レイニーデイ 誰も殺したくない少女

    作者:空白革命

     ――鳥よ、きみの羽をもいでも良いか?

    ●誰も殺したくない少女
     空気中に舞う埃を無視して、少女はパイプベッドに腰掛けていた。
     中学生程度の、幼さをやや残した女性的な顔つき。
     窓からは朝焼けが昇り、部屋を徐々に照らしてゆく。
     陽光と影の線が少女の爪先にかかった頃、背後で扉が開いた。
    「今日も、居たんだね」
     幼さの残る、青年の声である。
     少女は振り返らず、ベッドに手を置いた。
     改めて見てみれば、部屋は部屋としてのていを為していない。
     ほとんど外れかけ薄汚れたカーテン。
     半分以上剥がれた床タイル。
     壁には心無い侵入者が古くに書き込んだであろう落書きが走り、先刻開けたスチールドアとて錆が進んでいた。
     ここは所謂、廃墟ビルという場所だった。
    「今日はね、色々持って来たんだ。食べ物とか、あったらいいでしょ?」
    「やめて」
     リュックサックから小物を取り出していく青年が、ぴたりと手を止める。
     その動きを見ていたわけでもないのだろうが、少女は窓の外を向いたまま続けた。
    「もう来ないでって、言ったでしょ」
    「でも……」
    「帰って。名前も知らない人とひとけのない部屋で一緒になるなんて、ぞっとするわ。あなたが居るだけで気持ちが悪いの。話しかけないで、こっちを見ないで、近づかないで、これ以上関わらないで」
    「…………」
     青年は胸を押さえ、強く握った。
     破れそうなくらい。
     震えるくらい。
     強く。
    「道具は、置いていくから……」
     後じさりするように、部屋から出る。
    「明日もまた、来るから」
     消え入りそうな声で言って、少年は廊下を駆けて行った。
     陽光は少女の膝までに至り、早朝特有のひんやりとした空気が部屋を包む。
     少女は自らの手首を掴んで、ベッドのパイプ部分に叩きつけた。
    「来ないでよ……殺しちゃう、でしょう……」
     

     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)の説明はこのようなものだった。
     六六六人衆に闇落ちした少女が、ある廃墟ビルへと逃げ込んだ。
     といっても誰から逃げた訳でもない。
     強いて言うならば、自分自身から逃げたのだ。
    「本来、闇堕ちとは人格の塗り替わり……いえ、完全な『別人化』が起こるものです。彼女はそれを拒み、これ以上の人格崩壊を起こさぬように、廃墟ビルへと閉じこもっています」
     しかし六六六人衆になってしまった以上、殺人衝動から逃れ続けることはできない。
    「未来を見る限り。次に青年が訪れた時が『最後』です。彼を殺して、完全な闇落ちを果たすでしょう」
     そうなってしまえば、もう手出しは出来ない。
     然る前に。
     少女を殺さねばならないのだ。
     
    「少女は元人格を残しているとは言え、あくまでもダークネスです。恐らく皆さんの個体戦闘力を大きく上回っているでしょう」
     世界の安全を考えるなら。
     勝利の効率を考えるなら。
     全ての手を潰し尽くし。
     あらゆる手を尽くし。
     殺し尽くし。
     跡形も残さぬべきだろう。
     だだし……。
    「彼女が強く望むなら。そしてその資格と素質があるのなら。人間には戻れなくとも……灼滅者に生まれ変わることなら、出来るかもしれません」
     それはあくまで希望的観測であって。
     都合の良い綺麗ごとであって。
    「あなたにすべてを、お任せします。……どうかよろしくお願いします」
     少女の名は――切崎問子。


    参加者
    二海堂・悠埜(紅月に染まる・d03202)
    森田・供助(月桂杖・d03292)
    鈴木・一郎(ヒトモドキ・d05724)
    仁帝・メイテノーゼ(不死蝶・d06299)
    イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788)
    有馬・由乃(歌詠・d09414)
    雨宮・恋(獅子心刃・d10213)
    野々宮・ノエミ(トリッピースプリー・d10340)

