みんな仲良く♪

     武蔵坂学園から、それほど離れていない場所に『甘味処“清嶺地”』はある。
     この店の名物は、美味しい日本茶と、草団子。
     アットホームな雰囲気が売りの店で、そのおかげもあってか学園の生徒や近所の住民などが気軽に立ち寄っている。
     この店は清嶺地・悠里(忘れえぬ誓い・d08111)の母親が営んでいて、悠里自身も店の手伝いをしたり、友達との活動の拠点に使用したりしているようだ。
     そんな『甘味処“清嶺地”』を貸し切って、灼滅者達の親睦会が行われる事になったのだが、そのお手伝いをしてくれる人を探しているらしく、学園の掲示板には募集の貼り紙が貼られていた。
     まず必要なのは、日本茶と草団子以外の料理や飲み物など。つまり買い出し。せっかくの親睦会だから、普段店のメニューとして取り扱っていない物もいろいろ用意したい、ということのようだ。
     ただ、近所には最近、食べ物に飢えた猫達がウロついているらしい。食べ物を持っていると見ると、どこからともなく何匹も現れて近付いてきて、何かあげない限りどこまでも追いかけてくるのだという。
     しかし『甘味処“清嶺地”』に猫を連れて帰るわけにもいかない。ゆえに、誰かが猫達の相手をしている間に、この道を通り過ぎなければならないだろう。失敗すると、猫達にもふもふされて身動きが取れなくなってしまう。
     また、店内の飾りつけを手伝ってくれる人も募集中だ。
     悠里は買い出しを頼んだ後、店内で親睦会の準備をしているため、飾りつけ作業にも加わる予定だ。悠里と一緒に作業をしながら、親睦を深めるチャンスもあるかもしれない。それ以外にも、親睦会に必要そうな準備を手伝ってあげると、悠里に喜ばれるだろう。
     その張り紙とは別に、親睦会の参加者募集の張り紙も貼られている。もちろん親睦会なのだから、これが一番のメインだ。
     親睦会の内容は『甘味処“清嶺地”』のメニューや、この親睦会のために用意された料理などを食べつつ、みんなで楽しくお喋りしながら過ごすというもの。他に決まったプログラムは今のところないが、余興や提案があれば、当日直接してみるといいだろう。
     誰でも気軽に参加してほしい、という文章と、ほのぼのとした挿絵で、張り紙は締めくくられていた。

     
    ■このシナリオは『TRPGリプレイ連動シナリオ』です
     このシナリオは、11月20日に富士見書房から発売された、サイキックハーツTRPGリプレイ『灼滅者に涙はいらない』との連動シナリオです。
     今回登場した清嶺地・悠里(忘れえぬ誓い・d08111)は、この『灼滅者に涙はいらない』のメインキャラクターのひとりです。詳しくはリプレイを読んでみてくださいね!

    ●このシナリオは『参加無料』です
     みなさん気軽に右下の『参加する』をクリックし、参加してください。
     ただし、参加するには自分のキャラクターが必要です。まだキャラクターを持っていない人は、ここから作成してください。キャラクター作成も無料です。
     https://secure.tw4.jp/admission/

    ●リプレイには『抽選で選抜された100人』が描写されます
     このシナリオは学園シナリオです。参加者は必ずリプレイで描写される訳ではありませんが、冒険の過程や結果には反映されます。
     なお、今回のシナリオでは、抽選で選抜された100人のキャラクターが描写されます。抽選はトミーウォーカーが行います。

    ●2巻以降に登場してくれる人、募集!
     サイキックハーツTRPGシリーズは、今後も刊行される予定です。
     そこで『2巻以降のリプレイに登場していただける方』を募集します。登場してもいいよという方は、プレイングの1行目に、
    【TRPGリプレイ登場OK!】
     もしくは、
    【TRPGリプレイ登場OK!(闇堕ちもOK!)】
     という文章をコピー&ペーストしてください。
     今回の連動シナリオ4本のいずれかに参加し、プレイングの1行目にこう書いていた中から、FEARがキャラクターを選抜します。
     どのような形で登場するのかはFEARに一任となります。学園に通う生徒として事件に巻き込まれたり、重要な情報を教えるキャラクターになるかもしれません。闇堕ちもOKと書いたキャラクターは、ダークネスとして敵側に回ることもあるかもしれません(闇堕ち時の外見などをプレイングで指定しておくといいことがあるかも?)
