僕(七面鳥)は、食卓の王者を目指したい

    作者:ねこあじ

    ●2018年・師走
     冬休み前の大掃除期間。
     日向・草太(中学生神薙使い・dn0158)は、この日、今までの依頼報告書の整理整頓を手伝っていた。
     懐かしく思って、色々と読みはじめてしまう。
    「って、都市伝説も色々いたんだなぁ」
     ある意味、季節の風物詩であった都市伝説もいた。
    「冬は雪だるまとか……」
     まともな噂であった気がするのだが、どうしてこうなったという都市伝説もいたりする。
    「今はクリスマス前だから――ってクリスマス関係も多いなぁ」
     バラエティに富む都市伝説。
     こんな感じのもいたのかなぁと、草太は思い描いてみる。
     クリスマスといえば、チキン…………七面鳥?

     というわけで。
     少し時間は遡る――とある冬。

    ●あったかもしれない都市伝説依頼
    「あったかな灯りがひと~つ、ふた~つ、み~っつ」
     綺麗な夜景スポットが評判の丘の上。だが辿り着くまでの道程や寒さに、真冬は足を運ぶ者が少ない――そんな丘の上で、家々の灯りを不気味に数えるモノがいた。
     丸っこい物体だった。
    「ああ、あの家の食卓には今頃ローストビーフが……いや、チキン……くうっ」
     丸っこい物体は、無い頭を抱える。手羽で。
    「僕も、食卓のメインになりたい!
     この、ターキーの美味さをどこかのご家庭に知って頂きたい!!
     ああ、しかし、しかし……!!!!」
     苦悩するソレは、肉であった。ローストされる前くらいの生肉。形状は鳥。
     生肉の都市伝説は、所詮生肉である。
     ああ、誰か、僕を美味しく焼いてくれないだろうか。
     パリッとした皮、噛めば肉は程よい弾力。口の中に広がる脂の旨味。
     クリスマスの食卓の王者、ローストターキーに、僕はなりたい。

    「七面鳥を焼いてきてほしい」
     神崎・ヤマト(エクスブレイン・dn0002)は、それはそれは真面目に言い放った。
     微妙な表情を浮かべ、沈黙する灼滅者たち。
    「焼き鳥を作ればいいの……?」
    「そうだな、そういう感じだ。
     二メートル級の脚のある鳥生肉のような都市伝説が出現し、ある丘の上で黄昏ている。
     今は食卓を飾るクリスマスの料理を想像し嫉妬しているが、このまま放っておくとどこかのご家庭に突撃しそうでな……」
     鳥生肉が家に入ってくると驚くどころじゃないなぁ、と灼滅者。ふつうにこわい。
     ヤマトは説明を続ける。
     充分なサイキック的な火で灼滅できた時は脚が消え、ただの大きなローストターキーになる。
     炎系サイキックを使わなければ、ただの大きな鳥生肉になる。
    「つまり、脚が都市伝説の本体ということだ。故に! 灼滅すれば食すことができる!」
    「知ってた」とか「そんな気はしてた」とそれぞれに呟く灼滅者。
     されど相手は都市伝説。
     美味しくするにはサイキック攻撃でやっていくしかない。
    「手を掛ければ、奴は美味しいローストターキーとなってくれるだろう。
     スパイスを揉みこみ(閃光百裂拳とか)、炎系サイキックを加えればきちんとローストされるはずだ」
     とはいえ、ただの生肉状態で倒して、普通に調理するのもアリだろう。
     そしてみんなで食べるなりしよう。
    「心ゆくまでクリスマスの食卓を楽しんできてくれ」
     そう言って、ヤマトは灼滅者を送り出すのだった。


