お菓子だ~い好き♪

    作者:相原あきと

     商店街の電柱の影から、1人の女子小学生がメモを片手にあるお店を見張っていた。
    「やっぱり、狙うならあのお店だよね。パテシエも多いし、よりどりみどりだもん」
     メモに書かれたいくつかの店名を横線で消し、大きく目の前のお店『めいぷる』の名に二重丸をつける。
     これから少女は、あの店のパティシエの1人にソウルアクセスする事で操り、自分の望みのケーキやデザートを作ってもらう作戦だ。
     昨日、お姉ちゃんやお兄ちゃんに取っておいたケーキとプリンを「名前を書いてなかったから」と両方食べられショックで落ち込んでいた時、『そういう事をできる力が自分にはある』と、なぜか……実感したのだ。
     ちなみに何か知らない人の声が聞こえた気がするけど、お化けは怖いから聞かなかった事にした。
     ただ、一つだけ少女が気にしている点がある。そのせいで、未だに電柱の影から二の足を踏んでいるのだ。
    「お菓子いっぱい食べたら太っちゃうかな……」
     小学生だからって女の子なのだ! 体重は気になる! 超気になる!
    『大丈夫、同じ種類のお菓子を食べなければ太らないさ。ほら、お母さんも一日30種類食べなさいとか言うだろう? 同じことさ』
    「わああ! お化けなんていない! お化けなんていない!」
     聞こえてきた声に慌てて耳をふさぐ少女!
    「で、でも、お母さんも種類食べればいいって言ってたから、同じのを食べなきゃ大丈夫だよね。うん」
     お化けの声は置いておいて、少女はグッと手を握り込むと『めいぷる』へと向かう事にした。

    「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……時が……来たようだな!」
     教室に集まった灼滅者達を見回して神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が言い放った。
    「今回お前達に依頼したいのは、シャドウに闇墜ちした一般人の救出だ。その一般人の名は雲見梨子(くもみ・りこ)、小学2年生の女の子だ。普通なら闇落ちしたダークネスはすぐに人間としての意識はかき消えるのだが、その子は元の人間としての意識を遺しており、ダークネスの力を持ちながらも、ダークネスになりきっていない状況だ」
     つまり、彼女が灼滅者の素質を持つのであればKOし、闇堕ちから救い出して欲しい。もちろん、完全なダークネスになってしまうようであれば灼滅するしかないのだが……。
     ヤマトはそう言うと事件の詳細を語り始める。
    「梨子は洋菓子店のパティシエにソウルアクセスし、自分が食べたいケーキや菓子を作らせようとしている。一見無害そうだが、放っておけば確実に完全なダークネスになる。そうなったらその後の被害は比では無くなるだろう」
     ヤマトはそこまで言うと指先を額に僅かにつけ、キリっと灼滅者達を見て笑みを浮かべる。
    「だが安心しろ。そうならない為に俺の脳に秘められた全能計算域(エクスマトリックス)が、お前達の生存経路を導き出す!」
     ヤマトが言うには――。

     現在、梨子は洋菓子店『めいぷる』を見張れる電柱の影にいる。
     彼女を説得すれば弱体化した状態で戦う事になる。
     今回、現実世界で戦えば彼女の配下は出てこない。シャドウとはいえ相手は1人ならなんとかなるだろう。
     説得に失敗して弱体化できなかった場合は重傷者が出てしまうかもしれないが……。
     戦闘になった際、莉子が狙うのはパティシエとお店にいるお客だ。被害を出さない為にも莉子の気を引いてる間に避難させた方が良い。
     避難は力付くか説得か、どちらにせよ全員を裏口から運び出すまでに10分はかかる。
     避難させているのに莉子が気がつけば、彼女はその瞬間、店を襲撃する。
     梨子の気を引く為にはケーキや菓子を与えれば良い。だいたい1つにつき1分は時間が稼げる。
     莉子は太ることを気にしているようで、食べさせるのに言いくるめる必要がある。「太るから食べない」など言い出せば避難させている方に気がつく可能性がある。