     登場することになった場合でも、事前に連絡などは行われません。ご了承ください。


    ■リプレイ

    ●買い物とは選択の連続
    「甘味処だし、店に無い物を色々揃えた方が良いよな?」
     夏雪・了(夏の雪など在り得はしない・d00572)は仲間達を連れて、親睦会で出す食材の買い出しに来ていた。
    「……とは言ったものの何を買えばいいんだろう」
     普段から取り扱っていないものの基準が分からなかったため、織神・かごめ(籠に咲く彼岸花・d02423)が首を傾げる。
    「んー、親睦会なら軽く摘めるタイプの菓子がいいだろうな。ポテチに、クッキーに……ああ、煎餅なんかもいいか」
     籠の中にお菓子を入れながら、藤堂・丞(弦操舞踏・d03660)が答えを返す。
    「まあ、何がいいか分からんし、買えるだけ買っていこう。……自分が欲しいわけじゃないからな」
     色々な参加者が来る事を想定し、水樹・葵(鳴らない鈴の音・d04242)が黙々とお菓子を籠の中に入れていく。
    「でも、どうせなら、自分の好きなお菓子と、飲み物を買った方が良さそうですね」
     ポテトチップスとコーラを入れた後、犬神・寧々(中学生神薙使い・d00041)が桃ゼリーを買い込んだ。
    「だったら、俺は愛媛のご当地お菓子である『みかん』や『みかんジュース』だな」
     満面の笑みを浮かべながら、源・頼仁(伊予守ライジン・d07983)がみかんを手に取った。
    「いや、だからと言ってミカンばかりも駄目だろう。ふん、仕方あるまい。この私、自ら茶菓子を用意してやろう」
     英国のアフタヌーンティーを準備するため、静永・エイジ(彷徨のウィーラーフ・d06387)が店を出る。
    「……うーん……」
     そんな中、一乃瀬・慶(瞳に映るは、瑠璃色なる都。・d04595)は悩んでいた。
     右手にはショコラティエ監修絶品チョコレート、左手にはゴーヤー風味の緑色のチョコレート。
     かれこれ30分程悩んでいるが結論は出ない。
    「そんな時にはプリンよ。 そもそも、プリンとは牛乳や卵などを使った蒸し料理の総称なのだけれど、いわゆるカスタードプリンの起源は――」
     全く選択肢にない物を選び、メリーベル・ケルン(中学生魔法使い・d01925)がプリンについて延々に語っていく。
     そのため、慶も両手にチョコレートを持ったまま、『……何か違う』と思っている。
    「それにしても、お菓子が山盛りですね。一体、どれから食べようかなぁ」
     山のようにお菓子が詰まれた籠を眺め、野良・わんこ(わんこと暮らそう・d09625)が妄想を膨らませた。
    「もしも、持ちきれない奴がいたら、遠慮なく言ってくれ」
     既に会計が終わっている荷物を手に取り、佐藤・翔(ブラックコーヒー・d05261)が大声を上げる。
     軽い荷物を持っていた御堂・楓(ラバス・d01084)と、西原・榮太郎(夜霧に潜むもの・d11375)も協力して、持ちきれない荷物を持った。
    「重かったんです……、助かります」
     ホッとした様子で、イブ・コンスタンティーヌ(楽園インフェクティド・d08460)がお礼を言う。
     リデル・サイレーヌ(高校生エクソシスト・d02592)も、クッキーやチョコレートが沢山入った袋を渡す。
    「……ん? 確か、俺の記憶が間違っていなければ、これは買出しの荷物持ちのはず。何故、猫用のペットフードや玩具まで」
     仲間達から荷物を受け取り、鷹峰・京護(中学生ファイアブラッド・d03729)が首を傾げる。
    「帰り道に、猫がいる。しかも、一匹、二匹のレベルじゃねえ。あれは軍団だ」
     険しい表情を浮かべながら、更科・五葉(忠狗・d01728)が答えを返す。
     だが、この時点で京護達は猫達の恐ろしさを、完全には理解していなかった。

    ●キャットストリート
    「にゃーにゃーにゃにゃにゃーにゃ♪」
     楽しそうに鼻歌を歌いながら、暁・紫乃(悪をブッ飛ばす美少女探偵・d10397)が何食わぬ顔で塀の上を歩いていく。
     仲間達も紫乃を追うようにして道を歩いて行ったが、その行く手を阻むようにして猫達が現れた。
