慟哭のダブルバイセップス・フロント

    作者:旅望かなた

    「ふごおおおおん!」
     月の綺麗な夜のこと。
     男は涙しながらダブルバイセップス・フロントを決めた。
     すらりと締まったウェストと発達した胸筋背筋を持つ男にとって、それはもっとも愛するポーズであった。
     けれど今、手によっても帽子によっても隠し切れぬ頭上には、黒曜石の角がぎらりと輝く。
    「筋肉をおおおおおお! 暴力に使ってはいけないのはああああああ! ボディビルダーのおおおおお! 基本! 常識! 信念! 心のプロテイイイイイイイン!」
     ラットスプレッド・フロント。大きく背筋が盛り上がり、それはまるで翼の如く。
    「なのに! なのに! 俺は破壊がしたぁい! 暴力を振るいたぁい! 悪逆非道に振る舞いたぁい!」
     男は滂沱の涙を流す。月に輝く涙は美しい。
     けれど、彼の心は闇に染まろうとしている――。
    「こんな俺に、ウェイトトレーニングの資格はなああああああい!」
     それでも決めちゃうダブルバイセップス・フロント。
     それが闇に奪い取られようとしている彼の心が、最後にすがる自己であった。
    「鍛えられた筋肉はそう、躍動する肉食動物の、獲物を狩る時にしか現れぬ瞬間時速を思わせる……」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)がそう呟いて、集まった灼滅者達を見渡した。
    「俺の全能計算域(エクスマトリックス)が、闇堕ち寸前の筋肉探求漢(ボディビルダー)の情報を導き出した」
     男の名は、鍛錬・増隆(たんれん・まする)。
    「闇堕ちして羅刹となりかけているが、まだ人間としての意識を残している。もしかしたら、彼は灼滅者の素質持ちかもしれない。そうであれば――闇堕ちから救い出してほしい」
     そうでなければ、速やかな灼滅を。
     彼が、罪を犯す前に。
    「彼は高架下の人気のない公園で、筋トレやポージングをしながら泣いている。……電車がひっきりなしに通る場所だから、人に声が届いていないのは幸いだな。俺の予知によれば、一般人の心配は必要ない」
     奇妙な行為のようにしか思えないが、羅刹としての暴力衝動に抗うために、『鍛錬・増隆』という『人間』として打ち込んでいるウェイトトレーニングが最後の心の支えになっているのだろう。
    「本来、増隆は暴力とは無縁で、義侠心に溢れた人間だ。だが、彼を心情如何に関わらず、彼の体を乗っ取ったダークネスは、戦いを仕掛けてくる」
     けれど、増隆を説得することは、できる。
     それによって、彼の中に潜むダークネスの力を削ぐことができるだろう。
     彼を乗っ取ったダークネスは、神薙使いと同じサイキックで戦いを挑むと、ヤマトは灼滅者達に告げて。
    「増隆が求めていたのは、人を傷つける為の力じゃない。だが、その筋肉が護る為の力にもなるとしたら……」
     彼は、きっと共に戦う仲間になってくれるだろう。
    「だから、頼んだぜ」
     そう、ヤマトは笑みを浮かべて告げた。


    参加者
    千布里・采(夜藍空・d00110)
    佐藤・司(高校生ファイアブラッド・d00597)
    仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)
    マリーアーリア・ブラックルーン(腹ペコ幼女・d01794)
    宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)
    永守・護々那(この身は誰かを護る楯・d08745)
    星宮・キキ(高校生魔法使い・d09958)
    祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632)

    ■リプレイ

    「ふふ、星光が飲み込まれるほどの美しい月夜ね」
