ワジマーヌ・ジャパン☆

    作者:atis


     輪島の紅葉が見頃を迎えていた。
     お昼になったので、紅葉狩りをしていたファミリーがお弁当を広げた時だった。

    「お弁当箱がプラスチック?! 信じられない!! ここは輪島ですよっ」
     輪島のお弁当箱が、輪島塗りでなくてどうしますか。
     可愛くデコレーションされた、そのお弁当が泣きます!!
     
     日本人形みたいな少女が、おもむろにキャラ弁を取り上げた。泣き叫ぶ幼児。
     少女はどこからともなく沈金輪島の重箱を取り出す。
     そして、幼児のお気に入りキャラクターを崩さないよう、そっとお弁当を重箱へと移し替えた。


    「皆さん、うるし塗りはお好きですか?」
     ほんわりとした笑顔で、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)が集まった灼滅者達にお茶を入れ始める。
     ぺんぎんを蒔絵で表現した輪島塗の湯のみに、温かいお茶がそそがれていく。
    「中3の三井真希さんが、ご当地怪人ワジマーヌに闇堕ちしました」
     加賀百万石の伝統と美意識に磨かれた、堅牢かつ優美な輪島塗り。
     そんな輪島塗を愛してやまない少女の闇堕ちだ。

    「怪人ワジマーヌは、お弁当箱がご当地の輪島塗でない事に特に心を痛めています」 
     お弁当箱とは幼児から大人までが、毎日使うものである。
     被害は徐々に広まって来ている。
    「ワジマーヌは漆器以外のお弁当箱を見ると、有無を言わせず『お弁当箱の輪島塗への変更』を始めます」
     ただ最近、ワジマーヌの闇堕ちの度合いが深まっているという。
    「このところワジマーヌは輪島塗りの中でも、『どんな彫りにも耐えられる、輪島の下地の強さが無ければできない』と言われる沈金を強く推薦しているようなのですが」
     先日、プラスチックどころかコンビ二弁当を食べている大人のお弁当箱を沈金輪島に替えたときの事だった。

    「どうせ変えるなら沈金じゃなくて、蒔絵にしてくれない?」
     ーーその大人の一言は、真希にとって衝撃だった。

    「もはや、一刻の猶予もありません。はやく真希さんを止めなければ、このままご当地怪人ワジマーヌに完全に墜ちてしまう日は近いでしょう」
     ワジマーヌに灼滅者の素質があったのか、本来なら闇堕ちした時点で完全な別人格『ご当地怪人ワジマーヌ』となってしまうのだが、今だ『真希』の心を残している。
     姫子は「ここでお弁当を食べていて下さい」と赤丸付きの地図をだす。

    「怪人ワジマーヌはこの日も紅葉の名所で、輪島塗への愛を広めようとします」
     漆器は英語で『Japan』。いってみれば日本の特産だ。
     ワジマーヌは輪島塗りを広めるには他の漆器もあってこそ、その良さや違いがわかると言っており、漆器のお弁当箱には手出しはしないとのこと。
     むしろ友好的、積極的に話しかけてくる。
     もちろん、漆器以外のお弁当箱だった場合『お弁当箱の変更』が始まる。

    「怪人ワジマーヌは、輪島塗や漆器を軽く扱われると、なぜか強くなります。逆に輪島塗を褒め讃えられると、大喜びで戦闘意欲を無くします」
     やはりご当地怪人、わかりやすくて単純だ。

    「漆工芸は日本の宝。ぜひワジマーヌを倒し、真希さんを学園に連れて帰って頂ければと思います」
     姫子はぺんぎん蒔絵の湯のみからお茶を一口ふくむ。
     そして灼滅者達へとふわり微笑み、丁寧にお辞儀をした。


    参加者
    三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716)
    紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)
    狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)
    水樹・葵(鳴らない鈴の音・d04242)
    野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)
    天地・かなめ(うちのご当地は日本・d07647)
    イルル・タワナアンナ(竜騎妃・d09812)
    斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)

