クリスマスを南半球で~2025年のクリスマス

    作者:森下映

     2025年11月某日。
     ひとり暮らしを始めたばかり、ついでに髪も切ったばかりの坂月・ルオは、大学の中庭にあるベンチで調べ物をしていた。とそこへ、
    「ルオー、今日ももっちもちのルリコですよう! お昼ごはん誘いにきてあげたんですよう!」
     現れたのはアイドル淫魔の紅生・ルリコ。保護観察役をかって出てくれている灼滅者も一緒だ。
    「ルリコさん、こんにちは。今日はお仕事はないんですか?」
    「はあい、お休みなので、ここまで連れてきてもらったんですよう!」
     ルリコが観察役の灼滅者にニコッと笑いかける。淫魔のルリコではあるが、保護観察役をかって出てくれた灼滅者たちのおかげもあって、アイドル活動も日常生活もそれなりに自由に行えていた。
    「みなさんにはとおーーっても感謝してるんですよう! アイドルも続けられて、こうやって……おともだち、もできて」
     照れくさそうにいうルリコに、ルオと観察役の灼滅者が微笑む。と、
    「そうだ。ルリコさん、クリスマスのご予定って決まってます?」
    「えーとお、年越しでライブはするつもりなんですよう。でもクリスマスはあいてるんですよう! せっかくだからクリスマスはプライベートで楽しんだらどう? ってみなさんが言ってくれたんですよう?」
    「そうなんですね! でしたら……」
     ルオがタブレットの画面を見せる。
    「クリスマス旅行にお世話になったみなさんをお誘いしようと思ってるんですけど、ルリコさんも行きませんか?」
    「え、い、いきたいですう! あ、でも……」
     ルリコが遠慮がちな上目遣いで観察役の灼滅者を見た。灼滅者は大丈夫ですよと笑って頷く。ルリコがたちまち笑顔になった。
    「わあ、楽しみなんですよう! でもどこへ行くんですよう?」
    「南半球……シドニーってところです」

     そう、ルオの計画は『クリスマスを南半球で過ごす』こと。クリスマスシーズンといえど日中30度を越すシドニー。ビーチが楽しめるのはもちろん、クリスマスイベントも盛りだくさんだ。

     お昼のことも忘れてシドニーの下調べに夢中になってしまったルリコとルオ。観察役の灼滅者はベンチの端に、そっと買ってきたサンドイッチを置いた。


    ■リプレイ


     所はシドニー、タウンホール前。
    「ええと、このあたりでしょうか……あ」
      古海・真琴(空飛ぶサッカーコーチ・d00740)は自分に向かって手を振るルオに気づき、サッカーコーチらしい颯爽さで駆けつけた。
    「こんにちは、古海さん」
     ルオが言うと、
    「こんにち……すわっ!???」
     言いかけた真琴、ルリコの独特な気配に思わずのけぞる。
    (「まさかまた残存ダークネス?! それともエスパーの暴走、」)
    「えっとお……どうしたらいいですう?」
     察したルリコが心配そうに、ルオを見た。ルオは真琴に事情を説明、
    「ああ、ビックリしました。ごめんなさい、ルリコさん。あらためてはじめまして!」
    「よろしくですよう」
     真琴とルリコが微笑みあって握手。高校生世代のサッカー大会のために豪州にいた真琴。シドニーに灼滅者達がきているという情報をキャッチし、忙しい最中に顔を出してくれたのだ。
    「あまり時間はないんでしたっけ?」
     ルオがたずねる。
    「そうなんです残念ながら……一応何時までに戻ればいいか確認しますね、ちょっとすみません」
     と真琴は携帯で流暢な英語を交えながら話を始めた。そして電話を切ると、たははと笑い、
    「なんだか急いで戻らなくてもいいみたいです。どうしましょう」
    「だったら!」
     ルリコが彼女らしい調子で真琴の腕をとる。
    「一緒にビーチにいくんですよう!」
    「え、ビーチ?」
    「はい。これからビーチで待ち合わせをしているんです。僕が武蔵坂時代にお世話になった先輩なんですけれど」
    「それじゃあ……ご一緒させてもらいましょうか……もちろんその方が構わなければですが」
    「気にしないどころか、喜んでくれると思います!」
     ルオが言う。真琴は頷き、
    「あと、練習で缶詰になっている選手やスタッフ達に、何かお土産でも買って帰りたいところですが」
    「ではビーチで遊んだ後に、それもみんなで行きませんか?」
    「それは助かります。銘品とかわかりませんし」
    「わあ、夜はみんなでデートですねえ♩」
     真琴が気に入ったらしいルリコはにっこにこ。
    「すみません……この人いつもこの調子なんで……うっとおしかったらいってください……」
    「ええールオってばひどいんですよう!」
     わざとらしく真琴の影に隠れるルリコ。主にこどもたちのおかげで懐かれるのには慣れている真琴は大丈夫大丈夫といって、ルリコに腕をとられたまま歩き出す。やれやれとルオも後を追った。