     戦いに相応しき夜、と星宮・キキ(高校生魔法使い・d09958)は微笑む。
    「全力でいかせていただこうかしら」
     そう、羅刹の、灼滅者風に言えば神薙使いの力を宿した者と言えば、相手には事欠かかぬ。
     まして、それに勝つことによって一人の友が仲間になるかもしれぬとあってはなおのこと。
     そう、視線を移せば。
    「はたから見ると凄い光景ー……」
     仲村渠・弥勒(世果報は寝て待てない・d00917)が感心しているのか唖然としているのかわからない口調で呟く。
    「なーんか暑っ苦しい感じになりそうだけど、これから冷え込んでくる時期だし、ちょうどいいのかなぁ?」
     そんなの呟きに、マリーアーリア・ブラックルーン(腹ペコ幼女・d01794)がふむりと首を捻って。
    「ちょっとばかし服装が、周りの人の視覚的に寒いような気がするじぇ……」
     ジト目で振り返るとそこには、上半身裸の男がいた。
     今回のターゲットである鍛錬・増隆――ではない。
    「人間、最後にものを言うのは日頃の鍛錬だよな! そう! 鍛え上げた筋肉は、必ず期待に応えてくれるはずだ!」
     自己紹介で鍛えたい筋肉まで紹介していた、宮森・武(高校生ファイアブラッド・d03050)である。
    「こう見えて俺は筋トレマニアなのだ。普通くらいには筋肉はある! はず!」
     次々にポージングを変えながら叫ぶ武。
    「暑苦しいなー」
     佐藤・司(高校生ファイアブラッド・d00597)が目を細めてから、そのままにっと笑う。
    「けどな、そういうの嫌いじゃねーぜ!」
     彼のルーツも、ファイアブラッドたれば熱さ(と暑さ)は近しきもの。
     なれば自分も心からの炎で応えようと。
     そんな彼らを少し離れて見つめ、祁答院・哀歌(仇道にして求答の・d10632)はそっと胸の前で手を握る。
     仕事に私情を挟む事は戒められていた。けれど、それでも抑えられない感情。
     吸血鬼たる哀歌にとって、己が人外の者へと変貌していく哀哭、慟哭は心を強く揺さぶる。
    (「人でありたいと嘆く彼を、化け物の私が救いたいと想うのは、傲慢だろうか」)
     答えは、恐らくこれからの未来だけが知っている。
    「……敵を倒す事だけが、力の使い方ではないこと、この身を以って教えましょう」
     哀歌の隣に、永守・護々那(この身は誰かを護る楯・d08745)が並んで呟いた。哀歌の心の言葉を悟ったわけではないだろうけれど、どこか会話のようにも感じられる言葉であった。
    「――凄まじい音やな」
     戦場が近づけば、千布里・采(夜藍空・d00110)の言葉も電車の音に飛ばされていく。
    「本当はあたしの歌声で戦場に癒しを与えようと思ったけど、うるさかったら意味が無いわね……」
     キキがそう少し残念そうに言う。実際聞こえなかろうとサウンドソルジャーの歌の効果は発動するが、それはそれとして聞いてもらわなければ意味がないと思うのもサウンドソルジャー。
    「……喉枯れそやな。終わったら、飲み物欲しいわぁ」
     ちらと見た高架下には、品揃えのあまり良くなさそうな自動販売機。
     戦いの後にそれを使えるような結果をと、采は決意を固める。
     そして。
    「だ……誰だああああああ!?」
     ようやく気が付きがばりと振り向いた増隆の前に、さらなる筋肉が躍り出る。
    「俺達はお前を助けに来た! 俺達はお前と同じような衝動を乗り越えてきた者達なのだ!」
     武が。そして――増隆を助けたいと願う、仲間達が。
     
     モストマスキュラー、最も強き者のポージング。
     武の盛り上がる筋肉に、すぐさま増隆が応える。
     そのポーズは、やはり彼の最も誇るダブルバイセップス・フロント。
     煌めく満面の笑みはポージングの基本。艶やかな肌。珠の如き汗。血沸き踊る筋肉!
    「なるほど、悪い人ではなさそうだ!」
     何かが通じた!