    ■リプレイ

    ●『鳥よ、きみの羽をもいでも良いか?』
     二海堂・悠埜(紅月に染まる・d03202)はポケットに手を入れて、白く霞む息を吐いた。指先の冷える、夜更けのことである。
    「昼も夜も、寒い時期になってきたな……」
    「うん……」
     同じようにポケットに手を入れて、イリヤ・ミハイロフ(ホロードヌィルナー・d07788)は俯く。
     霜が降り、凍りつく季節だ。土の上をしゃくしゃくとした氷が覆い、足跡を刻んで行く。明日には消える、儚い足跡をだ。
    「どうかしたのか」
    「ううん、なんでも。ただ……彼女にとって何が一番いいのか、分からなくて」
    「『彼女』、か」
     白い息を吐いて、森田・供助(月桂杖・d03292)は目をつぶった。
     『殺したくない少女』、切崎問子。
     廃墟ビルに閉じこもり、これ以上誰かを殺してしまわないように人を拒絶した少女がいた。
     殺人衝動に駆られ、ダークネスになりかけた少女が、いた。
    「したいことは無くとも、嫌なことが見えてるなら上等だ。『どうにか』はなるだろ」
    「んー、そうだね」
     微笑む鈴木・一郎(ヒトモドキ・d05724)。
     ある意味状況にそぐわぬ、年相応で極々一般的な笑顔を、彼は浮かべていた。
    「殺したくない人を殺すのは悲しいし、その子可哀想だしね」
    「…………」
     仁帝・メイテノーゼ(不死蝶・d06299)は彼の横顔を見て、沈黙したまま視線を外した。
    「例えば僕らが」
     代わって、野々宮・ノエミ(トリッピースプリー・d10340)が帽子を深くかぶり直して言った。
    「僕らが説いても人殺しを望むような相手ならば、息の根を止めてでもやめさせなければなりません。例の青年をどうするかも含めて」
    「そ、そうですね。足を引っ張らないように、がんばります、です」
     自分の手をもじもじと絡めて、何度もこくこくと頷く雨宮・恋(獅子心刃・d10213)。
    「緊張感の無い話だな。まあ、いいか……」
     霜の張った道をゆき、雑草を暫し踏み越えると、その廃墟ビルはある。
     その場所を知って居なければまず訪れないような、社会から自然に隔絶されたかのような、そんな建物だ。
     有馬・由乃(歌詠・d09414)は髪をかきあげ、耳を片手で覆うようにした。
    「『これ』は生まれた時からあったものでした。だから私は普通を知りません。だからこそ、教えてあげたいです。制御する術はあるんだって、それで……」
     それで。
     『それで』の先は、考えていない。
     多分それは、彼女の未来を創るために必要なものの筈だったが。

    ●賢人よ、君は生命の無きことを知っているか?
     薄汚れたと表現するにも足りぬ、廃れた部屋のひとつに、パイプベッドが置かれていた。
     申し訳程度のマットレスを敷いて、少女が腰かけている。空気中にふわふわと浮かぶ埃が彼女のこめかみを通り過ぎて行き、どこへやらへと消える。
     少女の身体は窓のほうを向いてはいたが、視線はずっと足元の割れタイルへと注がれていた。
     否、どこも見ていないと表現した方が、この場合は適切だろうか。
     だからこそ、階段を上り部屋の前で止まった複数の足音にも、反応らしい反応はしなかった。
     錆の進んだスチール扉が悲鳴をあげて開いても尚、指先一つ動かしはしない。
    「あの、こんにちは」
    「…………」
     暫し沈黙をしてから、少女は……切崎問子はこう応えた。
    「帰って。あなたが嫌いなの。同じ場所の空気を吸っているだけでも吐き気がするわ。誰だか知らないけど、声を聴くだけで不快だわ」

