●2028年:都内某所
その樹の前で愛を誓うと、永遠に結ばれると噂されている伝説のクリスマスツリーがある。
毎年、このクリスマスツリーの前でカップル達が愛を誓い、幸せな一時を過ごしているのだが、今年は何か……違っていた。
●秘密基地っぽいトコロ
「何っ!? 伝説の樹だと!?」
「そんなモノ、この世に存在してイイ訳がねぇ!」
「俺達がどんな思いをして、クリスマスを過ごしているのか、まったく分かっちゃいねぇ」
「構わん、倒せ! 倒せ! 倒せ!」
作戦の決行は、クリスマス前。
目的は、ただひとつ。
クリスマスツリーをぶっ倒し、クリスマスをぶち壊す事が目的ッ!
手段は択ばず、邪魔する奴等は、すべて蹴散らす!
そして、自分達の恐ろしさをカップル達の心に刻み付ける。
実にシンプル!
……ただ、それだけ。
その目的を果たすため、殺気立っている者達がいた。
●カップル達が集まるバー
「……という噂があるんだが……」
「うわ……、ヤバイね、それ」
「そんな奴だから、いつまで経っても、一人なんだろうね」
「まあ、俺達のラブパワーで、そいつらを纏めて蹴散らしてやろうじゃねーか!」
一方、不穏な噂を聞いたカップル達は、彼らに御仕置きするため、あれこれと作戦を練っていた。
もう二度と悪さが出来ないようにするため……。
彼らにゴメンナサイと言わせるために……。
●クリスマスツリー前
「公平は知ってる? ここのツリーには恋愛成成就の噂があるネ」
諸葛・明(三国志アイドル・d12722)は片桐・公平(d12525)の左腕にしがみつき、さらに左手を絡ませてイチャイチャしながら、伝説のクリスマスツリーを見上げていた。
このクリスマスツリーの前で愛を告白したカップルは、永遠に結ばれると言われているせいか、まわりには沢山のカップルで溢れていた。
しかも、クリスマスツリーには願い事が掛かれたオーナメントが吊るされており、意味ありげに賽銭箱まで置かれていた。
その上、クリスマスツリーがある公園は、ホテル街のド真ん中。
故に、カップル達が集まるのもごく自然の事だった。
「……『永遠に結ばれる』って、私達は既に結ばれているではありませんか」
公平がまったく興味がない様子で、さらりと答えを返した。
元々、迷信は信じない質である上、既に恋仲である事もあってか、余計に興味を持つ事が出来ないようだ。
そんなモノよりも左手薬指に光るシンプルな指輪の方が、何百倍も信頼する事が出来るだろう。
「……って、そう言う意味じゃなくて!」
明が『それとこれとは別!』と言わんばかりの勢いで、公平に自分の想いを伝えようとしたが、まわりが騒がしいせいで、重要な言葉が何ひとつ届かなかった。
「それにしても……恋愛成就の噂がある割には、ずいぶんと騒がしいですね」
公平が、ただならぬ気配を感じ取り、警戒した様子で辺りを見回した。
何やら空気がピリピリする。
先程とは異なり、異常なほど空気が……重い。
そんな空気を振り払う勢いで、公平が吸い込まれるようにして、明のキスをしようとした。
「イタッ!」
次の瞬間、明の頭に空き缶が当たり、せっかくのムードが台無しになった。
「もう怒ったアル!」
これには明もブチ切れ、空き缶が投げられた方向に向かって、ズンズンと歩いていく。
「行ってしまいましたか。……私も久しぶりに体を動かしたくなりましたね」
公平も静かに怒りをあらわにしながら、明の後を追うようにして、ゆっくりと歩き出した。
●クリスマスツリーの真下
「ふふふふふ、この日のために見つけておいた甲斐がありました……」
富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)はクリスマスツリーの真下にあるトンネルの中で、不気味な笑みを響かせた。
このトンネルを見つけたのは、数週間ほど前。
既に閉鎖されていたものの、その方が良太には都合が良かった。
頃合いを見計らって、根元からズドン。
それですべてが終わる、何もかも……。
「ふふふふふ……ふわっはっはっはっ!」
良太が高笑いを響かせ、トンネルの上を壊していく。
少し卑怯な気もするが、それさえも今は褒め言葉。
これで長年の悲願が……叶う!