     しかも、一匹や二匹のレベルではない。
     美味しそうな餌の匂いを嗅ぎつけて、物陰からワラワラ、ワラワラ。
     あっという間に、足元のまわりが猫だらけになった。
     どうやら、猫達のネットワークを通じて、近隣の町々にまで噂が伝わり、各地から野良猫達が集まってきたようである。
    「……なんでこんなに……いるんだ……?」
     唖然とした表情を浮かべ、影近・水希(水底に沈む月影・d06829)が汗を流す。
     猫が多くて地面が見えない。
    「……とは言え、一緒親睦会、とはいきませんね」
     手作りの餌と猫用ミルクを持ち、クラウィス・カルブンクルス(朔月に狂える夜羽の眷属・d04879)が道の端に寄る。
    「それなら誰かが相手しねぇとな」
     何やら思案した後で顔を上げ、綴喜・青志(夜狼・d02829)が至極真面目な顔をした。
    (「さすがにここで野良猫を餌付けしてしまうのはマズイかも知れない。しかし、かわいい猫をクリエイトファイアで怯えさせてしまうのもイヤだ」
     険しい表情を浮かべながら、神薙・焔(ガトリングガンスリンガー・d04335)が悩む。
    「ここは任せろ、あんたらは無事に食い物を『甘味処“清嶺地”』に届けてくれ」
     猫達の行く手を阻むようにして、坂城・祥(琅稈の魔狼・d11237)が携帯用小袋マタタビを取り出した。
    「……こんな事があろうかと思って、キャットフードを大量に買っておいたわ。すべてはこのための布石」
     ふてぶてしいドヤ顔をしながら、メランジェス・ローレライ(うきわをつけた人魚・d11503)がえっへんと胸を張る。
    「こういうのはあれです。囮の餌で釣っておいて、それをポーイっと投げればいいんですよぉ!」
     キャットフードを使って猫達に注目を集め、九井・円蔵(デオ!ニム肉・d02629)が勢いをつけてポーンと投げた。
     その途端、猫達が一気に群がり奪い合い。
     それはまるで獲物に群がるピラニアのようだった。
    「まあ……、訓練になるならば、囮になりましょう……ミッション開始」
     猫達を引きつけるようにして、小田切・真(高校生殺人鬼・d11348)が『甘味処“清嶺地”』とは逆方向に走り出す。
     それに気づいた猫達が、雪崩の如く勢いで、必死に後を追いかけていく。
    「なぁに、すぐ追いつきます。お茶とお菓子を用意して待っていてください」
     何となく死亡フラグを立てつつ、葉月・十三(高校生殺人鬼・d03857)が仲間達に別れを告げる。
     板倉・澪(いつもしろちゃんと一緒・d01786)もナノナノのしろちゃんに、猫缶を持たせて誘導させているが、逃げるのがやっと。
     すぐさま、鐙崎・雫(朝霧の歌姫・d10279)がマタタビの木の枝で作ったお手製猫じゃらしで猫達の注意を引こうとしたが、一斉に猫達が飛び掛かってきたため、そのままもふもふの海に沈んで行った。
    「クク……、恐るべき宿敵よ……。我が前に立ち塞がるならば、相手をしてやる……! バッドローラー、今回の戦、必ず成功させるぞ!!」
     ライドキャリバーに乗ったまま、釈迦堂・味昧(黒き流星の剣・d05832)が猫達と対峙する。
     仲間達の無念を晴らすためにも、ここを切り抜けて、荷物を届けねばならない。
    「ほれ、猫共。お前等はこっちだぜ」
     猫達を挑発するようにして、不知火・隼人(フォイアロートファルケン・d02291)が猫缶をチラつかせる。
    「さあにゃんこ、来い!」
     煮干しが入ったお特用の大袋を高々と掲げ、青羽・藤姫(ウィスタリア・d05471)が叫ぶ。
     それに合わせて、如月・庵里(高校生殺人鬼・d11603)が、鋼糸にふわふわをくくりつけ、即席のねこじゃらしに作って猫達の興味を引く。
    「ねこじゃらしにっ、かつおぶしっ、またたびもあるよっ!」
     猫達の心をガッチリ掴み、淡白・紗雪(六華の護り手・d04167)が仲間達に合図を送る。
     次の瞬間、猫達が瞳を爛々と輝かせ、一斉に飛び掛かってきた。

    ●沢山の犠牲
