バスターピッグの襲来!

    作者:猫乃ヤシキ

    ●『その野ブタ、凶暴につき』
     紅葉の奥多摩。
     さらさらと流れるせせらぎを聞きながら、一家はバーベキューを楽しんでいた。
    「ここ、立ち入り禁止エリアらしいけど。人が少なくて逆にいいわね」
    「そうだろー? ちょっとくらい奥まで来たって、どうせバレやしないよ」
     コンロの上では、鉄の串に刺した分厚い豚肉が、真っ赤に焼けた炭火に炙られていた。
     たっぷりの旨そうな肉汁を垂らしながら、じゅうじゅうと音を立てている。
    「おかーさん、お兄ちゃんが蹴ったー!」
    「なんだよ! お前だって俺のことぶったじゃん!」
    「もう……こんなとこ来てまでケンカしないでよね」
     年頃の兄妹は、ささいなことでケンカが絶えないのが、最近の母のちょっとした悩みでもある。
     しかし、せっかく奥多摩までバーベキューしに来たのだから、目に舌に、楽しまなければもったいない。
     子どもは自然の中に放っておけば、勝手に楽しく遊んでくれるだろう。
     そう楽観的にとらえて、焼きあがってきた肉を、夫と二人で貪るように食らいつく。
    「おかーさん、おかーさん、おかーさんっ!」
    「何よもう、うるさいわね……」
    「ねぇ、ブタよ、ブタがいるの! いっぱい!」
    「えぇ……?」
     振り向けば、確かに、そこにはブタの大群。
    「ブヒ」
     しかしブタと言えど、彼らが知っているブタよりは、はるかに大きい。
     そして何故か……どれも、バスターライフルを背負っている。
     異様な光景に、母親が、ぽろり、と豚串を取り落す。
    「……なんて、素敵なんだ……」
     そして、父親の謎の一言。
    「―――ブヒィィィン!」
     次の瞬間、鳴り響くのはライフルの銃撃音。
     紅葉にいろづく秋の奥多摩の風景は、一家の流血で、さらに真っ赤に染まったのだった。
     
    ●『だから立ち入り禁止にしてあったんだっつーの!』
    「はい、と言うわけでね、今回はブタです、ブタ!」
     ぱんぱん、と手を叩きながらそう言う神崎・ヤマト。
     本日はなんだか、やや投げやりな感じである。
    「……だから立ち入り禁止にしてあったのに。なんで禁止されてるとこに、勝手に入るかなぁ……」
     ぶつぶつ言いながら、こめかみを抑える。
     決められたルールを守らない奴は、たとえ一般人と言えど、こういう顛末が待っているのだ。
     と、いう教訓だろうか。
     本日のヤマトは、犠牲になった家族に対する哀悼よりも、彼らの身勝手な行動に対するいらだちの方が先に来てしまっているようだ。
     しかし、それはそれ、これはこれ。
     ふぅ、と深呼吸して気を取り直し、集まった灼滅者たちを見据える。
    「今回の敵は、奥多摩のキャンプ地に現れたバスターピッグだ」
     バスターピッグとは、その名があらわすとおり、要するにブタである。
     特定のダークネスの配下に属せず、勝手に小集団をつくって生息し、人に危害を加えている――いわゆる、はぐれ眷属と呼ばれる奴らの一種だ。
     バスターピッグは、気性の荒い凶暴なデカいブタと言うだけではない。
     背中に、二門のバスターライフルを備えている。
     凶悪であり、凶暴である。
    「個体数は全部で10匹。これを掃討してきてほしい。奴らを仕切ってるボスがいるから、要注意な」
     ボスは、他の個体よりも強い。しかし、それだけじゃない。
    「どうやらボスは、妙なフェロモンを出してくる。マトモに浴びると、男も女もメロメロになっちまう。骨抜きにされるから、気をつけろ」
     メロメロにされるということは。
     要するに、仲間を攻撃したり、敵を回復するような行為に及ぶことになるだろう。
    「敵勢の全体像としては、それほど苦労する相手、というわけではない。慎重に策を練って向かえば、十分に退治できる相手のはずだ。では、よろしく頼む!」


