犬食い罰子のアンダーランド

    作者:空白革命

    ●under/wonder land
     不思議なことを聞く様で申し訳ないが。
     君の家の近くに、とても広い土地はあるかい?
     建物が建っていても、いなくてもいんだけれど。
     とにかく広い土地だ。小学校や中学校が建つ程度の敷地で、それでいてあまり人が出入りしていないような場所だ。
     多分君はその場所を、捨てられた土地だとか、廃墟のようなものだとか、思っているかもしれない。
     それは決して勘違いではないし、ある側面から見れば非常に的を得ているのだけれど。
     そうだな。
     捨てられた者たちの、廃れた者たちの楽園が、そこにはあるんだ。
     地下深くの。
     忘れられた空間に。

     ボロ切れを纏った少女である。
     より正確に表現するなら、破れきった布の切れ端をかろうじて身体にひっかけた17歳前後の少女、である。
     首輪をして手足を床につけ、大型犬用の食事皿に首を突っ込んでいる。
     がふがふという獣のような声をあげて、オールミールを平らげていた。
     およそこの世の光景とは思えないが、ただ常識的倫理的人道的でないというだけで、この世界の様々な場所で実際に存在している光景であるということは、述べておかねばならないだろう。
     だが。
     その数31人が壁際に一列に並び、同じようにがふがふと音を立てているとしたら。
     それはもはやこの世の光景ではない。
     地獄である。
    「たぁんとお食べ。残さないようにね?」
     少女の頭をかき乱すように撫でる、二十代ほどの女がいた。
     一方の少女はまだこの状況に理解が及んでいないのか、どこかきょとんとしている。
    「私はね、皆の願いを叶えているの。『束縛されたい』『飼いならされたい』『人間じゃなくなりたい』。それはたぶん、怠惰や怠慢の感情だけれど、人が少なからず持っている気持ちでもあるのよ。皆心のどこかでは飼い犬になりたがるのね。私はそれを叶えているの。人としてもう生きてはいけない人達だけれど、この地下室でなら生きていけるわ。そうでしょう」
    「…………」
     言葉の話し方を忘れたのか、それとも感情ごと消え去ったのか、少女はパッと顔を明るくして、小刻みに頷いた。
     そして皿に顔をつけ、がふがふと平らげ始める。
     少女の様子を愛しげに見つめ、女は呟いた。
    「皆の願いを叶えてあげる。飼い犬に、してあげる」
     
    ●wonder land/ground
     エクスブレインの説明を、迂遠にならぬように要約しよう。
     闇堕ちした一般人が現れた。
     もはや人間の価値観を針の穴程しか残しておらず、完全なダークネスと化すのも時間の問題であるという。
     種別、ソロモンの悪魔。
     人間に背徳と大罪を与え、堕落させ悦悪させ、人ならざる者へと捻じ曲げていく存在である。
     もし『彼女』が完全なものになってしまえば、もう我々が手を出せる段階ではなくなってしまう。
     そうなる前に、彼女を殺さねばならない。
     堕ちた者の名は――。
     
     鉢貝・罰子(ばちがい・ばちこ)。
     ソロモンの悪魔の、なりかけである。
     彼女は思春期の怠惰を許容し、何十人もの少女を堕落させ、地下深くで飼っているという。
     恐るべきは、この状況を望んだのが少女の側だということである。
     罰子は特別人間を捨て切った少女10人に人外の力を与え、『番犬』と呼んで手懐けている。
     罰子を倒すのであれば、彼女達が確実に立ち塞がってくることだろう。
    「罰子も『番犬』も、もはや人には戻れぬ存在。すべて殺して、消して下さい」


    参加者
    護宮・マッキ(輝速・d00180)
    露木・菖蒲(戦巫覡・d00439)
    藤森・柳(アステリズムフォーチュン・d03435)
    遠野・守(神風炎・d03853)
    個人的・検閲(曖昧模糊・d08160)
    メルフェス・シンジリム(魔の王を名乗る者・d09004)
    高峰・緋月(天衣無縫の人見知りっ子・d09865)
    無常・拓馬(オタク系探偵ついでに殺人鬼・d10401)