    「ぼ、僕らの事は気にせず先へ……。うわあ、もふもふでいっぱいだー。猫が邪魔をしてくるとは、なんという恐ろしい障害でしょう」
     猫達によって押し倒され、新城・七波(藍弦の討ち手・d01815)がもふもふとした感触に包まれ、意識の奥底へと沈んでいく。
    「ここは、あたしに任せるのDA☆」
     両手に草団子を持って猫達の前に立ち塞がり、内藤・東鶴(青義の使徒・d07767)が不思議な踊りをし始める。
     それと同時に猫達も一緒になって踊り出し、一斉に襲いかかってもふもふまみれになった。
    「……おそれるな、ねこの力!」
     猫達と対峙しながら、山城・竹緒(高校生魔法使い・d00763)が気合を入れる。
     まわりには猫達にもふもふされ、至福の表情を浮かべる仲間達が……。
    「人のお手伝いをする事こそ、妖精の使命。ここは私に任せて、みんなは先に行ってください~」
     マタタビ粉を持ったまま、パメラ・ウィーラー(シルキー・d06196)が猫達に突っ込んで行く。
     次の瞬間、得も言われぬもふもふ感に襲われ、巨大な毛玉のようになって腰からすとんと崩れ落ちた。
    「ぬこーぬこー、ぬっこぬこー♪」
     幸せそうに猫達を撫でたり抱きしめ、セラフィーナ・ハユハ(妖精郷の白い死神・d08147)が至福の時間を過ごす。
    「この手触り、そして肉球……うむ、実に危険だ」
     すっかり猫達の虜になり、月見里・命(ミラージュシンドローム・d10563)が我を忘れて堪能する。
     ……マズイ。この状況はマズ過ぎる。
     本来の目的を忘れて、もふもふ三昧。
     このままでは、みんなもふもふの海に沈み、荷物を……食材を届ける事が出来ない!
    「……あれ、何か忘れているような気がする……けど、まぁいっか」
     キョトンとした表情を浮かべた後、藤川・優也(翠の蛍火・d01971)が軽く流す。
     何か大切な事を忘れているような気もするが、猫達のもふもふと比べれば、些細な事。
     きっと、そう。そうに違いない!
    「……仕方がありませんね。意地でもここは抜けさせてもらいますよ」
     お手製の抹茶ケーキが箱を守りつつ、桐屋・綾鷹(和奏月鬼・d10144)がマタタビをばら撒くようにして走り出す。
     しかし、猫達の数が多すぎて、マタタビの量が少な過ぎた。
     すぐさま、行く手を阻まれ、後方を塞がれ、側面から猫達が襲いかかってくる。
    「ななな、なんと、ふてぶてしくもブサ可愛らしい猫じゃ!」
     その猫を抱きしめるようにしてキャッチし、愛宕寺・朱里(大都会の狛犬・d03783)が身震いした。
     もう一方の猫も小鳥遊・亜樹(小学生魔法使い・d11768)がギリギリのところでキャッチする。
    「さあ、早く! 猫さんはお任せください!」
     前方にいた猫を抱きかかえ、ディートリヒ・エッカルト(水碧のレグルス・d07559)が大声を上げた。
     だが、安心したのも、束の間。
    「くっ……増援か。奴らは留まる事を知らぬのか!?」
     次々と現れた猫達に驚き、ミゼ・レーレ(救憐の渇望者・d02314)が唇を噛む。
     ……既に猫用の煮干しが底を尽きている。
    「だったら、オレのとっておきのチョコケーキを囮にするぜ。一匹も逃がさないぞー!」
     とっておきのチョコケーキを箱から取り出し、斉藤・穂ノ太(絶対大鑑巨砲主義・d00325)が勢いよく放り投げる。
     それと同時ら電信柱の陰に隠れていた風魔・奏(錆刀・d03756)が飛び出し、空中でチョコケーキにパクつき、あっという間に姿を消した。
    「ま、まさか。そんな事って!? こうなったら、最後の手段です。ここは私が犠牲になりましょう!」
     猫達が気を引くアイテムを両手に持ち、銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)が走り出す。
     脳裏に浮かぶのは、もふもふの海に沈んだ仲間達。
     他の仲間達も猫達の大好物を両手に持ち、捨て身の覚悟で突っ込んで行く。
     まさに火の玉、カミカゼアタック。
     しかし、猫達の数もだいぶ減った今なら……、今ならば……、行けるはず!
