フェチズムハント ~情熱のパンチラリズム~

    作者:空白革命

    ●今年の秋はパンツが熱い!
     薄暗い部屋の中、男は机に両肘をついていた。顔の前で手を組み、ゆるく背を丸めている。
     彼はサングラス(ミレニアムデザイン)をきらりと光らせ、低い声で言った。
    「今回の議題は、『いかにして罪の云われなきパンチラを拝むかについて』だ。提案者の浴張君」
    「はい……」
     椅子を引いて立ち上がるやせ形の男。
    「古来より、スカートの中を見た男性は須らくバッシングされ、場合によっては損害賠償を要求されるケースも少なくありません。たとえそれが見せパンやブルマであっても同じこと。目の前で体育座りしてスカートをバサバサと煽いで中に風を入れている時でさえ、『見てんじゃねえよ変態!』という視線をこちらに向けてくる始末!」
    「そうだそうだ!」
    「見せていいんなら見せろってんだ!」
    「だが皆さん、こうは考えられませんか。見せてOKのパンツなら良いのではなく……見せてOKの相手だから良いのだと」
    「……何?」
    「いいですか。我々は普段何気なく行動し、デパートのエスカレーターや校舎の外階段に潜み日夜パンチラを拝もうと努力を重ねていますが」
    「いやそこまで努力しては……」
    「もし大胆に女性に話しかけ、直接『パンツを見せてくれませんか』と頼んだらどうでしょう!?」
    「「…………!?」」
    「しかもただ頼むのではありません。クラスのイケメンを用意し、人通りの少ない所で頼ませる。それを我々は物陰からこっそりと……!」
    「おい浴張」
    「はい勿論カメラのシャッター音は消してですね」
    「帰れ」

     がらがらぴっしゃん。
     教室から蹴りだされ、浴張君はぼけーっとした顔で閉まる扉を眺めていた。
    「何故だ、完璧なプランだった筈……何故認められない、何故……何故俺は……俺わあああああああああああああ!!」
     ごろごろぴしゃーん!
     背景に雷が走る!
     どころか浴張君にも雷が落ち、スケルトン状態が明滅する!
    「ンンギャアアアアアアアアッ!?」
     人間なら死んでる所だ!
     だがしかし!
     彼の腰はきゅっと引き締まり角みたいなものが生え服は皮のズボンと袖なしジーンズを素肌の上に直接羽織ったものになり乳首にはハート型のシールが張られ顔はキラキラしたイケメンフェイスへとゴキャゴキャっと変化したではないか!
     そして指をピストル型にし、顎のラインに沿うように構えるとイケメンヴォイスで呟いた。
    「こうなったら俺自身がイケメンになって……『パンツ見せて下さい作戦』を証明するしか、ない!」
     特に意味も無く窓を開ける!
     そして飛び立つ!
     当然の様に落ちる!
     頭から地面に突っ込んで足をもがもがさせ、苦労して這い出た彼は天を仰ぎ見た。
    「待っていたまえ美少女たちよ、今俺がパンツ見てあげるからねえええええっ!」
     そしてワイヤーアクションみたいな動きでくるくる回りながら駆けだして行ったのだった。
     
    ●チラリズム祭り
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は真剣な顔で雑誌を開いていた。
     よくある中学生がちょっぴり背伸びしたがる時期に読むというティーンズ雑誌で、その中ほどにビミョーなスペースをとって存在している『都内パンチラスポット百連発』とかいう頭の悪い記事を凝視していた。ちなみに文章オンリーの記事で、写真とかは無い。
    「まあ……男が男である以上、さけては通れない問題っていうものはある……あるが……だからと言ってダークネスになってまで叶えたい希望じゃあないな……」
     なんでも、パンチラ見たいがために一般人がダークネスになったというどこまでも頭の悪い事件が起こったらしい。
     種別は淫魔。といっても望みが望みだったために人間部分がビミョーに残っていて、今なら倒せるんじゃね? という状態であるという。
     
