Last Christmasの音色に揺れて

    作者:幾夜緋琉

    ●Last Christmasの音色に揺れて
     2018年、クリスマスの音色が町中で聞こえる日、12月24日。
     武蔵坂学園のある食堂では、この時季だからこそ行われるイベント……クリスマス。
     大きなクリスマスケーキと、シャンパン、ローストチキンに ブッシュドノエル……等々、クリスマスを彩る食べ物と飲み物が食堂に並ぶ。
     そして、部屋の中を仲間達と共に飾り付けているのは、クリス・ケイフォード。
     同級生のみならず、灼滅者として共に力を合わせて戦い、喜び、泣いた仲間達と共に……2018年のクリスマスの準備中。
     ……と、そんな準備中の、クリスマスパーティー会場の食堂のドアが開く。
    「……あ、来てくれたんだね? みんな」
     訪れてくれた皆の顔に、ニコッ、と笑みを見せて。
    「多分、こうしてみんなで集まれるのも、あともう少しになっちゃうだろうから……今日は、みんなとクリスマスパーティーをしたいな、って思ったんだ」
    「折角の一時だし、みんなと一緒にクリスマスの一時、楽しみたいんだ……ねえ、いいよね?」
     と……くすり、と悪戯っぽく笑うクリスが、皆の手を引いていく。
     みんなで集まっての食堂での最後のクリスマスパーティーが、楽しく始まるのであった。


    ■リプレイ

    ●心に残るクリスマス
     12月24日、クリスマス。
     武蔵坂学園も、クリスマスを祝う為に学生メインでイベントをしたり、クラブの面々でパーティーをしたり……と、楽しむ人々の笑顔が包む。
     ……そんな2018年のクリスマス、クリス・ケイフォード(高校生エクソシスト・dn0013)が招待状を出したこの食堂には、大きなクリスマスケーキをメインに、シャンパン、ローストチキン、ブッシュドノエル……等々、クリスマスを彩る食べ物、飲み物が並んでいた。
    「……ふぅ、うん。これでいい、かな?」
     と、並ぶクリスマスの彩りに、頷くクリス……と、その時ドアの開く音。
    「……ん、あ。みんな、来てくれたんだね?」
     笑みと共に、やって来てくれた仲間達を迎え入れる。
    「久しぶりだね、クリス君。もう、大丈夫かな?」
     と、浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)の言葉にクリスは頷き。
    「うん、大丈夫だよ。ほら、入って入って」
     と手を引く。
     そして、その後ろにいた紅羽・流希(挑戦者・d10975)も。
    「それでは、お邪魔しますねぇ……これ、クリス君が用意したのですか? ……大変だったでしょうねぇ……」
    「そんな事無いよ。だって、みんなと一緒に、クリスマスを過したかったし……クリスのクリスマス……ってね」
    「ふふ……クリス君も、中々言う様になったね」
     軽く頭を撫でる梗香に、目を細めつつ。
    「もう……僕ももう、高校生だよ? 子供扱い、しないで欲しいな」
     と言いつつも、全然嫌そうではない。
     ……とは言え、梗香にとっては少し大人になったとしても、何か子供のような感じがするのは、昔からの癖、というか……。
    「ああ、ごめんね。やっぱり、最初に出逢った頃は妹と同い年という事もあって、何だか弟みたいで放っておけない……そんな感覚が抜けなくて。思えば、長い付き合いになったね」
    「そうだね。6年位……だったかな?」
    「うん。もう私の妹も高校生になって、独り立ちの時が近づいているし……クリス君も、いつの間にか、大きくなったね。背丈も追い越されてしまったし、あの頃は、こんなに小さかったというのに……」
     眼を閉じ、その頃を思い返す梗香、そして流希も。
    「そうですねぇ……本当、クリスさん、大きくなりましたねぇ……でも、紳士な雰囲気は変わりませんし、格好良いと想いますよ……」
    「ああ……すまない、もう一人前だと言うのに、いつまでも子供扱いは出来ないな。クリス君、今日は宜しく頼むな」
    「うん……ありがとう」
     頬をぽりぽりと掻いて、ちょっと照れるクリス。
    「と……そろそろ始めようか。折角のクリスマスパーティーだし、料理も色々用意したんだよ。食堂の人にも協力して貰ったんだけどね……」
    「うん、楽しみですよ……一つ一つ、美味しそうですしねぇ」
     と流希が微笑み、そして……他の仲間達を含め、クリスマスパーティーは始まるのであった。