    「それじゃ、よろしくお願いします……」
     仲間達の犠牲を無駄にしないため、新城・七葉(蒼弦の射手・d01835)が闇纏いを使う。
     そして、青空に浮かんだ仲間達に見守られつつ、『甘味処“清嶺地”』を目指すのだった。

    ●お店の飾り付け
     一方、その頃……。
     会場である『甘味処“清嶺地”』では、着々と準備が進んでいた。
    「ほほー、皆さんの持ち寄ったアイテムが、そこそこに集まってますね。コレはアレじゃないですか。イベントにつきもののビンゴゲームが出来そうですね。せっかくですから、お店の方からは、お食事券を出しませんか?」
     目の前にある玩具や電子機器をリストアップしながら、上木・ミキ(ー・d08258)が清嶺地・悠里(忘れえぬ誓い・d08111)に視線を送る。
    「そうですね。みんなもそれを踏まえた上で持ってきているのだと思いますし、店からはお食事券を出しましょう」
     納得した様子で頷きながら、悠里がリストを受け取った。
     リストの中には怪しげな器具や、使用用途が分からない物もあったが、それはそれでワクワク感があって盛り上がるかも知れない。
    「……そうだ。親睦会用にと思って、こんなのを持ってきた。悠里、これ皆の名前覚えるのに使えないかな? ほら、せっかくの親睦会だし」
     胸に掛けられるカード型の用紙をいくつも取り出し、アシュ・ウィズダムボール(潜撃の魔弾・d01681)が悠里に声をかける。
     悠里もそれを確認すると、『それじゃ、お任せしてもいいですか?』と答えてニコリと笑う。
    「悠里殿! 見てくだされ、拙者の成果を!  ふふーん、忍びにかかれば、このくらいお茶の子さいさいでござるよ!  さあさあ! 他にも手伝う事はござらぬかー!?」
     ばばーんと名簿を渡し、御代・信蔵(青春を謳歌する忍者・d07956)がえっへんと胸を張る。
     しかも、忍者の身体能力を活かして屋根の上に登り、親睦会の目印として何故か鯉のぼりを設置したらしい。
     これには、悠里も流石に頭を抱えたが、ふと室内に視線を送れば、もっと有り得ない光景が……。
    「ん~、魅惑のジャパニーズカルチャーだね」
     満足した様子で飾り付けを眺め、ベルクティオール・バートリィ(サムネホイホイは彼女なのか・d03221)がウンウンと頷いた。
     ジャパニーズパーティの必需品である紅白幕に、 おめでたい時に飾る鏡餅、それとセットで扱われる門松と言った感じで、正月ムード満載。
    「猪突猛進♪ 一意専心♪ それがわたしのと・り・え・なの♪」
     その横では赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)が楽しそうに歌を歌いながら、クリスマスツリーを飾り立てていた。
    「うーむ……、これはどうしようかのぅ、どこに飾ろうかのぅ……。 なー、お主、これを、あそこに飾るとよいと思うのじゃが……。背が届かぬ故、何とかしてもらえぬかのぅ……」
     綺麗な星形の飾りを持ったまま、九鬼・水香(小学生神薙使い・d08971)がクリスマスツリーのてっぺんに視線を送る。
     何とか頑張ってジャンプしてみたが、あまりにもツリーが高過ぎるせいで届かない。
    「何、この程度お安い御用さ」
     すぐさま星形の飾りを受け取り、有沢・誠司(ファントムキラー・d00223)が長身を生かしててっぺんに取りつける。
    「あ、あの……、にゃにか手伝う事はありまひゅかっ?!」
     少し緊張した様子で、巽・空(白き龍・d00219)が口を開く。
    「えーっと……、とりあえず、違和感がないように、まわりを飾り付けましょうか」
     いまさら元に戻すのも不可能であると判断し、悠里が気持ちを切り替えて答えを返す。
     仲間達も悪意があって飾りつけをしている訳ではないため、その気持ちを無駄にしないように飾りつけていくべきだと思ったようだ。
    「1人では大変でしょう? 何かやれる事があれば何でもいってくださいね}
     心配した様子で悠里の傍に寄り、羽柴・玖音(中学生神薙使い・d01236)がニコリと笑う。
    「それじゃ、一緒に飾り付けを手伝ってくれますか?」
     もう歓迎会まで時間がない。
     だが、仲間達と協力し合えば、何とか間に合うはずである。
    「飾り付けなら、任せてください。……あっ、お紅茶の用意は、ぜひ私に! 得意なんですよ、我家の伝統で」
     嫌な顔ひとつせず、睦月・恵理(北の魔女・d00531)が店内を飾り付けていく。
    「おお、中々良い出来じゃないか」
     折り紙を星型に切って壁に貼り終え、四季咲・朱雀(祝融のクォーレ・d02941)が自画自賛。
     まるでアニメーションの如く、クリスマスから正月までの流れをイメージして飾り付けたため、先程と比べてだいぶ違和感が無くなっていた。