     第一声からの拒絶に、由乃は胸のずきりとした痛みを感じた。
     胸に手を当てて、つとめて穏やかな声を出す。
    「大所帯で着てしまってごめんなさい。私は有馬といって、武蔵野学園という学校の生徒です。私達は、あなたを助ける為に来たんです。お話を……」
     まるで自分ひとりで空気に向けて喋っているような、そんな無為さを感じながらも由乃は最後まで言い切った。
    「お話を聞いていただけませんか?」
    「嫌よ」
     振り返るでもなく。
     名乗るでもなく。
     早口に問子は述べた。
    「あなたが何処の誰でどんな事情かは私に関係が無いし相手をする必要は無いし、まして初対面の私に一体何を『助けて』あげるっていうの。別に住み家を探して廃墟に篭っているわけじゃないのよ。それとも何か……」
     くらん、と。
     問子の首が傾き、どこかねじれたような角度で振り向いた。
     途端、問子の周囲から殺気じみたものが沸き上がってくる。
    「私に助けが要るように見えるの?」
    「そうだ」
     胸を押さえて苦しげにする由乃に代わって、イリヤは半歩前へ出た。
    「僕らは君のことをよく知ってる。君を駆りたててる殺人衝動のことも、君がもう普通の人間でいられないことも、間もなく自我を失うことも知ってる。でも今なら、君次第でコントロールができるようになるんだ。僕らはそうなって貰うために来たんだよ」
    「うん、うん……」
     目を細めて、問子は二度頷いた。
     殺気は未だに放ったままだ。
    「それで、普通じゃない殺人衝動に目覚めちゃった可哀想な女の子を口車に乗せて騙す集団じゃない、っていう証明はできるの?」
    「……」
    「一歩譲るわ。あなたたちが誠実な第三者だとして、『コントロールできる』って保証は百パーセントのものなの?」
    「……」
    「なんとなく分かるわ。私がこうなっている以上、あなたたちも『こうなる』可能性があるんでしょう? なんだか、すごく適当で聞こえの良いことを言うのね、あなた。とても気持ちが悪いから、帰ってくれないかしら」
    「で、でもっ、たくさんたくさん、同じような人がいるんですよ?」
     喉を少しつかえながら、恋が説明を付け加えた。
    「戦う人が、たくさんいるんです。だから簡単には、殺されないし、人を襲うようになっても、とめますから」
    「だから一緒にきて下さい?」
    「そ、そうです! まだ元に戻れますから。人を傷つけたくないからって、ずっと一人じゃ寂しい、ですし、一人じゃ解決できないことも、みんなで一緒に頑張った方が、できるはずですから」
    「……ふうん」
     殺気をぐるぐると渦巻かせて、問子は呟いた。
     まるで生返事のような返し方だったが、恋は意味が分からずに再び問いかけてみる。
    「あの……」
    「まだ分かって貰えない?」
     殺気が徐々に広がり、問子を中心に巨大な化物を形成していた。
    「わたしはね?」
     殺気は濃度を増し。
    「わたしにね?」
     色濃く浮き上がり。
    「関わらないでって――」
     そして問子は、強かに床を踏みつけた。
    「言ってるの!」

