下着を僅かに魅せた後恥じらう行為について考察する会

    作者:旅望かなた

     改造バイクが滑るように走り出す。
     其が立てるのは、轟音ではなく――、
    「きゃああああ!」
     豪風!
     むしろ音が出ないように改造された故接近に気付かなかった少女が、巻き起こる風に慌ててスカートを押さえる。
     二人乗りで素早く逃げ出した男達は、ぐっと親指を立ててウィンクを交わした。
    「グレイト・パンティーラ!」

     喧嘩っ早そうなミニスカートの女の子にスキップ勝負を挑んだらラッキーショット!
    「オテンバ・パンティーラ!」
     一緒に散歩していたおばあちゃんと飼い犬の前に美味しそうな肉を差し出しながら逃げれば、追いかける犬と着物の裾を乱して慌ててさらに追いかけるおばあちゃん!
    「ジュクネン・パンティーラ!」
     楚々としたセーラー服の子の足を引っ掛けたら!
    「なんてこったいブリーフだったよ!」
    「まぁいいじゃないかオトコノコ・パンティーラ!」
     ハイタッチを交わし合う男達。彼らの中心で次のパンチラ計画を口にし、喝采を浴びるはパンツ覆面の美青年。
     老若男女問わない彼らの攻勢を止めることができる者はいるのか!
    「みんな、聞いて! 強敵だよ!」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)がべっちべちに教卓を叩きまくっていた。
     赤くなって手が痛そうだったので、そっと誰かがアイスノンを差し出した。ありがとうと受け取るまりん。
    「というわけで今回みんなに倒してもらいたいのは、女の敵なんだ!」
     かくん、と灼滅者達の顎が下がった。

     要するにどういうことかと言うと、ソロモンの悪魔に影響された一般人が、その力を分け与えられ老若男女のスカートや着物なんかを無差別にめくってパンチラさせる事件が発生しているそうなのである。
    「一般人の倫理観に外れる行動をさせることで、ソロモンの悪魔にサイキックエナジーが集まるみたいなんだよね。力を分け与えられた人が幹部になって組織を作って、有望な人にはさらに力を分けてって感じで」
     パンチラを主な活動内容とする組織の有望な人ってどんなだろうかとは、みんな考えないでおいた。
    「ともあれ、これ以上放っておいたらパンチラに泣く人々や新たに闇堕ちする変態さん……じゃなくてダークネスが現れる可能性もあるから! 即座に素早く適切に灼滅しちゃってほしいんだ!」
     今回の灼滅対象はダークネスではなく力を分け与えられた一般人だが、既にハイレベル変態さんの域に達しており救うことはできない。
     だが、その他の力を分け与えられた者達や、組織に参加しているがまだ力を与えられていない者達は救うことが出来そうだとまりんは告げて。
    「ハイレベル変態さんは下穿隊長って呼ばれてて、覆面代わりにパンツを被ってるからすぐわかると思うよ!」
     ちなみに美青年だよ、と付け加えるまりん。一同はかえってやだなぁそれ、という顔をした。
    「マジックミサイルっぽく風の弾丸をぶつけてきたり、フリージングデスっぽく吹雪という名目で風を起こしたり、瞳にバベルの鎖を集中させて次のパンチラに最適な位置を探してきたりするよ!」
     一同はどうしようこれって顔をした。
     要するに魔法使いのサイキックだが付随効果が嫌すぎる。
    「しかも絶対にパンチラが起きない格好をしてると、怒りに燃えて攻撃の威力が上がるんだよね。逆に攻撃しなくてもパンチラが起きる状況だと時々攻撃を忘れて見入っちゃうけど、『別にパンツが見たいんじゃなくてパンチラが見たい』らしいから、パンツ出しっぱなしとかだとこれがまた攻撃力が上がって……」
     まりんも正直どうしようって顔で頭を抱えた。
    「あ、あと力を与えられた人達はマテリアルロッドのヴォルテックスっぽい感じで竜巻を起こして服がんがん破ってくるよ! ……キュアかかれば戻るけど」
     でも竜巻なので、その、なんだ察してほしいって顔でまりんは告げる。なお、力を与えられていない一般人は普通にパンチとかしてくるが普通にバベルの鎖でかすり傷で済む。
    「あ、ちなみに次のパンチラ研究発表会兼作戦会議の時をここの廃ビルでやってる時に殴り込めばみんなまとまってるからいいと思うし、そういう予知なんでよろしくね!」
     地図を差し出して、説明が終わってほっとしている顔のまりんを見て、皆はそういう予知なんだと頷くに留めておいた。
     説明中何回パンチラって言ったかとか数えないでおいた。もしかしたら心の中では数えていたかもしれないけどまりんには言わないでおいた。
    「大丈夫、しょうちゅうこうせいのじゅんしんなこころをもってすれば、変態なんてちょちょいのちょいだよ!」
     よろしくお願いするねと頭を下げて、まりんは灼滅者達を送り出した。