    ●新たな脅威
    「すみませーん。この吊り下げるデコレーションは、この場所でいいですか?」
     店内の飾りつけをしながら、クラウディオ・エンデ(夜明けの鍵・d00611)が指示を仰ぐ。
     その横では狭山・雲龍(信じるものの幸福・d01201)が、入口に設置するアーチを作っていた。
    「……って、ちょっと待って」
     悠里が本能的に身の危険を感じ、改めて飾り付けを確認する。
    「何故、ここに七夕飾りが……!?」
     それに気付いた時には後の祭り。
     既に半分ほど出来上がっており、壊して元通りにするには手遅れな状況。
    「いや、その場とノリと勢いで」
     射干玉・夜空(中学生シャドウハンター・d06211)が即答する。
     おそらく、これは乗り越えねばならない試練なのだろう。
    「それに、やっぱ飾り付けは賑やかな方がいいじゃん。昔の偉い人の言葉でもあるじゃん。『盆と正月が一緒に来たようだ』って。ね」
     その間に臼井・幸(中学生エクスブレイン・d06678)が盆提灯を飾り立て、店内をより一層異質な雰囲気にさせている。
     そんな中、天涯・のうり(レインメーカー・d06264)が甲斐甲斐しく準備を進めていた。
    「悠里さん、あ、あのっ……。より華やかに飾るべく花瓶にリボンを結ぶつもりですが、ミモザには何色が合う、でしょうか?」
     遠慮がちに声をかけ、釣鐘・まり(春暁のキャロル・d06161)が申し訳なさそうに呟いた。
    「とにかく、全体のバランスを考えて……一緒に……頑張りましょう」
     他に答えようがない。
     だんだん、頭が痛くなってきた。
     しかし、その指示が良かったせいか、ぐるりと見回せば季節の移り変わりを楽しめるような作りになっている。
     ……何か違う。
     真っ先にそう思ってしまったのは事実だが、これはこれでアリ……のような気がする。
     そうやって、何となく自分を無理やり納得させたようにも思えるが、決して嫌な気持ちはしなかった。
    「ある程度、飾り付けも終わりましたし、ちょっと休憩しましょうか」
     連なる折り紙の飾りを完成させ、ルーシュカ・アデレール(冥夢夜行・d09668)がさりげなく悠里に声をかける。
     ようやく買い出しに行った仲間達も帰ってきたため、休憩をするのであれば今しかない。
    「それじゃ、お団子を用意してくれね」
     悠里が『そうですね』と答えた事を確認し、レジィ・アールグレイ(沈黙のフイラ・d08605)が厨房に向かう。
     厨房には親睦会で出す予定になっている料理なども並んでいるが、それとは別に団子や飲み物などが用意されていた。
    「そう言えば、クッキーを使ってオーナメントを作ったんだけど、少し余ったから、一緒にどう?」
     思ったよりもクッキーが余ったため、シオン・ハークレー(小学生エクソシスト・d01975)が皿の上に載せていく。
     みんな、店内の飾りつけですっかりお腹が減っているらしく、配っている傍から『おかわり』と声が響いた。
    「自作のモノじゃが、もし良かったら、これも使ってくれるかのぅ」
     包みの中から自作の茶器を取り出し、九曜・亜門(白夜の夢・d02806)がテーブルの上に置いていく。
     まだまだ素人の域を出ていないところもあるが、それなりに技量があるため、悠里も気に入った様子。
     さっそく今日の歓迎会で、使用する事になった。
    「……ん? おやつの時間??」
     美味しそうな匂いに気付き、木暮・梨子(マイジェネレイション・d00126)が目を覚ます。
     実は先程まで手伝いをサボッて昼寝をしていたのだが、おやつとなれば話は別。
     せっかく貰えるものなのだから、胃袋に詰め込んでおかねば損である。
    「めはり寿司やミックスジュースもどうぞっ♪」
     満面の笑みを浮かべながら、小日向・海音(ゴスロリマリンシンガー・d07531)がジュースを渡す。
     そのため、さすがに気まずいと思ったのか、『これを食べたら、何となく手伝っておこう』と心に誓う。
     ただし、お菓子を食べているうち、忘れるかも知れないが……。
    「すいませーん、ゴミはこっちの方にお願いしますね」
     少し大きめのダンボールとゴミ袋で簡易ゴミ箱を作り、緋島・霞(緋の巫女・d00967)が大声を上げる。
     これからもお世話になる店なのだから、こういった事をキチッとしておかねば、後々で利用しづらくなってしまう。
     まわりにいる者達もそれが分かっているため、事前に分別した上でゴミを持ってきた。
    「……あれ? なんか猫さん達がいっぱい? みんな、お腹が空いてるの? 飾り付け中のおやつにと思って持ってきてたんだけど……笹かまぼこ、食べる?」
