古より続く休まらぬ声

    作者:幾夜緋琉

    ●古より続く休まらぬ声
     都心より少し離れた山中の神社。
     時は丑三つ時……そんな時に神社を訪れるような人はほとんど居ない。
     ……そんな時に訪れたのは、4人ほどの若者のグループ。
    「なー、知ってる? ここに幽霊が居るってんだってさぁ」
    「はぁ? そんなの聞いた事ねーし。まぁ確かにこんな雰囲気だからそういうのもあり得るよなぁ」
     そんな会話をしている彼らの背後から、静かに迫る影。
     ……その影は、すらりと刀のようなものを抜くと……。
    『……ククク』
    「え……ぁ!?」
     言葉を言い終わるよりも早く……その一閃は、次々と彼らの身を切り刻む。
     そして鮮血はその男の身体を赤く染めるのであった。
     
    「コレが……こっちで……と……」
     教室の中、クロスワードパズルを解いている神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)。
     そんな彼の肩をぽん、と叩くと……気づいたようで。
    「おお、みんな集まって髙!? 悪い悪ィ。んじゃ俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)から導き出された生存経路をここでお前等に説明するぜ!」
     と笑う。
     そして続けてヤマトが見せるのは一枚の写真……そこには何処かの神社が映っていた。
    「今回、この神社に丑三つ時に出現している都市伝説から産み出されたモノの退治に向かって欲しいんだ」
    「こいつはらは丑三つ時に訪れ、自分らを馬鹿にしたかの様な者達に対して奇襲を仕掛けてくる。なんで皆もそれに従えば、こいつらに遭う事になるハズだ」
    「勿論、丑三つ時の前に皆が立ちはだかる事も出来るから、事前に何か用意する事も出来るハズだ」
     そして続けて今度は都市伝説の戦闘能力について説明する。
    「今回の相手は、かなり昔にこの場で死した武士の霊の様だ。だからその攻撃手段は血に濡れた刀……攻撃力は高く、体力も多い。能力的には殺人鬼と同様の能力を持っている」
    「またその数は4人居る様で、初撃は奇襲の如く仕掛けてくると思う。だからこそ、初撃を如何に対処するかがポイントになるハズだから、その辺り皆でよく相談しておいてくれ!」
     そして最後にヤマトは。
    「既にこの事件は被害者を出してしまっている。だからこそこれ以上の被害が出る事を防ぐ為、そして被害者の家族のためにも必ずや倒してきてくれ!!」
     と真剣な表情と共に、拳を振り上げるのであった。


    参加者
    エイナ・ルディレーテ(蒼き魔法と剣・d00099)
    黒洲・智慧(九十六種外道・d00816)
    古室・智以子(小学生殺人鬼・d01029)
    中島・陽(ハートフルメカニック・d03774)
    九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)
    風見・孤影(夜霧に溶けし虚影・d04902)
    鉄・正宗(無銘の刀・d06193)
    天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)

    ■リプレイ

    ●闇の社
     夜中の神社へと向かう山への入口……かなり薄暗い道のりを歩く灼滅者達。
     ……そんな道のりを歩くと、自然と恐怖に心が包まれるわけで……。
    「……きゃっ!?」
    「あ、あわわ、ご、ごめんなさい。すぐ離すのですよぅ……」
    「ああ、優希那ちゃんなのね、大丈夫大丈夫……ちょっとびっくりしただけだから」
    「うぅ、ごめんなさいなのですよぅ……」
    「ううん。いいよいいよ、ずっと捕まっててもいいから」
    「あ、ありがとうなのですぅ」
     天城・優希那(の鬼神変は肉球ぱんち・d07243)は、フイに中島・陽(ハートフルメカニック・d03774)の服の裾をぎゅっと握ってしまったり。
     ……そんな恐怖を覚えるのも仕方ない雰囲気。まさしくここは地獄へと向かう道のりが如く。
    「うぅぅ……よ、よ、よよよ、夜中の神社って怖いですねぇ……」
    「そうだねぇ……って優希那ちゃん、大丈夫?」
    「だ、大丈夫ですけどぉ……ふぇぇん、お家帰りたいのですぅ~」
    「あらあら……ほら泣かない泣かない」
     優希那の頭を撫でなでてなだめる陽。
     夜中の山中にある社……元々ある雰囲気と相まって、何処か恐ろしい気配を感じてしまう。
     とは言えそれも仕方ない事……ここに都市伝説から産み出されたモノ現われてしまったのだ。
     そしてヤマトから受けた依頼は、そいつを倒してきて欲しいという物、である。
    「しかしようやく二つ目の依頼、ですね……古来の武士の姿をした都市伝説、ですか……油断すると、切り伏せられそうですね……」
    「全くだぜ! 丑三つ時の神社に武士の霊とか……やめて欲しいのホント! よけい寒くなるじゃないかー! もう、こうなったら動き回って暖をとってやるー!!」
    「武士の霊ですかぁ……うぅ、これ以上犠牲者を出さない為にもがんばらなくてはならないのですが……うぇぇん……」
     エイナ・ルディレーテ(蒼き魔法と剣・d00099)と九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)、そしてまた優希那が声を上げる。
     ……そんな仲間達に。
    「まぁ……何でしょう、落ち着きましょう。そうそう、今回は囮班の二人以外は絶対に都市伝説を馬鹿にした様な言い方をしないように。後、関連する事も口にしないようにして下さいね。そうじゃないと、囮の意味が無くなってしまいますから」
     と黒洲・智慧(九十六種外道・d00816)の注意に。
    「OK。しかし悪口を叩かれないと現われない都市伝説なんて、まったく何を考えているのかな」
    「そうだね。落ち武者や侍の霊とかって、あまり都市伝説って感じしないと思っていたんだよね。けど、話しが出始めた湯治は都市伝説だったのかもしれないね」
     風見・孤影(夜霧に溶けし虚影・d04902)に陽が頷く……そして。
    「何はともあれ犠牲者が出てしまっている以上、一刻の猶予もない。自分より強かろうが、なんだろうが滅ぼしてやる」
    「まぁ、どのみち見過ごす訳にはいかん。殺してやろう、二度と蘇られないまでにな」
    「そうなの。敵がどんなであれ、わたしのスタンスは代らないの。敵は、倒す。それだけなの」
     鉄・正宗(無銘の刀・d06193)、孤影、そして古室・智以子(小学生殺人鬼・d01029)らも頷き合うと……灼滅者達は更なる闇の森の中を歩き続けるのであった。