    ■リプレイ

    ●燃える紅葉、山錦
    「ったく、久し振りに輪島に来たがもう寒いな……雪の降る前でよかったよかった」
     水樹・葵(鳴らない鈴の音・d04242)が、輪島朝市のおかずを手に現れる。
    「カニ汁は美味かったし朝市のご婦人方、気のいい人ばかりだったな」
     同じく朝市帰りの狗神・伏姫(GAU-8【アヴェンジャー】・d03782)。
     自前の重箱に『白米(しろよね)千枚田・ハザ干しコシヒカリ』の白米握りを詰めてもらってご満悦だ。
    「ここって、日本海が見えるんだ!」
     輪島の紅葉名所でゴザを敷いていた、斎賀・真琴(海とマグロを愛するヒーロー・d10872)の飛行機酔いが軽くなる。
     あたりを見渡せば奥能登の最高峰高洲山。
     輪島港に袖が浜、光浦海岸、日本海には舳倉島、七ツ島が霞み浮かぶ。
    「なんか、ワジマーヌって、すっげえいいヤツっぽいよな。こんなヤツをダークネスにしちゃダメだと思うっ」
     漆器の重箱を出す野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)。
    「何て言うか……太っ腹なヤツも居たもんだな、重箱クラスだとな……結構お高いのにな?」
    「……お小遣い数か月分が。お弁当箱に消えた。いいんだ。人助けなら安いものだよ」
     紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)。
     沈金輪島の重箱に詰めた、お弁当を満足げに広げる。
    「妾の弁当も漆器の三段重じゃ♪」
     イルル・タワナアンナ(竜騎妃・d09812)は、皆とのおかず交換が楽しみで仕方がない。
    「輪島塗がすばらしいのは認めざるを得ない! うちが普段から愛用している五段重ねの重箱、これも実は輪島塗」
     その胃はブラックホールの如し。
     プリティ・フードファイター天地・かなめ(うちのご当地は日本・d07647)。
    「こう輪島塗の重箱が並ぶと、やはり絢爛だな」
     紅葉に映える漆黒の輪島塗に、思わず溜息をつく伏姫。
     目の端に日本人形のような少女をとらえる。
     ーー怪人ワジマーヌに闇堕ちした三井真希だ。
    「……しかし、ワジマーヌのやり方は看過出来ぬな」
     伏姫がぽつりとつぶやいた時だった。 

    「お弁当箱がプラスチック?! だっちゃかん!! ここは輪島やぞいねっ」
     三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716)の後ろから、少女の『信じられない」という声がとぶ。
     来た、ワジマーヌだ。
    「かぶら寿司とか治部煮とか。今日はほぼ加賀料理にしてみたぜ」
     普通のお弁当箱の蓋を開け、明るくメニュー披露する柚來。
    「……っ! 美味しそう」
     思わず吸い寄せられるワジマーヌ。
     だめだめ、用事を忘れちゃだめ、と首を振る。
    「ただのお弁当箱に入った加賀料理は加賀料理ではありませんっ!! 料理と器が絶妙に響き合ってこそ、加賀料理といえるのです!」
     かぶら寿司に釘付けになったまま、どこからともなく沈金輪島の重箱を取り出すワジマーヌ。
     流れる様な手際で、柚來のお弁当の中身を勝手に重箱へと移し替えていく。
    「一緒に座って食べる? お弁当箱だって食べてくれる人多いほうが喜ぶよ」
    「これ母さん特製マグロの煮物だよ。皆とおかず交換しようと思って、いっぱい作ってもらったんだ」
     殊亜と真琴がワジマーヌにゴザとお弁当をすすめる。
     ありがとう、とゴザに座るワジマーヌ。
    「のう。おぬしのお弁当箱、見せてはくれぬか」
     伏姫が問うと、ワジマーヌは嬉しそうに新たなる重箱を取り出した。
     豪快に繊細に、羽根や花にも見えるデザイン化された松が、凛と格調高く彫られた沈金輪島。
     アキラが、シューマイのつまった自分の重箱を手に取った。
    「オレ、子供だからよくわかんねーけど、これ、シッキって言うんだろ? カッコいいよな! うちのカホウだぜ!」
    「すったらこい! 鎌倉彫かいね。輪島塗のぽってりした質感とは違う、もののふの香り!」
     同じ漆器といえど、対極とも言える2者の競演。
    「これは、うちにあった正月用のだ。ワジマヌリじゃないと思う。壊したら母ちゃんに怒られるから、気をつけてくれよな!」
     鎌倉彫の独特の生命力、力強さに感動し、ワジマーヌはしばし皆と漆器について語り合った。