その一心でガコガコとトンネルの上を削っていくと、ゴゴゴゴゴォッという音と共に、クリスマスツリーが……真下に落ちた。
「うわわ!」
それに驚いた良太が全身に鳥肌を立たせ、その場からひょいっと飛び退いた。
次の瞬間、大量の土煙が舞い上がり、良太の身体を飲み込んだ。
●クリスマスツリー絶倒隊
遡る事、数分前……。
「みんな! リア充爆発! このきせつがやってきたじょ。何処も賢も幸せなカップルばかり……。故に、救われなければならぬ。 立て! リアルに叫ぶ者達よ。ここでクリスマスツリーを倒さねば、末代のはじだ」
鑢・琳朶(残念系稲荷姫・d32116)は非リア充達を前にして、声高らかに訴えた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
まわりにいた非リア充も興奮した様子で、高々と拳を突き上げた。
彼らにとってリア充は敵ッ!
滅ぼすべき存在!
それ故に、クリスマスツリーは、悪の象徴ッ!
しかも、ホテル街のど真ん中に立っているのだから、倒してくれと叫んでいるようなモノだった。
「それじゃ、幸せなカップルに鉄槌を下すため働きますぅん」
鳳凰寺・四季(小学生シャドウハンター・d38882)も非リア充達を嗾けるようにして、先陣を切ってカップル達に突っ込んでいく。
熟女のような体に改造され、琳朶に助けられるまで愛を知らなかった故に、ここで憂さ晴らしをするために……。
そして、戦いが始まった。
決して負ける事の出来ない戦いが……!
●クリスマスツリー守備隊
一方、その頃……。
「今年は大豪院先輩と過ごす初のクリスマスじゃ。カップルの誓いの場所を荒らすやからは、許さんぜよ」
鑢・凍華(炎拳・d36691)は悪鬼のようなオーラを纏い、クリスマスツリーの前に立っていた。
そのせいか、何やら場違いな雰囲気が漂っているものの、これもクリスマスツリーを守るため……。
そのためであれば、命懸けでクリスマスツリーを守るつもりでいるようだ。
「そういえば……初めてですね」
大豪院・麗華(神薙使い・dn0029)が、恥ずかしそうに頬を染める。
冷静になって考えると、初めてのクリスマス。
それがこんな事になっているのだから、凍華が怒るのも無理はない。
むしろ、怒らない方が無理である。
そんな一面を見る事が出来たせいか、ちょっぴり嬉しいやら、恥ずかしいやら、感情の行き場を無くして、わたわたしてしまう程だった。
「今年もクリスマス……。今さら言わないが独り身でもカップルの愛はまもるぜ」
そんな中、イヴ・ハウディーン(ドラゴンシェリフ・d30488)が、拳をギュッと握り締める。
こんな事をしているのも、琳朶がイタズラしないようにするため。
そのためであれば、例え独り身であっても、クリスマスツリーを守る側で戦わねばならないと言う使命感があるようだ。
「クリスマス、めちゃくちゃにする人……許さないの……」
シャオ・フィルナート(愛と天然の猫戦士シャッフィー・d36107)もその流れに乗って、正義の味方っぽく呟いた。
それに今日のシャオは10年前とは、一味違う!
魔法少女には魔法服、サンタさんにはサンタ服といった戦闘服(?)があるように、まん丸ヒヨコの着ぐるみを着たシャオは無敵なのである……!
そういった事を踏まえた上で、10年前に着ていた着ぐるみが、未だに着れた事に関しては、なるべく考えないようにした。
(「それにしても、妙だな。良太が何処にもいない……」)
そんな中、竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)が小さなツリーに偽装し、クリスマスツリーの傍に立っていた。
そろそろ、良太が現れてもいい頃なのだが、何処にもその姿が見当たらない。
そうしている間に地面がゴゴゴゴゴォと揺れ、非リア充達が唸り声を上げて襲い掛かってきた。
「クリスマスツリーを倒すなー!」
すぐさま、ジヴェア・スレイ(ローリングエッジス・d19052)が両腕を広げ、コマのように右回転しながら非リア充達を弾き飛ばしていく。
「必殺、ぴよぴよあちゃ……アターック」
それに合わせて、シャオも左回転でクルクルと回り、非リア充達に当てっていく。
「うくっ! うわああああ!」
その一撃を食らった非リア充達は、ボーリングピンの如く勢いで、ワラワラとその場に倒れていった。
「あーれー目が回るーのー」
だが、勢いよく転がって言ったせいで、シャオも無傷では済まなかった。
目をグルグルと回しながら、羽根部分をパタパタ。
世界が回る、グルグル回ると言わんばかりに目を回した。
「……って、きゃあ!?」
そんな中、麗華がジヴェアとぶつかり、回転しながら派手なTフロントTバックレオタードに着替えさせられた。
これには非リア充達も、ガン見。