    参加者
    アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)
    斎賀・なを(オブセッション・d00890)
    最上川・耕平(若き昇竜・d00987)
    メリーベル・ケルン(中学生魔法使い・d01925)
    灰園村・水脈(裁断分離のギルティシザー・d01961)
    真白・優樹(中学生ストリートファイター・d03880)
    坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)
    福楽印・寿(ロスマリン・d10596)

    ■リプレイ

     前略!
    「貴様らの悪行もここまでっす!」
    「「「うっひょおおおおお!」」」
     くるりと回転、閃くスカートに男達の熱気はマックス突破!
    「ひゃっはぁパンチラ祭りだぁぁぁ!」
     テンションの高いソロモンの悪魔の手下達を前に、ドン引きする灼滅者達。
    「うわぁ……これは酷い……いや、まあ、ロマンなのは分からなくもない分からなくもないけど……」
     何かを諦めたような溜息。
    「……まぁ、あれだね、悪即斬されてしかるべき相手だね」
     そんなわけで、今回の陣形を発表しよう。

     クラッシャー:最上川・耕平(若き昇竜・d00987)。
     クラッシャー:灰園村・水脈(裁断分離のギルティシザー・d01961)。
     クラッシャー:真白・優樹(中学生ストリートファイター・d03880)。
     ジャマー:アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)。
     ジャマー:メリーベル・ケルン(中学生魔法使い・d01925)。
     ジャマー:坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)。
     キャスター:斎賀・なを(オブセッション・d00890)。
     キャスター:福楽印・寿(ロスマリン・d10596)。