     一方真琴達が目指すビーチには、待ち合わせをしている相手の他に、すでに到着している灼滅者達も。
     2つ並んだリクライニングチェアに寝そべるはリゾート気分とクリスマスバカンス満喫中の美女2人。明石・華乃(悠久恋歌・d02105)と椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)。緑のビキニにサングラスの紗里亜、水着にサンタ帽はまさに南半球のクリスマス。新進気鋭の法学者である紗里亜は、ESP法の整備に国内外を飛び回る日々。今日もシドニーで会議を終えた後のバカンスだ。
     華乃はといえばシドニーの空と波飛沫のような青と白の、シンプルなセパレートに身を包み、やはりサングラスは必需品。こまめに日焼け止めをぬりなおしている。
    「雪の無いクリスマスは何か不思議な感じですね♩」
     紗里亜が言い、
    「今頃向こうはホワイトクリスマスかな?」
     華乃が言う。2人の間にはミニツリーとシャンパンクーラーが置かれ。と、紗里亜がふいと視線を流した。
    「あ、華乃。あれ」
     視線の先にはビーチウェディングのカップル。青い海と空に白いドレスが映えて美しい。
    「綺麗ですねえ……」
     憧れる気持ちはあれど、
    (「ま、こちらは当分仕事三昧なんですが」)
     そんな紗里亜に、華乃は、
    「紗里亜、メリークリスマス!」
     弾けるシャンパンボトル、溢れる泡は宝石の様。紗里亜も負けじとシャンパンを抜き、
    「メリークリスマス!」
     お互いのグラスに注いで、お互いを持ち上げたグラスごしに見る。
    「帰国したらまた頑張りますよ、華乃♪」
    「こうも暖かいと日本に帰りたくなくなってしまいますけどね」
     まあこの一時はそれも許されるだろうと華乃は紗里亜とグラスを合わせ、小気味好くも透明な音を鳴らす。まだまだ南国のクリスマスは始まったばかり。


    「ルオさんー、お久しぶりなのです!」
     変わらぬ桜色の髪、皆に元気を与える声。羽柴・陽桜(ねがいうた・d01490)が浮き輪を片手にぶんぶんと手を振っていた。
    「お久しぶりです、羽柴さん。お忙しい中すみません」
    「いいのですいいのです!」
     海外協力隊として日本と海外を行ったり来たりしている陽桜だが、
    「招待いただけたからには、オフをもぎとって来ちゃいました! ……と、ルリコさんはじめまして!」
    「はじめましてですよう」
     緊張気味に差し出されたルリコの手を両手でぎゅっと握り、陽桜がにっこり笑う。真琴と陽桜も挨拶を交わし、
    「それにしても羽柴さん、準備万端て感じですね」
     既に水着なのはもちろん、バーベキューセットも食材もしっかり揃っている。
    「クリスマスといえば冬、ってイメージでしたけど、南半球は季節逆ですものね」
     陽桜が言う。
    「ビーチで浜辺でバーベキューでクリスマス! ってすごく新鮮なのです。今日はみんなで一緒にバーベキューで泳ぎましょうー?」
    「ば、ばーべきゅーでおよぎ?」
     突然の陽桜語にルオの脳内で、串に刺さった肉が豪快に海でクロールを始めた。
    「まずは泳いで、それからバーベキューで、それからまた泳ぐのです!」
    「なーる……?」
    「ルリコわかりましたですよう!」
     ルリコがなぜかえへんと胸をはる。ルオは、
    「ではまずはばーべきゅーでおよぐとして……羽柴さん今夜時間あります? 夜は古海さんとショッピングに行く予定なんです」
    「みんなでデートなんですよう♩」
    「よかったらぜひご一緒しましょう」
     真琴も言う。陽桜は頷き、
    「じゃあさっそく泳ぐのです! ……ってみなさん泳げますよね?」
     運動神経抜群の真琴は想像通りのはず。が、心なしか後ずさっている2人を陽桜が見逃すはずはなく。がしっとルリコとルオの腕をとると、海にぐんぐん連れていく。
    「わわ、待ってください羽柴さんーーー!」
    「る、ルリコ泳ぐのはじめてですよう!」
    「浮き輪があるから大丈夫なのです!」
     かつて陽桜の行動力に何度救われたことだろう。陽桜に引っ張られながら、ルオは学園時代を懐かしく思い出していた。