     そして灼滅者達は、丑三つ時の少し前の頃に、神社へと到着する。
    「それじゃ、余り時間も無いし、すぐ始めましょうか」
    「おう。照明設置は俺に任せろー!」
     エイナの言葉に一番手を切って、せっせと動き始める獅央。
     その他の仲間達も同様に、その場に灯を灯すが如く、せっせと灯を付けていく。
     ……そして、ある程度視界も確保出来る位の灯を灯した所で。
    「……これで、良いかな。そろそろ時間だし、みんな準備はいい?」
    「うん。大丈夫なの」
     智慧に頷く智以子、そして優希那が。
    「えっと、一応ダメモトですけれど……やっておきますね?」
    「ああ、助かるぜ」
     ニコリ笑う獅央。
     優希那からソーサルガーダーを受ける獅央と正宗。
     そして……他の仲間達は奇襲するが為に身を隠し、そして丑三つ時を迎えた。

    ●不遜なる声
    「……ったく、知ってるか? この神社にさ、こそこそ人の背後に近づいて、奇襲を仕掛けるような『腰抜け』で、『卑怯者』で、『情けない』武士の霊が出るんだってよ」
    「武士の幽霊だぁ? また季節外れの怪談つぅか、そういうのは聞き飽きたぜ」
    「全くだよなぁ。それに背後から奇襲だなんて武士らしくないよなぁ。『いさぎよさ』で正直言って、笑っちゃうよなー」
    「全くだよなー。ほんと笑っちゃうよなー」
     正宗と獅央が、大きな声を挙げながら大声で笑う。
     その声は静けさに包まれた神社の中に響き渡る。
     ……その声を、この場所に棲まう都市伝説のゴーストは聞いているのだろう。
     なんだか……その場を包む風が、少々肌寒くなった様な気がする。
    「うー、さむさむ。ったくよぉ、こんな所に居ても無駄だろ? さっさと帰ろうぜ?」
    「そうだよなぁ……卑怯者なんかに戦う暇は無いってなぁ」
     ……そう言いながら、二人は背中合わせになりながら周囲に警戒する。
     笑い声が暫し続いた……その時。
    『……うぅぅ!!』
    「っ!」
     呻き声と共に、突如仕掛けてくるゴースト。
     その一撃を咄嗟に受け止める正宗……それに続けて、更に三体のゴースト達が、次々と仕掛けてくる。
    「っ! キタな。正体見たり都市伝説ー!! 無駄にコワイし強いし……ったくよ!」
     獅央もその攻撃を受け止めながら、そんな言葉を紡ぐ。
     そしてその襲撃に気づいた陽が。
    「出てきた、みんな仕掛けるよ!」
     と、叫び声を挙げて、一気に灼滅者達が突撃……智慧と智以子の二人が、それぞれ獅央と正宗に仕掛けた一体に攻撃。
     そんな灼滅者達の動きに、ゴーストはきっと、と睨み付けるが。
    「ふ……奇襲を奇襲で返されるのは予想外ですか? まぁ大した火力になりませんが……ね」
     ニヤリと笑う智慧。そして智以子は無表情の儘、目前の敵に。
    「……喰らえ、なの」
     と黒死斬。
     ……そして、続けて中衛に立つ孤影とエイナが。
    「斬刑を処す。ようこそ私の惨殺領域へ」
    「これで……その力を少しでも削ります」
     と、鏖殺領域と月光斬。
     そそして迎撃した獅央、正宗二人が。
    「鬼さんこちらだってぇの!!」
    「そっちには行かせない!」
     対峙するそれぞれの相手をしっかり抑える。
     ……そしてそれに対し、都市伝説のゴーストは目の前に対峙する灼滅者達を攻撃。
     その攻撃力は中々高く、防御したとしてもダメージがかなり通る。
    「くっ……奴さんらも戦に慣れている感じだな。さすが武士って言うか」
    「全くだ」
    「正宗ちゃん、大丈夫?」
    「い、今回復しますぅ!!」
     その攻撃を魔って、陽と優希那がそれぞれソーサルガーダーで回復。
     ほぼ8割方まで回復出来て、改めてゴーストの方をしっかり見据える。
    「まぁこっちもそう易々と倒れたりは出来ないぜ……まぁ早くそっちを倒しておいてくれよ!」
    「ええ。じゃあ、これで!」
     智慧がそう言いながら、俊敏なフットワークで日本刀による一撃。
     智以子もまた、居合い斬り、次には雲櫂剣で、共にクラッシャーの能力を十二分に活かして大ダメージを叩き込む。