     けれど、増隆は己のポージングを解き、不安げな顔で問う。
    「しかし、もしや君達は知っているのか! 俺が……俺が、人を殺したいと願っていると言うことを! 傷つけたいなんて、酷い気持ちを持っていることを!」
    「それ、あなたじゃなくてダークネスの仕業じゃけん。気にせんといてえーよ」
    「え」
     実はそこら辺教えるのみんな忘れてた気がするので、マリーアーリアがさらさらっと説明しておいた。
    「一人で耐えてたとか実際凄いよ! 身体だけでなく、心も強いよねー」
    「そ……うか? 俺が衝動を持つことが悪いのではなく、衝動に耐えたことが強いと言ってくれるのか……!?」
     弥勒の言葉に、増隆の目に熱いものが光る。
    「けど……」
     だけど、増隆の心が希望に包まれたが故に。
    「い、いかん衝動が……衝動が止まらない! うわああああ!」
     ダークネスは、ことさら強く増隆の身体を乗っ取ろうと蠢き、その拳を鬼神と変える!
    「やめろおおお!」
     増隆の必死の抵抗の声もむなしく、その拳が本来ならば最も殴る事を忌む小さな少女、マリーアーリアに向かう――けれど。
    「この身は、誰かを護る盾となる!」
     解放の言葉と共に、護々那がその間に飛び込んだ。掌を中心に展開したWOKシールドが、華麗にその拳を受け止める。
     反対の手が増隆に触れた。接触テレパスを咄嗟に使ったその掌から、闘うことは避けられずとも、護々那達に増隆を殺すことや傷を付ける行為を楽しむ気はないことを告げる。
     そして。
     出来ればこの戦いで何かを感じてほしい、とも。
     ひらりと一度後方に飛びすざり、護々那は額に鉢巻を巻き付けた。決意の強さのように、強く、縛る。
     その後方からくるりと迂回して光の矢が飛んだ。魔力を込めた光は、増隆の胸に突き刺さりダークネスを灼く。
    「ぜひ拳で語り合ってみたいものだけれど、これがあたしの戦い方よ」
     放ち手のキキが、どこか悪戯っぽく微笑んだ。
     タンと小さな地を蹴る音と共に、采の霊犬が彼の後ろから飛び出し軽やかに地面に降り立った。ぴんと尻尾を伸ばして剣を構え、闇に支配されかけた筋肉などには怯えずに。
     ただその耳は、ぱたんと折られている。恐怖からではなく――電車の音が大きすぎるのだ。
    「拳で戦うんもその力の使い道にえぇんと違う」
     霊犬が剣を振るうその後方から、影が獣の腕を象り、その中に羅刹を引きずり込む。トラウマを見せつけられた増隆の叫びがこだまし、異形化した腕を思いっきり振り上げる。
    「わかってはるんやろ? その力つこたら戻られへんことも」
    「がっ、あああああああ!」
     采の言葉に、大きく膨れ上がった増隆の腕に、引き戻す力がかかる――心が、身体を操る別人格に抗っているのだ。
     マリーアーリアの心臓の上に浮かび上がるマーク。闇堕ちに引きずられる辛さは、その力を駆使する彼女にもよくわかる。
    「方向性は違うが、俺もずっと強くありたかったかんな」
     網上に組み上げた霊力を縛霊手に纏わせ、思いっきり司が縛霊手を振った。揺らいだ増隆の身体を、霊力の網が縛り上げる。
    「闇堕ちに耐えるために無理な筋トレを繰り返していてはせっかくの筋肉が壊れてしまう! オーバーワークだ!」
     武が必死に拳を握り、雷を乗せてぶち抜く。その筋肉に敬意を表し、己も肉体を駆使して闘うと、決めた。
    「その鍛え上げられた筋肉と強い精神、必ずや灼滅者の力となるだろう!」
     絶対救ってやるぜ、と武は叫ぶ。同じ、筋肉を愛し、それを傷つける為には使いたくないと思う者として。
     名伏と銘を付けられた槍を、哀歌は背に負った。心からの涙を流せる増隆に対し、吸血鬼の力と、人の技をもって相対しようと。
     ヴァンパイアの魔力を宿した霧が、一気に仲間達を包み込んでいく。同時に、哀歌は祁答院流近接格闘術が使うボクシングの構えを取った。
