チーム益荒男 ~俺の股間が鬼神変~

    作者:空白革命

    「「セーイヤッ、ハァ!!」」
     男の中の男でありたい!
     (ヨーホーホーゥ!)
     ナオンがときめくヤングになりたい!
     夢はでっかくハーレム建設!
     ギャルをはべらせモテモテ王国!
     (女メンバーいないけど!)
     腕っぷしならどこにも負けねえ切磋琢磨のメンズチーム!
     (誰がいるのかオ・シ・エ・テ!)
     フラフープマニアのスティーブ!
    「腰グラインドなら任せとけ!」
     ラブレター芸術家のジョンソン!
    「今まで出したラブレターの数? 食ったパンよりは多い筈さ」
     スカート捲りチャンピオンのマイケル!
    「過去最高の捲り記録は一分以内に25枚だ」
     タートルネックのジョニー!
    「襟で口まで覆う、影のある俺……」
     そして俺らのナウいリーダー!
     常勝無敗のスーパータフガイ!
     (そーのーなーもー! ハイッハイッハイッハイッ!)
    「「スーパーヘッズ・MASURAO!!」」
    「センキュウウウウウウウウウウウ!!」
     屈強な筋肉を盛り上げ、両腕を天に掲げる益荒男(25歳ダークネス)。
     褌をしめ、それ以外は身につけず、天然温泉と思しき湯の中心で仁王立ちしていた。
     ジョニーが無言でラジカセの停止ボタンを押す。
     ノリノリなバックミュージックが消え、益荒男はマイクもないのに拳を口元にあてて一同に指をつきつけた。
    「お前ら、モテたいかあ!」
    「「うおおおおおおおおおおお!」」
    「だったら俺の計画を今一度聞けえ!」
    「「うおおおおおおおおおおお!」」
    「俺らは腕っぷしなら誰にも負けないスーパー人類。特に俺は羅刹というメチャすげえ存在だ! そんな俺らが暴れ回り、暴力こそ全ての楽園を作ろうじゃねえか!」
    「「うおおおおおおおおおおお!」」
    「そうすりゃ間違いなく俺らはモテる! モテモテ王国のキングになれる!」
    「「うおおおおおおおおおおお!」」
    「よっしゃあお前ら、もう一曲いくぜえええええ!」
    「「うおおおおおおおおおおお!」」
     無言でラジカセの再生ボタン(巻き戻し済み)を押すジョニー。
     ノリノリのダンスミュージックが鳴り響き、ふんどし姿の男達が腰をグラインドさせて踊り始めた。
     夜はまだ、これからだ!
     
    ●「きじんへん」。己の片腕を異形巨大化させ、凄まじい膂力と共に殴ります。羅刹達の最も得意とするサイキックだと言われています。
    「以上が、ダークネス羅刹の最近の活動内容だ」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)はグッと親指を立ててンな無茶なことを言った。
     でも本当にそんなことやってるんだからしょ~がない。
    「内容はともかくマジで暴れ出すと手におえん。強さだけはガチだからな。だからこちらからアジトの天然温泉へ乗り込み、羅刹ごとチームを潰してしまおうという作戦だ」
     無論、相手がダークネスである以上バベルの塔がバベッている。情報収集なんて無理だしミサイルぶち込んでもピンピンしてるし何より襲撃のタイミングがバレる。
     だがしかしエクスブレイン・ザキヤマの手にかかればなんとか襲撃タイミングだけは整えられるのだ。
    「この、夕日が赤く輝く最高の時間。男達のダンスミュージックが終了した途端に殴り込みをかける……そう、このタイミングなら行けるぞ!」
     またもグッと親指を立てるザキヤマ。
    「無論相手はダークネスの羅刹。四人の部下もかなり強力なパワーを与えられて人間じゃなくなっている。全員手加減抜きで灼滅しなけりゃならないだろう、だが……!」
     にやり、とザキヤマは笑った。
    「俺達になら……きっとできる筈、そうだろう!?」


    参加者
    玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)
    鴇崎・恵那(祟り神の巫女・d04436)
    ビート・サンダーボルト(ビート・ザ・スピリット・d05330)
    坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)
    樟葉・縁(死灰復燃・d07546)
    犬蓼・蕨(白狼快活・d09580)
    ペサディージャ・ゴモリー(砂漠のアンタレス・d09826)
    花厳・李(白銀のカナリア・d09976)