    ■リプレイ

    ●アンダーランドの犬たち
     廃屋である。
     意識しなければ足を止めることすらない程の、『どうでもよい』場所に、その建物はあった。
     遠野・守(神風炎・d03853)は足を止め、バンダナを巻きなおす。
    「女王気取りの傲慢女と意地のねぇ番犬どもか。くだらねぇ」
    「本当、吐き気がする……」
     護宮・マッキ(輝速・d00180)は守の横に並び、廃屋を見上げた。
    「女の子に手は出したくないけど……でももう、人間ですらないのかな」
    「酷いよ、心の隙に付け込んで人間を辞めさせるなんて」
     高峰・緋月(天衣無縫の人見知りっ子・d09865)は強かに地面を踏み叩いて、改めて後ろ髪をゴムで結び直した。
    「絶対救ってあげようね!」
     息巻く彼女の横顔を、メルフェス・シンジリム(魔の王を名乗る者・d09004)はちらりと見た。
    「やめさせる、ね」
    「うん、何?」
    「別に……」
     奇妙に弧を描く鎌を肩に担ぎ、メルフェスは顎を上げた。
    「そうね、鉢貝罰子……クズだと思うわ、本当」

     廃屋の階段を下るメルフェスたちに続くように、露木・菖蒲(戦巫覡・d00439)と藤森・柳(アステリズムフォーチュン・d03435)も廃屋の門を潜った。
    「犬みたいな人っていますけど、今回のは本格的に犬過ぎて引くのです。ディープすぎる世界なのです」
    「ですよね、僕もドン引き……あ、ミントはマネしちゃダメだからね」
     傍らを歩くプチミント(霊犬)の頭を軽く撫でながら、柳は後ろを振り向いた。
     無常・拓馬(オタク系探偵ついでに殺人鬼・d10401)と個人的・検閲(曖昧模糊・d08160)が並んで門を潜る。
    「あは、女ご主人様が少女監禁とかエロゲじゃない。発売日はいつだろうねえ?」
    「…………」
     ひらひらと手を振る拓馬を、彼女は風の音でも聞いているかのように無視していた。
     だというのに拓馬の方は一方的に、それこそ空気を相手に会話するかのように言う。
    「ねえこの事件さ、どう思う?」
     無言のまま、視線すら合わせない彼女に、拓馬はしかし笑顔のまま。
    「だよねえ」
     と笑った。

    ●閉じた楽園と人間だったもの
     ある少女は昨日と同じようにコンクリートの床に寝そべり、首輪に繋がった鎖をじゃらじゃらと鳴らしていた。
     ある少女は一昨日と同じように汚物に塗れたバスタオルの上に座り込んで虚空を見上げていた。
     ある少女は一昨昨日と同じように大型犬用の餌皿を舌の先で舐めていた。
     ある少女は一週間前と同じように他の少女と戯れ。
     ある少女は一ヶ月前と同じように意味不明の唸り声をあげていた。
     まるで時が停まったように。
     または刻が廻ったように。
     アンダーランドはいつも通りに動いていた。
     そんな中、ぼうっと扉を見つめていた少女が眉を上げた。
     スチール扉に奇妙な切れ目が入り、ジグザグに裂けて行き、そして一秒と立たずに外側から蹴破られた。
     アンダーランドの『いつもどおり』が、終る音である。