    「前のめりっ!」
     全くだ。
     守る必要はないってことか。主にパンツとか。
    「だって! ……ほら、後ろ下がると……多分皆の、見えちゃうし……」
     耕平がおずおずと目を逸らす。武蔵坂学園のシンプルな高校女子制服に身を包んだ、ごく普通の中学生男子たる耕平の恥じらいはなかなか背徳的である。
    「よし、今日の相手、即ぶっ潰す」
     こういうのが恥ずかしいお年頃なのである。中一だもんね。
    「なんで今回淫魔じゃないんだろうな……正直どうでもいいが」
    「悪の組織のやることがパンチラとは世の中平和っすね~」
     水脈の呟きに、アプリコーゼがのほほんと頷く。悪行が変態行為というのは締まらないけどこの際忘れることにした。
    「だが変態とはいえ無視はできないな」
     そしてなをがちゃんと思い出させてしまった。
    「本当はあまり関わり合いたくない部類だが……」
     ミニ浴衣の裾がめくれ、太腿までが露わになる。彼が放つ王者の風で、(変態だけど)一般人のままだった配下が続々と平伏した。
     彼らが裾の向こうに見たのは、ボクサーパンツ。色は黒。
    「いや、誰得だよ」
     平伏しながら顔を上げて凝視してくる一般人ズに、思わず冷静にツッコミを入れるなをであった。
    「ともあれ、手前ぇらに許された選択肢は二つ……大人しくボコられるか、抵抗してボコボコにされるかだ」
     小学女子制服の広がったスカートを翻し、髪切り鋏状の解体ナイフを口元に構えてニィと笑う。
    「ふっ……選択肢はもう一つある」
     女性用パンツを覆面代わりに被った下穿隊長が、ふっ、とポーズを取った。
    「お前達全員のパンチラを堪能し勝利すると! むしろ堪能したら敗北しても勝利!」
     水脈の口元がぴくりと引きつった。既に何か汚らしいものを見る目である。
    「パンツじゃなくてパンチラが好きだなんて、不健全極まりないわね」
     寿が冷たい目を変態達に向ける。
    「パンツが好きなのも不健全じゃないかな……」
     耕平が思わず小さくツッコミを入れる。
    「ネクラなことあかり考えて性格が歪んじゃったのね、かわいそうに」
     静かに憐憫とか哀惜の上を込めて囁くように言った寿の視線が、次の瞬間虫を見るようなものに変わる。
    「早く楽になってしまいなさい」
     そんな絶対零度の視線に変態達は――ぐっとガッツポーズした。
    「「「クイーンズ・パンティーラ!」」」
     何だか視線が可哀そうなものを見る目に戻った気がする。
    「なんか男子のパンチラでも、それはそれで良しとか言ってたよね……レベルたけー……」
     感心したのか呆れているのか、目を逸らしたまま耕平が呟く。
    「あまり見て楽しいものじゃないと思うんだが。というか、男のパンチラでもいいのか?」
    「下着が覗けたら年齢や性別もどうでもいいの?」
     なをと優樹の正直な問いに、変態達が堂々と胸を張る。
    「幼児から老年まで年齢のロマン……」
    「男女とその性格、服装の組み合わせのロマン……」
    「その組み合わせのロマンは」
    「「「無限大!」」」
     何故か謎の決めポーズを取る変態達。
    「変態の考えってよくわからないな。わかりたいとも思わないけどさ」
     ばっさり切って捨てる優樹である。
    「うんいいよわかんなくても。君達は我々にパンチラを見られる存在なのだから」
     そして全然堪えない下穿隊長である。
    「無理矢理見られる側の気持ちってのを全然考えてない連中、だな……」
     未来がそっと溜息を吐く。ふと変態達の一人が「見られるのも、ありかも」とぽつりと呟いた。思わずその場にいた全員がそいつに振り向いた。
    「あ……悪魔のせいでおかしくなったとはいえ、とんでもない連中ね!」
     メリーベルが怒りに燃えて大きく息をついてから、咎人の大鎌に漆黒をまとわせる。
    「世のため人のため、ここで解散してもらうわ!」
     その言葉に、優樹が大きく頷いて。
    「何にしてもダークネスの手先で女性の敵なんて二重の意味で許せない」
     撲滅あるのみだ、と優樹は蒼穹色のサイキックエナジーを呼び出し、光の剣と為す。
     なお、わざわざ変態を喜ばせるのも癪だけどその分はきっちり叩きのめすと、あえて短めにした制服の下には。
    「ほう、サイキックソードとお揃い色の」
    「やめろおおお!」
     手でスカートを押さえながら物凄い勢いで光刃を乱発する優樹。
    「お嬢さんの!」
    「ちょっとパンチラ見てみたい!」
     ヴォルテックスを用意しながら目を爛々とさせる変態達に、とりあえずアプリコーゼはマジックミサイルをぶち込んでおいた。
    「我慢……影業で攻撃した時とかにちょっと見えてしまうかもしれないけれど、敵を倒すため、一時の恥ずかしさは我慢!」
     ぎりぎりと咎人の大鎌の柄を掌に食い込むほど握り締めながら、メリーベルが歯を食いしばる。咎を黒き波として、斬、と大鎌の波動に乗せれば広がるブラックウェイブ。翻るスカートの裾。喜ぶ変態達。
    「まぁ、いい。見たいなら魅せてやろうじゃないか。そのためにスカートも用意してきたし、な……」
     タン、と未来がポーズを取った。激しく舞うはパッショネイトダンス!
     青いタイトなドレスのスリットからばしりと脚線美!
     掲げた腕の間から覗く、動きに合わせてゆるりと揺れる、妖艶な猫耳尻尾!
    「「「ヒャッハァァァl!」」」
     ベストポジションを確保しようと動き回る変態達。ドラゴンパワーで自己強化中なのが幸いして、慌てて後ろを向くのが間に合う耕平。
    (「踊りを見られるのは本当は悪くないんだが、コレは違うだろ……」)
     理性が思いっきりツッコミを入れているが、サウンドソルジャーは曲のラストまで止まれない!
     決めポーズ。拍手。アンコールの掛け声。
     それに応えるかのように、寿がしゃんと抜刀。下穿隊長の顔のパンツの中心に刃を突きつけるも、一瞬の後「邪魔ね」と呟き目標を変転。
     そのまま月光の如く澄んだ衝撃波を一気に生み出す。回転、踏み込み、斬撃、一つ一つの動作にパンチラ要素を込めて!
     その間にこっそり水脈がかしんとナイフを鳴らす。次の瞬間固まっていたところに駆け抜ける犠牲者の呪い。巻き起こる悲鳴。
    「パンチラのない攻撃なんて卑怯だー!」
    「何がだ」
     思わずこめかみを押さえて溜息をつく水脈。
     その間にも耕平がせっせと紅き十字を作っていた。精神を引き裂いてるはずなのになぜか自分の精神が削れていく。
     そんな中、空気を読まない変態が撃ちこむ竜巻。巻き込まれる優樹。
    「きゃっ!」
     慌てて手で押さえてガードするが――!
    「後ろががら空きDAZE!」
     とりあえず飛び込んできた変態を、優樹は悲鳴と共にぶった切った。
     ちゃんと急所は狙っている。
    「絶対振り向かないぞ。うん、絶対……」
     ちょっとだけ頭に浮かんだ葛藤を、耕平はぶんぶん頭を振って振り切った。
     素早く水脈が変態の死角に回り込む。気づかれた次の瞬間、急停止と急カーブで魅せるパンチラ。それを知覚した時には、既に彼女の刃が服ごと背中を斬り裂いていた。
    (「見物料は高くつくぜ? なあ、ナーサリライム」)
     そう水脈が小さく呟いた瞬間、突如水脈の後ろから現れるライドキャリバー・ナーサリライム!
     格納していた刃を露わにし、移動の力を斬撃に変えて突撃――倒れ伏す変態。
     そして誰もが怯むような、強大な殺気が変態達を包み込んだ。
     殺人鬼の衝動を露わにした未来が鮫のように笑う。
    「Ok、baby? ……さぁ、狩りの時間、だ……」
     断じて保健体育の時間ではない。
    「ところで、後ろからも視線を感じるのは気のせいかしら……」
     メリーベルがフラグを立てているが、保健体育の時間ではない、はず。
     