     名前は浴張・介兵衛。
     パンチラの為に闇落ちした男。
     だが『じゃあパンツ見せたらいいんじゃね?』という安易な問題ではないのだ。
     確かに彼はその執着故にパンチラに強い興味を示し、集中がブレることがあるらしいが……いざ実物を見てしまうとテンションゲージが振り切れ、ヒートアップ状態になってしまうのだ。しかもそれがパンツじゃなかったり恥ずかしくない系のヤツだったら今度は怒りのゲージが振り切れてヒートアップだというのだ!
    「そう……狙うは『見えそうで見えないライン』! 見えそうな具合で注意を反らし、しかし決して見せないギリギリの峠を攻め続けるんだ!」
     真面目な顔してなんか頭の悪いことを言うザキヤマさんである。
    「非常に難しいことかもしれない。だが……だが灼滅者ならできる、筈だ!」


    参加者
    タシュラフェル・メーベルナッハ(夜の誘い子・d00216)
    脇坂・朱里(胡蝶の館の女主人・d00235)
    秋篠・誠士郎(流青・d00236)
    陽乃下・のどか(ぷにたまいちご・d00582)
    龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)
    圷・虎介(声音天の如く・d04194)
    鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)
    薬王寺・詞乃(高校生魔法使い・d07236)

    ■リプレイ

    ●階段の下でスクワット始める男子にはジャストビュー・パンツ・デスロック(GPD)!
     『冬までミニスカートをはく理由が分からない』という意見自体が古くなって久しい昨今。
     一部ではパンツじゃなければ恥ずかしくないなどと言う正気を疑うような言葉も流行りはじめ世は空前のパンチラブームが到来している……などと、低俗な雑誌ライターが煙草をふかしながら述べていたのもなんと五年前。
     もはやパンチラ自体の価値を喪失しはじめ『見えているが何か問題があるのか?』とでも言うように堂々とパンツ推しにかかる企業がある程だが……さておき。
    「何も思うことは無いな……」
    「そうだな……」
     秋篠・誠士郎(流青・d00236)と圷・虎介(声音天の如く・d04194)は武器を肩に担ぎ、前を向いて歩きつつそんなことを言い合った。
     こう、大人になって飲みの席で『バストサイズはどのラインが理想か』みたいな話が出ても興味なさそうに端で手酌しているタイプの男達である。
     こういう男子は大きく二通りに分かれていて……。
    「学園にも全裸同前の女がたまにいるが、言われる程反応せんな」
    「最初からクライマックス状態っ」
     後ろをスライドインする鈴鹿・幽魅(百合籠の君・d04365)。
     とりあえずボディラインを見せるポーズをしながらスライドアウト。
    「と言うことで今日はスカートを付随してみました、ちらっ」
     正面に回って指でつまみ上げてみる幽魅。
     顔をそむけ、頬を朱に染めながら眼鏡を手で覆う誠士郎。
    「っ……俺は何も見ていない」
    「このように、性欲が無さ過ぎてあらぬ疑惑をかけられるタイプと、無理に目を反らしてムッツリ疑惑をかけられるタイプの二つに分かれるのです」
    「俺達を例に使うのをやめろ」
    「はあ……パンツが視たいならいくらでも見せてあげるんだけど」
     両手を雨粒に翳すかのような姿勢で天に向けて呟くタシュラフェル・メーベルナッハ(夜の誘い子・d00216)。
     ボイスだけカットすると美しい光景な筈なのだが。
    「チラッと見えるパンツは、浪漫よねぇ……まあ私としては中身に興味がある訳だけど」
    「「…………」」
     例の姿勢のまま手をわきわきさせるタシュラフェル。目を反らす男子。
     古来より。
     女子のマジな猥談は男子をドン引きさせるものである。
     そんな彼らを無視して絶好調に真冬の恋スピードに乗る女子たち。
     脇坂・朱里(胡蝶の館の女主人・d00235)は頬に手を当てて首を傾げた。
    「そもそも、ちらりと見えなければパンチラにカウントされないんでしょうか?」
    「美しい音楽も、音量を上げ過ぎると騒音になってしまうもの……ワビサビと貞淑さをもったパンチラでこそ胸がときめくというものじゃ。日の出と日の入りは美しいが、登り切ってしまえばそれはただの太陽じゃろう?」
     目の奥で何かギラギラさせる薬王寺・詞乃(高校生魔法使い・d07236)。
    「……そこまでして見たいものですか。というかそこまで語るものですか」
    「かくいうわらわもパンチラ拝みに来たようなもの。淫魔退治はそのついでと言っても過言ではない」
    「そこは過言にしておいてくださいな」
    「「…………」」
     沈黙のまま地面を睨み続ける男子たち。
     そんな彼等の後ろで、陽乃下・のどか(ぷにたまいちご・d00582)と龍宮・巫女(貫天緑龍・d01423)が肩を並べて語らっていた。
    「たまーにいるよね、階段上ってる時に下から見てる男子とか。サイテー」
    「しかもそれを理由に闇落ちだなんて、ロクでもないダークネスね本当」
     ねー、と言って頷き合う二人。
     真面目な男子たちは、この世にまだ居場所はあるのだと言う顔をして、空を見上げたのだった。

