のバスボムセットです。男性でも女性でも使えるものをと思って」
「へー、お風呂が楽しみだなー。良い香りがするね。見てよほら、僕のはこれ! 良いでしょう」
皆にバスボムセットを見せて回ってる中、不意に思いついたように静は尋ねる。
「良い香りと言えば、俺のプレゼント受け取った人は? 未知のとこかな」
「うん。紅茶だね、本当にいい香りだな」
「すごいでしょう、この人狼の鼻を活かして選んだ、最高に香りがフライハイなやつ」
「これ、今のお茶会で使っても?」
「勿論。使ってもらえたらいいなって。しかも残りは持ち帰れる優れものだよ」
耀が箱を開けると中にはカップケーキが二つ。
「この場で頂いてもいいのかな……ん?」
何か違和感を覚え、手を止める。
「あ、それは私のです」
ミサが言う。
「最近食品サンプル作成体験に行きましてね。この2つのうちどちらかがサンプルのカップケーキです。さぁ! あなたはこのケーキの本物が見抜けますか!? なんて……」
「もしかして、初めは私の事をひっかけようとしてたとか?」
首を傾げ尋ねる。耀は笑顔。そのはずなのになぜか怖い。
「ち、違いますよ。カップケーキも作ったものですし、サンプルの方もちょっと加工すればキーホルダーとかにもなるかなと思いましたので」
「ま、いいでしょう……うん、よくできてる、おいしいわね、このケーキも。サンプルもそっくりね」
笑顔のままで頷く。だが笑みから圧が抜けたように思えた。
「たっだいまー」
空を堪能したアメリアとアトシュが戻ってくると、お帰りと皆も声をかける。
アトシュは手をこすり合わせ、
「マフラーもニット帽はあったかかったけど、それでも、少し冷えたな」
「お帰りなさい、アトシュさん、素敵な本のカバーと栞、ありがとうございます。使わせてもらいますね」
ミサの笑顔にアトシュも笑顔を返し、
「うん、使ってもらえるんなら嬉しいぜ」
「私がもらったのは……わぁ素敵! これってもしかして作ったの?」
アメリがもらったプレゼントは耀からの和綴じノート、三冊。
「そうよ、表紙と裏表紙を千代紙で綺麗にデコった、クリスマス特別仕様よ、中は白紙だから自由に使ってちょうだいね」
「綺麗……」
アメリアはノートを抱きしめ、笑む。
「ありがとう、何を書こうかな。大切にするね」
ティラミスと紅茶でほっこりしている七ノ香のところに、銭持・みつるがやってくる。
「このプレゼントは御鏡くんのとこからかな?」
「はい、幸ちゃんの手作りのブッシュ・ド・ノエルです」
「おおきに。お菓子作り得意なんやね。この、スポンジのとこもやらかくて、ええし、抹茶クリームなんが、ほどよくておいしいわぁ。ほな、このプレゼントは、ウチからな」
七ノ香と幸四郎の前にプレゼントの箱を置く。
「何でしょう……」
リボンを解き、箱を開けると、
ぽーん! という音と共に、舌を出した人形の顔が揺れる、古典的びっくり箱。
七ノ香は一瞬目を丸くした後、口元を緩め、くすくす笑う。
「みつるおねえさんは相変わらずみたいですね」
「普通のカップケーキもありますね。ぜひ紅茶と一緒にいただきましょう……食品サンプルだったりしないですよね?」
「ミサさんとは違ってね」
ミサの言葉に耀が返す。
「え、えーと……残暑さん、紅茶のおかわりはいかが? 静さんの紅茶美味しいですよ」
場の空気を換えるように残暑に話しかける。満足げに残暑は頷いて、
「これは……とってもお嬢様ですわね!」
ケーキやスコーンも勿論良いがやはり、紅茶でしゃららんとするのがお嬢様流だと彼女は思いつつ、紅茶を飲み、笑みを見せる。
「てぃーたいむは楽しいのが一番ですわ!」
「抹茶のケーキある?」
未知は抹茶大好き系。
「おお、抹茶シフォンに抹茶ムースに……これは! 苺の乗った抹茶ケーキ! 天国か……!」
ちなみに次に好きなのは苺系だ。
「ケーキはそうだなぁ、フルーツ系のやつあるかな……おお、色々あるな。これは苺のタルトケーキか」
静もケーキのコーナーを眺め一つ取り上げると、
「あ、静さんのケーキもいいな」
未知が言うのを静は手にした皿を抱え込み、
「ははは、それは僕が先に目を付けてたんだ、あげないよー」
「なら、一口でいいからちょーだい」
「賑やかね」
耀がゆったりと緑茶と羊羹を食べながら、皆の様子を眺めていると、アメリアが辺りを見回し何か探している。
「クラッカー、クラッカーないの? 私あれ鳴らしてみたい!」
「はい、どうぞ」
耀が手渡す。
「うんとってもサクサク。違う、この食べるクラッカーじゃなくて」
「ジャムもあるわよ」
「ジャム付けると、一層に紅茶に合うよねーって、だから違うって!」
「クラッカーならここにあるよ」
「ありがとう、しーくん先輩! せーの、めりーくりすまーす!」
パーーーンッ!
「気持ちいい!」
「それで、ここ引っ張るとテープが戻るよ」
「本当だ、面白い!」
木乃葉がケーキを食べながら呟く。
「あっ、このチーズケーキ美味しいです、カフェラテによく合う」
「木乃葉さんのも一口おくれ」
フォークを片手に未知が言う。
「一口、ですよ」
木乃葉は笑って皿を差し出しながら、会場を見渡す。
「皆さんも素敵な物がそれぞれ回ったようですね」
残暑もティーカップを上品に掲げながら、にっこり笑う。
「楽しいクリスマスで嬉しいですわね!」
皆、お茶やスイーツを楽しみながら、プレゼントを見せ合って自慢しあったり、笑いあったり。
楽しいクリスマスの時間はまだまだ続いている。
作者:八雲秋 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2018年12月24日
難度:簡単
参加:12人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|