     そしてビーチには、かつて武蔵坂の『秘密の花園』、Le jardin secretに咲いていた『花達』もやってきていた。その花園の『魔王』といえば黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)。既に女医として働いている彼女、久々のオフである。
    「りんごさん」
     皿にのせた肉を手にりんごに声をかけたのは、曹・華琳(武蔵坂の永遠の十七歳・d03934)。水着の上にTシャツとデニムスカートを着たスレンダーな姿が、もともと地元のビーチであるかのように馴染んでいる。
    「お肉焼いてばかりで疲れたでしょう。少しお話ししません?」
     皿を受け取り、りんごが促すと、華琳は頷き隣に座った。りんごは華琳が日焼け止めを塗り直すのを手伝う。と華琳は、
    「実は……日本を離れようと思う」
     生まれ故郷台湾に隠棲し、子どもたちにいろいろなことを教えて暮らすといい、
    「地に足着けて暮らすのもよいのではないかと思ったよ。――これまでお世話になった」
     りんごは軽く首を振り、
    「寂しくなりますわね」
    「交流を断つわけではない。たまに日本に遊びに行くこともあるかもしれない」
    「いつたちますの?」
    「決めてはいないが、近いうちに」
     2人の瞳がしっとりと気持ちを伝え合う。と、
    「わ、美味しそうなお肉!」
     フリルトップスのビキニを着た川名・みさき(ハマの元気なあんちくしょう・d29518)。22才になったみさき、可愛らしい顔に豊満な胸は健在。
    「ん、おいしーい!」
     華琳にすすめられ、みさきは肉をほおばり、
    「そういえばわたしも日焼け止めぬらなきゃ! りんごさん塗ってくれる?」
    「もちろんですわ」
     シートにうつぶせになり、水着の留め具をはずしたみさきの背中に、りんごはオイルを垂らすと、ゆっくり手を滑らせていく。
    「はぁぁ気持ちい……ひゃんっ?!」
     うっとり身をまかせていたみさきがびくんと体を震わせた。
    「あらごめんなさい。うっかり手が滑ってしまいました」
     くすと笑みをこぼすりんごの両手はみさきの胸に。やわからさも敏感さも伝わるそれはビーチと花園の特権。ともあれ身体中あますところなく日焼け止めをぬりおわったみさきは、バーベキューの係がひと段落した華琳と海へ駆け出していく。


    「あれ? お姉ちゃん、にぃに達は?」
     ピンクのスカートつきビキニが色白の肌と明るい茶の髪によく似合う。花園の最年少だった深杜・ルチア(ひだまりチェンノミーチャ・d33884)も今は17才。目の色以外は一回り年齢の離れた姉である深杜・ビアンカ(虹色ラプソディア・d01188)が、今のルチアくらいの歳だった頃の姿によく似ている。ということはかなり豊満になったということでもある。
    「今日だけはお世話を任せて来たわ。みんなと会える特別な日だしね」
     白いパレオ付きのビキニ姿。ビアンカはといえば29才になっている。とても29才には見えない若々しさと瑞々しさだがやはりもう落ち着いた大人の女性。今日は1才になる男の子と女の子の双子を同行している夫に任せての参加、妹や仲良し達とのんびり楽しむ。
     もちろんルチアのウイングキャット、白猫ことにゃんも一緒。にゃんこながら水を怖がらないことにゃんとルチアは波打ち際で遊んだり、思い切って泳ぎに出たり。そして、一息つきに浜辺へ戻れば、
    「ルチアさん、すっかり大人の身体つきですわね」
    「ふあ?!」
     もうよーじょではない身体を、しっかりりんごに確認されてしまう。
     母親になったといえば、パラソルの下、ビーチチェアでくつろぐ錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)も2男1女――さらにマタニティウェアでわかる通り、おなかには4人目のこどもを育む母親であり、実家の甘味処『天の川』をかわらず手伝っている。
    「旦那様はお元気ですの?」
     りんごがたずねると琴弓は学生時代と変わらない童顔をふにゃりとゆるませる。そして長年の想い人であり隣に住んでいた幼馴染であった夫もオーストラリアに来ていること、かわいい子どもたちをみてくれていることを幸せそうに話す。
     安定期に入ったお腹をそっとさすれば、妊娠中ということもあって大きくなった胸が魅惑的に揺れた。それを指摘され、
    「もうペタン娘とか言わせないんだよ」
     微笑む琴弓。かつては体型にコンプレックスもあった彼女であるが、今は無縁に違いない。


