温泉卓球かーらーのー、イフリート!

    作者:空白革命

    ●温泉卓球かーらーのー、イフリート!(くりかえし)
    「最近、別府の温泉地でイフリート事件が多発してるんだ。どうも鶴見岳のマグマエネルギーを吸収するだのなんだので滅茶苦茶強いイフリートが復活しようとしてるらしいんだが……どうも細かい予知ができねえんだよな。相手が強すぎるからかもわからん。割り出せるのは出現位置くらいなもんだ」
     と言って、大爆寺・ニトロ(高校生エクスブレイン・dn0028)は腕組みをした。
     教卓に腰掛け、大胆に脚を組んでの説明である。
    「出現さえしちまえば俺の方でも予知ができる。つっても、出てからハイ出発ですよじゃ間に合わん。つーことで今回は特別に……!」
    「特別に……!」
     身を乗り出す灼滅者たち。
     ニトロはしっかりと頷き、上着の内ポケットからあるものを取り出した。
    「第一回! 灼滅者卓球大ッ会ッ!(イフリートが出るまでネ☆)」
     それは、星印の卓球ラケットであった。
     
     説明しよう!
     灼滅者卓球大会とは灼滅者八名による卓球バトルである!
     事前に4組(もしくはランダム)な組み合わせを決めておき時間までの間より多くの得点を獲得した者の勝利となる!
    「イフリートに関しての予知は携帯で知らせるからな。ちゃんと出れる所に置いとけよ。まあ今回相手するヤツは強力な個体ってわけじゃなさそうだが、出遅れたら大変なことになるからな。出現位置的にこう……温泉街に至る前に迎撃する感じなると思うから」
     ラケットを指の上で回すニトロ。
     ぱしんとラケットを握って、机の上に飛び乗った。
    「青春もしてバトルもする。これぞ真の灼滅者ってやつよ。皆、遊びも戦闘もガンガン楽しんで来いよ!」


    参加者
    花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)
    風水・黒虎(黒金の焔虎・d01977)
    赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)
    鳴海・ミチル(紅い風の巫女・d02981)
    堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)
    桃野・実(瀬戸の兵・d03786)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    神座・澪(いつもニコニコ愛情爛漫巫女娘・d05738)

    ■リプレイ

    ●灼滅卓球とは、灼滅者がやる卓球のことである!
     できればスーファミ時代のアクションゲームにありがちなステージ選択BGMみたいなものを想像して頂けると分かりやすい。
     テレッテ、テレッテ、テッテテレレレレー、である。
     そんな調子で、浴衣姿の花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)と風水・黒虎(黒金の焔虎・d01977)が向かい合っている様を、ご想像頂きたい。
    「花守、女子相手とはいえ……試合は真剣勝負だぜ」
    「負けないよー、勝負だー!」
     ましろはそう叫ぶと、芸術的なまでの早脱ぎで体操服(今は亡きブルマタイプ)にチェンジ。
     ビクッとした黒虎をお構いなしにボールを高く放ると。
     いきなり劇画調になった。
    「死ねええええええええ!」
    「死ねええええええ!?」
     時速150キロくらいの弾が黒虎の鼻っ面に直撃。
     黒虎は血を吹いてぶっ倒れた。
    「く……黒虎、1ポイント」
    「わふ……」
     恐怖に震えながらも得点板を捲るとらまる(霊犬)。
     ちなみにもう片方はクロ助(霊犬)。サーブ権シグナルはらぴらぶ(ナノナノ)である。なんだこの癒される得点版。
     ややあって、黒虎が台に這い上がって来た。
    「花守……卓球は『相手にボールを当ててKOさせるプリンス球技』じゃ……ない……ぜ」
     そして崩れ落ちる黒虎。
     卓球界で恐らく初めて、『アウト(一死)』が適用された瞬間である。
     ちなみに、黒虎はこの事件を後に『レディーファースト!』と無駄にキリッと纏めたという。

     さて、なんかいきなり卓球じゃない勝負が行われた灼滅卓球だが。
    「やるからには勝ちますよ~っ、ミチルちゃん!」
    「っしゃあ、望む所や。行くでぇ!」
     二人して浴衣の袖を肩の所まで捲り、赤鋼・まるみ(笑顔の突撃少女・d02755)と鳴海・ミチル(紅い風の巫女・d02981)はラケットを構えあった。
     そして、無駄に高らかにジャンプするミチル。
    「いけっ、ミチルファイアーサァーブッ!」
     全力のフルスイングでかっ飛ばされる剛速球。
    「負けないよ、どっかーん!」
     それをまるみはフルスイング(卓球と言うより野球に近い)で迎撃。
     ミチルは着地まで間に合わないと判断して天井をキック。ボールに無理矢理追いつくと、体全体をスピンさせてボールを跳ね返した。
    「今のボールを返せるの!?」
    「必殺、スペシャルレインボースマッシュやぁー!」
    「ひゃーっ!」
     激しい爆発(CG技術による特殊効果です)によって吹き飛んでいくまるみ。
     最後にスポットライト(CG技術による以下略)を浴びてベルトを掲げるミチルの姿が、卓球台の上にはあった。
     正直何の勝負なのか、見てる人にも分からんかったという。

