●都内某所
沢山の女性を殺して自らの命を断った男が住んでいた家があった。
この屋敷の主は莫大な遺産残して亡くなってしまったらしく、その遺産を食い潰すようににして一人息子が使い、ナンパした女性を家に連れ込んでは閉じ込めて拷問し、その命を奪っていたようである。
だが、いつの頃からか奇病に掛かり、全身に人型の瘤が出来るようになった。
それは彼が殺した女性の姿をしており、夜な夜な恨み言を吐いて、男を苦しめていたらしい。
そのため、男はその声を黙らせるため、自らの命を断った……。
「そんな噂から生まれたのが、今回の都市伝説だ。まあ、実際には不治の病に掛かって、それを悲観して自ら命を断ったらしいが……」
当時の新聞記事をテーブルの上に置き、神崎・ヤマトが深い溜息をもらす。
今回、倒すべき相手は、人型の瘤を持った都市都市伝説。
コイツの体にはいくつも瘤があり、それが女性の姿をしている。
女性達は涙を浮かべて助けを求めているが、実際には都市伝説の体の一部だ。
それでも、普通の人間ならば女性に同情してしまうほどの熱演ぶり。
だからと言って迂闊に近づけば、肉を喰いちぎられてしまう。
……お前達を食らう事で体が再生すると信じてな。
ただし、彼女達を放っておくと、妙な罪悪感が生まれてしまうので、早めに倒した方がいいだろう。
それと都市伝説についてだが、異常なほど回復が早く、毒の塊を飛ばして攻撃を仕掛けてくる。
この毒はマヒ効果があるから、くれぐれも当たらないようにして、戦ってくれ。
参加者 | |
---|---|
榛原・一哉(箱庭少年・d01239) |
笠井・匡(白豹・d01472) |
神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084) |
水無瀬・楸(黒の片翼・d05569) |
及川・翔子(剣客・d06467) |
空星・あぎな(エイリアンヒーロー・d07603) |
ムウ・ヴェステンボルク(闇夜の銀閃・d07627) |
九重・木葉(いそがずまわる・d10342) |
●偽りの命
「ナンパはまだしも、外道な所業は許せないねぇ。女の子は愛でてなんぼでしょーに……。ただし、生身に限るけどね」
クスクスと笑いながら、水無瀬・楸(黒の片翼・d05569)が都市伝説の確認された場所にむかう。
しかも都市伝説の身体には、殺害された女性が同化しているような感じになっている。
もちろん、それは実際に殺害された女性ではなく、都市伝説が作り出したものなのだが、その事が分からず戦う事になっていたとしたら、かなりの苦戦を強いられた事だろう。
「ならば、あの悲鳴の主が……、都市伝説か」
何処からか悲鳴が聞こえてきたため、空星・あぎな(エイリアンヒーロー・d07603)がライドキャリバーに飛び乗って走り出す。
その場所に都市伝説がいた。
まわりにはシーツで身体を隠すようにして、何人かの女性が座り込んでいる。
しかし、その体は血で濡れており、一見すると都市伝説に襲われていたように見えた。
「うわっ……、すごい熱演。ちょっと不謹慎かもだけど……」
一定の距離を取りながら、九重・木葉(いそがずまわる・d10342)が感心した様子で口を開く。
だが、女性達がボロボロと涙をこぼして助けを求めているため、とても演技をしているようには見えなかった。
「ハァ……、ここまでリアルだと物凄くやりづらい……」
複雑な気持ちになりながら、ムウ・ヴェステンボルク(闇夜の銀閃・d07627)が女性達に視線を送る。
いくら都市伝説と身体とは言え、相手が女性の姿をしているせいか、どうしても罪悪感が生まれてしまう。それだけリアルなせいかも知れない。
「あー、なんか昔漫画とかで読んだ気がする。人面疽……だっけ? そう考えると、物凄くキモイ! 女とかその前にお前ら元々人間ですらないじゃん! 女の子の形してるからって同情してもらえるとか思うなよ! ボンキュボン体型ですべての男が釣れると思うな! 僕の好みは凹凸の少ない幼児体型だっ!! 求む合法ロリ――!!」