    参加者
    仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)
    霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)
    ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)
    マリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)
    ディアナ・ロードライト(ノーブルレッド・d05023)
    鷲宮・ひより(ひよこ好きな・d06624)
    黒沢・焦(ゴースト・d08129)
    鬼塚・良介(キリングクラウン・d10077)

    ■リプレイ

    ●『ブタさん探して、三千里?』
     さらさらと流れるせせらぎが、耳に心地よい。
     少し肌寒くなってきた今日この頃だが、日中の天気さえよければ、まだまだ絶好のバーベキュー日和である。
     腰に両手をあてて仁王立ちしているのは、黒沢・焦(ゴースト・d08129)。
     赤や黄色に色づいた、森の奥を見つめるその目が、キランと光った。
    「さて、鍋の食材をゲットしにまいりましょうか」
    「食ったらダークネスになりそーでヤだなぁー……」
     かたわらでおやつをもぐもぐとむさぼるのは、仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)。
     ごそごそやっている弥勒のバッグを、ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)がひょい、とのぞきこんだ。
    「んんー? 何食べてるのかなー?」
    「ミミガー(豚の耳)だよー」
     コリコリした味覚がおいしい、ちょっぴり大人のおやつである。ちなみに弥勒が持ってきたのは、ほんのりピリ辛、唐辛子味。
    「食べるー?」
    「うみゅ~! 食べるーっ☆」
     両目をキラキラさせて、万歳のポーズで小躍りするミカエラ。ミカエラにとって、食べ物をくれる人は皆、良い人なのである!
     その横で、また違ったことで目を輝かせている、鷲宮・ひより(ひよこ好きな・d06624)。
     両手を組み合わせてクネクネする姿は、まるで恋しい人に会いに行くかのようでもある。
    「豚さんにメロメロになれるなんて、なんて楽しそうな依頼!」
    「普通のブタさんは普通に可愛いと思うけど」
    「ナノナノ」
     対して、マリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)は、少しげんなりした調子である。
    「ブタにライフルは、さすがに悪趣味……」
    「ナノ!」
     ナノナノの菜々花が、ふよふよとマリーゴールドの周りを漂いながら、力強く主人に同調する。
     鬼塚・良介(キリングクラウン・d10077)も、やれやれとため息をついた。
    「全く、ダークネスの奴ら。ペットは逃がしちゃいけませんって習わなかったのかよ」
    「本当よ。これ以上の犠牲を出さないように、豚はきっちり退治しないとね」
     半ば遠足気分強めの一向に対して、ディアナ・ロードライト(ノーブルレッド・d05023)もいたって冷静である。
    「しかし、さすがに山越えは体力使います。なんだか腹が減ってきましたね」
    「にーさんも食べるー?」
     弥勒に差しだされたミミガーをつまんで、一緒にもぐもぐしはじめたのは、霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)である。
     しかしおやつだけで、育ち盛りの少年たちのおなかがいっぱいになるはずもなく。
    「なんかこう、がっつり食事したくなってきましたね……。やっぱり、豚カツとか! 豚丼とか!」
     熱く主張する刑一がにぎしりめているのは、食卓のおとも、とんかつソース。
     なんでそんなものを持参しているのかと言えば、つきつめれば刑一が残念な子だから、という一言に尽きるだろう。
     刑一がイケメンなのにリア充になれない原因が、そのあたりにあろうということに、本人は気づいているだろうか。
    「鍋ならソースじゃなくて、ぽん酢じゃないか?」
    「これは豚カツ用ですよ」
    「ああ~、なんだかわたしまで、おなかがすいてきました~」
     面々の空腹が、ピークにさしかかった時。
    「あら、向こうから鳴き声が聞こえない?」
     ディアナが耳を傾けた方から、あの独特の音が聞こえた。
     ブヒ。
     ブヒヒ、ブヒブヒ。
     その鳴き声に、灼滅者たちの目が一斉に、ギランと輝いた。
    「「豚だー!」」
    「いやダメよ待ってみんな、きっとあれ美味しくないわ! 帰ったら美味しいお肉食べる方が胃と心に優しいわー!」
     ディアナのツッコミ(というかもはや心の叫び)が、紅葉の山の中にこだまする。

