ある晴れた休日に

    作者:星乃彼方

     普段はダークネスらと戦う灼滅者、それがあなたです。けれども、あなたも表の世界ではごく普通の学生です。
     休日になれば当然、授業はなく一日フリーとなります。ともすれば、遊びにいくのは健全な学生の姿として至極当然なものでしょう。
     ダークネスもサイキックも全く関係なく過ごすあなたの姿は一体どのようなものなのでしょう。

     神奈川県某所にある大公園。
     自然いっぱいの敷地内を全て歩きまわるだけで一日のほとんどを過ごせてしまうだけの広さを持つ大公園は、休日になると家族連れ、カップル、同級生らの集団など多様な利用者の憩いの場となっています。
     その広大な敷地にはアスレチック広場や、キャッチボールやお昼寝ができる原っぱがあります。また、整備された遊歩道では季節ごとの植物を観賞することができます。公園の中をぐるりと囲む池ではボートを使って公園内を一周することもできます。
     お腹が空けば、木々に囲まれたバーベキュー場でお昼を楽しむこともできるでしょう。
     夕方になれば、公園全体を一望できる小高い丘から夕陽が沈む様子がよく見えることでしょう。

     選択肢は人の数だけあります。広大な自然に包まれた公園であなたはどのように過ごしますか?

     ダークネスもサイキックも関係ない平穏な休日をこの公園で過ごすあなたを教えてください。
     さあ、どうやって過ごそうか。


    ■リプレイ


     芽花がやってくるのを見つけると命は笑顔で大きく手を振る。
    「はやいよ寒なかった?」
    「かーやちゃんのこと考えてたからドキドキして少し熱いくらい。ね、少しお散歩しない?」
     差し出された手を芽花は両手で包み込む。
    「ほら、冷たい」
     互いに微笑みながら、二人は遊歩道の方へと歩いていく。
     ゆるやかな休日の始まりである。

     寧々は二頭の愛犬、柴犬のコマと白い北海道犬のユキオを連れて散歩に来ていた。
     元気良く駆けるコマとユキオのペースに合わせて寧々も一緒に走って午前のひと時を過ごす。
     その光景を見ながら、シエナとフレッカは並んで歩く。
     非番のフレッカは野戦服からカジュアルな服装へ、シエナも楽しそうに甘い物がある出店に目をやる。
    「こういう場所だと妙に美味いよなーシエナ、何か食べるか」
     二人が足を止めたのはクレープの出店。手渡されたクレープをシエナは目を輝かせて受け取り、再びフレッカに向ける。
    「一緒に食べよう?」
     そうして二人はクレープを手に原っぱに向かう。

    「風が気持ちいいね! 景色もなかなか」
    「隙アリ」
     ジャングルジムの頂上にいる涼花を軍はカメラにおさめる。すかさず涼花は軍の手をとる。
    「そんな事する手は逮捕だ!」
     写真撮りに来たのに、という言葉を飲み込んで、軍は手を繋ぐ。
    「いっくんの手冷たい」
    「お前が子供体温だからじゃね?」
    「もう!」
     互いの体温を感じ合う喜びを覚えながら二人はジャングルジムの上で寄り添う。

     ましろと雅はおしゃべりをしながら木々の下を歩いていた。
    「わたし、秋って好き。だって紅葉とか景色は綺麗だし、お芋とか秋刀魚とか、色々と美味しいものがあるし…」
    「ええ。秋の食べ物って美味しいものばかりで、つい食べすぎちゃいますよね」
     ふと雅は自分がゆっくりする機会が減っていた事に気づく。そして腹の虫が主張を始めると。
    「お弁当タイムにしよう」
     ましろは雅の手を引いて池の方へと駆け出すのだった。