    「ダークネスなんかに負けちゃダメだよー! 一緒にダークネスに苦しんでいる人たちを助けようよー」
     懸命に叫びながら、弥勒が情熱的なダンスパフォーマンスを一気に解放する。ダークネスには灼滅を、そしてその中で増隆に向けてと軽く肩を叩く。
     増隆の瞳に宿る光が優しくなった次の瞬間、その表情は凶暴性を増して鬼神の一撃を哀歌へと叩きつける。両手をクロスさせ、腰を落として哀歌がその腕を受け止める。軋む膝、けれど倒れることはなく。
     交差させた腕を解き、真紅のオーラをまとった打撃が増隆の闇から力を吸い上げ己のものとする。
     そして、それでも癒し切れぬ傷は。
    「大丈夫、今治すわ」
     そう言ってキキが天星弓を引き絞る。番えるのは癒しの矢、煌めく軌跡の点穴により呼び覚ますのは、眠っていた超感覚。
     連続していた電車の音が途切れた瞬間をついて、キキは言葉を続ける。
    「なかなかやるじゃない、けれどその力……守るために使えばもっと磨かれると思うわよ?」
    「守、る……」
     がりり、と奥歯を噛み砕く程に、増隆の歯が噛み締められる。腕がゆっくりと元のものに戻ろうとし――けれど一気に、その隆起を増す。
    「どうしても砕きてーっつーなら、その拳、の先の上腕二頭筋はダークネスに向ける為にとっとけ!」
    「ダークネス……!」
     司の腹の底からの声に、増隆が咆哮を上げる。
    「あいつらにゃ基本遠慮はいらん! でも、お前はきっと、ただぶっ壊すだけじゃなくて……ちゃんと誰かを助けられると俺は信じたいね!」
     羅刹という、酷く凶暴なダークネスの衝動に囚われてなお。
     その衝動を、人を傷つけたくないという理由で抑え込める彼だから。
    「拳向ける相手は、誰かよう考え。その力で救える命があるんやから」
     采の昏き弾丸が、清らかな霊犬の六文銭と共に増隆の中の闇を喰らい、砕く。魂の片割れである霊犬とは、コンビネーションはばっちりだ。
     マリーアーリアが杖から一気に零距離で魔力を流し込んで飛びすざった次の瞬間、放たれる風の刃。
     幾分乱雑に放たれた増隆の神薙刃を、くふりと笑って技巧を凝らした影業で、優雅に采は相殺して軌道を逸らす。
    「そっち側に堕ちたくねーんだろ? 俺らもそれはごめんだ」
     だから、と同じ神薙の刃を、司は手の中に作り出す。それは拳に風のようにまとわりつき、増隆と同じくらい力任せに繰り出される。
     けれど、それは見事に増隆に突き刺さり、闇を祓っていく。――己と同じく頭を使った攻撃が苦手であろうという司の判断は、正解だったようだ。
    「お前の中に潜むアホをぶん殴る! そのまま心と筋肉で抗え!」
     傷口から上がる炎が、生き生きと煌めく。闇と同じ力を、闇に支配されず使いこなし――好漢と言える相手と戦っているからこそ。
     護々那が一気に掌のWOKシールドの出力を上げた。バリアーを強力に広げ、己は仲間達の盾となる。
     相手を鍛えた体と技で倒す事だけが戦いではない事を、伝えたいと思ったから。
     弥勒が守りを受けながら増隆の懐に飛び込み、服を一気に破り去る。身体にぴったりと張り付くランニングシャツが、弾け飛んだ。
     それはダークネスを護る鎧が、一枚少なくなったということで。
    「上半身裸……このクソ寒い時期に。どう見ても只の変態……ふっだが問題ない! 俺は見られると興奮する性質だ!」
     決して最初から上半身裸であり変態だった武と同類なわけではない。
    「さぁ、見ろよ! もっと俺を見ろよおおおおお!」
     断じて増隆まで変態と言うわけではない。
    「最期の一絞りの力が筋肉を鍛えるように、今ここで最後の力を振り絞って抵抗できれば、より強い力を持てる! 俺達の側に来れる!」
     まぁ変態であっても、閃光百烈拳の凄まじい連打のパワーと言ってることは確かではある。
     そして、癒しの矢を番えるキキは、気が付いていた。