    ■リプレイ

    ●ダンシングシャクメツシャ
    「「スーパーヘッズ・MASURAO!!」」
    「センキュウウウウウウウウウウウ!!」
     温泉に浸かった五人の褌男達が天に両拳を突き上げ雄叫びを上げるという、一行でシュールが伝わる光景が広がっていた。
    「いやあ今日も踊ったぜ。じゃあそろそろ上がっていちご牛乳でも飲むか!」
     などと筋肉を軽やかに躍動させて撤収しようとした……その時。
    「mother fxxckerども、まだショーは終わってねえぜ!」
     突如、どこからともなくギターミュージックが聞こえてきた。
     詰み上がった岩場に乗り上げ、ギターを振り上げるビート・サンダーボルト(ビート・ザ・スピリット・d05330)。
    「イカしたフレンズを紹介するぜ!」
    「「イエーッ!」」
     湯煙を突き破って現れる計八人の灼滅者。
     その名も――!
     拳を顔の前で構える玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)。
    「暴力で楽園作ってる馬鹿どもの面をぶん殴りに来た……通りすがりの拳士だ!」
     彼とはアシンメトリーに拳を構える樟葉・縁(死灰復燃・d07546)。
    「俺もモテた――じゃなくてここでお前らの野望も終わりやで……さすらいのナイスガイや!」
     弓を掲げて片膝を上げる鴇崎・恵那(祟り神の巫女・d04436)。
    「羅刹相手に容赦は無用、キル羅刹!」
     彼女の後ろから微妙にチラリズムする坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)。
    「あたしも言わなきゃだめか……どうしてこうなった……」
     両手をかぎづめの形にした犬蓼・蕨(白狼快活・d09580)が尻尾デバイスを左右に振った。
    「もふもふな耳と尻尾がシンボルマーク! でも、犬じゃなくて狼だよ、狼!」
     ナイフを片手に無表情に仁王立ちするペサディージャ・ゴモリー(砂漠のアンタレス・d09826)。
    「昼は灼熱夜は極寒、過酷な砂漠の使者……名前は長いのでペサでどうぞ」
     レム(ビハインド)と背中合わせに指を立てる花厳・李(白銀のカナリア・d09976)。
    「李とレムです、よろしくお願いしますね」
    「全員そろって――!」
     すちゃちゃっと全員が一斉にポーズを変えた。
     背後で起こる謎の爆発。
    「スレイ○ーズ!」「羅刹殺シャー!」「"Slayers" in da house!」「オオカミスレイヤーとその仲間たち!」「カウンセリング!」「本当は温泉に入り隊!」
    「お前ら少しは統一しようとせぇやぁー!」
    「そもそも何でバラバラになったんだ!?」
    「わんこさんそれ自分が狩られる側では」
    「誰だ往年の名作の名前をだして伏せられたのって俺だ!?」
    「まあ皆さんここは温泉入り隊で統一しましょう」
    「してたまるか!!」
    「あのー……」
     若干入りづらかったのか、会話に割り込んでみるチーム益荒男の皆さん。
    「それで、結局チーム名は何なんだ?」
    「「狼スレイヤーと羅刹殺セリング in da house ~本当は温泉の仲間隊~!」」
    「なげえ!?」
     ……などと。
     灼滅者とダークネスのバトルは開始したのだった。
     ノリで!