「……と言うか、見たらいかんぜよ!」
それに気づいた凍華が慌てた様子で麗華に抱き着き、非リア充達の熱い視線から彼女を守るのであった。
●クリスマスツリー傍
「……たくっ! この忙しい時期に。もう少し心に余裕を持つ事が出来ないのかねー」
佐藤・誠十郎(大学生ファイアブラッド・dn0182)は呆れた様子で、騒ぎのある方向を眺めていた。
何やら『クリスマスツリーを倒す』側と、『クリスマスツリーを守る』側でモメているらしく、あちこちから騒がしい声が聞こえてきた。
しかも、突然の地鳴り……。
何となくクリスマスツリーが低くなったような気もするが、おそらく気のせいだろう。
「リア充爆破しろって言うけどさ。その熱を別方向にいかせたらモテたんじゃないかな? まあ、しょうがないから止めにいくか。な、誠十郎」
井之原・雄一(怪物喰いの怪物・d23659)がサクッと気持ちを切り替え、誠十郎に視線を送る。
「……たくっ! 拒否権はナシかよ。まあ、これも何かの縁か」
誠十郎がやれやれと言わんばかりに溜息を洩らし、もふりーと状態になると、雄一を背中に乗せて騒ぎのある方向に向かうのだった。
●そして、戦いが終わり
「はあはあ……酷い目に遭った……」
命辛々トンネルから逃げ出した良太は、崩れ落ちるようにして、その場に座り込んでいた。
クリスマスツリーが落下したのと同時に大量の土煙が舞ったため、呼吸困難で死にかけていたらしく、全身泥だらけになっていた。
(「……見つけた!」)
それに気づいた登が、痺れ吹き矢を良太に御見舞い。
「う……くぅ……」
良太は訳も分からず意識を失い、眠るようにしてばたんきゅー。
「だ、誰か……起こして……」
その間もシャオが着ぐるみ姿で、羽根部分をパタパタさせていた。
「あ、ついウッカリ……」
それに気づいたジヴェアがシャオを抱き起こし、お詫びとばかりに特製のスモアメレンゲパイを手渡した。
よく見れば、守備隊として参加した仲間達も、同じようにパイを食べていた。
「お前ら、そこに並べ!」
そんな中、明が非リア充をズラリと並べ、こんこんと説教をし始めた。
その中には何故か守護隊のメンツも混ざっていたが、明にとっては同じようなモノのようだ。
「とりあえず、非リア充は簀巻きにするぜよ」
凍華もプンスカと怒りつつ、初めての共同作業と言わんばかりのノリで、非リア充を簀巻きにした。
「んじゃ、コイツらはツリーにぶら下げておくぜ!」
イヴもノリノリな様子で、簀巻きにされた非リア充達を、クリスマスツリーに吊るす。
吊るされた非リア充達はぷらんぷらんと揺れながら、何やら呪いの言葉を吐いていた。
だが、その言葉を耳にした途端、明がジロリと睨んだため、次第に小声になっていき、最後には謝罪の言葉に変わっていた。
「それにしても、自分が独り身だからって、クリスマスツリーを倒そうとしたら駄目だろ。男同士でもこういう風なリア充になれるんだからさ」
雄一が非リア充達に見せつけるようにして、元の姿に戻った誠十郎とイチャついた。
「いや、それはそれでマズイだろ」
誠十郎が困った様子で、ツッコミを入れた。
……とは言え、まわりに薔薇の花が咲く分、清い関係……。
……ん? 清い関係……なのか?
何やら不安な気持ちになったものの、既に足を踏み入れた側の人間からすれば、別に悪いモノではない。
だからと言って、人に薦めていいモノかと言えば、そうとも言えない感じがした。
「それじゃ、私達も先程の続きと行きましょうか?」
公平が何やら察した様子で、優しく明に声を掛けた。
明は未だに興奮している様子であったが、公平の顔を見て、とりあえずふぅーっと深呼吸……。
気持ちを切り替え、デート再開である。
「どうやら、作戦成功のようですね」
その間に四季が丸太を身代わりにして、クリスマスツリーの後ろに隠れた。
「今のうちに連れていくじぇ!」
次の瞬間、琳朶が凍華を抱え上げ、ホテル街に向かおうとする。
「させるかああああああああああああ!」
それに気づいたイヴが琳朶の行く手を阻み、バチバチと火花を鳴らす。
両者一歩も動かず、睨み合い。
先に動いた方が負けと言わんばかりに、緊迫した空気。
「はい、そこまでです! みんな仲良くしましょう。せっかくのクリスマスなんですから♪」
そんな空気を振り払う勢いで、麗華がジヴェアから受け取った特製のスモアメレンゲパイを仲間達に配るのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2018年12月24日
難度:簡単
参加:11人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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