●都内某所
動物の骨を使った家具を販売している家具職人がいた。
彼が作っていたのは、アンティーク調の家具。
どれもオシャレなデザインであったため、それなりに売れていたのだが、ライバル業者の妬みなどから『人の骨を使っている』という噂を流され、廃業に追い込まれてしまったらしい。
しかし、店が廃業した後も夜な夜な明かりが灯っており、家具職人が骨を使ったアンティーク調の家具を作っている。
今度は動物の骨ではなく、自分を不幸に追いやったライバル業者の骨を使い……。
そんな噂から生まれたのが、今回の都市伝説だ。
「この店では、亡くなったペットの骨を使って小物入れや、アクセサリーも作っていたらしく、それなりに注文があったらしい」
店で売られていた家具の写真を並べつつ、神崎・ヤマトが微妙な表情を浮かべる。
自分が亡くなった後、家具にされる気持ち。
果たしてそれは喜ぶべき事なのか、悲しむ事なのか。
よく分からないが、自分自身が望んだものでない限り、それが幸せであるとは思えないかった。
今回、倒すべき相手は、家具職人に扮した都市伝説。
既に、本物の家具職人はこの街を引っ越した後だから、全く別物として考えてくれて構わない。
ただし、都市伝説は噂に従って家具職人を馬鹿にしたり、心無い噂をした相手を拉致して家具に作り替えているから要注意。
しかも、既に何人かは家具として生まれ変わり、匿名で施設などに寄贈された後。
こういう場合、使っている本人達のためにも、真実を語らない方がいいのかも知れない。
どちらにしても、家具として作り変えられている最中の被害者もいるはずだから、何とかして助けてやってくれ。
最悪の場合、大怪我をしている可能性も高いから、その辺りのケアもよろしくな。
それと、都市伝説についてだが、チェーンソーとハンマーを振り回し、お前達に襲いかかってくる。
迂闊に捕まるとバラバラにされて、家具にされてしまうから、くれぐれも気をつけてくれ。
参加者 | |
---|---|
レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・d01124) |
早鞍・清純(全力少年・d01135) |
鳴神・月人(一刀・d03301) |
メアリ・ミナモト(は明るく元気に空を飛ぶ・d06603) |
越前・千尋(高校生ダンピール・d10175) |
ウィクター・バックフィード(モノクロの殺刃貴・d10276) |
山本・淳彦(小学生シャドウハンター・d10344) |
黒夷・黒(虚ろな黒・d10402) |
●骨
「骨を使って、小物や家具かー。可愛がっていたペットとかを偲んで、みたいな感じかな。俺にはまだちょっと解らない感覚だけれど……」
都市伝説の確認された店に向かいながら、早鞍・清純(全力少年・d01135)が複雑な気持ちになった。
それだけ、ペットを可愛がっていたのだろう。
そのため、どんな形であれ、『一緒にいたい』と言う気持ちが強かったのかも知れない。
「何だかどうも特殊に感じだよね? 人によって賛否が分かれる感じの家具だけど……」
事前に配られた写真を眺め、メアリ・ミナモト(は明るく元気に空を飛ぶ・d06603)が口を開く。
写真を見ただけでは、オシャレなアンティーク家具にしか見えず、クオリティも高いため、言われなければ骨を使っている事さえ気づく事がないだろう。
「人で家具を作って、しかもそれを送りつけるなんて……。都市伝説にまともさを求めてる訳じゃないけど、どういう奴なんだ」
信じられない様子で、越前・千尋(高校生ダンピール・d10175)が汗を流す。
都市伝説に捕えられてしまった人達のやった事を考えれば、自業自得のような気もするが、家具にされて送られる側の気持ちを考えると、放っておく事など出来ない。
「それにしても、嫉妬が、結果的にこういう事になるのですわね……。さすが、7つの大罪に数えられるだけあるわ。まぁ、ともかく、都市伝説と化した思念は断ち切るしかないわね」