     店の外に猫達が集まっている事に気づき、天河・蒼月(月紅ノ蝶・d04910)が笹かまぼこをチラつかせる。
     それに気づいた猫達が物陰からワラワラと集まり始め、あっという間に店を囲む。
    「ま、まさか、猫達にここの存在を知られてしまうなんて!」
     そう言って悠里が悔しそうに、唇をグッと噛み締めた。

    ●親睦を深めよう
     それから、しばらくして……。
    「清嶺地ちゃん、お誘いありがとな! 張り紙を見て駆けつけちゃったぜ♪」
     招待状を握りしめ、捨野・歴(色のない世界・d08200)達がやってきた。
    「お茶会と聞いてやってきました! こんにちはですよー! おお、想像以上に力入ってます……皆さん頑張ったのですねっ」
     店内をキョロキョロと見回し、ミルミ・エリンブルグ(焔狐の盾・d04227)が思わず声を上げる。
     先程までションボリした気持ちになっていたのだが、予想を上回るほど煌びやかになった店内にすっかり驚いているようだ。
    「……ん? 猫?」
     サブトンの上にふてぶてしく座る猫に気付き、水牢・悠里(磬る霖・d04784)が首を傾げる。
     良く見れば、何故か参加者達の膝の上には一匹ずつ猫も座っていた。
     どうやら、猫達と長時間にも及ぶ攻防戦と話し合いの結果、こうなったらしい。
     先程から悠里のこめかみが、激しくピクついている。
    「あ、あの、どうしよう……あっ」
     あたふたとした様子で、西園寺・奏(魔を宿すもの・d06871)が汗を流す。
     その間に黒猫が膝の上にちょこんと座り、大きな欠伸をした後、すやすやと眠り始めた。
    「……って、何がどうなってんの!?」
     唖然とした表情を浮かべ、大業物・斬(ブチマケロジック・d03915)が目の前にいたぶち猫に視線を送る。
     ぶち猫はまるでガムを噛むようにして、クッチャクッチャと口を動かしていた。
     このぶち猫……、何となく、見覚えがあるような気がする。
    「まあ、猫については気にせず。ねえねえ、これ美味しいよ」
     苦笑いを浮かべながら、エデ・ルキエ(樹氷の魔女・d08814)が団子を勧めてきた。
     どうやら、触れてはいけない話題らしい。
    「とりあえず、察してあげて」
     詳しく話せば長くなるため、青水無・雲雀(姫告天子・d00708)が目で訴えかける。
     その横で大祓凶神・乙女(剣の花嫁・d05608)と猫達が一心不乱にお菓子を食べていた。
    「それにしても……、この草団子、美味しいなぁ……通販とかやればいいのに……。学園の生徒使えば、ライドキャリバー乗りも多いから、配達員には事欠かないよ」
     草団子の味を堪能しながら、紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)が軽く冗談を言う。
     実際には色々と問題があるため、実現は難しそうだが、ここだけでしか味わえないのは勿体ない。
    「確かに、清嶺地と言えば、このお茶と草団子だよね。あっ、勿論、美人な女将さんがこのお店一番の魅力だよ!」
     満面の笑みを浮かべながら、志賀神・磯良(竜殿・d05091)が絶賛した。
     悠里も褒められて恥ずかしさと嬉しさが入り混じったような表情を浮かべている。
    「やはり日本人なら、こういったものの方がしっくりくるな」
     幸せそうな表情を浮かべ、前田・光明(中学生神薙使い・d03420)がホッと溜息をもらす。
     まわりには沢山の猫が屯しているが、何となく……和む。
    「あ、悠里さん。素敵な親睦会を開いて頂き、ありがとうございます」
     フラフラとした足取りで、イスカ・テオリ(忘却者・d03052)がお礼を言う。
     そして、またフラフラと去っていく。
     一瞬、何が起こったのか分からなかったが、挨拶に来ただけのようである。
    「おっ! いたいた。 俺は、神羽悠! 悠里と一緒の『悠』なんだぜー! 最初は、どうしようかなーって迷ってたんだ。でも、あの張り紙の挿絵になんか惹かれちゃったぜ! ま、理由はそれだけじゃないけどな。もし良かったら、俺とダチになろーぜ!」
     さらっと自己紹介をした後、神羽・悠(天鎖天誠・d00756)が右手を差し出した。
     しかし、悠里も先に彼女の膝に座っていた三毛猫が前足を置く。
     おそらく、『彼女と友達になりたいのなら、まずは俺様を満足させる事だ。さあ、マッサージをするんだ』と言いたげな表情を浮かべている。
     そのため、悠も訳が分からず手を握ると、何となくマッサージをし始めた。
     だが、悠里はそう言ったやり取りを知らないため、『何故、三毛猫と握手っ!?』と思いつつ、差し出した手の行き場に困り、一緒になって三毛猫のマッサージを始める。