    ●『食べれない豚は、ただの豚……、じゃなかった!』
     しげみの中から、ざざっと現れたのは、噂のブタさんの集団である。
     その数、総勢10匹。
     凶悪な目つきでライフルを背負った、いかつい巨豚たちである。
    「可愛いような、可愛くないような微妙なところ……」
     もしかして実物を見たら、少しは印象が変わるかと思っていたものの。
     やっぱり、マリーゴールドの好感度をアップするには足りないバスターピッグたちなのだった。
    「ああ、ブタさん可愛い~っ♪」
     一方、バステ攻撃を喰らったわけでもないのに、なんだか既にバスターピッグの虜になっている様子のひより。
     ディアナが、ないない、と顔の前で片手をひらひらと振って見せる。
    「ガン飛ばしてるし、ムキムキマッチョだし……。私にはどうしても可愛さが見いだせないのよね……」
    「はっ!!」
     ひよりが両手で顔をはさみこみ、白目をむきながら口をカッと開いた。
     その表情、ムンクの叫びと完全一致。
    「駄目だ、わたしにはヒヨコさんが居るじゃない。浮気いくない!」
     我に返ったひよりが、ぎゅっと拳を握りしめると、その周りにバチバチと稲妻が起きる。
    「ごめんね、豚肉も好きだけど……」
     言いつつ前列のザコピッグに駆け寄って、そのままアッパーカット!
    「わたし鶏肉厨なのっ!!」
     一方、刑一の両腕からあふれ出したのは、殺気。
     猛烈な突風が紅葉の中を吹きぬけて、バスターピッグたちに向かって襲い掛かる。
    「これは殺気だけではないです!」
     鏖殺領域のドス黒い気が、森の中に充満するる。
     良く見ると、気流に巻き込まれて、なぜかとんかつソースのビンも一緒に飛んでいた。
    「そう……食欲の波動も込みっ!」
     しかし数の上では、バスターピッグの群れが有利。
     10匹×2、合計20門もあるバスターライフルから、豪雨のように放たれる弾丸の嵐が、灼滅者たちの攻撃をはばむ。
    「痛って、このやろー……まとめて殺してやるよ!」
     ちっ、と舌打ちして、良介が解体ナイフを斜めに構えた。
     ヴェノムゲイルの毒の嵐が、バスターピッグの肉体を切り刻む。
     クラッシャーの攻撃タイミングを見計らっていた焦が、同時に影を開放する。
    「プギィ!」
    「これでも喰らえってんだー!」
     長く伸びた黒い影が蛇のように草を這い、幾重にもバスターピッグの体を縛り上げた。
    「よし、じゃあいこっかー♪」
     目を見て小さくうなずきあう、弥勒とミカエラ。
     背中合わせに並んで、双翼のように両腕を前へ差し出した。
    「パッショネイト、ダぁーンスっ!!」
     おやつのミミガーで結ばれた二人の絆。
     そのせいか、足並みも振り付けも、まるで打ち合わせたように息ぴったりである。
    「ブヒヒーッ!」
     情熱の踊りに翻弄されて、雑魚ピッグたちが地面の上に転倒する。
     その隙を見逃さず、マリーゴールドが、垂直に曲げていた腕を真っ直ぐに突き出した。
    「レーヴァテインっ!」
     指の先にはさまれた護符の束から炎がほとばしり、敵の体を火だるまにする。
     辺りに、じゅう~と肉の焼ける音と、香ばしい匂いが立ち込める。
    「こんがり上手に焼いて、菜々花に食べさせてあげるよ」
    「ナ、ナノ~」
     菜々花がふるふると頭を振って、後ずさる。
    「サーヴァントが、あんなもの食べたがるわけないじゃないの、ねぇ刃?」
     霊犬の刃を振り返って、同意を求めるディアナ。
     ドヤ顔で何かをくわえているのに気づき、眉根を寄せながら書かれた文字をじっと読み取る。
     刃が口にくわえているのは、刑一が先ほど鏖殺領域と一緒にすっ飛ばした『とんかつソース』。
    「Σそのソースをどうするのっ!?」
     どうやら刃も、腹ペコ灼滅者たちの雰囲気にのまれて、うっかり食欲(そんなもの無いはずなのだけれど)を触発されていたようである。
    「Σ待ちなさい刃、それは餌じゃないわ! 思い直してー!」