    ●『 人の 情など きている しか からない』
     濃密な砂嵐を全て黒色に染めたような殺意の塊が直接叩きつけられてくる。
     ノエミはナイフを刀を十字に構えると、砂嵐を眼前の刃で切り裂くように受け止めた。
     とはいえ、彼女に降り注ぐ分が半減したというだけに過ぎない。今から殺されようとしているのだという恐怖が、人知れず彼女の膝を笑わせた。
    「……ぎっ」
     本能的に短く唸り、歯を食いしばる。無理矢理にでも足を踏み出すと、鏖殺領域を切り裂いて弾丸を形成、スイングと共に発射した。
     問子の殺気が局地的に集中し、弾丸を受け止めて拉げさせる。
    「なぜ……なぜ我慢することばかり考えるんです。世の中には頑丈な人がいる。それが僕たちです。僕らを相手に、我慢する必要なんてないんですよ」
    「強がりね」
     途端、怨念のようなものがノエミの足元から発生し、巨大な渦を巻いて取り囲んだ。
    「すぐに死んじゃうくせに」
    「どうかな!」
     床タイルを踏み砕き、一郎と悠埜が飛び込んで行く。
     パイプベッドを回り込むなどという手間は挟まない。一足で飛び越え、刀をシンメトリーに構えた。影業とバトルオーラだけがアシンメトリーに噴き上がる。
    「まずは動きを止めさせてもらうぞ!」
    「悪く思わないでね!」
     二人の刀は問子の手首を正確に狙い、まるで抵抗しない彼女の手首を一瞬で切断してしまった……と思った矢先、問子は二人の頭上に現れた。
     目の前の、少女の形をしていた夜霧が拡散する。
    「なっ!」
    「奢って――」
     問子は殺意の波を形成。まるで高波にさらわれるように窓際へと押し流される悠埜と一郎。
     二人は窓枠に激突し、既にひびの入っていた窓ガラスをバラバラに砕く。
     全く反対側から、メイテノーゼは影業を適度な量だけ指に挟んで飛ばした。
     宙を舞うガラス片のひとつを掴み、空中で振り向きながら影刃を弾き飛ばす問子。
    「ここは、冷たい」
     メイテノーゼは両手の指いっぱいに無数の鋭刃を挟むと、連続して問子へと発射した。
    「ずっと君がひとりでいるには、あぶない」
     その全てをガラス片で叩き落とす問子。
    「今なら温かくて、仲間のいる場所へと歩める」
     しかし最後の一本が問子の腕脇腹を抉り、服ごと肉を切り裂いていく。
    「さあ、こちらに。温かい方に」
    「見下して――」
     天井を滑るように駆けてくる問子。イリヤは反射的にナイフを繰り出し、スピンと共に繰り出される問子のスラッシュを受け止めた。
     ガラス片を素手で握っているからだろうか。問子の手からぶしゅんと血が噴き出た。
     その様子に目を細めながらも、イリヤは後ろの仲間へと意識を送った。
    「続けて」
    「ご、ごめんなさい、けど、絶対にとめますから!」
     恋は目をつぶって神薙刃を連射。
     それに続いて由乃も清めの風を呼び寄せた。
    「『今を春べと咲くやこの花』……清風!」
     彼女達を覆う呪怨の風と相殺させ、ばしんという空の爆ぜる音と共にうち払う。
     爆ぜた風と風の間から、供助が飛び出してくる。
    「おい聞こえてっか、お前!」
     拳に布護符を巻き付け、激しく雷をまき散らす供助。彼の拳がそのまま問子へ叩き込まれ、激しく爆発した。
    「お前、自分を隔離してでも耐えたんだろ。強い女だ。そんだけの気持ちが応えだろ。殺したくないなら目ぇ合わせろ。今からお前の怖いもの、ぶっ飛ばす!」
     更に別の護符を脚に巻きつけると、烈風を纏って飛び、問子へと思い切りたたきつける。
    「俺らを舐めんな。簡単には死なねえし殺さない。お前も、自分殺してんじゃねえ! そうだろ悠埜!」
    「全く、言いたいこと全部言ってくれたな」
    「じゃ、あとはやることやって終わりでいいよね!」
     殺意の海を割り、悠埜と一郎が飛び出してくる。
     刀を放り投げ、天井に突き立てる一郎。
    「さ、これは痛いよぉー!」
     オーラを纏った拳を問子の顔面に叩き付け、更に左肩、腹、右肩、顔面、顔面、顔面顔面顔面顔面へと凄まじい速度でパンチを叩き込んで行く。
     その度にノックバックし、ついにはスチール扉を逆向きにひしゃげさせて廊下へと飛び出した。
     悠埜は刀を一度鞘にしまい、ナイフを両手で握って突撃。緊急離脱した一郎に代わって問子の胸にナイフを突き刺す。反射的に突き出された彼女のガラス片が悠埜の胸に刺さったが。
    「……ぐ、おおおおっ!」
     気合で堪えてそのまま突っ走り、最初から脆くなっていた廊下側の大窓を破って野外へと転げ落ちて行った。
     野外と言っても人の手を離れてずいぶん経つ土地である。うっそうと茂った樹木の群へと突っ込み、二人はもつれ合いながら数十本の枝を圧し折って地面へと転がった。
     霜の張った土に、悠埜の後頭部が押し付けられる。
     彼の顔を押さえつけ、問子はガラス片を振りかざした。
    「なんでも知ったようなことを言わないで。何でもできるようなこと言わないで! どの道私もあなたも無力なのよ! 何が仲間よ制御の方法よ、綺麗な側面ばっかり見せて、浄水器の訪問販売のほうがまだマシなこと言うわ! そんな言葉で誰の心も動かないわよ! そんな言葉で――!」
    「そうだな」
     天高く夜の空。
     ベレー帽を宙に舞わせ、コートをマントの如く羽織らせて、ノエミが日本刀を振りかざした。
     数十本の折れた枝の間を掻い潜り、着地と同時に閃かせる。
    「言葉は信じられない。だから実力を示すんです」
    「……ぁ」
     背中から大量の鮮血を噴き上げて、問子はどさりと横向きに倒れた。
     冷たい土に、頬をつける。
    「鬼となるか、それを拒むか。好きな方をとって構わないんだぜ……さあ」
     刃の先が、問子へと向く。
    「選べよ」