    「梨子を説得するのは簡単だ。太るのを気にしているから正論を言ってやればいい。もっとも、時間稼ぎでケーキやらを食べさせる時と間逆の話になってしまうから、食べさせる者、説得する者、避難させる者、ちゃんと役割分担を考える必要はあるだろうな」
     ヤマトはそこまで言うとダークネスの戦い方について解ってる限りの話をする。
    「ダークネスとしての戦い方は、梨子が嫌った相手を狙ってシャドウハンターと影技のサイキックに似た攻撃を行ってくるだろう。嫌った相手がいなければ、どこを狙うかはわからないが……。基本的に攻撃特化の構えで向ってくるようだ」
     ヤマトは必要な情報は全て言ったことを確認すると、最後に灼滅者達を見回して言った。
    「おまえ達なら大丈夫だと俺は思っている。良い結果を待っているぞ」


    参加者
    橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)
    紫雲寺・りり(小夜風・d00722)
    茶季院・景織子(影城の水蓮花・d01861)
    黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)
    泉・火華流(元気なハンマー少女・d03827)
    御崎・美甘(瑠璃の天雷拳士・d06235)
    覇穿・騎人(ロリコニアのご当地ヒーロー・d09208)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)

    ■リプレイ


     洋菓子店『めいぷる』の店長は、身長2mを越える巨漢だった。
     その巨漢の店長は今、目の前で避難を奨める少女を見下ろしていた。
     少女――茶季院・景織子(影城の水蓮花・d01861)が言うには『あと10分でこの店を襲う』との張り紙を見つけたとの事だ。
    「なん……だと……?」
     腹の底から響いてくるようなボイスで、額に青筋を浮かせた店長が睨んでくる。
     ぐっと顔を近づけて聞いてくる店長。
     景織子は背に汗が流れるのを感じながら平静を装いつつなんと言えば良いか思案を巡らす。
     だが、その思考を店長が遮る。
    「お前達っ!」
     パティシエ達に向かって店長が大声を出す。
     誰もが次の言葉を待った。
    「俺は逃げる。あとは任せた!」
     そそくさと『店長』と刺繍されたエプロンを外して帰り支度に取りかかる巨漢。
    「ちょっ! 店長!」
    「逃げるって何ですか!?」
    「この忙しい時間帯にふざけないで下さい!」
     パティシエ達が一斉につっこむ。
     景織子は思わず呆然と成り行きを見守る……が、慌てて店長を援護射撃。
    「警察を呼んでから避難では間に合いません、裏口から逃げましょう!」
    「よし! 俺は裏口から逃げる! 死にたい奴は残れ!」
    「いや、店長! だいたいあの子は誰なんですか!?」
    「俺が知るか! この店の関係者だろう! 誰だバイト雇ったのは!」
    「それ決めるの店長の仕事でしょーが!」
     店内はカオスだった。
    「まずい、時間が! 僕はお客様を誘導してきます!」
     さりげなく紛れ込んでいたもう1人、御崎・美甘(瑠璃の天雷拳士・d06235)が厨房を出てレジのある部屋へと行く。
     その部屋では数人のお客がショーケースに陳列されている各種ケーキを見ているようだった。
     美甘が店員を装ってお客達へと声をかける。
    「お客様、大変申し訳ありませんが今すぐ裏から避難して頂けますか!」
    「え? どうして……」
    「事情は後で説明致します! さあ、早く!」
     美甘の言葉にとまどう客達だったが、とりあえず店を出ようと出口から――。
    「表に行くと、店を襲うって言ってた人に見つかるかも。こっちからにしましょう!」
     出口から出ようとした客の前に、お客として紛れていた紫雲寺・りり(小夜風・d00722)が立ちふさがり裏口から逃げようと誘導する。
     店員のように振る舞う美甘の行動と相まって、戸惑いつつも客達はぞろぞろと厨房の部屋へと誘導され、少しずつ裏口から逃げて行った。