    ■リプレイ


    「ターキー希望の都市伝説?」
     屋外調理セットを手に、丘のぼる灼滅者達。
     訝し気な声を上げたのは木元・明莉(楽天日和・d14267)だ。
     気持ちは分かる、と誰かが頷いた。直接教室でヤマトから説明を聞いた時も、情報を改めた今も何言ってんの? 状態である。
    「え? 鳥相手じゃないの? 2メートルの生肉??」
     キョトンとした萩沢・和奏(夢の地図・d03706)は想像してみる。
    「ははは何言っ…………うん」
     その時、都市伝説の姿が見え、どこか信じ難そうな笑いを明莉はスッと引っこめた。
     困り果てた表情を浮かべ呟く松原・愛莉(白き鍵と帰る場所の守り手・d37170)。
    「な、何なのかしらねこれ……」
    「そんなまさ……かの生肉!!」
     え。なにこれこわい。
     和奏も口元に手をあて、衝撃の表情。
     鳥生肉がいた。何か歌っている。
    「るる~♪ マッマ今夜の晩御飯は、なぁに~♪ 今夜はターキーよ~♪ るんるるん~♪」
    「……都市伝説とはいえ、スゴイ見た目だなオイ。うっかり家にでも飛び込んできたらトラウマ負いかねないぞ」
     と、月村・アヅマ(風刃・d13869)は多々あるツッコミ所の中、とりあえずとばかりに一つ選んだ。
    「はっ! に、人間!?」
     灼滅者に気付き、やや仰け反る都市伝説。いや生肉。
    「おぉ~、ワイルド・ターキー! 話は聞いたよっ。食卓の王者、良い心がけだねっ♪」
    「うん、そうだねっ! 食卓の王者は豚……七面鳥だねっ!」
     ミカエラ・アプリコット(青空を仰ぐ向日葵・d03125)の明るい声掛けに続き、久成・杏子(いっぱいがんばるっ・d17363)もまた力一杯の同意。
     豚は良い食材である。
     お財布にも優しく食卓の人気者である。
    「今、ブt」
    「あたいがキミの夢を叶えてあげる! 一緒に美味しくなろうね~っ!」
    「皆の平和なクリスマスを守る為に、全力で攻撃(りょうり)させてもらうわよ!」
     ミカエラと南谷・春陽(インシグニスブルー・d17714)は冷たい手羽を取りぶんぶんと握手。
    「いざゆかん、ローストターキー食卓の頂へ!!」
    「いただきへ!!!」
    「そしていただきます!!」
    「いただかれます!!」
     神凪・陽和(天照・d02848)の声に同調する生肉。
     姉に無理やり連行された神凪・朔夜(月読・d02935)は、やや虚ろな目で生肉を見上げた。
    「これをローストターキーにするの?」
     だが、ファイアブラッド且ついつも腹ペコの陽和なら必ずやり遂げるだろう、と朔夜は呆れ顔で「まあ、頑張るか」と呟く。
    「お望みならば王者に致しましょう! わたしの炎血はこんがりターキーを生む為にあったのだ」
     篠村・希沙(暁降・d03465)たち、ファイアブラッド組はその道の頼もしいプロだ。
     どこから手をつけようと悩む愛莉に、有城・雄哉(蒼穹の守護者・d31751)は生肉を見慣れてきたのか、先程まで浮かべていたげっそりとした表情を引っ込めて、努めて冷静に言う。
    「2メートルは大きすぎるので、まず解体しよっか」
    「はい、頑張っていきましょう。
     肉質といい、色艶といい、良い七面鳥ですね……!」
     スナイパーという立ち位置の精度から、更にバベルの鎖を瞳に集中させた椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)の観察眼。
     総菜屋の父の教えは目利き十年、まだまだ修行中の身と言う紗里亜ではあるが料理の腕は確かだ。
    「よ、よろしくお願いしますぅ。ドキドキ」
     無い心臓部に手羽をあて、その身を差し出す生肉。
     動きは無邪気そのもの。
    「焼かれたい鳥、とか、椎葉先輩の(狂気の)恰好の餌じk……いえ、相手ですね」
     正直な感想を述べる青和・イチ(藍色夜灯・d08927)。
     神鳳・勇弥(闇夜の熾火・d02311)はそっと目を逸らした。
    「……知ってる。七面鳥に名前つけたり可愛がっちゃいけないって」
     後が辛くなるんだ、と勇弥。
    「都市伝説とはいえ無抵抗の肉にどうのこうのするって、若干心が痛むな……」
     と言う榎・未知(浅紅色の詩・d37844)であったが。
    「未知さんの手ェはやる気満々みたいスけど」
     加持・陽司(世界の篝火・d36254)の視線の先には、大きな肉を前にワキワキ動く手。
    「俺、お肉料理だーいすき」
     にこりと笑った未知は、
    「それじゃ、歌うぜ~」
     と、神秘的でイケボな歌声で鳥生肉をリラックス状態へと導いた。
     杏子も一緒に歌う。
     綺麗な音楽を聴かせると肉は美味しくなるのだ。
     神霊剣で筋を断ち、殲術執刀法やレイザースラスト、神薙刃で切り分ければ分裂する都市伝説――ちょっぴり小さくなった。
    「寧ろ肉量は増えているよね」
    「手頃な大きさにするには、どれだけ切ればいいんだか」
     琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・d24803)の言葉に、鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が呟く。
    「まあなんていうかさ、日本で七面鳥って手に入れづらいし、ちょっとサイズがでかいし、食べきるのがきついみたいなね、あるよね。あれもサイズでかいけど。
     でも皆で分ければ、だいじょうぶだいじょうぶ」
     ウンウンと廣羽・杏理(アナスタシス・d16834)が頷く。
    「あの大きさのお肉で、更に増えるとなるとレシピも色々試せそうだね」
     と、三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)。そしてカルラの方を向く。
    「こっちはこっちで準備しておこう。はい、霊撃用の綿棒」
     渚緒に麺棒を手渡されたカルラは戸惑っている様子だったが、やがて口元をキリリとさせて顔を上げた。