    ●屈強なDT戦士たちを見よ!
    「俺はフラフープマニアのスティーブ! 俺の腰動作についてこれるか!?」
     高速で腰を前後左右にスイングするスティーブ。
     それは鷲介の鋼鉄拳を連続で回避し、尚且つ背後に回る程の驚異的な動きであった。
    「ふざけた動きのくせに強い……だと……!?」
    「諦めるんやない、協力すれば捉えられん動きやないでぇ!」
     岩場から飛び掛る縁。彼の繰り出した鋼鉄拳がスティーブの尻に直撃した。
     当然の物理法則で前方向に突き出された腰に鋼鉄拳を繰り出す鷲介。
    「ヴァンダフォオオオオオ!?」
    「夜はこれからとちゃう。これで終わりや! 行くで!」
    「おう!」
     拳を同時に構える縁と鷲介。
     二人は同時にアッパーを繰り出すと、スティーブをお星さまになるまでかっ飛ばした。
    「スティーブがやられた!?」
    「だがヤツは四天王の中でも最弱」
    「チームの経理と事務処理を担当し宴会の幹事や書類仕事を一手に担っていた」
    「……俺達終わったな」
     急激にブルーになった益荒男四天王(残り三名)。
     そんな中で一人の男がラブレターを扇状に広げて構えた。
    「俺はラブレター芸術家のジョンソン。デスクワークもできる男だ。まだ俺達は終わりではないさ! くらえぇい!」
    「うわ、あぶないっ!」
     蕨は大量に飛来してくるラブレターカッターをひらひらと回避しつつ、慌てて斬艦刀を構えた。
     銀色に光るブレードが湯煙の中で乱反射する。本来なら背丈に合ったサイズの筈だが今回は特別にわんこモードなのでやったらよたよたしていた。
     それを横から片手で支えてくれるペサディージャ。
    「女性に縁が無いのにハーレム建設を夢見るとは……色々たまっているんでしょうね。お悩み、聞いてあげなくもないですよ」
    「本当か!?」
     ぴたりと攻撃の手を止めるジョンソン(ちょろい)。
     黙ってこくっと頷くペサを見て、二秒でラブレターを完成させた。(作成キットは褌に内蔵されていた)
    「じゃ、じゃあ俺と付き合って下さ」
    「嫌です」
    「えいどりあああああああああああああん!」
     ジョンソン、失意体前屈。
     絵文字で表すと、orz。
     そんな彼を憐れんでか、蕨とペサは黙ってサクッと、黒死斬とティアーズリッパーで刻んであげたのだった。

    「ククク、デスクワーカーの二人を倒したからと言って調子に乗るなよ。俺はスカート捲りチャンプのマイケル。ガチの体育会系……」
     マイケルは90年代のボーリング投擲フォームで腕をアンダースローすると突如として膨大な風を巻き起こした。
     それも、上昇気流!
    「この場にいる全てのスカートを捲ってくれるわ!」
    「させるか~!」
     横凪に腕を振る恵那。
     すると清めの風が吹きすさび、マイケルの風と相殺して勢いを散らした。
     だが一枚だけ捲れたものがあった。
     それは、益荒男の褌である。
    「ですぺらああああどおおおおおお!」
     マイケル、失意体前屈。
    「なんだか暑苦しい人達だね……」
    「全員が暑苦しいと思ったら大間違いだ。四天王最後の男……この俺が居る」
     褌の上にタートルネックのセーターを着ると言う斬新過ぎて誰もついてこないファッションをした男が、自らを親指でさし示した。
    「俺は包……タートルネックのジョニー!」
    「ファアック!」
     ビートが急激にギターを速弾きし始める。
    「Yo,men.What's up? ――っても、どの道ぶっ潰すんだがな! ジャムセッションの始まりだ!」
    「な、なんだか……皆さんの単語が節々わからないのですが……ビート様のも含めて」
    「大丈夫だ。わからなくていい。今は音楽の時間だ……不本意だが、乗ろう」
    「畏まりました――レム」
    「……」
     未来と李は胸に手を当てると、ギタービートに合わせて歌い始めた。
     ……いや、『歌い始めちゃった』と言った方が良いかもしれない。
    「■■■■■■■■■! ■■■■■■■■■■■■■!」
    「ヒィ!?」
     日本語どころか人外の言語かと思わせんばかりの歌声(?)が未来の喉から発せられた。
     失意体前屈していたマイケルがそのまま湯船に顔を突っ込んで窒息死し、ジョニーが泡を吹いて倒れた。
    「あの、今のは……」
    「歌は苦手だ」
    「に、苦手!?」
     李は未来を二度見した。
     彼女にしてはレアな、取り乱しシーンである。

    ●スーパーヘッズ益荒男さん(25歳独身)
    「フ、俺の四天王を倒すとは……やるな」
     益荒男(25)は頭の後ろで手を組んでライフルを構えた。
     どこでって。
     股でだよ!
    「食らえ、益荒男バスター!」
    「食らうか!」
     未来はチェーンソー剣を激しく唸らせるとリップルバスターを正面から断絶。
     多少のダメージは受けたものの無事に突っ切り、ズタズタラッシュを繰り出した。
    「服がッ!」