    「お菓子だよっ! みんな集合っ!」
     商店街の通りにケーキとお菓子を大量に乗せたワゴンを押して来て叫んだのは、ウェイトレス姿の黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)だった。
    「お菓子!?」
     その声にぴょこりと電柱の影から顔をのぞかせる小学生。
    「あたしの働く喫茶店では皆さんに試食をお願いして回ってるんだけど……あなたも食べる?」
     ちらちらと『めいぷる』を気にしながらも、目の前のワゴンに乗ったケーキやお菓子につられるようにふらふらとその少女――今回の救出対象である雲見梨子――がやってくる。 
     食べたいのか目を輝かせながら手を伸ばすも、何か葛藤しぷるぷると首をふってケーキを受け取らない梨子。
     あんずがさらに奨めようとした時、梨子の横に小学校高学年ぐらいの女の子が並んで言った。
    「あ……美味しそう。ボクも一緒にいいかな」
     橙堂・司(獄紋蝶々・d00656)だ。
     司は梨子が羨ましそうに見る中、ワゴンから小さなシフォンケーキを取るとパクリと頬張る。
    「あ」
     梨子の口から声が漏れる。
     司はさらにワゴンからマドレーヌを取るとパクリ。
    「あ」
     再び漏れる梨子の声。
     そして司はあんずが梨子に渡そうとしていたガトーショコラに目を留め、今度は梨子に視線をあわせる。
    「これも美味しそうだね。……食べないの?」
     梨子はその言葉にハッとすると、食べる! とあんずの手から受け取りぱくりと一口!
    「おいしい!」
     梨子の目がきらきらと輝き、別のガトーショコラを司に「これおいしいよ!」と奨めてくる。
     司もお礼とばかりに自分が食べたシフォンケーキとマドレーヌを奨め、2人でおいしさを堪能。
     いつの間にかワゴンの周りに人が増え、さらりと梨子の隣に陣取った黒乃・璃羽(ただそこに在る影・d03447)もぱくりぱくりとお菓子を食べる。
     梨子もその行動を見ては、同じように新しい種類のお菓子に手を伸ばす。
     璃羽はそんな梨子を見ながら彼女の気持ちになってみた。
     ――お菓子やケーキが好きな気持ちは分かります。
     ――女の子なら甘い物の誘惑に負けるのも。
    「……でも辛いお菓子の方が美味しいですが」
    「ふぇ?」
     口周りをクリームだらけにしながらショートケーキを食べていた梨子が聞き返す。
    「………………」
    「かぼちゃプリンも……ある」
     疑問視を頭の上に浮かべる梨子に返答はせず、目の前にプリンを差し出す。
     目先のプリンに釣られて食べ始める梨子に対し璃羽は、やはり辛い料理の方が……等と再確認していた。
     プリンを食べ終わった頃、梨子が思い出したかのように震え出す。 
    「いっぱい食べちゃった! 太っちゃう!」
     その瞬間、梨子の周りを囲むように集まっていた灼滅者達が即座に連携を開始。
     次々に新しい種類のお菓子やケーキを梨子に奨めはじめる。
    「あふぅ、これもおいしいなぁ……じゃないよ! だから食べたら太っ――」
    「このマロンのモンブランは?」
    「食べるー♪ おいしー……って、違うよ! このままじゃ――」
    「サツマイモのタルトは?」
    「大好き♪ 幸せ~♪……いや、だからダメなんだよ!?」
     けっこう時間が稼げた。
     だが、いい加減子供だましもリミットだ。
     梨子の口から低い声が漏れ始める。
    『大丈夫、同じ種類のお菓子を食べなければ太らないさ』
     サァっと梨子の顔が恐怖に引きつる。
     時計は足止め開始から9分が経過していた。あと1分。
    「大丈夫!」
     恐怖にかられそうな梨子に指を突きつけ言い放ったのはあんずだ。
    「なぜならこのあんずちゃん。毎日20種類以上のお菓子をバランスよく食べてるから全く太らないの」
     そう言うと、お菓子を自らどんどん食べるあんず。
    「そ、そっか……やっぱり違う種類のを食べれば大丈夫なんだね! じゃあ食べる!」
     梨子はそう言うと、真っ白なチョコレートに手を伸ばしてパリっともぐもぐ。