    「「「わくわく」」」
     均等に数体。少し小さくなった鳥生肉たち。
     後は手が足りないところを手伝って灼いたり、更に切り分けたり基本ご自由に。
    「注意点が一つ」
     と、鳥生肉に向かってラススヴィ・ビェールィ(皓い暁・d25877)。
    「【炎】は鳥生肉も動かなければ、増えない……分かるか?」
     同時に新たな炎を受けるには行動しないと。
     じわじわ芯まで熱されたい生肉は、
    「「「じゃ~歌おっかな(自単・ヒール)」」」
     と言った。
    「みなさん……これは、クリスマス料理デス。料理は、手際が大事。
     下拵え担当、切り分け担当、火力担当、掛け声担当等々。
     声を掛け合って、美味しく仕上げましょう~!
     では、アクショ~ン!」
     ミカエラはカチンコを鳴らすのだった。


     彼は都市伝説。
     どんな攻撃を受け地面を転がろうとも、都市伝説発生時のまま、清潔さは保たれている。

    「望み通り食ってやろう――下拵えだ」
     大事な手順だ、分かるな? と川内・梛(スロートランス・d18259)が語りかけると、お辞儀する肉。
     capricciosoで特殊な弾丸を一気に撃ち出し叩く梛。
    「俺も叩くねー」
     と、梛の対角から鳩谷・希(ハニーボイス・d20549)が赤色標識にスタイルチェンジさせた交通標識で思いっきり叩いた。
     続いて影を武器に宿し、トラウナックル。
     普通に見切り発生した梛は少し考えたのち、白天牙を構え柄で叩いた。龍の骨をも叩き――斬らない様、叩く強烈な斧の一撃。
    「思いの外、重労働だな」
    「こーち、肉ってどれくらい叩けばいいのかね」
     その時身震いするように生肉。そろそろ……と【ながればし】の面々に訴えかける。
    「ハル」
     と梛に視線で促された春陽はスパイスを手にした。
    「おまかせっ」
    「春陽先輩の味付け楽しみ……はっ、梛先輩、こうみえてわたしも料理は得意ですよ」
     味付けが一番信頼できそうな春陽へ声をかけた梛が、希沙の言葉に目を瞬かせた。
    「希沙も得意だっけ。悪い悪い」
     スパイスを満遍なく付着させた春陽は、都市伝説の本能が清潔さを保とうとする前に烏兎で殴りつけると同時に網状の霊力を放射し、スパイス共々生肉を縛りつけた。
     もういっちょと殴る春陽。命中率が極限に落ちるまで殴り馴染ませる。
    「あ。スパイスのいい香りー」
     ほんわかと希。少しツンとして香ばしい。焼いたら美味しいやつ。
    「それじゃ希沙ちゃん、ローストよろしくね」
    「手(レーヴァテイン)でも脚(グラインドファイア)でも、お好みの焼き方をお任せください!」
     体内から噴出させた炎を拳に宿し、生肉へと叩きつける希沙。炎は生肉に延焼し、燃え続ける。更に加わる炎を纏う激しい蹴り。
     【炎】を増やすため、七面鳥は歌う。
    「しんぐるべーるしんぐるべーる、ジャパン・ロンリネス・タ~キ~」
    「ぽっぽー」
     ちらりと見る梛。
    「あっ、ごめん。なんかトラウマかかってるね!」
     歌詞が物悲しく、希は呻くのだった。