    「由希奈さん、彼と幸せにやってる?」
     色射・緋頼(色即是緋・d01617)がたずねる。墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)は笑顔で、
    「私は幸せだよっ。籍も入れたし、武蔵坂の非常勤講師と主婦業も両立できてるしね」
     叶えた久遠の絆、仕事も家庭も大事にしている由希奈。
    「……緋頼ちゃんは? うちとは家族のかたちが違うから、気になるかな」
    「仲良し家族だよ、世間的には歪かもしれないけど。沢山子供もいて、みんな大好きで可愛いの」
     普段は好きに世界を巡ってるけどね、と付け加える。変化後の世界を探検して動画を撮影したり、そこでパフォーマンス映像を作成したり。家族に恵まれ、帰る場所があり、大切な人達が待っている。だからこそ、その上に。好きな事が出来ていて幸せだと緋頼は言う。
    「男の人1人に、女の子3人なんだよね、緋頼ちゃんちは」
    「そう。 あ、子ども達の動画あるけど見る?」
    「うん!」
     由希奈は動画を見せてもらいながら、そこに映る緋頼達と幸せそうな目の前の緋頼を時折見比べ、
    「うん、良かったっ。すごく楽しそうな毎日で」
     そして羨ましそうに微笑むと、
    「いいなぁ、子ども……。 私も、自分の子どもを抱けるようになりたいな」
     そう思えば実子のいる緋頼が眩しくも見え、つい目を細める。と、
    「わたくしの甥っ子か姪っ子か……早く見たいものですね」
     由希奈の義妹であるりんごが声をかけた。由希奈はぱっと振り向き、
    「りんごちゃんも久しぶりだねっ。お仕事忙しそうだけど、いつか私に子ども生まれる時はお世話になろうかな?」
     きっと現実になる、そんな予感がビーチの風となって吹き抜けた。