都市伝説が確認された店に辿り着き、レナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・d01124)が警戒した様子で店内に入っていく。
店内は予想以上にカビ臭く、息をするだけで咳き込むほどであった。
「初めての依頼だけど、まあやれるだけの事をするか。しっかし、命を懸けた殺し合いができると思うとワクワクするな」
緊張した様子で辺りを見回しながら、黒夷・黒(虚ろな黒・d10402)が都市伝説を探す。
都市伝説は奥の作業場で、家具を作っている最中だったらしく、材料として使われる予定の男が、作業台に縛りつけられたまま、『こ、殺さないでくれ』と悲鳴をあげていた。
「そこまでだよっ!」
大声を上げて室内に飛び込み、山本・淳彦(小学生シャドウハンター・d10344)が都市伝説をジロリと睨む。
しかし、都市伝説は全く怯まない。
それどころか、『仕事の邪魔だ』と言って、追っ払おうとした。
「こっちも『はい、そうですか』と言って、引き下がる訳にはいかないんでな」
都市伝説と対峙しながら、鳴神・月人(一刀・d03301)が言い放つ。
だが、都市伝説はまるで興味なし。
嫌悪感をあらわにしつつ、『気が散るから帰ってくれ』と吐き捨てた。
「残念ながら、そういう訳にもいかないんですよ」
冷ややかな目で都市伝説をにらみ、ウィクター・バックフィード(モノクロの殺刃貴・d10276)が眼鏡を外す。
それでも、都市伝説はまったく気にせず、男の体を解体しようとした。
●家具
「……って、ちょっと待って! このまま作業を始めたら、私達がすっごく騒いで、邪魔しちゃうよ」
ハッとした表情を浮かべ、メアリがわざと大声をあげる。
それに気を悪くした都市伝説が、『うるさい、黙れ!』と叫び、近くにあった物を投げつけた。
「とにかく、被害者を救出しないとな」
作業台に縛り付けられている男を助け出すため、ウィクターが都市伝説の気を引くようにして鏖殺領域を展開する。
しかし、都市伝説にとって、この男は商売道具であり、復讐を果たす相手。
そう簡単には手放すつもりがないらしく、作業台を守るようにして陣取っている。
「この人がヤッたコトも褒められたコトじゃないけど、死に値するかって言うと違う気がするっ。命タイセツ、生きていれば挽回のチャンスもあるかも知れないしな!」
都市伝説に狙いを定めるようにして、清純がバスタービームを撃ち込んだ。
「お前達は何も分かっていない。店が潰れた時、コイツはなんて言ったと思う? 『ようやく天罰が下ったんだ、ザマアミロ』だ。そんなヤツ、生きている価値なんてないだろ。しかも、こんな状況になっても、『俺は悪くない。店が潰れたのは、お前が気味の悪いモノを作っていたせいだ』と言いやがる」
明らかに不機嫌な様子で、都市伝説が男の足に鋸を置いた。
「うわあああ、し、死にたかねえよ。お前らも見ていないで早く助けよ。このクズが!」
男が吐き捨てた言葉に、ムッとする清純。
「おっちゃん、アレはおっちゃん達が悪口言ったりして家具職人さんを呪った『穴』。そーゆーのちゃんと自分に返ってくるっ。逆に善行もちゃーんと返ってくるって誰かエライ人が言ってた!!」
おそらく、こうなったのも、男が日頃からやっていた事の報い。
今まで家具にされた者達も、まわりから心配されていないため、決して良い人間ではなかったのだろう。
そう言えば、『居なくなって清々した』と言っている身内もいた。
もしかすると、この男の嫁だったのかも知れない。
「それ以上、悪態をつくようなら、俺は知らん。少しでも助けてほしいと言う気持ちがあるんだったら、しばらく黙っておけ」
イライラとした表情を浮かべ、月人が男に対して警告する。
それを聞いた男がだんまり。
何やら悪態をつくつもりでいたようだが、その言葉を慌ててゴクリと飲み込んだ。
「コマヒコ、行くよっ!」
霊犬のコマヒコに合図を送り、淳彦が男の救出に向かう。
すぐさま都市伝説がハンマーを掴んで振り上げたが、そのタイミングを見計らってコマヒコが喉元をがぶり。
「な、何故だ! 何故、邪魔をする」