    「みんなァ! 魔導書は持ったか!? 行くぞォ!!」
     椎葉・花色(春告の花嫁・d03099)の声に「お~」と応じる【饅頭】の面々の声色は様々だ。
     日本に来てから七面鳥を食すことも減って、楽しみにしていたフローレンツィア・アステローペ(紅月の魔・d07153)はポンと手を打った。
    「そう言えばあれ、お腹の中に色々詰めるはずですけど大丈夫?」
     と、用意されていた香味野菜とか穀物を持つフローレンツィア。
     皆の美味しく食べたいの言葉を受け、手甲・黒き風のクロウクルワッハで鋼糸を繰り、生肉の開腹手術。
     詰めたり揉みこんだり。
    「馴染ませる時間もいるのだけどね」
    「味付けとか、分かんないけど……へぇ、揉み込むんだ」
     イチはくろ丸を見た。
    「六文銭、最大圧力でよろしく」
     料理場で女子力(六文銭)を披露してみせるくろ丸。
    「くろもがんばろう」
     庵原・真珠(魚の夢・d19620)の言葉にくろも猫魔法でよーく揉みこんでみる。
    「あ、サポートします」
     と、鹿野・小太郎(春隣・d00795)が肉体を彩風で覆い、オーラを放つ。
     良い塩梅になったところで、全書を手にする鳥辺野・祝(架空線・d23681)。
     魔導書を手に鳥生肉を囲う、花色を除く面々――なんかちょっと怪しい儀式っぽくなった。
    「ま、魔法陣描きます??」
     震えた生贄もとい生肉が言う。
     コホンと咳払いした小太郎は、誤解のないよう改めて説明をすることに。
    「国立饅頭図書館から来ました。
     図書館から、魔導書『で』焼きに来ました」
     そして一斉に放たれる物質や霊体を直接破壊する禁呪。広範囲に生肉達を爆破した。
     更に小太郎は炎纏う蹴りを放つ。
    「火力はみんなが何とかしてくれそうっすから、オレは……よし、セイクリッドクロスからでるビームを使おう」
     と藤原・漣(とシエロ・d28511)は輝ける十字架を降臨させる。
     で、ひょいと抱えた。
    「出力弱めにしたら遠赤外線で中までしっかり熱が通る感じの、あのアレになんねっすかね?」
     無数の光線を生肉達へと送る漣。
     サイキック料理――まさに、様々な調理法があり、灼滅者達の研鑚が日々磨かれている証拠かもしれない。
     祝が花結びを繰り、斬弦糸で強火へと導きながら炎纏う蹴り。
     巻き上がる炎を見た花色は少し遠い目になり、体内から噴出させた炎を拳に宿し、生肉へと叩きつけた。
    「ファイアブラッドたるもの、ゲシュタルトバスターなんて軟弱なものは使わずにレーヴァテインで炙ります」
     言った本人魔導書要らず。
    「でもこれじゃあ火力が強すぎるし、一定にするためにも可燃物がいりますよね」
     その時、ハッとする花色。
    「そうだ! 魔導書に火をつけましょう!」
     ?
     教室でヤマトに向けたような目を、花色に向ける灼滅者達。
     スッと前に出たのは、察したイチであった。
    「みんな、アレだよ。お焚き上げの気持ちで……」
     ???
     火にくべられる魔導書。
     何が起こってるの??????
    「いや都市伝説だし、倒さないとアレなんだけどさ。今年最後の仕事が焚書でいいの? ほんとに?」
     祝へ、にっこり笑顔を向ける花色は「炎の翼」を顕現し、周囲の味方に不死鳥の癒し(?)を与える。
    「綺麗だなあ、炎って。列炎なんて駄目ですよねえ、みんな」
     ウフフと花色。
    「ファイアブラッド以外の列炎なんて」
     アハハと花色。
     真ファイアブラッドから垣間見えるアレ。
    「もう一度聞くけど、今年最後の仕事が焚書で大丈夫? 図書館ですよね?」
    「……で、薪は魔導書なの? 祝も言ってるけど本当にそれに疑問はないのね?」
     祝に続きフローレンツィア。
     応じたのは真珠だ。
    「う、うーん都市伝説倒すためだから致し方ないよきっと」
     たぶん、と呟く真珠。
    「オレはもう考えるのをやめました」
     宣言し焚書する小太郎の姿。そ、そうだね。
     とりあえず鳥肉は座った。ぱちぱちと音がする。
    「わぁ……燃えてるぅ……これほんのりスモークされるんじゃ」
    「良いならいいんですけど」
     首を傾げるフローレンツィアは適当な一冊を火にくべ、祝は全書を抱え炎の前で座る。
    「魔導書焼くのはちょっと考えさせてください」
     焚き上げられた魔導書と破魔の力で更に威力を増す炎を見て、ちょっと遠い目になる真珠。
    (「なんか狂気を感じるような」)
     気のせいだという事にしておこう。
    「サバトな感じで歌いましょうか??」
    「や、これ以上カオスなのはちょっと」
     鳥肉の気遣いに漣が丁重に辞退する。
     焚書する炎とジュワジュワ音をたて色の変わっていく七面鳥を囲い、あったかいね、と頷き合う面々。
     魔導書で焼きに来たのに、今は魔導書を焼いている。
    「この魔導書達の犠牲で、明日の饅頭図書館の平和が……」
    「魔導書くんいつもありがとう……」
     しみじみとしたイチと真珠の声がやけに身に染みた。

    「クリスマスには友達とONIKU!!
     一人暮らしの自炊ぢから見せてやりますよっ」
    「頑張ってください!」
     更に殲術執刀法で切り分け、腹を開いてもらった肉が横たわり、朝山・千巻(ヒトノミ・d00396)を応援する。
    「ところで何を入れるんです?」
    「ん? キミには塩やハーブを詰めて……っと、オーソドックスなやつだよ」
     もう一つには、城・漣香(焔心リプルス・d03598)のためのものを。
    「自炊したらオレもモテるかなー」
     ぼやく漣香と、興味深そうに千巻の手元を覗きこむビハインドの泰流。
    「はい、泰流ちゃん次よろしくねぇ!」
     千巻にお願いされた泰流は懸命におまじないをかけて、漣香を見た。メイド服着た泰流をスルー中の漣香であるが、出番がくると灼熱の炎を噴出させた。
    「肉焼き修行の成果見せてもらおうか!」
    「レーヴァで殴りまウォラアア!」
     激しく奔流し舞う炎を拳に纏い、生肉へと叩きつける漣香。
     燃えろよ燃えろと、弾奏パーティーナイトを携行し爆炎の魔力をこめた大量の弾丸を連射。
    「やるじゃーん!」
     褒めれば褒めるほど、漣香の炎は勢いづく。