    ●この時を迎え
     そして、色々なクリスマスディナーを囲みながら、乾杯の時間。
     学校ではあるけれど、成人した人達も多く居るから、白ワインや赤ワインなども幾つか並んでいる。
     ……そんなお酒の並ぶ中、ノンアルコールのシャンメリーを手に取って。
    「クリス君はまだお酒はダメだから、シャンメリーで乾杯だね」
    「うん、勿論だよ」
     苦笑しつつも、シャンメリーが注がれる、そして。
    「あの日の思い出に、そして、クリス君の未来に、乾杯」
     グラスの音が食堂に響き渡り……クリスマスパーティーの開始。
     様々な料理に、美味しそうな湯気を立てる。
     ……そんな料理を囲みながら、クリスは。
    「そういえば……みんなは、将来は決まっているのかな?」
     と問いかける。
     それに流希が。
    「ああ、そうですねぇ。将来の事を考える時期が来ましたか……私は、此処で教師になりますので……卒業と同時に、都内の普通の高校へ、一般人として、英語教師として働く予定ですよ……」
    「そうか……私も教師だな。小学校の教諭として、今、働いてるんだ。色んな子供達に囲まれて、大変ながらも充実した毎日を過しているよ」
     将来を語り、微笑む二人。
     更に流希が。
    「そうですねぇ……誰も将来の事など、最初から予測がつかないものですからねぇ……私が此処に来た時には、教師になりたいなどと、露とも思っていませんでしたが……人に教える内に、この道もいいな、と思えましてねぇ……」
    「そうだね。二人に比べたら、僕の将来は……ね」
    「そうでしょうか? ……話しに聞くと、クリスさんは神職につくとか……となると、イギリスに帰ってしまうのですか?」
    「うん……ちょっと寂しいけど。でも、苦しんでいる人達を導ける存在になれれば、嬉しいかな、って……その為にも、まだまだ勉強しないと」
    「そうですか……素晴らしいと思いますよ? 人を導く存在になろうと、努力しようとするその姿勢……その心がけ、素晴らしいと思いますねぇ……少し寂しいですが、やりたい事が有ると言うのですから……」
    「そうだね。いつかはクリス君の祝福を貰いたい所だ。だから、日本にいつかはちゃんと帰ってきてくれよ?」
     と二人の言葉に、クリスは。
    「勿論。日本は僕にとっての、第二の故郷。そしてこの武蔵坂学園も……大事な母校だよ。忘れる事なんて、絶対に無い……だから二人も、僕の事、忘れないでね?」
     その微笑みは、ちょっとした寂しさと共に……自分に対する決意。
     ……そして、その後もクリスマスディナーを囲みながら、小一時間程のクリスマスパーティーを過ごす。
     そして……そろそろ外も暗く成り行き、クリスマスパーティーも終わりの時を迎えつつある。
     後片付けをし、他の人達を送り出して……残るはクリスと梗香、そして流希の三人。
    「さて……それでは、お別れの時間ですねぇ……クリス君、最後に握手と行きましょうか……?」
     と手を差し出す流希に、手を握り帰す流希。
    「……ん?」
     と、その手の中に、何かが入れられたことに気付くクリス。
     手を開くと、そこには……ジンギスカンキャラメルが一つ。
    「……えっと……これは……」
     軽く額に汗を浮かべるクリス、それに流希が。
    「ふふ。クリスさんがドン引いてたの、忘れてませんよ……? いつか、再開した時、味の感想を聞かせて下さいねぇ……?」
     悪戯っぽく笑う流希に。
    「ええっと……うん、それじゃ、その感想は、また日本に来たときに、だね?」
    「宜しく御願いします」
     そして、流希の横で梗香も、クリスの手をそっと握りしめ。
    「……さようならは、言わないよ? クリス君が祖国に帰っても、いずれまた出会える筈だ。だからまた、その日まで、だな」
     と、優しい微笑みと共に、肩を叩く梗香。
     そして……それぞれの道へと、歩みを始めるのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2018年12月24日
    難度:簡単
    参加:2人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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