    「クラスの皆でバーベキューってなんだかわくわくしますね」
     えりなら【武蔵境・1E】はバーベキューをしにやってきていた。
    「バーベキューは男の料理!」
    「着火は俺に任せろー!」
     着火ライターを手にするレオとあぎなは同時に新聞紙へ点火する。
    「うわぁぁぁっ!」
     燃え盛る炎に慌てるあぎなをレオが引き止め、えりなと千尋が声をあげて笑う。
    「もういけるんじゃない? 肉汁めっちゃ出てるやん」
     千尋は焼けた肉を紙皿に移して渡していく。
    「空星さんはたくさん食べそうですよね~はい、お肉どうぞ♪」
    「僕が取りますから、女の子は楽しく食べていてください」
    「ああ! 千尋さん、お洋服が汚れますよ!」
     騒がしいながらも穏やかなひと時を過ごしながら、彼らは笑い声を精一杯あげるのであった。
    「バーベキューなんて何年ぶりかなぁ…」
     【ひだまり自然公園】の珠洲は嬉しそうに家から持ってきた野菜を取り出す。
    「いつもは父ちゃんが用意してくれるんだけど、今日は、センパイ、頼むぜ!」
    「力仕事引き受けるよ~」
     煉夜は料理を、はるひは力仕事担当と分担していく。
    「これぞ適材適所、みんなで助け合えば楽しいね!」
     はるひは重い鉄板などの持ち運びを行い、その間に珠洲や煉夜が野菜を切ったり肉の準備をする。
     一方、アキラはあたりからキノコを探し出し、海砂斗は持ってきた駄菓子や水筒を並べ始める。
     珠洲は不器用ながらも肉を焼き、煉夜は自分好みのソースを用意して着々と準備を進める。
     準備が終わり、鉄板の前に集まるメンバーたちの腹の虫が待ちきれない時。
    「それでは――」
    『いっただきまーすっ!』
     彼らは皆で作った成果を味わうのであった。
    「…お前その焼き方!」
    「真尋君が食べきるから問題ないっす」
     メアリは真尋の肉を火力MAXで焼きまくる。
    「ペースを考えないからっす。真尋君はバカっすねー」
    「ノリで焼くだけ焼いて押し付けんじゃねーっての」
     完食した真尋は焼きリンゴを奪う。
    「真尋君は鬼っす…」
     この世の終わりみたいな顔をするメアリに真尋は苺アイスを渡して、二人はデザートを楽しむのだった。

     【MUSICA】のメンバーもお昼の準備をしていた。
    「みんな寒くない?」
     ブランケットを手にするのはブルーシートを用意したレオナルドだ。
    「あたしのはタマゴサンドとハムサンドな。口に合えばいいんだけど」
     控え目に言う優奈だが、見た目から美味しさを窺わせる。
    「結構な量作ったから気にせず食べてくれ」
     悠埜が広げた重箱には豊富な種類と量が両立されていた。
    「私はドーナツを作ってきました」
     デザートにどうですか、とプレーン、チョコ、シナモンのドーナツを披露するのは凪だ。その手には携帯が握られ、皆のお弁当を写メに収めていく。真一もハーブティーを回して飲み物を確保する。
    「すごい、ゆめのくにだ。どこから手をつければ……!」
    「花澤リクエストの栗きんとんだ。そこまで甘さが辛いってことはないと思う」
     甘くて美味しいと千佳はご満悦だ。
    「―♪」
    「僕も歌うね」
     食べ終わるとレオナルドと真一が歌い始める。歌声を体で感じ取りながら優菜は眠りの世界へ誘われる。
    「うん、きょうもすてきないちにちですね!」
     千佳の言うように素敵な食後を彼らは過ごすのであった。

     昼食のパンを鳥に与えながら、美夢は考える。
     迷子を楽しんでいたら偶然たどり着いたこの公園。良い刺激だから、もう少し歩こうと考えて、最後のパンを鳥にやって立ち上がる。
     紅耀は許婚と共にお昼をのんびりと食べながら互いに近況を報告しあう。
    (「やっぱり可愛いなぁ」)
     懸命に話す表情を見ながら紅耀は頬を緩めるのだった。
    「…なぜ公園で休日を過ごすことになったんだ」
     黎嚇は小さく肩を落とす。エスコートができなかった不甲斐なさを感じて隣を見るとお昼を食べ比べるフィーネの姿がある。
    「どうしたら、こんな味になりますの…次に作るときは今よりも美味しいものを作ってみせるわ」
     高らかに宣言し、フィーネは黎嚇のお昼を食べるのだった。