     たまに多方向からのゲシュタルトバスターで灼かれる鳥肉達。

    「ターキーを美味しく食べる為には下準備が大事だよね!」
     桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)は片腕を異形巨大化させ、凄まじい膂力と共にスパイスを鳥生肉に叩きこんだ。
     正しい女子力(物理)である。
    「焼くのは基本アヅマくんに任せるね」
    「俺レーヴァテイン使えるしな。焼くのは任された」
     頷くアヅマ。
    「ちょっと焦げてるかもしれない位によく焼いたお肉が自分は好みです! よろしくね!!」
     それを聞いて、もっかい【風刃・級長戸辺】を持つアヅマ。
     清浄な風を纏う大剣が彼の魂を燃え上がらせていく。
    「でも火力足りなかったら、ちゃんとお手伝いするからね!」
     ガトリングガンを担ぎ、鬼神変を叩きこむ夕月。武蔵坂学園らしい女子の在り方であった。
    「さて、そこな七面鳥。美味しく焼かれる準備はOK?」
    「おっけ~♪ どんばんぼおっとコイ!」
     体内から噴出させた蒼炎を宿し、鳥生肉へと叩きつけるアヅマ。蒼炎は生肉へと延焼し、燃え続けた。
     生肉を灼いていくと、身は程よく締まり、香ばしい肉汁が溢れ出てくる。