    ●『魅惑のブタさんサービスタイム』
    「ブヒィー……ン!」
     ゆらり、と巨体をくゆらせながら。
     ボスピッグが灼滅者たちの前に立ちはだかった。
     その体は、ザコピッグたちの倍はあるだろう。
     解体ナイフを指の間にはさみこんだ良介が、両腕を体の前でクロスさせる。
    「ぐしゃぐしゃにしてやるよ」
     それはもはや、殺人鬼としての良介の矜持。
     ボスの目前に素早く駆けこんで、ジグザグの刃でその体を切り刻む。
     続けて、その対角線上から、弥勒のチェーンソー剣が斜めに振り下ろされた。
    「はいはい、よっとー!」
    「フガッ」
     額に血管を浮かび上がらせて、怒りもあらわにバスターライフルの銃口を灼滅者たちに向けてくる、ボスピッグ。
     銃撃の嵐が自分に向けられるのか、と灼滅者たちが防御の姿勢を強くした、その瞬間。
     豚ッ鼻を天高く突きあげて、ボスピッグが吠えた!
    「ブヒヒヒヒーン……!!」
    「うるさっ!」
     賑やかなものが好きな弥勒が耳を塞ぐほどの、騒音である。
     強烈な音の波が、ビリビリと体を震わせる。
    「ナノナノー!」
    「なによこれー!」
     導眠符を出しかけた手を引っ込めて、マリーゴールドと菜々花も耳を塞ぐ。
     ただひたすら、この騒音に耐えるしかない。
    「……ッヒヒヒーン!!」
     ようやく耳をおかしくする吠え声が収まって。
     ワンワンする頭を押さえながら、良介がよろめきながらつぶやいた。
    「こ、これが、魅了の攻撃ってやつか……」
    「ふっ、既にメロメロ状態なわたしにフェロモン攻撃なんて無意味だよっ!」
     一方、ひよりは親指と人差し指をピンと伸ばして、あごの下にぴったりと当てていた。
     そのドヤ顔の具合は、さすが最初からブタさんラブを連呼しているだけある。
     しかし、ただ一人。
     焦の目つきだけは先ほどまでと違って、夢うつつのようにとろんとしていた。
     ほんのりと染まった頬に手を当てながら、じっと豚を見つめる姿は、まさか。
    「……あのバスターライフルに、メロメロになりました」
     焦の出していた影業の鎖がうねうねと空中で動いて、ハートをかたどった。
     ハートの影はそのまま暴走して、灼滅者たちの身体をきゅっきゅっと縛りあげてゆく。
    「やだ素敵ー! うおおお、俺もあっち側に行くぜー!」
    「殿ー、戦中で御座るー!!」
     敵味方の区別が完全に混乱している様子の焦を、ミカエラが羽交い絞めにして取り押さえる。
     けれど、ここのブタさんに魅了されてしまったら、そんなことくらいで正気に戻るわけもない。
     ばったばったと暴れながら、ハート型の影業を味方めがけて繰り出し続けるばかりである。
    「いてててて、落ち着いて焦にーさんっ」
    「あーもうっ! しっかりしなさい、焦っ!」
     ディアナのまとっていたバトルオーラが、白く光りながら焦に向かって伸びてゆく。
     オーラが、バシンと焦の頭をはたいた。
    「……はっ! 俺は一体何を!」
     集気法のキュアの効果で、怪しげだった焦の目つきがようやくマトモに戻った。
    「よーしっ、じゃあ攻撃再開ー!」
     ミカエラが満面の笑顔で、両腕をまっすぐ天に向かって伸ばす。
     その手のひらにめいっぱいのオーラの光を集めて、振りかぶって、投げたー!
    「どかーんっ!」
     ミカエラのオーラキャノンが、ボスの豚ッ鼻に真っ向から激突する。
     続けざまに、刑一のトラウナックルが、同じく豚ッ鼻めがけて華麗に炸裂した。
    「料理されるトラウマでも抱えるといいです!」
    「ブヒィ―!」