    ●パンツヒーローさん出番です!
    「そこの君達、パンツを見せてくれたまえ! そうできるだけ……微細に!」
     頭にパンツ被ったイケメンが首ブリッジして道を塞いでいた。
     上半身裸(お子様の目に触れさせない倫理的配慮により乳首はハートシールで保護しております)に革のパンツ(ズボン的なもの)をはいた男がそんなことしていれば、そりゃイケメンでなくても――。
    「せっ!」
    「めらみっ!」
     顔面爪先キックを食らおうと言うものである。
     巫女はその姿勢のまま槍をつきつけ妖冷弾を乱射。陸に上げたばかりのトビウオみたくびっちびっち跳ねる男にありったけの弾を叩き込んでやった。
     膝上五センチという、彼女にしては割と短めのスカートをはいてきたのだが、ここは見せないようにしっかり丈を押さえての攻撃である。見えたとしても太腿の全面程度だと思って頂きたい。
    「限度ってものがあるでしょ、いくらなんでもっ」
    「そうじゃそうじゃ、そこは静かに前に屈みこんでじゃな」
    「いっそのこと強制的に捲ったらいいんじゃない?」
    「そうですわね、如何なるときも礼節をもってパンチラを頼まねば」
     巫女の後ろ(現在ノーガード)にタシュラフェル、詞乃、幽魅の三人が屈みこんでいた。
     慌ててお尻側を刀で抑える巫女。
    「ちょ、ちょっと何やってんのよ!」
    「鑑賞!」
    「撮影!」
    「盗撮!」
    「全部やめて!」
    「そこの君ちょっとたくしあげてくれたまえ三万円払うから!」
    「あなたは黙ってて!」
     前後から繰り出される予想外の攻撃(?)に振り回される巫女。
     そうして生まれた偶発的なチラリズム(記録マイナス3cm)に男はいつくしむように目を細めた。
     実に今更だが彼が浴張介兵衛。淫魔である。
    「…………」
     そんな彼(首ブリッジ体勢)の真横に立ち、バスターライフルを逆向きに持つ誠士郎。
     駅のホームでおじさんがやってるみたいにゴルフっぽく振り上げると。
    「飛べ」
    「べほまっ!」
     フルスイングでかっ飛ばした。
     きりもみして宙を舞う介兵衛に狙ったように六文銭射撃を仕掛ける花(霊犬)。
    「猥褻物陳列罪……」
     虎介は落下地点を予測して鎌をバットのように構えた。先端まで炎を纏わせる。
    「何故だろうな、その顔を見ると無性に腹が立つっ」
    「ざらきっ!」
     そしてフルスイング。
     腰の辺りをゴキャっと圧し折りながら再びかっ飛ばされる介兵衛。
    「下手なことをする前にさっさとケリをつけてしまってくれ」
    「任せて! がつーんと行くよー!」
     高く飛び上がったのどかが空中で反転しキック態勢をとった。
     空中であるにも関わらず制動をかける介兵衛。
    「甘い、この私が一方的にやられてばかりだと思うか!」
     僅かに翻るスカート。
     目を限界まで開く介兵衛。
    「この学校の制服なんてこんなにスカート短いの、神経疑うよ! 京都名物、抹茶キック!」
    「まひゃど!」
     鎌倉にある某学園も似たような悩みを抱えていると聞くがそれはさておき空中ドロップキックを繰り出すのどか。
     揃えた両足が介兵衛の顔面に炸裂。彼ははげしく縦回転しながらその辺の外壁に激突した。
    「く……見えたと思ったら……粉抹茶がまき散らされて目が……避けそこなった」
    「…………」
     男のサガなのかもしれん。
     が、そう言う事情は朱里にはどうでもよいことである。
     彼女はギターのネックを鈍器持ちすると、じりじりとすり足で間合いを詰めていった。
    「闇落ちしてまでパンチラを狙うとか、女性の敵です。男性として恥ずかしいとは思わなかったのでしょうか? その衣装もおかしいですし」
    「…………」
     顔に靴跡つけたまますっくと立ち上がる介兵衛。
     そして何処からともなく眼鏡を取り出すとちゃきっと装着した。
    「女性から蔑んだ眼で見られるのは、相手にもよるが興奮する」
    「せいっ」
    「べぎらごんっ!」
     側頭部めがけてギターを叩き込む朱里。
     介兵衛は物理的におかしい縦回転バウンドをおこしながらその辺の壁に突っ込んで行ったのだった。