     ともあれ飛び交う竜巻。舞い踊るスカート。変態の歓声。
    「この状況、誰得なんだよー!」
     竜巻で舞い上がるスカートを慌てて耕平が押さえる。その反応こそが求められているということには気付いていない。
    「い、今のがこの世で見る最期の光景にしてあげるわ……!」
     メリーベルがスカートを押さえながら、容赦なく変態をざっくんざっくんにした。
     服が破れた次の瞬間、なをは即座に前を隠した。紳士として、見せてはいけない。絶対いけない。
    「いやーん☆まいっちんぐ♪」
     水脈がハートマークを飛ばしながらスカートを押さえる。
     流れる沈黙。
    「……悪かったな古くて誰も知らんネタで」 
     水脈はしょんぼりした顔で俯きつつのの字を書いた。――スカートをめくった犯人の足の甲に、死角からサイキックを駆使して、であるが。
    「そんなに見たければ、自分達のを見ればいいっす!」
     見えそうで見えないポーズでミニスカートをひらひら、癒しの風をふわふわさせながら、アプリコーゼが叫ぶ。空気を読んでズタズタスラッシュで竜巻の主の服をぼろ布にする未来。
    「無理矢理見るって言うなら、無理やり見られても、文句はないよな? 目には目を、歯には歯を、スカートめくりには……ズボン下ろし、か?」
     にやりと笑う未来。涙目でお情けをと懇願する変態。
    「ちょっと待て。何で俺を狙うんだ! 男のなんて見ても楽しくないだろ!?」
     そしてこちらでは、逆になをが思いっきり追い詰められていた。
     シャウトで何とか服は修復するも、やっぱり竜巻を手に近づく変態。
    「恥じらいの在る所――そこにはもれなく」
     びし、と変態がポーズと共に巻き起こす竜巻!
    「パンチラの美学がある!」
     とりあえずなをはそいつ(の服)をビリッビリに剥いて気を失った所を放り出しておいた。
     