     異形巨大化した鬼腕と、白銀のオーラを拳に集束させ凄まじい連打で朔夜がスパイスを叩きこむ。
     少々渋い顔をしているが、なんだかんだと手助けしてくれる弟を目に陽和はにっこり。
     白炎を放出し自身含めた中衛の力を高めていく。
    「そろそろかな?」
     と朔夜。
    「ほな、燃やそうかぁ」
     のんびり言った伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)に、
    「……って焼くの待って待って!!
     香味野菜詰めればもっと美味しくなるって!」
     同じく薄青のオーラを手に集束させて、凄まじい連打でスパイスを叩きこんでいた雄哉が灼滅者達に声を掛けた。
    「はいっ、雄哉おにいちゃん、野菜の準備できたわよ!」
     愛莉が、炒めたジャガイモや玉ねぎ、マッシュルームを持ってくる。
     スパーッと肉を開けば、むずがゆいのか、生肉はくねくねした。
     動かれるとやりづらい……そう感じた雄哉は生肉を抱えた。
    「愛莉ちゃん早く香味野菜詰めてー!!」
    「しっかり抱えていて!」
     炒めた野菜をずぼっと詰めて。
    「準備おっけーよ」
     それじゃあ、と朔夜は陽和が燃やしやすいように対具「鳳」で影縛り。
     天つ風の靴を摩擦させその脚に炎を纏わせた陽和が鳥生肉を蹴り上げた。
     続き、体内から噴出させた炎で一撃を叩きつける。
     炎纏って攻撃すればするほどに、都市伝説は応えてくれる――良い匂いと共に。
    「お肉の香り!」
     わくわくと叩く陽和。
     ばんばん炎付与するよ!
    「……ってこれで作り方、本当にいいんだろうか」
     ローストされゆくターキーへ雄哉。
     都市伝説は、手羽を胸に当てしっとりと答える。
    「生肉じゃなくなっていく感覚――これで、いいんです」
     そ、そうか、と雄哉は頷いた。
     愛莉も炎纏う蹴撃でローストのお手伝いだ。
    「こんがりいこかぁ」
     闘気を雷に変換して拳に宿した雪華が腰を落とし、鳥生肉に突き上げる一撃。
    「あ、冷凍して持ち帰りたいんやったらフリージングデスもあるかいなぁ」
    「その手もあるね!」
     と日向・草太(中学生神薙使い・dn0158)が手を打ち、奥が深いなぁと言った。
    「なるほど。小分け分裂させて、お持ち帰りの手もありますね」
     紗里亜が呟き、杏子も頷く。
    「何体かお持ち帰り、してもいいなのっ」
    「ならば――気合い一閃、居合斬り!」
     脇差は月夜蛍火を納刀状態から一瞬にして抜刀し、生肉をたちどころに斬り分けた。
    「そんじゃま、もーちょいサイズダウンしとこうか。この辺」
     と明莉がオーラを纏えば桜の花弁が舞い散るよう。
     拳に集束させ、千切るが如くの凄まじい連打を叩きこめば、新たな生肉。
     いつも通り、脇差と明莉の二人は得意な攻撃を繰りだしているが、カラスとペンギンの着ぐるみ姿である。……いつも通り。
     現場は丘上なので、転がっていかないよう重々に注意して。
     激震でぺちぺち叩き旨味を引き出す明莉。
    「下拵えなら先ずはブライン液かね」
     羽を顎に当て、脇差。
    「塩水に漬け込む事で、焼く時の肉汁流出を防げるぞ」
     塩水は中性であるが、やってやれないことはないだろうと、デモノイド寄生体で生成を試みる脇差。ダメージ+【塩水】。
     そして閃光百裂拳でバターとスパイスを叩きこむのを、未知が楽譜のような影で鳥生肉をキューッと縛り上げて、サポートしていた。
    「肉汁を零さないように、食パンで塞げ~っ♪」
     とミカエラが鋭い銀爪で食パンを捻じ込む。
     生肉を全体的に見て、
    「もうちょっと小さくていいかな?」
     大地に眠る有形無形の『畏れ』を纏い、斬撃を放つ。
    「加具土も切り分け……ってつまみ食いは後でな!?」
     勇弥は加具土の咥える斬魔刀が濡れ濡れなのを見て思わずツッコミ。涎が伝っているので、拭ってやった。
     【糸括】は色々自由に生肉を調理している様子。
    「杏理、投げるよ」
    「どうぞどうぞ」
     輝乃がスパイスを投げて杏理が鬼神変で、イイ感じに叩きこむ。
    「そこにぎゅ~っと☆」
     和奏が鋼糸を巻き付けて、肉を絞める。また叩く。
    「よいしょ、と」
     渚緒が手にしたのは殺人注射器。
     様々な「サイキック毒」を自動精製する呪われた注射器の中身は、しょうがとみりんに味噌を合わせた調味料になっている。
     殺人もとい味付注射する渚緒。ダメージ+【調味料】。
    「なんか、うん、灼滅料理人って感じだな」
     奥深い世界に、未知が呟く。
     麺棒握ったカルラが霊撃を叩きこみ、味を染み込ませていった。
    「しっかり焼けば西京焼きになるかな、って。
     調味料に大蒜を追加して、甘辛焼きも出来そうだ」
     と、イイ笑顔で渚緒が言った。
    「お手伝いするねっ」
     虹色と青のスニーカーに虹色の炎を纏って、杏子は鳥生肉(西京焼き行)を蹴り上げる。
    「きちんと、おいしく食べるから、安心してね?」
     肉は手羽をぱたぱたさせた。
     他の面々も灼く頃合い。
    「ここはお任せをっ! ファイアブラッドの陽司! ですので!!!!」
    「加持くん、息を合わせていくよ!」
    「勇弥さん、お先にどうぞ! お手並み拝見!」
     己の血を燃えたぎる灼熱の炎に変える二人。
     勇弥はWorter-Kerzenstanderも手に、中まで火が通る様にじっくりと。
    「ふむふむ」
     掌から激しい炎の奔流が起こり、陽司の拳に集っていく。
     とりあえず、という感じの攻撃を繰り返せば、やがて料理の手応えを感じてきたのか、自らの炎を自在に繰るファイアブラッドの姿。
     拳に炎を、生肉に炎を。灼滅者の攻撃に都市伝説はちゃんと応えてくれる。
    「都市伝説なのにやたらいい香りがするなあ」
     杏理が炎纏って月の刃で蹴り上げる。
    「一緒にじんわり遠火で炙っていきますよー」
     和奏が炎の花を飛ばす。直火な炎纏う蹴りは勿論のこと、斬弦糸で火力もアップさせて。
     白い炎に包まれる輝乃は七面鳥を見つつ、移動する。
    「戦闘の時より当てる部分に気を使うね、これ」
     ふわりと浮くfamilia pupaが光線を放ち、皮をパリッとさせようと頑張っている。
    「……あ、サイキック使ってるからお腹が空いてきた」
     じゅわじゅわ。
    「しかも目の前でいい匂いがしてきているから、余計に……」
    「ね~。あ~めっちゃ良い匂いがするんじゃあ~」
     影縛りした肉をちょっと傾ける未知。そこを灼く輝乃。
    「ああ……良い匂いがしてきましたネ。おいしいターキーになぁれ♪」
     香りで口が緩くなりそう。和奏の目は輝いている。
     糸括が作る肉は数体。
     それらが轟々と炎を纏っていて、火祭り会場のよう。たまに魔導書の爆破もくるし。
     ――だから、しょうがない事、だったんだ。
    「おや、あの鳥は……」
     杏理は目を細めて、じいっと見つめた。
     炎の奔流を叩きつけようとする陽司――焦げた匂いを発生する丸い物体が、バッと避ける。
    「……って、俺まで燃やすなよっ? 燃やすなら、あっち!!」
    「あ! 鳥かと思ったらあかりんだった! 危ない! 巧みな炎テクニックで隣の黒い鳥にズラすぞ! ――うおおこの鳥脇差さんやったわ!」
     ペンギン羽が指した方向に素直に従った陽司は、カラスに炎をぶち当てた。
    「ってこっちかよ!?」
     ダメージは入らないが、普通に熱くて炎だし、まあ焦げるよねっていう。
     こんがり焼かれつつあるカラスだが、まあ黒だから、焦げても多少は大丈夫。見た目変化なし。
    「焼き鳥ですね」
     観察する杏理の視界では、転がって炎を消すペンギンとカラスの姿。
    「って脇差ー!?」
     虹翼の守護帯を射出した輝乃はカラスをコンロ地帯から救い出す。
     そしてペンギンは、ようやく俊敏に動けない&着ぐるみ直ぐに脱げないことに気付き、ウサギ変身して抜けようとするのだが――。
     たしん、と側にきた加具土を見上げるペンギン。我慢し続けているわんこの輝くつぶらな瞳。
    「……いや、やめとく」
     呟いてペンギンはローリングし、炎地帯から抜け出た。
     丘ではあっちこっちから良い匂い。
    「美味しくなあれ♪」
     とミカエラが掛け声をかければ、炎攻撃しながら「美味しくなあれ」と掛かる声。
    「「「美味しくなあれ♪」」」
     都市伝説達も、歌で自ら炎を増やしていく。