    ●紙ほど薄い輪島の木地
    「え~ご用意いたしましたお弁当は、下から1段目寒ブリと大根の煮付け、2段目寒ブリの照り焼き、3段目おにぎり、4段目お漬物と卵焼き、5段目寒ブリのお刺身、となっております」
    「横浜名物シューマイだぞ。うまいだろ? な、な?」
    (「それにしても、だら(ばか)な事やらかしてるな……早く助けないと、色々残念なことになりそうだ」)
     朝市で買ったおかずと共にお弁当を広げる葵。
     唐揚げ卵焼きに混じって、白くワサワサした感じのとろろ昆布おにぎりが目を奪う。
    「……朝市で詰めてもらった我の白米握りと、おぬしらのおかずを交換しないか? ……いや、して下さい! 白米オンリーはキツいです」
     伏姫が、皆の色とりどりのお弁当に目移りする。
    「冬の輪島寒ブリ尽くしぎ……こっしゃえたかいね」
    「うん、手作りや。みんなで分け合おうと思ってな」
     輪島の冬といえば加能蟹と寒ブリ。
    「これ……輪島がかいね?」
     かなめの五重御重の『布着せ』の跡に気づくワジマーヌ。
     となりの殊亜も、沈金輪島だ。
    「いやね、小学校の時に社会科の自由研究で輪島塗について調べたんよ。輪島塗の特徴は丈夫で実用的、これはお弁当箱にこそ映えると確信した瞬間やったね」
    「我は朝、輪島塗の工房を見学して来たぞ」
     小さなお椀一つ作るのにも1年かかり、工程は124あるらしいな。
     伏姫が見て来たばかりの、高度に専門分業化された輪島塗工房の話をハイテンションで語り始める。
    「お弁当は皆で笑顔で食べるのが一番だよね。ただのおかずも素敵な漆器だと数倍美味しく感じるし」
    「絢爛たる蒔絵も穏やかなる沈金も。本当に『Japan』は美しい」
     ーートルコの母君は両方もっておったな。
     イルルは幼いながらも姫君。審美眼には自信がある。
    「『自信あらば、王は吠えぬ』。父王の口癖ぞよ」
    「……え?」
    「『輪島塗』こそが漆器の王と思うのじゃろう? なら静かに見守ってやるのじゃ、真希殿!」
    「……静かに、見守っていました。……でも」
     沈金や蒔絵はまだいい。
     輪島塗を支える、木地や下地作りの職人さんの後継者不足。
     高齢化の上、当代限りが多いとくれば。

    ●文化の守り手
    「姫君ならば、きっと自国トルコの伝統や文化を庇護しつづけていらっしゃるはず」
     ワジマーヌの声が、わずかに変化する。
     灼滅者達が、重箱を避難させはじめた。
    「ご当地を愛するが故の凶行、見るに忍びない……止めさせてもらうぞ」
    (「結局、実力行使か……嫌いじゃないし。とことん付き合ってやる」)
     伏姫と葵がスレイヤーカードを手にする。
     イルルへと金箔が舞う如く走り込むワジマーヌ。
    「ーーさぁ、戦じゃ!」
     不敵に笑うイルル。
     腰にハート形の機械をあてるや左右からベルトが伸びる。
    「竜変身(ハウリング・オン)!」
     煌めく燐光と共に白龍デザインのキャリバーが顕現、イルルの衣装が華やかな戦闘用へと変化する。
     ワジマーヌがイルルを高く持ち上げ、金箔パワーでイルルを叩き付けようとした刹那。
     龍骨斬りで抜け出すイルル。
    「真希殿! 美は『押し売り』であってはならん。他と比較して民は新たな価値を識る。発信者が理解を強要するのは無粋ぞよ!」
    「とりあえず冷静に考えてみようぜっ」
     柚來の穏やかな歌がワジマーヌへと染み込んで行く。
    「自分が好きなもの、みんなにも好きになって欲しいよな? オレもそう思う。でも、怖がらせちゃダメだよ。気持ちが伝わらないよ」
     アキラの剣が光り輝き、爆発する光刃を叩き込む。
     殊亜が体から噴く炎を光剣に纏わせ横に薙ぐ。
    「今の君は、皆の笑顔と輪島塗の尊厳を奪っている」
     ディープファイアがうなりを上げて突撃する。
    「人に使われ愛されてこその道具。人が道具に踊らされ何とする。それに、作り手がその様な事……望む事が無かろう」
    「作り手は、使い手がいなくては作れなくなるがや!! 輪島様キーック!」
     伏姫の重く速い斬撃を、輪島の力を宿したジャンプキックで蹴り飛ばすワジマーヌ。
     白の狼犬・八房の斬魔刀がワジマーヌを斬り裂き駆ける。
    「そこのだら……いいから話し聞け。伝統を広めるのは感心するが……無理強いは評価を下げる事もある」
     ワジマーヌを、葵の放つ光刃が斬り裂いていく。
    「『だら』……わりゃ輪島のもん?」
     なら、知っているでしょう。
     ーーこのままじゃ。
    「新幹線ビームッ」
     時速400km、かなめのビームがワジマーヌを貫く。
    「『竜騎妃』イルル・タワナアンナ、いざ尋常に勝負ッ!」
     イルルの瀑炎魔弾がワジマーヌを蜂の巣にせんと襲いかかり、愛機・ティアマットがジグザグ走行で突撃した。