自らの思いを吐き出すようにして、笠井・匡(白豹・d01472)が絶叫をあげた。
これには、女性達もドン引き。
今にも『おまわりさん、この人ですっ!』と言って、警察に通報しそうな勢いである。
匡もここまで口にするつもりがなかったため、『しまった!?』と言わんばかりに自分の口を押えていた。
「まあ、いくら助けを求めたとしても、私達には救う事なんて出来ないわ。だから同情もしない。せめて、無に還してあげましょう」
女性達に語りかけながら、及川・翔子(剣客・d06467)がスレイヤーカードを解除する。
その言葉を聞いた途端、女性達が『こ、殺さないで! 死にたくない!』と騒いだが、翔子の耳には……心には届いていない。
「はははっ! コイツは驚きだな。まさか、人質を見捨てちまうとは! 最低最悪、人の命をゴミとしか思わない。それで正義の味方かァ!?」
高笑いを響かせながら、都市伝説が翔子達を挑発した。
もちろん、それは翔子達を動揺させるため。
少しでも迷いが生じれば、そのぶん有利に戦える。
「一般の方々を騙してまでの都市伝説さんのご凶行、許されるものではありません。成敗させていただきます」
都市伝説をジロリと睨みつけ、神宮寺・琴音(金の閃姫・d02084)が言い放つ。
それでも、都市伝説は『一体、何を言っているのか分からねえな。まあ、どっちにしても、お前達が妙なマネをしたら、死ぬぜ、この女達』と警告をする。
「一体、何を言っているのやら……。まあ、適当に頑張るよ。……負けるつもりは、さらさらないし」
全く興味がない様子で、榛原・一哉(箱庭少年・d01239)がさらりと流す。
その言葉を聞いた女性達が『……酷い。どうして、そんな事が言えるの?』と言ってボロボロと涙を流した。
●人質
「女の子に泣かれるのはちょっとうろたえるけど、こいつ等じゃなー。『人』じゃない相手じゃ、何の感情も抱く訳ないでしょー?」
苦笑いを浮かべながら、楸が都市伝説にティアーズリッパーを放つ。
その途端、一番近くにいた女性が『きゃああ、痛いっ! 痛いっ! それは私の腕よぉ!』と悲鳴を上げた。
「いまさら、そんな事を言っても無駄です」
『神宮寺琴音、推して参る』と呟いた後、琴音もティアーズリッパーを炸裂させた。
次の瞬間、女性の顔が苦悶の表情を浮かべて宙を舞い、匡の足元までコロコロと転がっていく。
「俺……この戦いが終わったら、水無瀬くんの中学生の妹さん紹介してもらうんだ」
足元の転がった女性の首と目が合い、匡がほんのりと現実逃避をし始める。
都市伝説の一部であると分かっていても、見た目が本物そっくりなため、あまりいい気分はしない。
例えるなら、救えるはずだった相手を見殺しにしてしまったような感覚にも似ている。
「ふふ、匡ちゃんったら懲りないんだから、そんなに俺に躾直されたいんだー?」
ニッコリと微笑みながら、楸が匡の肩をぽふりと叩く。
だが、目が全く笑っていない。
「とりあえず、死亡フラグが立つから止めようね」
苦笑いを浮かべながら、一哉が念のため匡に釘をさす。
しかし、匡は軽くスルー。
おそらく、妄想世界にダイブし、現実をシャットダウンしているのだろう。
「……って、いつまで現実逃避しているの。そろそろ、こっちを手伝だって!」
都市伝説の相手をしながら、翔子がダラリと汗を流す。
先程から都市伝説は女性を盾代わりに使っており、傷つくたびに大声を上げて泣き叫ぶため、色々な意味でやりづらかった。
もちろん、それが都市伝説の一部であると分かっているので罪悪感はないのだが、彼女達が悲鳴を上げるたび自分が人殺しになったような錯覚に陥ってしまう。
「おいおい、ここにはネジの外れたヤバイ奴らしかいねえのか? 可哀想だと思うのが普通だろうがっ!」
信じられない様子で、都市伝説が叱りつける。
都市伝説にとっては、予想外であった。