    「ねぇ、最近妙な声とか聞こえたりしてない?」
     幸せそうにチョコをもぐつく梨子に聞いたのは泉・火華流(元気なハンマー少女・d03827)だ。
    「そいつはシャドウっていって、貴方の事を唆して、最後には体を乗っ取って、こ~んな姿にしちゃうんだよ」
     火華流は自作のシャドウ絵を見せる。
     ガーンっ! と大ショックの梨子。
    「太ったばいきんになっちゃうの?」
    「その声の言うとおりにしてたらね」
    「で、でも、今食べちゃったし……」
     おろおろしだす梨子の肩にぽんと手を乗せたのはロリコ……ニアのご当地ヒーローを自称するロリコ……もとい子供好きな覇穿・騎人(ロリコニアのご当地ヒーロー・d09208)だ。
    「よく考えろよ? 異なる種類を1つずつなら太らないと言うが、ケーキもクッキーも洋菓子は小麦や乳製品使ってる。つまり、完成品の種類が違っても材料は同じじゃん?」
    「え、え、どういうこと?」
    「結局は同じものを食べ続けてたんですよ、お嬢さん?」
     がっくりと地面に手をつく梨子、意味が分かったらしい。
     とどめとばかりに璃羽が言う。
    「お菓子やケーキはどれを食べても同じく太りますから」
     そ、それじゃあ……それじゃあ……。
    「で、でも! この子もいっぱい食べてたもん! でも太ってないよ! やっぱり違うの食べてたからだよ!」
     涙目になって梨子が司を指差す。
    「ボクはどれだけ食べても太らない体質だから。でも普通の人は多分食べたら食べた分だけ太っていくんじゃないかなぁ?」
     なんということでしょう。この世にはそんな人がいるらしい。
    「わ、わたしは!?」
     梨子の悲痛な叫び。
    「普通の人じゃない」
     わずかな希望は絶たれた。
     お化けの声を信じて食べても良いやと思ったのは間違えだったらしい。
     その時だ。梨子の影が持ち上がるように梨子自身を飲み込み、巨大なぶよぶよとした台形の固まりとなる。
     そしてその側面中央部に涙を流した梨子の顔が浮き上がった。
    「うそつき! どうして止めてくれなかったの! ずるい!」
     梨子の叫びに火華流が言う。
    「大丈夫、後でお菓子とか美味しい物、いっぱい食べても太らない方法、教えてあげるから」
    「何事もハラ八分目。そろそろランチの時間は終了させて、運動の時間ですよ」
     騎人の袖から黒子猫が飛び出し安全圏へと逃げていく。
     梨子はシャドウを拒否した。
     だが、本当に救えるかはこの後の戦いにかかっていた。


     梨子の中のシャドウは、強引に現実世界へと具現化すると当初の目的通り『めいぷる』へとその図体を進める。
    「だめだよ、そっちには行かせないっ」
     だが、そこに立ち塞がったのは龍砕斧を構えたりりだ。
     さらに景織子と美甘も横に並ぶ。
     囲まれた梨子がぶよぶよの体を震わせる。身体の一部が持ち上がりそのまま梨子の顔の部分に近づくとその身を自ら食べ始める。
    「……ブラックフォームに、似てる」
     それは自らの魂を一時的に闇堕ちに傾けることによって攻撃力を高めるサイキックだ。
     梨子の面は今にも泣き出しそうな表情で、シャドウたる自らの身を食べ続けている。
    「させない!」
     ぶよぶよなシャドウの身を拳で打ち据えたのはりりだ。
     波打つ拳撃が波紋となり、ごふっ、という息とともにシャドウ梨子が飲み込んでいた自らの身体を吐き出した。
    「私の『影』が目覚める……まいりますわよ」
     りりの攻撃にふらりと体躯を揺らすダークネスにいくつもの穴があく。
     景織子が漆黒の弾丸を放ち、その身を打ち抜いたのだ。
    『毎日好きなだけ食べるお菓子、それに何が悪い。邪魔をするな』
     梨子の口を使って低い声がつぶやく。
    「そう? お姉さんくらい大きくなるとね。毎日のお菓子より、時々ごほうびのお菓子の方が楽しくなってきますのよ?」
    『そんなことは――』
    「ランヴェルセキーーック!』
     最後まで言わせず上空より炸裂したのはあんずの必殺キックだった。
     敵の弾力ある身体を蹴って大地へ降り立つと、放り投げておいた巨大泡立て器をキャッチ。
    「大丈夫……あなたは絶対助けてみせる! 寂しい思いはさせないわ!」
     決まった!
     お菓子がキーとなる事件にあんずのモチベーションは高い。
     だが、同じく高いモチベーションで挑んでいた少女が1人。
    「私の可愛い後輩を返しなさいっ!!!!」
     それは火華流だった。
     梨子は学年でも後輩だし、もし素質があって灼滅者に覚醒するのならシャドウハンターとしても後輩が出来るかもしれないのだ。
    『……許さない』
     その時だ。ダークネスがその歪んだ思念を実体化しようと……揺れた。