    「鉢貝罰子!」
     扉を破って突入した緋月は素早く糸を繰り、室内最奥で椅子に腰かけていた罰子へと封縛糸を放った。
     反射的に飛んだ少女(否、番犬と呼ぶべきだ)が糸を遮って立ち塞がる。
     番犬のうち、鎖に繋がれていない10匹が地に手足をつき、獣のように緋月へと飛び掛って来た。翳した緋月の腕へ食らいつき、噛み砕かんと力を込める。
     その、人ならざる目を見て緋月は歯を食いしばった。
     胸にスートを浮かべ、薙ぎ払うように紅蓮斬を繰り出す。
     地面を跳ね転がるを『(検閲削除)』が無言のままで踏みつけた。胸を踵で踏まれ、潰れた声を出す番犬を一瞥。振り子のように腕を振り、連動して射出されたリングスラッシャーが番犬の首を切断した。
     人体の当然の構造として血液をまき散らし、はじけるように数メートルを飛んで転がる首。
     それを見下ろして、罰子は漸く声を出した。
    「ん、いらっしゃい」
    「そ……」
     それだけか、と言おうとして言葉を飲む緋月。
     菖蒲が割り込み、指輪をした手を罰子へ向けた。
    「……」
     判別しがたい感情が彼女の目を過ったが、無視して制約の弾丸を発射。
     しかし間に割り込んだ番犬が魔法弾を歯でくいとめ、そのまま菖蒲へ飛び掛ってくる。
     その首へ食らいつくプチミント(霊犬)。二匹はもつれ合って地面を転がり、最後にはミントが喉を食いちぎって吐き捨てる。
    「いくよミント、流れ星より速く駆けておいで!」
     柳は射線を確保しつつ弓を引くと、ばらばらに身構える番犬たちを視界にとらえた。
    「天より注げ、星々の雨!」
     大量に発射される魔矢。
     その中を、それこそまるで雨粒でも受けているかのように突っ込んでくる番犬の群。
    「させるか――!」
     手を翳す守。連動して飛んだシールドリングが柳の前で停止し、ギリギリのところで番犬の攻撃を差し止めた。
    「回復はなんとかする、とっとと片付けちまってくれ!」
    「……ん」
     マッキは爪先で地面を叩くと、それをリズムとして斬艦刀を回した。
    「斬るしかない……ごめんな、救えないなら、消すしかない!」
     二回転目で自らもぐるんと回り、豪快な横一文字斬りで番犬を切断する。
     肩から脇にかけてをすっぱりと斬られた番犬が、内容物をぶちまけて地面にころがった。
     人を殺した感触が手に残り、マッキは肩から震えた。
    「どうしたの。怖くなった?」
     横をリラックスした姿勢で通り抜け、鎌を振るメルフェス。
     動作だけを見るならば、箒で塵を払ったかのような何気ない動作であったが、その一振りでブレードに触れた番犬が複雑怪奇に爆ぜた。
     刈り取られたように。
     もしくは、切り取られたように。
     目にも分かりやすく死んだ。
    「私はイライラしてる。本当、イライラするわ、ここ」
     服にこびりついた血と肉の破片を乱暴に払って、メルフェスは言った。