これでは、どう頑張っても、勝ち目がない。
「あはは、そーんなお涙頂戴に引っ掛る訳ないじゃん。人間を喰って助かろうとするなんて、立派な化け物だし?」
皮肉混じりに呟きながら、楸がレーヴァテインを叩き込む。
その途端、女性が楸の腕に噛みつこうとしたが、既に切断された後。
それに気づいた時には、まるでボールのように転がる事しか出来なかった。
(「他人を犠牲にすれば元に戻れるって信じてるんだよね―なんか可哀想だなあ。……いや、夢のさめないうちに、終わらせてあげれば幸せかもなあ……」)
自分自身に言い聞かせ、木葉が武器を握る手に力を込める。
その間も女性達が悲しげな表情を浮かべて助けを求めていたが、ここで油断して助けに行けば、すぐさまガブリ。
「何も聞こえねえよっ!」
耳栓を付けたままライドキャリバーで突撃し、あぎながご当地ダイナミックを炸裂させた。
そのたび、女性達の悲鳴が辺りに響く。
あまりの痛みに白目を剥き、激しく首を振りながら……。
「……これで最後だ」
ギルティクロスで女性の首を刎ね、ムウが都市伝説に冷たい視線を送る。
それと同時に都市伝説が『しねえええ』と叫んで、毒を含んだ唾を吐いてきた。
●都市伝説
「うわ、んな得体の知れんもん飛ばしてくんなっ」
ハッとした表情を浮かべ、楸が慌てて後ろに下がる。
その途端、地面に落ちた唾がジュッと嫌な音を立て、真っ白な煙と共に刺激臭を撒き散らす。
「マヒ毒か。でも、当たらなければ、意味がないよね」
素早い身のこなしで距離を縮め、木葉が瞳の奥に冷たい光を放ちながら、都市伝説に爆裂手裏剣を投げつけた。
「それに、例えマヒしても、すぐに治すから安心してね」
仲間達に声を掛けながら、一哉がマジックミサイルで援護する。
それでも、都市伝説が唾を吐こうとしたが、それよりも早く琴音が懐に潜り込んでいた。
「今までの狼藉、その身で贖っていただきます。成敗です、成敗」
都市伝説に対して言い放ち、琴音が都市伝説に戦艦斬りを叩き込む。
それと同時に都市伝説が『嫌だ、死にたくねえ』と叫び、血の泡を吐いて跡形もなく消滅した。
「これは都市伝説だ。……だから、俺は悪くねぇ……」
都市伝説が消滅した途端、あぎなが激しい罪悪感に襲われ、気まずい様子で視線をそらす。
あの感覚は間違いなく人間……。
耳栓をしていたおかげで悲鳴は聞こえなかったが、女性達が最後に見せた表情も、演技ではなく本物のように見えた。
「……」
その横でムウが都市伝説のいた場所に立ち、ゆっくりと目を閉じて合掌する。
いくら相手が都市伝説とは言え、それが偽りの魂であるとは言え、命を奪った事には変わりがないのだから……。
「人に救いを求める事は間違いではないけれど、救いを求める力が残っているのならもっと足掻くべきだったわね」
深い溜息をつきながら、翔子がサッと背を向ける。
それに、いくら考えたところで、マイナスの感情しか生まれない。
「よっし、終わった――! いま帰るから待っててね! 水無瀬くんの妹さ――ん!!」
一気にテンションを上げながら、匡が何もかも忘れて走り出す。
もちろん、楸から警告された事も覚えていない。
そんなものは苦悶の表情を浮かべた女性の顔と一緒にポイッである。
だが、楸の家を知らないため、向かっているのは逆方向。
その背中を見送る楸のこめかみが激しくピクついていた。
おそらく、匡が家の場所を聞くため、Uターンして戻ってくる頃には、怒りもピークに達している事だろう。
その事に気付かぬまま、匡が明後日の方向に走り去っていくのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年11月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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