    ●ハレとケ
    「『いいもの』と思うなら、生活の中で使って? 重箱みたいなハレの日用もあるけれど、それ以上に日常品があるがや!」
    「マグロビームッ!」
     真琴の三浦半島パワーが猪突猛進。
    「真希ちゃん! あたしは輪島塗のお箸とお椀を使ってるよ」
     ワジマーヌの心がほろりとなる。
     だが何故か、かなめと真琴へ怒りが湧く。
    「金粉ビームッ!」
     大小様々色とりどりの自家製金粉を、蒔絵の如く後衛へと放つ。
    「好きな物を相手に分かってもらいたい気持ちは凄くわかるんだけどなーでもやっぱ無理やりはダメだと思うぜ」
     柚來がその想いを、神秘的な歌声にのせる。
    「君のやり方じゃ嫌いになる人だって出るよ」
     殊亜が体から焰を立たせ、ワジマーヌへと炎を叩き込む。
     そしてビシッと指差した!
    「朝食で輪島塗のお弁当箱を使ったので、やむを得ずプラスチック弁当箱をお昼に使ってた人だって、今まで何人もいたはずだ!」
    「……あっさけ~!!(しまったぁ)気づかなかった……」
     がくりと肩を落とすワジマーヌ。
     追い打ちをかけるように、ディープファイアがワジマーヌへ突撃。
    「我は今朝見た、実用性と見た目に富んだ輪島塗に心震えておる……我の日本刀も黒漆塗鞘打刀拵、見事な物であろう?」
     伏姫が艶やかな黒漆の鞘を見せつけるや雲耀剣を放つ。
     八房が主・伏姫を浄霊眼で癒す。
     葵の天使の歌声が真琴を包む。
    「うちの愛用、五段重箱も輪島塗り……けどあえて言わせてもらおう、それを押し付けてはいけないと」
     例えば幼稚園の遠足なら、キャラ絵の付いたプラスチックのお弁当のほうが場の雰囲気にあっていたりする。
    「適材適所というものがあるんや」
     動揺を隠せないワジマーヌ。
     かなめの頭上に黒き雷雲が呼び寄せられる。
    「輪島塗にふさわしい場を知ることが本当の愛ってものなんや!」
     次の瞬間大地を裂くような豪雷が、ワジマーヌの骨格を透かし落雷する。
     サタデーナイトフィーバーのポースで決めるかなめ。
    「……冬の雷はブリ漁初めの合図やからね」
     紅葉の隙間から見える、輪島港へと想いをはせる。
     心のショックで立上がれないワジマーヌへとティアマットが追い打ち突撃。
    「あたしも美味い地元マグロを色んな人に食べてもらいたい! でもアレルギーで受け付けない人もいるんだ……。無理やり食べさせたりしたらマグロの事嫌いになっちゃうじゃん? 輪島塗を無理に勧めるのも同じ事じゃあないのかな?」
     裁きの光条を浴びせつつ、真琴がワジマーヌの手を握り目を見て切々と話す。
    「でもっ、私どうすれば……!!」
     延焼がジリ、とその身を焦がし世界が揺らぐワジマーヌ。
     自らの金粉ビームで自らの胸を貫いてしまう。
    「俺は輪島塗は正直よく解らない、けど素人の俺から見ても輪島塗は凄く綺麗だと思う」
     小動物みたいな柚來が、片腕を異形巨大化させる。
    「俺でも思うんだから、強制しなくても皆輪島塗の凄さは分かってると思うんだ。けどそんな風に押し付けたら逆に悪い印象になっちゃうんじゃないか?」
     祈る様に駆け、鬼神変を叩き込む。
    「俺も持ってるんだぜ、輪島塗のストラップ」
     柚來が人懐っこくワジマーヌへと笑いかける。
    「そうだ! オレたちと手を組まないか? ご当地を愛する気持ちなら負けないってヤツら、オレの学校にもたくさんいるんだ。会ってみないか?」
     光刃を撃ち、拳に雷を宿しアッパーカットを繰り出すアキラ。
    (「キャラ弁を崩さない優しい心がある。君は絶対、大丈夫」)
     殊亜とイルルが左右に分かれる。
     殊亜の光刃が、イルルの瀑炎魔弾が、ワジマーヌの左右から乱れ撃たれる。
    「愛すればこそ信じてほしいのじゃ。真希殿が識る『輪島塗』の確かな美しさを。静かに圧倒する玄妙な強さを」
     おもむろに懐中時計を取り出す伏姫。
    「……時間だ、今此処にガイアチャージは完了したっ」
     先達の輪島塗職人達の思いを、技に込める伏姫。
    「真希の中にある真のご当地愛を取り戻す! 輪島ダイナミック&スラーッシュ!!」
     輪島パワーを大爆発させ、身をひるがえすや居合い斬り。
     その闇を断たんと想いを込める。