     立て続けに超次元卓球が繰り広げられているここボロ温泉宿。
     続いての対戦カードは堀瀬・朱那(空色の欠片・d03561)と桃野・実(瀬戸の兵・d03786)だった。
    「クロ助の愛らしさに目を奪われて、油断何てしないヨ! タブン絶対!」
    「多分なのか? 絶対なのか?」
     朱那はぐるぐると肩を回し、実は手首のストレッチを図る。
     そして両者見合い、試合開始。
    「いくよ――必殺!」
     朱那はボールを天井スレスレまで放り投げると、ラケットを大きく振り絞った。大気がざわめき、空気がうねる。
     全力で振り込まれるラケット。
    「レーヴァテイン・オメガッ!」
     進路上の空気全てを押しのけ、暴力の塊の如く繰り出されたラケットはそして――!
     ボールの下30センチの所を通過していった。
     無言のまま振り切り体勢で停止する朱那。
     かこーんと言って地面を跳ねるボール。
    「今のは、球の裏切りダカラ!」
     とりあえず表情だけはキリッとしておく朱那であった。
     でもって、この後の実プレイはこんな感じである。
    「貧しさに負けたドライブ」
    「はうっ」
    「世間に負けたフリック」
    「うあうっ」
    「社会を歩く人々の荒波に揉まれ流されていく俺たちのスマッシュ」
    「ひゃいん!?」
     いわずもがな、実のパーフェクトゲームであった。
     鼻にティッシュ詰めた黒虎が『悲しい強さだな……』とかシリアス顔で言ったことも、あえて付け加えておくこととしよう。

     ラストバトル。
     黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)VS神座・澪(いつもニコニコ愛情爛漫巫女娘・d05738)。
     摩耶は赤淵の眼鏡をすっとかけ直すと、卓球ラケットをシャープに構えて振り返った。
    「相手にとって不足ナシ……ガンガン行きますよ」
     一方台を挟んだ反対側。
     澪は浴衣の胸元を無駄に肌蹴てラケットを素振りしていた。
    「えへへ~、がんばるわぁ~」
     風を切るラケット。そして胸元。
     摩耶は一旦眼鏡を外してから、度合と汚れを確かめてもう一度かけてみて……。
    「相手にとって不足ナシ!」
     余人には知りえないやる気を出した。
     実際の勝負は何と言うか、普通にカコンカコンとボールが行き来するノーマルな卓球勝負だった。
     時折黒虎が不自然に座高を下げようとしてミチルたちに引っ張り上げられていたことを除けば普通である。理由はあえて言わない。
     そんな勝負がクライマックスに入り、摩耶のトドメの一発が炸裂する、絶好のタイミングがやってきた。
    「来た――命名、稲妻落とし!」
     ジャンプからの大ぶりなスマッシュが炸裂し、澪の脇を抜けていく。
     慌てて飛び出す澪。そして胸元。霊犬ズに両目を隠される黒虎。
     ゲームセットの合図が上がった、まさにその時、彼等の用意していた連絡用携帯電話が大音量で鳴りだした。
     素早くひっつかむ摩耶。
     通話相手は勿論……。
    『大爆寺ニトロだ! 特技はトルネードスマッシュ!』
    「卓球やりたかったんですか……?」
    『いや、まあ……それはいい。イフリートの動きを予知した。データを送信するから現地に急いでくれ。破壊活動が始まる前に迎え撃てる筈だ。頼んだぜ!』
     摩耶は応答し、携帯の通話終了ボタンを押す。振り返ると、皆一様に頷いた。
     いよいよ、バトルパートへの突入である。