    ●楽をしたがる人間の、当たり前の末路。
     ここまでの語りの中で、灼滅者たちが苦戦した様子は殆ど描かれていないことに気づくだろうか。
     それもその筈で、ダークネスにしてソロモンの悪魔である罰子は部屋の奥で腰掛けて、時折番犬たちのガードを抜けてくる攻撃を払い除けたり回復したりと、あまりやる気を見せる様子が無かった。
     外から入ってきた虫を払っているような、とても『どうでもよさそう』な反応だと言っていい。
     しかしそれも、戦える番犬が全て動かぬ肉と化した後でまで、続けられることではない。
    「ミント、休んでいいよ」
     番犬と喰い合って負傷していたプチミントを自分の後ろに下げて、柳は弓を構えた。
    「マジックアロー、撃ち抜きますよ!」
    「……ん」
     椅子に腰かけたままの罰子へ向けて矢を放つ。
     放たれた矢は罰子の眼球へ突き刺さる直前で、彼女の手に掴み取られた。
     握力で魔矢を圧し折る罰子。
    「ねえ、こういう時、あなただったら何て言って欲しい?」
    「……どういう意味ですか?」
     柳は(この状況を正常にとらえているのかは定かでないが)穏やかな顔で首を傾げた。
    「『よくも私の可愛い犬たちを殺してくれたわね』『私に逆らった罰をあたえてやるわ』『あなたも私のペットにしてあげる』『おねがい私だけは殺さないで』『この子たちだけは助けてあげて』……とか、色々あるでしょう? どれがいいの?」
    「え、と……」
    「どれでもいいから、せめて無様を晒して頂戴」
     熟練のピアニストのように宙で複雑に指をうねらせるメルフェス。
     かろうじて見える程度の糸が蛇のように空中を這い、罰子の手首に巻きつく。
     視線を脇に向けるメルフェス。
    「そこのアナタ、ちょっと手伝って」
    「……」
     返事もせずに『(検閲削除)』は手を翳し、罰子の手首周辺を氷結。くい、とメルフェスが手を引いた途端、罰子の手首はまるでそういう構造であったかのごとくすっぱりと切れて外れた。
    「どう?」
    「片手がないと、困るわね」
    「この……っ!」
     すかさず飛び込むマッキ。
     斬艦刀を大きく掲げ、罰子目がけて振り下ろす。
     罰子はと言えば、手首に巻かれていた犬用の首輪を引っこ抜くように外し、目の前に放ってリングスラッシャーとした。広がった光の輪がマッキの剣を阻む。
    「こんなの楽園でもなんでもない! この子たちだって、こんなこと望んでない! ただ堕落させただけじゃないか!」
    「堕落させただけよ。でも半分違うわね、望んで堕落させただけ」
    「……ッ!」
     マッキは歯を食いしばり、未だに椅子に腰かけたままの罰子を激しく蹴飛ばした。
     思わず椅子から転げ落ちる罰子に、吐き捨てるように言う。
    「人はいろんな望みを持ってる。でもそれを理性で選ぶのが人間だろ!」
    「理性だけで望みを選ぶのは、人間じゃなくて機械よ」
    「詭弁だ、そんなの!」
     再び剣を掲げるマッキの脇を、影の触手が追い抜いて行く。
     触手は起き上がろうとした罰子の首に巻き付き、がっちりと固定された。
    「つぅかまえた」
     影の鎖を両手で握る菖蒲。ぴんとはった鎖を足で踏み、罰子を地面に這いつくばらせる。そのまま手繰りよせると、罰子の頭を踏みつけにした。
    「ふふ、なんかゾクゾクしてきたのです。自分が犬として扱われるのってどんな気持ち? ねえ答えて」
    「気持ち悪い子」
    「反抗的です」
     菖蒲は僅かに足を上げ、再び踏み下ろした。
     地面に頬を押し付けられた形の罰子に、チェーンソー剣と斬艦刀が突き下ろされる。
     守の剣と、緋月の剣である。
     それも、首の両脇。すこしでも力を入れれば花の茎を切るように断首ができる、そんな位置だった。
    「じゃあこういう質問はどう?」
     罰子の目から三センチ先に靴を下し、拓馬が身を屈める。
    「自分を守ってくれる可愛い犬達は全滅したけど、どうする?」
    「……」
    「あんたが守るのは自分のプライドか? 可愛いペットか? それともただ生きたいだけかい?」
    「……」
     罰子の眼球に反射して、鎖に繋がれた少女が見えた。
     拓馬は目を細める。
     そして罰子は目だけで彼を見て、全く変わらぬトーンで言った。
    「奉仕精神」

     『ざくり』とか、『ばさり』とか、そんな分かりやすい音はしなかった。
     人間の皮膚を無理やりに裂いて、肉を千切って、太い血管を潰して、骨と関節を擦り潰すかのように折った音を、一秒の間にひとまとめにしたような、そんな音がした。
     人体の当然の構造として、大量の血液が壊れた水道蛇口のように吹き出し、コンクリートの床に広がった。
     そして戦いの結果として。
     鉢貝罰子の死体が、ただ横たわっている。