    ●堅牢優美
     アキラが鎌倉彫の重箱が壊れてない事を確認し、ほっとした顔になる。

     大地に身を預けたまま、紅葉に彩られた空を見上げる三井真希。

    「やっぱりさ、勧める人も、勧められる人も幸せな気持ちで話ができなきゃ、好きって気持ち出てこないと思うんだ。だからまずは皆にごめんないさいをしよう?」
     日本人形みたいな少女、真希を真琴が助け起こす。

    「ご……ごめんなさい……。あーへんない(気恥ずかしい)」
    「なに、これから学べばいいんよ」
    「武蔵坂学園に来ない? 学園には世界中の学生が集まってるし、輪島塗を愛する人も中にはいると思うよ」
     それにそのお弁当箱で皆でご飯食べたら、きっと数倍元気になるんじゃないかな。
     君も輪島塗の話をしてる時はとても素敵な笑顔だったし。
     殊亜の穏やかで誠実な言葉に、真琴とかなめの笑顔が乗る。

    「学園に来て……少しは勉強しろ」 
    「オレたちの学校でさ、戦隊『シッキセイバー・ファイブ』とか組んだりしてさ。同じ戦うなら、楽しい方がいいじゃん!」
     少しぶっきらぼうな葵、屈託ないアキラに「それも面白いかも」とほころぶ真希。

    「なあっ、皆で残りの弁当食べちゃおうぜ! 食べ残したら勿体ないしな」
     柚來の明るい声に振り返ると、すでにイルルがアキラのシューマイに舌鼓をうっていた。

    「皆との紅葉狩り、弁当のおかず交換は実に楽しいのぅ。特にアキラ殿のシューマイはたまらんぞよ~♪」
     真希殿も食べてみられい、と誘うとイルルは鞄から黒い物体を取り出した。
     竜モチーフの沈金が施された、特注輪島塗スマホケース『竜華』だ。

     実はとんでもない甘党の葵が、お弁当の横に大量のお菓子を広げ始めた。
    「朝市の……いがらまんじゅうも……ある」
     お菓子好きの柚來とフードファイターかなめが、葵のご当地美食解説に聞き入り始めた。

     もうしばらくすれば、燃えるような紅葉が、純白に変わる季節がくる。
     ーー今年のお正月は、漆器でおせちにしようかな。

    作者:atis 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 5/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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