納得がいかない様子で、都市伝説が問いかけた。
「あんたが作っているものに価値なんてないわ。人の骨を使ってさ、不謹慎よ。一遍死んで来たら?」
都市伝説を挑発しながら、レナが戦艦斬りを叩き込む。
だが、都市伝説は解体用の道具で攻撃を受け止め、『お前は何もわかっちゃいない。せっかく有効利用できるものを燃やして灰にする事が正しいと思っているのか』と吐き捨てた。
「つーか、おまえの作る家具のどこが良いのか、理解できねーんだよ!! この三流職人がッ!!」
都市伝説の心に突き刺す勢いでキッパリと言い放ち、黒が近距離から影縛りを仕掛ける。
それと同時に都市伝説がショックと影縛りの効果で動きを封じられ、悔しそうに唇を噛み締めた。
「……無事か?」
その間に千尋が作業台に縛り付けられていた男の縄を解き、どこか怪我をしていないか確認をする。
「遅ぇよ、ボケがっ! てめえら、纏めて訴えてやるからな!」
男はそう吐き捨てて、その場を後にした。
●都市伝説
「……ふん、これで満足か。ああいう奴なんだよ、アイツは! まあいい。この責任は取ってもらう。お前達の体で、な」
ようやく動けるようになった都市伝説は、殺気に満ちた様子でハンマーを握りしめる。
まずは砕いて、次に切断。
だが、鋸では切断面が美しくない。
チェーンソーも論外。
とりあえず、きちんと砕いてから、考えた方が良さそうであると言う結論に達し、ハンマーのスイングにも力が入る。
「ひょっとして、あの人の代わりって……事?」
嫌な予感が脳裏を過り、メアリがダラリと汗を流す。
「ああ、その通りだ。机に椅子、それと棚だな」
メアリ達を品定めした後、都市伝説が頭の中に思い描いた家具を、図面にさらさらと描いていく。
それはとってもオシャレであったが、自分の体が材料になる事を考えると、背筋にゾッと寒気が走る。
「机とか、棚とか、物騒な事を言わないでください」
心の中で『誰が棚になるんだろう』と思いつつ、淳彦が都市伝説を叱りつけた。
横にいたコマヒコも何やら怖い考えが脳裏を過ったらしく、ブンブンと頭を大きく振っている。
「まあ、相手はここの主だった奴のニセモノ。だったら、こっちも遠慮する事はねえだろ」
全く躊躇う事なく、月人がティアーズリッパーを放つ。
都市伝説も即座に鋸で応戦するが、この状況では明らかに分が悪い。
「とにかく、本物が去った後なんで、あんた達を倒すまでよ」
都市伝説に対して言い放ち、レナが戦艦斬りを炸裂させた。
その言葉を聞いた都市伝説が『いや、俺こそ本物。偽物はあいつだ!』と反論する。
おそらく、骨で作った家具を作り続けているという意味で、自分の方が本物であると主張したいのだろう。
「どっちにしても、家具になるのはお断り。例え、冗談だったとしても、笑えないから」
都市伝説が振り回す鋸を避けつつ、清純がその脇腹めがけてロケットスマッシュを叩き込む。
その一撃を食らって都市伝説が両目をカッと見開き、訳の分からない言葉を言って泡を吐く。
「それだけの腕があれば、もっと別の道を歩む事が出来たはずなのに……、残念です」
どこか悲しげな表情を浮かべ、ウィクターが居合斬りを放つ。
それと同時に都市伝説の体が真っ二つに両断され、大量の血を撒き散らして崩れ落ちた。
「あー疲れた、もう当分依頼はしなくて良いや」
都市伝説が消滅した事を確認し、黒がやれやれと首を横に振る。
一応、襲われていた男を助ける事は出来たが、去り際に悪態をつかれる始末。
そのせいか、何となくスッキリしない。
「既に送られた家具が回収できるといいのだけど……」
複雑な気持ちになりながら、レナが深い溜息をもらす。
だが、どの家具も老人ホームなどで愛用されているため、回収する事は難しそうである。
どちらにしても、今回の事件が明るみにならない限り、こういったものが回収される事もないだろう。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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