     拳を振るいながら、増隆の頬を涙が伝っていることを。
     己を助けに来た人に、拳を振るうことしかできぬことに泣いているということを。
     電車の音が、再び途切れた。
    「あなた優しいのね……」
     肩で息をする増隆に、キキはそう声をかける。
    「優しいだけでは、負けてしまうこともあるわ。きっとこれは、あなたに与えられた試練」
     心に直接届けてあげるから、と放った矢が仲間の傷を癒す。力の使い方は、暴力だけではないのだと。
    「それに打ち勝つ方法はわかっているでしょう、あとはあなた次第」
     ウィンクと共に、キキは唇の端をにこりと吊り上げた。
    「あたしは、最後まであきらめないつもりよ」
     増隆が、耐えかねたように目を閉じた。
     それでも、涙は止まる事を知らない。
    「正しい心を持ち続けりゃ正しい筋肉もついてくっぞ! 俺が鍛えてきたのは肉体より炎だが……負けねぇ!」
     司の焔が、一気に強さを増す。その炎が一気に拳を伝い――筋肉の鎧を、それをまとうダークネスを穿つ。
    「だからその鍛え上げた力で、罪なき誰かを守って欲しい。その広く大きな背中で、世界の悪意から人々を護って欲しいんです……そして」
     大きく息を吸い、そして哀歌は全身全霊で叫んだ。
     哀歌が増隆に、最も望む願い。
    「私達と一緒に戦って下さい!」
     共に強大な敵と戦う、仲間になってもらうこと。
     鋼鉄の如き硬さとなった拳を、一気に哀歌は思いと共に撃ちつける。
    「その鍛え上げられた筋肉と強い精神、必ずや灼滅者の力となるだろう! 絶対救ってやるぜ!」
     武が思いっきり増隆の巨体を持ち上げ、投げつける。
     鍛えた筋肉には傷を与えず、ダークネスに――その一撃は、最期を告げた。
     その瞬間、電車の音が、止む。
     終幕にして、終電であった。
     
    「ようこそ! こちら側へ!」
     筋肉の蝶回復みたいなもんを実感できるだろう、と武は笑った。
     憑き物がおちたようなぼんやりした顔をしていた増隆が、はっと正気に戻る。
    「俺は……何だか、とても爽やかな気分だが、俺のしたことは……」
     がばり、とその体が、地面に伏した。
     伸ばした背をしっかりと伏せた、正しき土下座。
    「すまない! 俺は、救ってくれた君達に、ダークネスに操られていたとはいえ酷い事を……」
    「今更少しくらい傷が増えても大丈夫ですから、気になさらずに」
     そっと微笑んで護々那が、キキやマリーアーリアと共に増隆を助け起こす。顔や体に残った傷跡は、守ために負った名誉の負傷でもあるのだから。
    「まぁ、あの筋肉や意志の強さは同じ男として、ある意味憧れではあるのかなー」
     自分を律することが出来るのは、ダークネスに必死に抗おうとしていたのは凄いと、素直に弥勒は尊敬の瞳を向ける。
    「だが……」
    「もう、ええやろ?」
     まだ戸惑いを見せる彼に、采はひょいとスポーツドリンクのペットボトルを渡し、己も自分の分の封を開け飲み干す。「叫ぶと喉が疲れるなぁ」と笑って。
     その間に霊犬が、司の足元に尾を振って近づく。嬉しそうに構ってやりながら、司が顔を上げてにかっと笑った。
    「お前も一緒に行こうぜ? 学園ならステキ筋肉の一人や二人いっから!」
     采が、うんと頷く。
    「一緒に行こ?」
     差し出された手に、涙もろいマッチョマンは。
     感激の、雄叫びを涙と共に上げるのであった。

    作者:旅望かなた 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 3/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 1
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