    「縁ちん巨大パフェありがとうだよ~♪鐐ちんもお弁当美味しそうなのだー」
     屈託ない笑顔の凪。芝生の一角にシートを敷いてお昼にしようと【井の頭2-3】では決めていた。
    「どういう流れでこうなったんだ」
    「俺たちで食べきれるのか」
     疑問と不安を顕にする鐐と己鶴。超巨大パフェが中央に鎮座しているのだ。しかもデリバリーだというから驚きだ。
    「ゲームに負けて無茶振りされた結果がこれだ!」
     だが、自腹で払わされた縁も気持ちを切り替えてスプーンを持つ。
    「皆でがんばりましょう!」
     と由生の言葉を引き金に皆は一斉にパフェに手を伸ばす。
    「食べてもなくならないって幸せですねー」
     どんどん口に運ぶ由生。その隣で優希はよく噛んで、マイペースでパフェに挑む。
     皆の努力の結果、パフェは無事に完食。
    「幹事ご苦労、次も期待している、よ」
    「縁ちん、これは今日のお礼なのだ」
     優希はケーキを縁に差し出し、凪はマトラの肉球を押し付ける。
    「元気出して明日から逞しく生きてね?」
     その言葉に縁はがっくりうなだれる。
    「こんな休日も悪くない」
     その光景を見ながら己鶴は静かに思うのだった。
    「ん、ごっそーさん! いやぁ、みんな料理上手だなぁ!」
     【天文台通り高校2-7】の香艶は全てが空になった箱を見て満足そうだ。
    「いやー、ネットでみかけてこれだ! って思ったさねー」
     持ち寄りの弁当の中でキャラ弁を作ったゼアラムは巨体を揺らして豪快に笑う。
    「ボール落とした人が皆にジュース奢る…とかどうかしら?」
     律花が持参してきたバレーボールを手にニヤリと笑う。
    「俺はアタッカー神波と呼んでくれ」
     やる気満々の燎につられて他の者たちも参加する。
    「負けたらジュースとは、負けられません」
     アルヴィのサーブから始まった原っぱバレーはのんびりと始まった…はずだった。
    「逃げるんじゃなくて、無理ない範囲で打ち返す、と」
    「それ、アタックさー」
     叡の柔らかいトスがあがると、ゼアラムののんびりな口調を見事に裏切る鋭いアタック。
    「容赦しないわよ?」
    「運動得意じゃないんだがな」
     そのアタックを楽々ボレーしたのは律花。それをムウが綺麗なトスを上げる。
     ふわりと上がったボールを燎の手が捉える。
    「行くぜ必殺KOアターック!」
    「(突き指したくないな…)ってボフッ!」
     一瞬気を逸らした迦月の顔面に燎のスパイクが決まる。
    「お前の犠牲は無駄にしない…!」
     香艶がトスをあげる。
    「言ってる傍から被害者出てるじゃないの!」
    「布都大丈夫!?」
     ボールのことを忘れてクラスメイトは迦月の元に駆け寄る。
    「神波…よくもやってくれたな」
    「油断大敵ってな?」
     にんまりと笑う燎はボールの行方を捜す。するとずぶ濡れのムウがボールを持ってこちらにやって来た。
    「ボール拾って、あと戻るだけって思った瞬間に川に落ちた」
    「あーあ、ムウまで…これぞ水も滴るってヤツ?」
     むすっとするムウを宥めるように律花はタオルを手渡すのだった。

     ボートの上でお昼を済ませた、かまちと七は紅葉を眺めていた。
    「こんなのんびりなのも久々な気がするわ」
     七は自分が用意した彩り豊かな行楽弁当が空になってるのを見て満足そうに言った。
     一方、かまちは満腹でか少し眠そうだ。
    「一眠りするなら膝枕どうぞ?」
    「膝枕ぁ? あーんじゃちっとだけ、頼む」
     かまちは七が差し出した膝に頭を乗せて穏やかな時を過ごすのだった。


     雪月とメフィアは宿木の木を探しに双眼鏡を片手に二人は公園内を歩いていた。
    「雪月くんは、クリスマスどうするの?」
    「んー、特に予定はないけど…イヴはどっかに行くか」
    「じゃあクリスマスの日はお鍋にしようかな、こたつでのんびり過ごそうね」
    「おう、コタツでなべとか最高だな、牡丹鍋とか食いたいんだけど手に入るかねぇ」
     雪月のポケットの中に入っている二人の手は強く絡み合うのだった。
    「ナノナノ」
    「わぁー湖がキラキラして綺麗なのです」
     綺麗なものを次から次へと見つけるなーちゃんを追いかけてはるは散策を楽しむ。
    「のんびりだー」
     木陰でマットを敷いて寝転がる舞夢。周りには本の山とお菓子、お茶の魔法瓶。
     快適な空間を作り出して、舞夢はまったり読書で休日のひと時を過ごす。
     一方で、少し森の深い所に入るとこんな光景も見られた。
    「えらいぞアメ! よくできたな!」
     数日前に拾った子犬のアメにしつけを教えていた由燠はアメを抱き上げる。
     やんちゃし放題のアメと由燠の間に確かな信頼が生まれた瞬間だった。
    「―♪」
    「お上手ね」
    「はわわ、見られちゃいました?」
     川辺で伸びやかに歌声を響かる一美は少し恥ずかしそうに香澄に言う。
    「よろしかったら私の歌もう少し聴いてください」
     もちろんと、一美と香澄は午後のひと時を歌で過ごす事にする。
     そうしたシャッターチャンスを蝸牛は逃さない。許可を貰い撮影をする蝸牛だが、彼の存在はなかなか謎に包まれているのであった。