    ●まだまだ行くわよ(HEAT UP)!
    「さてここからの時間稼ぎは」
    「放蕩部のわらわ達に任せて貰おうか」
     背を向け合ってアシンメトリーに並び、同時に髪をかきあげるタシュラフェル・アンド・詞乃。
     まず二人は胸元を大胆に開いて腰をきゅっと曲げると、二人同時に胸の谷間をチラ見せし始めた。
    「わらわは和服で普段やっとることじゃが、制服でやると斬新じゃのー」
    「さあ、どう反応するのかしら」
    「胸の谷間をチラ見せする、か――」
     介兵衛は中指と薬指だけを折る独特のサインで腕をクロスさせると、謎のイケメンポーズをとった。
    「甘いッッッッッ!!」
    「「きゃっ」」
     二人の間をたったの一瞬で駆け抜け、翼を広げたような姿勢で背後1mで停止した。
    「パンチラ以外に……興味はありません」
     その風圧で若干だけ舞い上がる二人のスカート。
     特にタシュラフェルの黒いレースショーツにはスリット加工がされていて二段階のチラリズムを演出していた。
     目から光線出るんじゃないかってくらいの勢いで振り返る介兵衛。
    「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!」
     手をあのサインにしたまま身体を思い切り仰け反らせて叫ぶと、全身からピンクのオーラを噴き上がらせた。
     身構える虎介と誠士郎。
    「まずい、自力でヒートアップしたか!」
    「まだ第一段階だ、今の内に潰すぞ!」
     高速で地を駆け、デスサイズを繰り出す虎介。
     対して介兵衛は人差指と親指でブレードを掴み取って固定。
     手斧で上段から紅蓮斬を繰り出してきた誠士郎に対しても同じようにブレードをキャッチ。
     身体の前で腕を十字に交差するような姿勢でそんな防御行動をとって見せると、介兵衛はにやりと笑った。
    「男にも興味はありません。可愛く女装して出直してきなさい!」
     目にもとまらぬ高速回転を開始。独楽に弾かれるかのごとく吹き飛ばされる二人だが、その程度で諦める彼等でもない。
    「クールダウンさせるぞ、花っ!」
    「きゃん!」
     誠士郎は花(霊犬)と共にビームと六文銭で牽制射撃。
     それを高速回転で次々に弾く介兵衛。しかし連続で射撃を受け続ければ軸もブレようというもの。
    「合法に見たいなら恋人を作れ。もしくはそういう店に行け。一般人に迷惑をかけるな」
     虎介がトドメとばかりに影喰らいを繰り出し、高速回転を無理やり止めた。「さ、今の内に気を反らして戦力を落とすのです」
    「よし。ほーれほれこっちじゃこっち、もう少しで見えそうじゃ!」
     詞乃がスカートの裾を振りながらスターンスターンとスキップをし始めた。
    「はっ……!」
     首ブリッジで振り返る介兵衛。
    「はっ……!」
     匍匐前進でカメラを構える幽魅。
    「はっ……!?」
     そのカメラを全力の蹴りで破壊する巫女。
    「おっと、こっちに集中してる場合じゃなかったわね!」
     巫女は素早くその場から飛ぶと、首ブリッジ姿勢の介兵衛に雲耀剣を叩き込んだ。
     咄嗟に手を出して白羽取りする介兵衛。
     するとそこへ、朱里が大きく踏み込んでギターに炎を纏わせた。
    「援護します!」
    「はっ……!」
    「はっ……!」
     目をぎらつかせて振り返る介兵衛と幽魅。
     朱里は視線を感じて足を止め。
    「あら、和服にも興味があるんですか?」
    「…………ギリギリ」
    「せっ」
    「ぱるぷんてっ!」
     腰のあたりにレーヴァテインを叩き込む朱里。そのタイミングを狙って巫女が居合斬りを入れた。
     くるくる吹っ飛ぶ介兵衛に、今度はサッカーゴール前でシュートを狙う選手の如く構えるのどか。
    「必殺、京料理ダイナミック!」
     飛んできた介兵衛に膝をワントラップ入れ、頭上高らかに投げ飛ばす。
     食べ終わるまで御代を言わない一見さんお断り店の雰囲気と味わいが広がり異様にドキドキとした気持ちになった。
    「ぐはぁ!」
     顔から地面に落下し、ぐしゃりと潰れる介兵衛。
     そんな彼に歩み寄り、タシュラフェルは影業を構えた。
    「パンチラは……狙ってみるものでも、ましてお願いして見せて貰うものでもないわ」
    「な……に……」
    「ふとした一瞬に垣間見える偶然の浪漫。それが本当のパンチラってものでしょう」
    「本当のパンチラ……」
     ふっと笑うタシュラフェル。
    「パンチラとは、一期一会!」
    「――!?」
     ビシャアアアアアン(心に雷がおちた音です)。
    「そ、そうだった。パンチラの真髄を忘れて僕は……何と言う失態!」
     膝をつき、地面を叩く介兵衛。
    「ごめんね、トドメ……ささせてもらうね」
     歩み寄り、ハンマーを高く高く振り上げるのどか。
     そんな時ふと。
     一陣の風が吹いた。