    「お嬢さん(幼い女の子)を守るのがヒーローの役目ってな……多分」
     そう言ってサングラスを輝かせる僧服姿のスキンヘッド。
     だが、彼の受けたダメージは全灼滅者中でもトップだった。敵が弱体化していなかったらとっくに重傷になっていただろう。
     どちらにせよこのままでは騎人は……。
    「俺は……俺は幼女を愛でたい!」
     心の底からシャウトする騎人。
     けっこう持ち直した。
     だが、そんなシャウトしている騎人にダークネスはその体躯で押し潰そうと近づいてくる。
     その身体が急激に後ろにさがると、騎人との間を膨大な光線が通り過ぎる。
     バスターライフルを構えた司だった。
    「ボクも甘いもの大好きだから気持ちは判らないでもないけど、強要させるのはダメだよね。さ、こっちへ戻っておいで」
     わずかに動きを鈍らせるダークネス。
     そこを見逃さなかったのは美甘だ。
     両手を後ろに引いて『タメ』を作った構えから、一気に手を前に突き出しオーラを放つ!
     ダークネスの身体に、巨大な風穴が開いた。
     その傷が再生する間も無く、璃羽が梨子の仮面を残すようにそのダークネスの身体を影で飲み込む。
    「変な声に怖がらずに済み、お菓子を食べても太らずに済むかも知れない方法、私達の学園にならありますよ?」
     その一撃が最後だった。


    「どうしたら……太らないの? ケーキ食べちゃ……だめ?」
     泣きはらした目で梨子が言う。
    「甘いものを食べた後は外でいっぱい遊べばいいんだよ……だから、一緒に遊びに行こうよ」
    「そう。それに食べるにしたって普段の食生活をしっかりしていた方が一層おいしく感じるんだよ!」
     美甘の言葉に「じゃあそうする!」と梨子がまじめにこくこく頷く。
    「それにしても、ほんとにちょっとずつ色んなのを食べたら太らないんだったらいいのにねー」
     笑顔で笑いかけてくるりりに、梨子の顔に笑顔が戻る。
     そんな少女の姿をまぶしいものでも見るように目を細めて(サングラスの下だが)見守っているのはロリコニアの自称ヒーロー。
     戦闘時に避難させていたましゅまろが再び戻ってきて袖の中に戻りたいと言うので、騎人はしゃがんでその黒子猫をいつもの場所へと戻してやる。
    「お店のパティシエさんたちは無事ですわよ」
     パティシエ達の様子を一応確認しに行っていた景織子が戻ってきて報告する。
    「梨子さん、私達の学園へ来ませんか? 手作りお菓子が得意なお兄さんお姉さんがたくさんいるわよ?」
     手作り……の単語に梨子が反応する。手作りお菓子は時々お母さんが作ってくれるが、これは買って来てくれたお菓子よりおいしい! 少なくとも梨子ランキングの中ではトップ3に入る!
     それを自分で作れるようになるのはすごい!
    「何でも作れますし勉強にもなります。お母さんも喜ぶと思いますよ」
     璃羽の言葉に梨子の脳裏へ家族の笑顔が浮かぶ。
    「ねぇ、みんなの学園に行けば、本当にそういう人が多いの? 教えてくれるの?」
    「もちろんよ。それはあたしが保証する」
     どんと胸を叩くあんず。
     何となく信じてみたくなった。
    「ありがとう」
     だから、その気持ちを素直に言葉にした。
    「べ、別にあなたを助けたかったわけじゃないの。お菓子好きの女の子が見捨てられなかっただけよ」
     帯広のツンデレはいまいち素直でないようで……。
    「ふふ……あ! そうだ! お姉ちゃん言ってた! いっぱい食べても太らない方法があるって!」
     ぽんと思い出した梨子が詰め寄るのは火華流だ。
    「ああ、さっき言った方法っていうのは……」

    『ぐぅ~~!』

     盛大なおなかの音だった。
     赤面する火華流。
    「え、えっと、サイキック使っているとカロリー消費が激しいみたいで……私、以前より食は太いはずなのに、体重はあんまり変わらなかったり」
     仲間達が笑う中、1人瞳をきらきらさせて憧れの視線で火華流を見つめる梨子であった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 12
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