    ●買い取られぬ犬の末路
     今地下室にあるもの。
     11体の死体。
     21匹の犬。
     8人の灼滅者。
     それだけである。

    「もう大丈夫、家に帰ろうね」
     マッキはアイテムポケットからフードのついたパーカーを取り出すと、少女の一人に優しくかけてやった。
     少女からは汚物と垢の臭いがしていたが、勤めてかれは笑った。
     対して少女は口を半分ほど開け。
     笑顔なのか。
     泣き顔なのか。
     どうとも分からぬ顔をして。
    「あー」
     とだけ呻った。
     かけてあげた服の裾を握りしめて、マッキは目をぎゅっと瞑る。
     そんな彼の横から顔を覗かせる柳。
    「うわ、改めてみると目のやり場に困りますね。撫でたら懐くかな」
    「やめろ!」
     手を伸ばした柳を、マッキは乱暴に突き飛ばす。
    「え、大丈夫ですよ。連れて帰るとか考えてませんよ?」
    「そうじゃない! そうじゃ……!」
     それ以上が言葉にならず、マッキは逃げるように外へと駆け出して行った。
    「何でしょう、今の」
    「見て分からなかった?」
     メルフェスは別の少女を相手にしながら、横目で彼を見やった。
     興味深そうに小走りに寄ってくる菖蒲。
    「何してるです?」
    「改心の光をあてたんだけど……」
     メルフェスは視線を少女に戻して、眉を左右非対称に歪めた。
    「反応が、何もないの」
    「はい?」
     可愛らしく首をかしげる菖蒲。
     メルフェスは立ち上がり、汚いものを見る目で少女を見下ろした。
    「罰子には堕落を増大させる能力があるんだと思ってた。それはダークネスの能力とは別途に、純人間的な技術能力として存在していたし、私の推理は間違ってなかったわ」
     たん、爪先で床を叩く。
    「彼女達も倫理観や人間性を失って、依存できるのなら何でもいい状態に陥ってた。その推理も間違ってなかった」
    「はあ……」
     よく分からないと言う顔をして見上げる菖蒲に背を向けて、メルフェスは出口へとつかつかと歩いていった。壊れたドア淵に手をかける。
    「でもだからこそ……彼女達はお互いを必要としていた。お互いを、愛していた」
     イライラするわ。
     彼女はそう言って、地下室を後にした。
    「あ、待って下さいよ」
     その後を追って、地下室を出ていく菖蒲と柳。
     彼等の足音をよそに、緋月は少女の前に屈む。
     視線を合わせるようにして、懸命に語りかけた。
    「嫌なことが多い世の中だけど、そればかりじゃないよ。きっとみんな、本当の意味で必要としてくれる人が現れるから」
    「…………」
     少女は眠たげな眼をして、ぱちぱちと瞬きをした。
    「あの、ね?」
    「…………」
     まるで犬や猫がそうするように、緋月の顔の周りに鼻を近づけ、くんくんと臭いを嗅いで、そして興味を失くしたかのようにその場にうずくまった。
    「この子たち……」
    「放っておけ」
     緋月の肩を掴み、守が言った。
    「生きる意思があるなら生きるし、沈むならそこまでだ」
    「でもっ」
    「じゃあなんだ、かうのか?」
     買うとも、飼うとも、どうとでもとれる言い方だったが。
    「…………」
     緋月は嫌なものを振り払うように守の腕をどけると、地下室を出ていく。
    「ま、そういうワケだ」
     少女の頭をぽんぽんと叩いて、拓馬が言った。
    「自分の意思を破棄した人犬なんて死んでるのと同じ。番犬はそうやって殺してやったけど……君はどうする?」
     無言で見上げる少女。
     拓馬は返事をされたわけでもないのに。
    「だよねえ」
     と言った。
     そして少女の口に名刺を咥えさせて、優雅に地下室を出ていく。
    「探し物と調べ物は、無常探偵所をよろしくね。それじゃ!」
     拓馬と守は何事も無いかのように地下室を出ていく。
     閉めるドアも無い。
    「………………」
     一人残された『(検閲削除)』は、一度だけ室内を振り返り。
    「……」
     無言のまま、地下室を後にした。

     今地下室にあるもの。
     11体の死体。
     21匹の犬。
     それだけである。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 15
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