    「陰ながら応援しない訳にはいかないでしょうフフ」
    「…むぐ。幸せそうで憎…微笑ましいね」
    「あんこに牛乳ってなんでこんなに合うんだろうねえ」
     【井の頭中学3-H】でできたカップル、雄介と小夜子の二人を想司、悠歩、絢矢の三人は影から見守っている。想司が配ったアンパンと牛乳を手にしながらだ。
    「どーだー、小夜子ちゃんのひざまくらだぞー」
    「いやー、さやに膝枕してもらえると、俺は世界一の幸せ者じゃねーか」
     と言いながらも、つい他の可愛い女の子を視界にいれてしまう。
    「…あの女の子がいなければ、うちの方だけみててくれるのかなぁ」
     雄介を見下す小夜子の目はどこか虚ろだ。放っておけば、本当に人を刺しかねないような…
    「お、いつ刺すんですか、今刺すんですか」
    「ヤンデレ試すってレベルじゃないな」
    「スプラッターな展開はちょっと…」
     外野は好き勝手に言うが、当の雄介には大事のようで。
    「さ、さやは俺のことだけを見てればいいんだ!」
     小夜子の肩を抱いて、雄介は真剣な顔で見つめる。
    「うん、たまにはヤンデレもありかもね」
     元に戻った小夜子にほっとしながらも、気をつけないとと胸に誓う雄介だった。
    「たまには芝生でゴロゴロするのもいいと思うんですよ」
     ゲイルと希と寝転びながら空を見上げる。
    「あたし、ゲイルと一緒に行きたいとこ山ほどあるんだ」
    「山ほどって、それだけでいいんですか?」
     ふっと伸びてきた希の手をゲイルは掴んで、希を抱きしめたまま眠りに落ちる。
     チャンスか? いや、ねーよ! と一人で百面相をする希。
    「何年かかってもいいから、ちゃーんと付き合えよ?」
     希は少し照れくさそうにゲイルの胸元に顔を埋めるのだった。
    「いざ、おやつを賭けて勝負っ!」
     手加減無用と、有栖は幼馴染に向けてバドミントンのラケットを構える。その姿は日本刀を構えた剣士のように凛々しい。
    「ここだ、必殺…有栖スペシャルスマッシュっ!」
     戦闘経験を活かした強烈なスマッシュが決まり、有栖は得意顔で幼馴染を見るのだった。


     休日の過ごし方を観察していたルチャカは夕陽の見える丘にやってきた。
    (「帰国子女でスパイのわたし。せめてその場で過ごした記憶は大切にしていたいのです」)
     そう思いながらルチャカは沈みゆく夕陽を見送る。
    「…なに、してんのよ」
    「会いに来たのよ」
     空に、ね。と霖に問われた暁は答える。
    「アンタは、あの空が寂しく見える?」
     膨れっ面の霖は小さく首を振る。
    「夕は夜を連れてくる。夜は星を纏っているから、優しいから寂しくなんてない」
     霖は色濃くなる空に想いを馳せる。
    「そうね、アタシも同じ気持ちよ」
     暁と霖はやがて消えてゆく空を見送るのだった。

     噴水の周りをモーリスは静かに歩く。
     過去の記憶がない自分は何だと自問する。だが、答えはなく、代わりに今の記憶が溢れる。
     「ヤハハ」
     不安を笑い飛ばしてモーリスはまた歩き始める。
    「ユーキ嬢、余り無理はしないようにな?」
    「……ん、ありが、と……」
     汗ばみながらボートを漕ぐ深玖と平気な顔して漕ぐユーキの二人が漕ぎ手を務めるボートは【Gladiolus】のメンバーを乗せて湖を遊覧する。
    「深玖とユーキはお疲れ様」
     アイリッシュが船の漕ぎ手を労ってカップケーキを皆に配る。
    「…あ、美味、し、そう、な、お菓子…」
    「…少し気合い入れすぎたやろか」
     ケーキを包み込むように持つユーキに璃乃はお茶を差し出す。璃乃は多数の紅茶から煎茶まで取り揃えていた。
     夕暮れのお茶会は静かに始まる。
    「こんな景色の中でお茶会ができるなんて素敵……」
    「やっぱり、俺はこの時間が好きだな」
     紅葉と夕陽は水面で揺らめき、時は静かに流れる。
     沈み行く夕陽に目を細めながら、深紅の光の中に彼らの姿は消えていく。
     彼らの穏やかな休日はこうして終えるのであった。

    作者:星乃彼方 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月3日
    難度:簡単
    参加:70人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 10
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