     仄かに空が暗くなり、家々が灯されていく時間帯。
     その中で煌々と輝く丘は、一番輝いている。
     クリスマスイブ。この日、生肉だった七面鳥は、立派なローストターキーになった。


     灼滅手前、自ら大きな皿に乗った七面鳥達は、立派な食卓のメインとなっていた。
    「お前を食べ……の希望を叶える為に、こんだけ沢山の人が(大体焼きに)来てくれたんだ」
     ふっ、と朗らかな笑みを浮かべた明莉に、感無量の表情(顔ないけど)を向ける七面鳥達。
    「「いただきます」」
    「「いただかれますー!」」
     最後の仕上げとばかりに、斬り分ける灼滅者。
     都市伝説灼滅の瞬間であった。
    「美味しそうにできましたーっ!」
    「料理上手な灼滅者に会えて良かったですねえ――鳥肉も本望でしょう」
     ぱりっとじゅわっと。
     そんなローストターキーにミカエラと杏理が言う。
    「皆さんで美味しくいただきましょうね」
     34人分の紅茶を用意し、愛莉がにっこりと笑顔。

    「焼け……たわね。ええ」
     フローレンツィアが七面鳥を前に、呟いた。
    「わぁい美味しそうに焼けましたね」
     出来上がったものを見て、小太郎。もう一度言う。
    「焼けちゃいましたね」
    「ああ……焼けたね……」
     小太郎とイチは、そっと目を逸らす。
    「うん、きれいに焼けたね」
     焚 書 で 焼 い た 鳥 。
     真珠は言った。
    「いや、おいしければいいんだ」
    「わっ、思いのほか上手く焼けましたね!?」
     灰となった魔導書を目にした後、ぱあっとした表情の花色が言った。
    「うんうん、我々ずっとこのサイキックらと遊んできたんですもん!
     まだまだ可能性がありますよ、これは……!
     みんな! これからもこうしてたまに集まって魔導書を焼こうね!」
     にっっこりと花色。
    「ま、まぁ美味しくできたら、頂きます!」
    「労働した後のごはんは美味しいよな!
     いただきます!!」
     振り切るように漣、そして祝がぱんっと手を合わせた。
    「花色? レンは焚書よりお食事にでも誘ってもらう方が嬉しいわ」
     やわらかお肉を食べ、フローレンツィアは言うのだった。

     漣香は目前の食卓に首を傾げた。
    「なんでオレのと二人の別々にしてあんの?」
    「あ、漣香くんはそっちのねっ」
     ええ? と千巻と泰流を見る彼は、あ、と気付いた。ポテチとかスナック入ってる、これは美味いやつだ、と喜ぶ漣香。
     さっそく、
    「いただきまっギャアアア!
     なにこれからっ、ひど、なにこれ水、水は」
     悶える漣香の横で、キャッキャッと千巻と泰流はじゃれ合っていた。
     入っていたのは激辛スナック。目に染みて涙も出てくる。
    「あはは、ごめんごめん。はい、お水。
     ちゃんとプレゼントもあげちゃうってば」
     そう言った千巻がじゃじゃーんと出したのは、
    「ちぃちゃん手書きの自炊レシピ集っ。嬉しい? 嬉しくない?」
     にひっと小憎可愛らしい笑顔で千巻。
     開けば、一人暮らしでも安心レシピがたくさん。
    「今度何かごちそうしろよぅ? 後輩クンっ」
    「うー……オムライスくらいは披露できるよーになる」
     目を擦りつつ、漣香は呟くように言った。

    「日向は改めてお久しぶりさん。うずめはんの時以来やな。あん時はサポートあんがとな」
     元気しとったか? と、ほい、とローストターキーを渡す雪華。
    「えぇ塩梅にできとるでぇ」
     と雪華はにこりと笑顔。
     同時に肉にかぶりつけば、ジューシーな肉が口の中に広がった。
    「あの時は、後のことも大変だったねぇ」
     と草太。
     おー、と雪華が思い馳せるのはうずめ様のこと。うずめ様と呼ばれ、名の分からぬ少女のこと。
     邂逅する日はあるのだろうか、と先の未来を考える。
     しかしそれも一瞬で。
    「しっかし、身長えらい伸びとるなぁ。これ、うちも抜かされるやもなぁ。
     どや? 成人したら一緒に酒でもどうけ?」
    「ええよお。一緒に飲もー」
     と雪華を真似して、草太が応えた。その頃にはまた新たに、振り返り話すことが沢山できているだろう。