    「噂になってるわよ、あの転校生! イキナリ同居なんだもんね~、ダ・イ・タ・ン!」
     そんな状況になっているとは露知らず、東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)が悠里に迫っていく。
    「……!」
     二人と一匹の目が怖い。
     特に三毛猫の眼が『おい、こら、腰を揉め』と言っているように思えた。
     往羽・眞(筋力至上主義・d08233)も三毛猫は気迫に圧倒され、気がつけば一緒になって揉んでいる。
    「こ、これは……一体!?」
     少し遅れてやってきた綿咲・姫也(中学生神薙使い・d11977)が、店内の様子を見て唖然とする。
     季節を無視して置かれたオブジェの数々に加え、予想を上回るほどの猫。
     一瞬、自分が夢を見ているのではないかと言う錯覚を受けた。
     悠里も当初の予定ではこんなはずではなかったため、苦笑いを浮かべている。
     そんな中、アシリア・カナート(エターナルエイティーン・d08892)の膝の上に座っている黒猫が、幸せそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
    「よく分かりませんが、全力でやらせていただきます!」
     色々と察した様子で、十城・結里(高校生シャドウハンター・d11764)が猫達をマッサージし始める。
     その刺激に満足したのか、猫達がゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
    「なーなー、この席空いてる?」
     大量のお菓子を抱え、芽租・風凛(緑色の焔・d11950)が茶猫と目を合わす。
     茶猫は『お菓子をくれたら、座らせてやるぜ』と言わんばかりに立ち上がり、フンと大きく鼻を鳴らした。
    「おいしそうな物がいっぱいで迷っちゃうね。ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の……あれ~? なくなっちゃった~!?」
     大量のお菓子を受け取ってその場に広げ、巴津・飴莉愛(白鳩ちびーら・d06568)が大声をあげる。
     その横で桂・葛之葉(女狐・d10076)が霊犬の清明と一緒に、お菓子をムシャムシャ。
     茶猫も最初は清明の事を警戒していたが、危険がないと分かって、一緒にお菓子を食べている。
    「ねえ、ギューっとしていいかな? ……かな?」
     あまりの愛らしさに胸をきゅんとさせ、天ヶ瀬・空(焔火の姫・d11206)が茶猫をギュッと抱きしめた。
     最初は迷惑そうにしていた茶猫も、『お日様の匂いがする』と言われ、まんざらでもない様子。
    「あ、あれは……! ああ、最悪だ、最悪だ!」
     何かに気付いた様子でムクッと立ち上がり、桐城・詠子(ダウンリレイター・d08312)が誰かをポカンと殴りに行った。
     その途端、何故か猫達も一緒になってパンチを繰り出し、彼女と一緒にフンと鼻を鳴らす。
     そこには何となく友情っぽいものが見えていた。
    「……こんな事に楽しいのなら、弟もつれてくれば良かった。弟はいま小学五年生の生意気盛りでね、可愛いわよ。写メ、見る? 守るべきものがいる人間は強いって言うけど、ならば、私はこの子かな。貴方は、どう? 誰かのために戦いたいと思う人はいる? いるのなら、共に戦いましょう。いなくても大丈夫よ。すぐに見つかるわ。この学園は……広いから、ね」
     悠里に写メを見せながら、芦夜・碧(中学生殺人鬼・d04624)がニコッと笑う。
     これから、色々な事を経験し、色々な出会いがあるだろう。
     だが、守るべき者がいれば、信じられる者がいれば、どんな障害でも乗り越えられるように思えた。
    「え、えーっと、今日は楽しかった。あ、ありがとうな。また、良ければ呼んでくれ。絶対に、な」
     名残惜しそうにしながら、神山・楼炎(蒼き銀の堕人・d03456)が口元を隠して薄く微笑む。
     出来る事なら、もう少し色々な事を話したかったが、そろそろお開きの時間。
     だが、ここに来れば、みんながいる。
     そう思うと、次にみんなと会うのが、楽しみになってきた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月13日
    難度:簡単
    参加:841人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 33/キャラが大事にされていた 26
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