    ●『腹が減っては、戦もできぬ! さあ、ご飯の時間だよ!』
    「次に生まれ変わったら、普通のブタさんになってね」
    「ナノ」
     マリーゴールドが両手を合わせるのに、菜々花も真似して小さな翼の先を重ねあわせる。
     まあ色々とあったけれども、灼滅者8人対バスターピッグ10匹の戦いは、灼滅者たちの勝利ということで無事に片が付いた。
    「思いっきり豚切ってたら、なんかスッキリしたぜよ。これはしばらく殺人衝動来ないかもしれないにゃん」
     解体ナイフをスレイヤーカードに戻しながら、良介が小刻みに肩を揺らした。
    「しかし、ハート型の影業って……すごかったな、アレ」
    「……仕方ないだろ」
     焦が唇をとがらせた。
     だって、バスターピッグたちが素晴らしく輝いて見えてしまったのだから。
     とは言え、さすがにあの時の自分は、ちょっと恥ずかしい。
     つい無愛想な受け答えになってしまうのは、照れ隠しもあるのだった。
    「豚さんのお肉、美味しそうだったなぁ……」
    「これじゃあ、食べられませんね」
    「アゥゥ……」
     しかし残念なことに、倒されたバスターピッグたちは、ドロドロに溶けてコールタールのようになってしまったのである。
     刑一と、ミカエラと、それから刃(霊犬)が、顔をつき合わせてため息をついた。
    「はぁ……可愛かった~♪」
     食欲チームとは対照的に、相変わらずうっとりしているのは、やっぱりひよりである。
     最初から最後までブタさんラブ! を貫き通したひよりは、十二分に今回の戦闘を堪能して満足できたようだ。
     にじみだす輝く笑顔は、いつまでも止まりそうにない。
    「うーん、終わった終わったー♪」
     弥勒が両腕を伸ばして大きく伸びると、ぐぅ、と腹の虫が鳴った。
     もうすっかりおなかはぺこぺこだ。
    「豚の生姜焼きでも食べに行こうかなーっと♪」
    「豚丼たべたいな。一緒に食べにいかない?」
     ブタさんにたぶらかされた件から話を逸らそうと、焦が弥勒の発言に乗った。
     刃(霊犬)から取り上げたとんかつソースを、刑一のカバンに押し込んでいるディアナも、ここに来て乗り気になった。
    「私も行こうかしら」
    「腹が減っては戦ができませんからねー。次の依頼に備えて、下山したら、みんなで美味しいもの食べましょう」
    「ごはんごはん!」
     ミカエラが、野ウサギのようにぴょこぴょこと跳ねる。

     こうして平和が取り戻された、紅葉の奥多摩にて。
     そのあとしばらく、楽しげな声がこだましていたのだった。

    作者:猫乃ヤシキ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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