    ●切崎問子という人間
     泥まみれの服のまま、問子はぼうっと空を眺めていた。
    「お疲れ様」
    「んー」
     悠埜と、後からやってきた一郎がぱたぱたと手を振り合う。
     少し遅れて恋が脚をもつれさせながら駆け寄ってきた。
    「あの、大丈夫ですか、えとえと、いたいのとんでけしましょうか?」
    「落ち着け」
     枝に引っかかった帽子を取り上げて、一度はたいてからかぶり直すノエミ。
     振り向くと、メイテノーゼたちが問子のそばまでやって来ていた。
    「女の子がこういう場所にいるのはよくない、気がする。ここで、待っていたい人とか居るのか?」
    「……いいえ、居ないわ」
     頬についた土を拭って、問子は言った。
     由乃は何かを言いたげに口を開けて、閉じた。別の、何か当たり障りのない事を云おう。
    「学園に来る手続きとか、色々あると思いますけど」
    「行かないわよ」
     遮るように手を振った問子に、由乃はびくりとした。
     両手の指を絡めるようにする恋。
    「で、でも」
    「でもじゃないわ。私はこうなってしまって、こうして生き残ってしまったけど、だからって一緒に行くとは決まってないわ」
    「私達と一緒だったら、衝動とか……」
    「それでも殺しはやるんでしょ」
    「……え、と」
    「武装満載で廃墟ビルくんだりまでやってきて、『私達は危害を加えないし誰も殺したりなんてしない善良な超能力者さんたちですよ』なんて、そんな理屈があるわけないでしょ。私が何のために引き籠ってたと思ってるの」
    「ふうん……ま、いいんじゃねえの」
     耳の上を掻きながら、供助はふらふらとその場から背を向けた。
     一拍置いて、誰にでもなく言った。
    「帰ろうぜ」

     後日談ではない。
     あれから数十分後のことである。
     廃墟ビルを訪れた青年は、昨日以上に破壊の進んだ部屋に目を丸くした。
     そして、パイプベッドの上に腰掛けた、イリヤの後ろ姿に沈黙した。
    「彼女は去ったよ。だからもう、ここにくる必要は無い」
     窓からさす月明かりを背景に、イリヤは振り返る。
    「全部終わったんだ」

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 15/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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