     そしてクラッシャーの動きをサポートするのは、ジャマーの孤影と、キャスターのエイナ。
    「捕らえろ、虚霧!」
    「死の氷に包まれて貰うわ……喰らいなさい」
     影縛りとフリージングデスで、その動きを制限し……そして次のターンのクラッシャーの攻撃に繋げていく。
     無論。
    「正宗ちゃん達が耐えて前を支えてくれるなら……それを支えるのがあたし達!」
    「そ、そうなのですよぅ!」
     陽と優希那は気合い充分で回復を続ける。
     ……そして三ターン目。
     ゴーストの攻撃を受け止めながらディフェンダーのポジションをしっかりと維持。
     残る四人で、一匹を集中的に攻撃し……その結果。
    「トドメだ!」
     と孤影の一撃が、ゴーストを叩ききり……悲鳴と共に崩れ去る。
    「よし、先ずは一匹。次はフリーになってるそいつですよ!」
     智慧が次なるターゲットをすぐさま指示し、ターゲットのバラツキの隙を一部も与えることない。
    「グッジョブだぜ!」
     ニカッと笑う獅央。
     ……そして同様に戦況を進め、二体目も4ターン程で打ち倒す。
     残るは後二匹……。
    「……」
     智以子は二体の状況を鋭く観察。そして……少しでも体力の少なそうなのを指さし。
    「左……正宗さんの方へ仕掛けるの」
    「了解だよ! さぁここは畳みかけるっ!」
     と陽はホーミングバレットの攻撃手段にシフト。
     獅央と優希那がペアとなり防御と回復を続けながら、三体目のゴーストと対峙。
     そして……流石にゴーストも、体力がかなり減りつつある様で、動きが大ぶりになる。
     そんな敵の動きを鋭く見極めた正宗……数ターン後のその一閃を……真剣白歯取りの如く受け止めると。
    「人を護る為の刃が、人を殺す為の凶器に成り下がっちまった時から、お前らの刃は重さを……誇りを無くしちまったんだ!」
     そのままに敵の身体を地獄投げで地上に叩き付け……死に至る。
     残るは後一匹となり……灼滅者達が周囲を取り囲む。
    「お、あとはラスいちか!?」
    「ええ……!」
     エイナが頷く。そして……。
    「後少し……再度凍り付かせてあげるわ!」
     青い魔方陣を浮かべ、放つ……そしてエイナが叩き付けたフリージングデスで凍り付くと。
    「……」
     声は無く、静かに……躊躇する事は一切無く、雲櫂剣の一閃を喰らわせ……最後の一体は。
    『……』
     壮絶なる表情と共に……死に至るのであった。

    ●空へ過ぎて
    「……これで被害は抑えられたか」
    「ええ……そうですね」
     孤影に頷きながら、日本刀を一振り……そしてすっ、とスレイヤーカードに戻すエイナ。
    「ふぅ……あ、皆様お疲れ様でした。お怪我の具合はいかがでしょうか??」
    「ええ、大丈夫だよ。優希那ちゃんも大丈夫?」
    「え、えぇ……大丈夫ですぅ」
     優希那と陽が笑い合う……そして孤影と智以子が。
    「しかし……恐怖から、不信からでも都市伝説は生まれるんだな。噂の力は侮れないな」
    「……不思議なの。どうして、都市伝説は生まれるのか。殺される、帰れなくなる等のネガティブイメージを、なぜ人は噂という形で伝搬させるのか……怖いなら、そんな事を考えなければいいのに」
     それに獅央と智慧が。
    「んー……考えたくなくても考えちまう、って言うことじゃねぇ? 怖い物見たさってものもあるかもしれねぇしな」
    「そうですね。そういう怖い物に興味本位で手を出してしまう人が多いものですよ」
     と、自分なりの答えを出す。
     ……まぁ、人の興味はつきる事は無い訳で……。
    「……さてと、まぁこれで祝いは終了ですし……私は古文書とか秘湯とかが無いか探して帰るとしますよ。皆さんもどうですか?」
    「温泉……いいですねぇ……寒いから、あったまって帰りたいのです」
     智慧の言葉に優希那がそんな声を上げて……そして灼滅者は、壊れたモノなどを片付けて、神社を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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