     ――暫く親子の像が戯れている光景をご覧ください――

     説明しておくと。
     BS『服破り』はその名の割に着ている衣服を引き裂いて肌を露出させる類の物ではなく単純に相手の防御性能を下げるものであって世の皆が心配するほど空気の読まない演出になるわけではないと言うことを強く述べた上で。
     スーパーエレファントタイムの始まりである。
    「OK……ハスタラビスタ、ベイビィ!?」
     更に繰り出されるチェーンソー斬り。
    「マイサァアアアアアアアアン!?」
    「…………」
     無反応でジグザグスラッシュを繰り出してくるペサディージャ。
    「マイサアアアアアアアアアン!?」
    「こういう時、どんな顔をしたらいいか分からないので」
    「嘲笑えばいいと思うよ?」
    「いいからそこちょっと退いてろ、ぶっ飛ばす!」
     ギターをバットのように構えたビートが、温泉の湯船を激しく吹き上げながら突撃。
     その動きを読んでペサは益荒男の背後へと回り込んだ。
    「ギタークラッシュ!」
     内角低めの球をかっ飛ばすかのようなフォームで、ビートはギターをフルスイング。
     同時にペサは益荒男のボディを撫で切った。
     血を噴き上げて吹っ飛ぶ益荒男。
    「よっしゃ来た来た……飛ばすで」
     肩をぐるぐる回した縁が落下予測地点へダッシュ。身体ごと反転させ、ドスンと気合を入れた。波紋状に水しぶきが上がる。
    「コレが、俺の拳や!」
     降ってきた益荒男の腹に拳を叩き込み全体重を受け止めると、更に抗雷撃を炸裂。益荒男を再び宙へと吹っ飛ばした。
    「参りましょう、レム――」
     対して、岩を足場に大きく跳躍する李とレム。
     レムはタクト状の細い剣を半身に構え、李は指輪から細長い雷を発生させて半身に構えた。
     両者シンメトリーにブレードを空振って、身体を絞るように構える。
    「私達のリズムも、負けていませんよ」
     宙を舞う益荒男とすれ違いながらの左右サンドスラッシュ。
     益荒男は派手に縦回転しながら落下していった。
     そして、落下地点には……。
    「もう一発いくからね! ちゃー、しゅー……」
     蕨がロッドをゴルフクラブのように勢いをつけて引き絞った。
    「めんっ」
    「マイサァァァァァン!?」
     フォースブレイクがゴールデンヒットした。
     しかしそれだけでは足りなかったのか、益荒男は内また状態で再び宙へと舞い上がる。
    「っしゃ、このコンボ……決めるぜ!」
     両腕の拳を強く握りしめ、魂を燃え上がらせる鷲介。彼の周囲で湯煙が螺旋状に噴き上がって行く。
    「フルボッコにしてやってね、任せたよっ!」
     そんな彼に後ろからそっと癒しの矢を投射する恵那。
     はたから見るとフレンドリーショットしてるようにしか見えないが。
     刺さる場所によってはただの嫌がらせにしか見えないが。
    「グハッ!?」
     鷲介の肉体は確かにこの時漲った。彼を中心に温泉の湯船がはじけ飛び一瞬だけ無水空間が生まれたほどである。
    「これならいける、いい賭けができるぜ……」
    「賭けだと!?」
    「そうだ、何も賭けず何も背負わず、力で人の心を手に入れようなんていうお前には分からねえだろうがな」
     両腕にそれぞれ鋼と雷の力を溜めると、鷲介は落下してきた益荒男へと同時に繰り出した。
     無論益荒男とて黙ってやられるつもりはない。両腕を異形巨大化させ、鷲介へと叩きつけた。
    「その甘い考えを、叩き潰す!」
     ぶつかり合う四つの拳。
     鷲介の周囲だけではない。温泉そのものの湯が一斉にはじけ飛び、激しい衝撃波となって周囲一帯を駆け巡った。
    「散って行った俺の四天王たち、そして俺の息子たちのため……負けられねえ!」
    「それでこそだ、そうでなくっちゃ面白くねえ!」
     衝撃はそれだけにとどまらず、石で敷き詰められた地面がぼこぼこと跳ねあがり、大きく地面が隆起する。
     地面の中に細々と通っていたであろう温泉のラインが決壊し、激しい間欠泉となって噴き上がって行った。
     そして……。

     温泉は一回り大きな温泉になっていた。
     その中心で、仰向けに浮かぶ益荒男。
    「フッ……負けたぜ……この俺が……」
     清々しく笑い、そしてキラキラと灼滅を始める。
    「次は……イケメンに……生まれてえな……」
     天へと昇って行く光。
     そして何処からともなくひらひらと落ちてきた褌を、灼滅者たちは無言で焼いた。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 13/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 7
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