    「久しぶりー」
     と、りんごの隣に東雲・蔓(求める兎・d07465)が座る。もちろん久しぶりにあれこれスキンシップしてもらおうと思ってのことだが、
    「……皆さん、りんごお姉ちゃん、お久しぶりです」
     義妹である東雲・梔子(狐憑き・d33430)がぬいぐるみを抱えてやってきた。
    「お久しぶり。梔子さん、随分成長したのですね」
     りんごが意味深に笑みを漏らす。
    「私も、21歳になったから……もう、皆さんと同じ大人になりました、ね」
     とはいえ14才の頃から顔と身長はあまり変わっていない。が、
     「……皆さん……なんで私を見て、驚いているんですか……?」
     それはもちろん、身長も顔つきも変わらないのに胸だけが立派に成長しているからで、
    「……はい、困ったものです……何故か知りませんが……、……可笑しいですよね……?」
     皆もそう、思うよね? とぬいぐるみの中の都市伝説達にむかって囁く梔子だが、中のボイスレコーダーからは、様々な声でソンナコトナイヨー、カワイセクシー、スバラシイーと賛辞の言葉ばかりが返ってくる。
    「……もぅ……」
     ぷぅっと頰を膨らませれば、都市伝説達はほうっと感嘆。みんな梔子が大好き以上、なのだろう。
    「梔子もこっち座って、姉妹一緒に遊ばない? 1人足りないけど」
     蔓が手招きすると、とてとてと近づく梔子。が、砂に足をとられて躓き、
    「……やんっ!?」
    「あらあら♩」
     倒れ込んだ拍子にりんごの手に成長した部分を包まれて。ぽうっと白い肌が紅く染まる。
     彼女のようにすっかり成長した花もいれば、年齢を重ねても変わらぬ若さの花もおり。28才とアラサーながら、心身ともに何をどう見ても18才。を維持しているのは深紅のビキニに身を包んだチャイナガール、不知火・桂花(幻双鏡・d32619)。Hカップの見事な胸も美脚も健在だ。
    「秘訣? 教えてもいいけど、後悔しないわね?」
     ふふふと笑う表情は昔よりさらに艶っぽい。かなり年下の女性とつきあっていたり、太極拳や妖しい漢方薬の中華テクニックが味方だったりが彼女の若さの秘訣だが、
    「特にりんごはどーなのよ、なんか対策してる?」
     にじり寄れば、自然と両腕の間に豊かな胸が寄る。
    「魔王でもアラサーなんてすぐ来るわy……ひゃぁああっ!?」
    「確かに全然変わっていませんわね」
     くすと笑って桂花を抱き寄せるりんごに、
    「ちょ、いきなり引っ張り込んで悪戯しないでよっ! ……水着も盗らないの! やめなさいよ!」
     せっかくの機会ですから♩ と全く指を止めようとしないりんごに、桂花もしっかり頰を染めつつ、
    「もうっ! そっちも全然変わってないわね!?」


    「いくら時が経とうとも、こうして皆さんと変わらぬ絆があるというのは……ふふっ、嬉しいものですね」
     久々の再会にはしゃぎ回る皆を、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)は幸せそうな微笑みを浮かべ、穏やかに眺めていた。
     世界各地で身寄りのない子ども達を集めては、武蔵坂学園『分校』を設立するのが仕事。偏見のない世の中を目指すためにと子ども達を育てているセカイが忙しくないわけはなく。
    (「ちょ、ちょっと際どすぎたでしょうか……」)
     あらかじめ水着を用意できなかったために、急いでシドニーで買った水着はといえば、少し動けば100cm超えの上張りのある『ましゅまろ』はもちろん、あちこちこぼれて見えてしまいそうな大胆さ。そのためパーカを羽織り、パレオを身につけている。
     そして、
    「ひさしぶりにあそぶぞー!」
     もふもふ健在の霊犬のコセイと一緒に元気いっぱいビーチたーいむ! と海にとびこもうとしているのは香祭・悠花(ファルセット・d01386)。そこへばしゃーと、華琳と海に潜って遊んでいたみさきが水をかける。大学では国際政治に関わることを学んでいるみさき、
    「できれば将来は外交官になりたいなって」
     夢を語るみさきに華琳が頷く。
    「わたくし達も少し身体を動かしましょうか。セカイさんも一緒に来ません?」
     りんごがセカイの手をとって立ち上がる。瞬間、セカイのパーカもパレオもひらりと落ちて、ましゅまろは既に危険地帯。
    「そういえば悠花さんはお仕事は?」
     水着が水着ゆえ、恥ずかしそうにもじもじするセカイの手をひっぱりながら、りんごがたずねる。と、
    「えっ、仕事? そんなことはどうでもいいじゃないですか、ハハハ」
     即座に乾いた笑い。学生時代と何もかわらないと悠花はいうが、それもまた悠花らしい。
    「ということで」
    「?!」
     くるっとセカイの方を振り向いた悠花に、セカイは思わずびくんっ。
    「南半球というのはセカイさんのましゅまろのことでないか!」
    「えっ! えええっ!」
    「わーい♪ やわらかーい♪ ましゅまろはわたしが育てた!」
     以前一部の合言葉と化していたそれを言いつつ、悠花がしかっとましゅまろを堪能しようと抱きつけば、
    「きゃあーー! んっ!」
     セカイのましゅまろが当然のように水着から、溢れた。