     見事なローストターキー。
     一般では見ない大きなそれに、朔夜は目を丸くした。
     いただきますをして食べれば、
    「ん~~、極上っ♪
     動いた後だから、なおさら、美味しいね」
     と陽和が笑顔で朔夜を見た。
     皆で倒した都市伝説。その成果は美味しいもの。

    「んん、実は七面鳥初めて食べました……美味しいねぇ」
     シャンメリーやケーキでクリスマスの食卓。
     夕月の言葉に、ふとアヅマも気付く。
    「そういや俺も七面鳥食べるのは初めてだ」
     初めての肉を共に食べる――クリスマス。夕月は微笑んだ。

    「おおー……俺ホンモノのローストターキー見るのって初めてかも」
     希はハッとする。
    「ちょっと待って写真撮るから」
     丘には様々なターキーが鎮座していて、希は駆け回る。
    「あっ、クリティカルの味」
     少しだけ焦げているけれど、希沙の炎でローストされた肉は美味しい。
     皮はパリッと、肉汁の旨味、スパイスも効いて。
     サイキックで出来たローストターキーの味は、灼滅者にしか出せないものだ。
     笑顔で希沙は言う。
    「ええな、こういうの。春陽先輩お代わりしませんか!」
    「さっきたくさん動いたから、おかわりしても大丈夫でしょっ」
     そう言って肉を取り分けていく希。
    「し、仕方ないわね。きさちゃんがお代わりするなら私も!」
     春陽のダイエットの言葉は明日のさらに明日にぶん投げて。
     楽しい時間は過ぎていくもの。
    「寒いな」
     冷え込んできた空気に、梛。
    「あれ、梛先輩寒い? ハグしましょか」
     両腕を広げた希沙に、梛は仰け反ってみせた。
    「わたしだけやないですよ――ね、春陽先輩、ポッポー先輩!
     梛先輩に突撃ー!」
    「お、おい、待て」
     梛の言葉虚しく。
    「おっけー。それじゃ、お前をぬくぬくにしてやろう。突撃!」
    「突撃!」
     続く希と春陽。
     ハグだかおしくらまんじゅだか分からないそれに潰されながら、梛は爆笑する。
    「はは、ほんと飽きねぇわ」

    「ありゃ、こんなとこにローストから免れた普通の肉が……」
     未知が見つけたもの。
     それは皿にちょこんと鎮座する普通の生肉達。
    「これはこれで別の料理を作るのも良いかもね――ってことで、紗里亜さーん」
    「みっくん? あっ、はい、お任せですよ♪」
    「はい! あたし、チキンスープ、作りますっ」
     笑顔でエプロンの紐を蝶々結びにしながら言う紗里亜と、挙手する杏子。
    「戦闘(料理)開始です♪」

     鳥肉に、コンソメと生姜を少し加えて、ことこと煮込む杏子。
     骨もちゃんと出汁にして。
     味付けは塩と胡椒だけ。
    「お肉本来の味をね、大切にしてるの」
     天使の様な笑顔で、杏子。都市伝説いたらたぶん感激して泣いてる。
     ローズマリーを添えて、香り爽やかに。
    「はいっ、完成っ。焼くだけじゃない食べ方もね、いいって思うの」
     丸焼きをスライスし、盛り付けで彩りを添える勇弥。
     調理し、給仕をし、という立ち回り。板につく洗礼された動きだ。
     紗里亜は調理をメインに。
     その手際は良く、あっという間に品数が増えていく。
     つくね、鳥わさ、照り焼き、唐揚げエトセトラ。
     彼女が思いつく限りのレパートリーを披露するのを輝乃が見つめる。
    「紗里亜の料理の種類は本当にすごい。色々と参考になるよ」
    「たくさん食べてくださいね」
     いっぱい食べる予定の輝乃、こくりと頷く。
    「あ、カレー味もあるよ」
     と、渚緒。カレー粉を叩きこんだ七面鳥で、鍋にはチキンカレー。
    「ご飯炊けたよ。食べたい人はいるかな?」
     と尋ねる勇弥に【ながればし】の面々が一斉に挙手した。
    「武士の情けだ。流れた血(肉汁)の一滴も無駄にはしない」
     小鍋に取ったそれを脇差はグレイビーソースにして、勇弥へ。
    「あら、こいつぁ良い下味が。誰か良い感じにしてくれたんです?」
    「味付けが色々ありますよね~。特徴でてるっていうか」
     陽司と和奏が利きターキーをしつつ。
     食後には勇弥のカフェオレをいただき。
    「ごちそうさまでしたっ」
     と、雄哉。
     美味しければすべて良し、と彼は目を瞑って合掌した。
    「今年ももうすぐ終わりやな。ま、来年も宜しゅうなぁ」
     ニコニコと、雪華が言った。
     これからも灼滅者の戦いは続くだろうけれど、いつかは。
     明けない夜はなく、迎える朝はどんなものであろうか――。
     この日の様に、笑顔あるものとなりますように。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年12月24日
    難度:簡単
    参加:33人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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