     寿の天使の歌声。精神的に厳しい今回の戦いにおいて、それは救いであった。
     激しい身振りで寿がパンチラ旋風も巻き起こしているわけだけど。
    「お前も下着がチラリしちゃった時の恥ずかしさを味わえー!」
     耕平がざっくざっく龍碎斧で服ごと変態の一人を斬り裂く。
    「……て、あんた男か、意味ねぇ……逆に盛り上がりそうかな」
    「そ、そんな女装男子に斧でかち割られて燃えるわけないじゃないハァハァ!」
    「本当に盛り上がってるー!?」
    「この変っ態めええええ!」
     優樹が思いっきりサイキックソードの光を爆発させ、辺りを光に染めた。
     しばらくお待ちください、の文字が流れたような気がして、とりあえず心をリセット。
     アプリコットの清めの風がかかり、服破りもある程度リセット。
    「……ふむ。皆やられてしまったか、他愛もない……」
     倒れ伏す一般人達の中、いきなりかっこつけて下穿隊長がイケメンっぽい構えをとる。
    「お前……」
    「見惚れてただけじゃないの!」
     四方八方から飛び交うツッコミに構わず、下穿隊長は涼しい顔で吹雪をその手に作り出す。
     だが。
    「……これが好きなんでしょ?」
     ぎゅ、と唇を噛み締めてから、優樹がゆるゆるとスカートを僅かずつ持ち上げた。
     羞恥心を堪えて作り出した挑発的な表情、けれど頬は赤く染まり、そして自らの手で晒すのは清楚な水色の――、
    「ドゥブッハァァァ!」
     思いっきり鼻血を噴き上げて狂喜乱舞する下穿隊長。
     とりあえず怒りとか恥ずかしさとかいろんなものを込めて優樹は思いっきり奴を危険な角度でぶん投げておいた。
    「ごうふっ!」
     物凄い角度に首が曲がったが、それでも起き上がる下穿隊長。
    「ふっ、だが私は受け取る側ではなく、生み出す側なのだ――至高のパンチ」
    「さて、これを見ろっす!」
     アプリコーゼの叫びと共に、ばさりと後方がめくられ円を描くスカート。
     ――メリーベルの、である。
    「……りりりリコ!? いきなりなにするのよー!?」
    「ゴウフッ!」
     再び鼻血を噴き上げる下穿隊長。
    「ごめんごめん、回復させるから許してー」
     尻尾をぴこぴこさせながら謝ると見せかけて――癒しの風アタック(回復)!
    「うわ~ん! もうやめてよばかぁー!」
     きゃっきゃうふふと騒ぐ女の子達の声を聞き、影業にかぷかぷされつつ、漢は「ひつじさんおぱんつ……」と呟いた。
    「無理やり見られるのがどんだけ恥ずかしいか……身をもって味わえ!」
     思いっきり死角からそのズボンを掻っ捌く未来。
     反省するかは別として、なをは裁きの光を下穿隊長に向けておいた。
     凄まじいキレの演武にて、寿がいくつもの衝撃波を下穿隊長一人に集中させる。破れる魔法加護、跳ねるスカート、舞い散る鼻血。
    「悪・即・斬ってな! やられる方の身にもなれってんだ!」
     ナイフの刃をジグザグに変形させ、水脈が振るった刃が凶悪な傷を下穿隊長に刻み付ける。
     そして――パンチラを愛した男は、逝った。
    「理解したか、是がモノを殺すっていうこ……」
     足の下には、幸せそうにスカートの中を見上げながら満面の笑みで死んでいる下穿隊長。withパンツ。
    「し、しまらねぇぇぇ……」
     水脈は思いっきり脱力して、消えゆくその死体からとりあえずパンツが見えない所へ体をずらした。
    「Rest in peace、だ。……Masked pants?」
     そして未来が格好よくまとめた。
    「メリーさんの雄姿は皆の心に刻まれたっす」
     モノローグを始めようとしたアプリコーゼに、メリーベルのぐるぐるパンチが炸裂した。
     
    「戦いには勝ったけど、大切なものを失った気がするわ……」
     メリーベルが死んだ目で呟く。
    「ある意味強敵だったな」
    「漢の浪漫は巨大ロボと変身ヒーローだけにしてほしいもんだ」
     そっとなをが額の汗をぬぐう。ふぅ、と息を吐き、水脈が空を見上げる。
    「せっかくの美形を無駄にして……もったいない」
     今度はもっといい男に生まれ変わりなさい、という寿の言葉と共に、空に浮かびそうになったサムズアップの下穿隊長を、水脈はとっとと脳内から追い出した。
    「こいつらに力を与えた悪魔は絶対に許さない。追い詰めてパンツの山にぶち込んでやるんだから!」
     意気込むメリーベルを見つめつつ――誰かが、呟いた。
     
    「多分……喜ぶんじゃないかな、それ……」

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年11月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 11/キャラが大事にされていた 4
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