    「ほんとにサーフィンしてるサンタさんがいる……?!」
     サンタコスのサーファーを見て、羽丘・結衣菜(歌い詠う蝶々の夜想曲・d06908)が目を丸くする。オーストラリアではサンタがサーフィンしながらやってくる……と話にきいてはいても、実際目の当たりにすると、ここが南半球であることを改めて感じる。
    「日本とは違うねぇー」
    「結衣菜さんー?」
    「あっ、いくよー! えいっ!」
     緋頼に呼ばれ、結衣菜がバレーボールを優しくトスしてパスすると、
    「はーい!」
     緋頼がナイスレシーブ、
    「懐かしいよねこういうの!」
     汗ばんだ額を軽く拭えば、散った漆黒の髪が陽に透ける。
     ボールを回しながら他愛ない話をし、昔を思い出す。それが懐かしく、楽しく、これから先の未来への勇気をもくれるひとときとなる。
     こうしてゆっくりボールを回すチームもあれば、
    「ほら、いくよー♪」
     思い切り身体をしならせ見事なスパイクを決めれば、ピンクの髪がふわり舞う。特撮ファンだった東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)はいまやヒーローショーのスーツアクターとして活躍している。当然運動神経には自信あり、ガンガンボールをさばいていく。と、
    「あ、桜花さん」
     駆け寄ったのは、桜花に手をひかれビーチバレーに混ざっていた東雲・蓮華(ホワイトドロップ・d20909)。
    「動きはいいですが水着にも注意してくださいね?」
     解ける寸前だった桜花の水着を掴み、即座に紐を結び直す。10年ほどルームシェアしている2人、親友というよりも家族に近い感覚とは蓮華の談、一緒に暮らしてるのにここでも一緒っていうのもどうかと思うのだけどと桜花も笑うが、この光景はもうどうみても……。
    「いやーしかし……なかなかの眼福だねぇ♪」
     ドリンク片手に、水着の美女、美少女を眺めてニコニコの蔓。
    「まぁ、ボクからは手は出さないけどね?」
     灼滅者として様々な国に行きながら事件を解決。さらに他の国の国籍をとって晴れて結婚、
    「ボクは満足しているしね……それに久々に妹たちの顔も見れたし……んっ?」
    「ふぅ、ちょっと疲れたかな……蓮華ー、それとって?」
    「はい、これですね」
     桜花の好きな飲み物を迷わず渡す蓮華。そのやりとりを見た蔓、思わず、
    「……君らもう夫婦じゃね?」
    「違うよ?」
    「違います」
     うむ、息もぴったりである。
    「あたしたち女同士だし」
    「わたしたち女同士ですし」
     うむ、息もぴったりry、
    「さって、あっちにもいってみようかな?」
    「はい。それでは失礼します」
     疲れた腕を青空にむかって伸ばしながら歩き出した桜花の後を、ぺこりと1つ会釈、蓮華も追いかける。残された蔓は腕を組み、
    「否定されたけど……納得いかん」
     と、小首を傾げる。なにしろ去り際に蓮華が小さくこぼした言葉を蔓は聞き逃さなかったのだ。
     ――この人の隣にいるのがとても幸せです。
     そう言った蓮華の表情は完全に恋する乙女のそれ。しかし、
    「ま、本人たちがよければそれでいいかな?」


    「結衣菜さんも大学生ですか」
     りんごが感慨深げにいう。何しろ7年前は小学生だったのだから。
    「うん、元気にやってます!」
     とは言ったものの、結衣菜は将来どんなことをしようかなと悩んでいる最中でもある。
    「うーん、そろそろ決めないといけないよね」
     辺りを見回せば、幸せそうな未来設計をしている花々も少なくなく。
    「ふふ、羨ましいなぁ」
     目を細める結衣菜の背中から、りんごはそっと手を回しつつ、
    「まだ将来は決めずとも、今は大学生活楽しんでは?」
    「ひゃあっ?!」
     もう大学生ですからいいですわよねと微笑んで。そんな喧騒を楽しみながら、悠花はコセイとのんびり、甲羅干し。
    「コセイは甲羅干しじゃなくてひなたぼっこですかね」
     と、存分にもふもふ。このもふもふは世界の癒しではないかと常日頃思っている桜花だが、かわるがわるもふりにくる友人達の幸せそうな表情を見れば、その通りであることがよくわかる。

     砂に塗れて夏に塗れてまだまだ花は咲き乱れ。彼女達が咲く限り、そこはいつでも永遠の花園。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年12月27日
    難度:簡単
    参加:20人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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