    ●求道者、浴張介兵衛。
    「ピンクの水玉か……」
    「勝負下着でした……」
     二人で遠い空を眺める詞乃とのどか。
     そんな彼女達の背後では、浴張介兵衛がひとりヒーリングライトをしていた。
     両手を天に翳し、幸福の表情で天を仰いでいる。
     キラキラとした光が彼の周りにだけ降っていた。
    「……どうするんだ、あれ」
    「……俺に聞かれてもな」
     そんな彼を真顔で見つめる誠士郎と虎介。
    「まさか偶然灼滅者になるとは」
    「灼滅されていればいいものを」
     頬に手を当てる朱里。
    「恥ずかしい恰好で放置するというのはどうでしょう」
    「さりげなくエグいことを……」
     と言うか、今現在十分に恥ずかしい恰好なので、場合によっては本人が喜んでしまう危険性があった。
     恐るべし変態。
     介兵衛はくぅるりと腰だけ捻じって器用に振り返ると、爽やかな笑みをよこしてきた。
     性癖と恰好を除くと爽やか系イケメンなのが彼のムカつくところである。
    「さあ行こうか、君達の過ごす学え」
    「お断りします」
     軽やかに笑顔でお断りする幽魅。
     ボイスカットしてみると似たような恰好した半裸の二人が笑顔で語らっているという、実にシュールな光景なのだが。
     そこへすすっと割り込んでみるタシュラフェル。
    「んー、私はちょっと面白いと思うんだけど……寧ろ、中身の女の子に興味はないの? 私なら、いいのよ?」
    「お断りします」
     爽やかな笑顔で振り返る介兵衛。
    「僕は中身には興味は無い。と言うか、パンチラ以外には興味が無い」
    「そう、ストイックなのね」
    「絶対違うと思うが……」
    「まあ、引き取り手が居なければこのまま簀巻きにしてどこかに放置するコースだな」
    「そうですね。花でも活けておきましょうか」
    「じゃあまあ、撤収ということで……」
     などと一同が帰ろうとした、その時。
     くるり、とのどかが振り返った。
     手には額縁に収まった和紙が一枚。大胆な筆文字で、こう書かれていた。
     『祭り応募』。
    「ハハッ!」
    「「………………ぇっ」」
     皆の時間が、ぴたりと止まった。

     この日、究極のパンチラを追い求める灼滅者が学園に生まれてしまった。
     過去最大の『どうすんのこいつ感』と共に。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 3/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 17
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