    ●別府温泉イフリート『ブラックテトラ』
     妙にマンガチックな絵文字と共に送られてきた情報によると、イフリートのコードネームはブラックテトラ。
     猫科の肉食獣を思わせるスリムなボディに四肢を黒い影業型エナジー体でコーティングしており、状況に応じて四肢の形状を変化させていくタイプであるという。
    「えっと、ようするにファイアブラッド系と影業系のサイキックを使うスピード型ってことやねぇ……はわわっ!?」
     道端の石で転びそうになりながらもよたよた走る澪。
     浴衣から巫女服(厳密には巫女装束ではない。皆知ってるアレである)にチェンジしていたが、露出の度合いが大体一緒だった。つまり荒ぶっていた。黒虎の視線がさっきから熱かった。
    「たしかこの先の雑木林だったな……見つけた!」
     黒虎は意識を戦闘にシフトすると、鼻ティッシュをパージして戦闘服へとチェンジ。
     木々をすり抜けるようにして飛び込んでくる巨大な獣――イフリートを迎え撃った。
     口から激しい炎を吹き出し、焼き払おうとしてくるイフリート『ブラックテトラ』。
     対して黒虎は前へ踏み込み、大きな炎の翼を展開。味方に降り注いだであろう炎を残らず払い除けた。
    「出会いがしらの女の子にいきなり火ぃ吹くとは、マナーがなっちゃいねーぜ!」
    「ありがと黒虎さん、ちょっと見直した!」
     長い黒髪をなびかせ、摩耶がブラックテトラへと飛び掛った。
     反射的に繰り出されたであろうクロー状の前足を刀で受け流し、空中で軽くスピン。すれ違いざまにブラックテトラの腕(前足)を切りつけた。
     腕から血をふき出すブラックテトラ。仕方なく下したその腕に、朱那は容赦なくバスタービームを叩き込む。
    「さぁーって、ガンガン当ててくヨー!」
     テンションの割には地味にキツい傷口抉りを続ける朱那。相手のバランスが悪くなってきたタイミングで地面を蹴り急接近。
     着地した摩耶が振り返りながら紅蓮撃を繰り出すのと同じタイミングで、バスターライフルを直接叩きつけた。
    「――!?」
     今度こそ前足を折るブラックテトラ。
     ミチルと実がきらりと目を光らせた。
    「畳み掛けるで! とらまる、フォローよろしく!」
    「クロ助も援護たのむ」
     胴を直接狙うべく飛び掛る二人。前方向に傾いたブラックテトラの背に登るのはさほど難しい事ではない。
    「スペシャルレインボースマッシュ再びやぁ!」
     ミチルはそれまで鞘に納めていた剣を抜刀。居合斬りを繰り出す。
     開かれた傷口に実は槍をまっすぐに突き立てる。貫通力と俊敏性に優れた和槍のこと、その中ほどまで一気にずぶりと沈んで行った。
    「まだだっ!」
     実はその段階になってあえて槍にエナジーを注入。零距離どころか内部に向けて妖冷弾を叩き込む。
     身をよじって暴れるブラックテトラ。ミチルは咄嗟に剣を突き立ててブレーキをかけるが……しかしそこは影業スキルの持ち主。腕を覆っていたエナジー体が背中まで伸びてきて、ミチルを鷲掴みにしてしまった。
    「あ、あかんっ!」
    「はわわわっ、待ってて~!」
     澪は懐(谷間部分)から扇を取り出して防護符を発射。
     しつつ、まるみへと振り返った。
    「どうしよぅ、なんとか動きを止められないやろか」
    「えーっとえと……あ、あった!」
     まるみはトゥッとか言いながらジャンプすると、キラキラした光を放ちながら回転した。
    「届け私の――乙女心ー!」
     ディーヴァズメロディ展開。途端にイフリートの手元が狂い、その場で派手に転倒してしまった。
    「からのー、はんたーちゃんす!」
     まるみはどこに持っていたのかデカい斬艦刀を取り出し、ブラックテトラに渾身のフォールアタックを仕掛けた。
     頭部をかち割らんばかりの衝撃に、ずしんと大地が鳴った。
    「トドメいけるかな? よしっと……!」
     ましろが両手にガンナイフと護符を取り出し、胸の前でクロス。
     頭に被ったパンダフードがぴこぴこと動いた。
    「いっぱい行くよー!」
     そして弾丸やエナジー弾をブラックテトラ目がけて思いっきり撃ちこみまくった。
     砂埃が沸き上がり、相手の姿を隠す。
     しかしこれだけ打ちこんだのだ。
    「やったかな?」
    「あ、それやってないフラグ!?」
     思わず振り向くまるみ。そう、『やったか』と言われて、やられてた奴はそうはいない!
     砂煙を突き破り、四肢を鋸型にしたブラックテトラが、まるみ目がけて一目散に飛び込んでくるではないか。
    「やっぱりお約そ――」
    「さぁーせるかーあ!」
     そこへ横っ飛びに割り込んでくる黒虎。ついでにセリフも割り込みである。
     多少は受け流しはしたものの、そこは巨大な猛獣。パワーの差で黒虎は思い切り地面に叩きつけられてしまった。
     鋸のエッジが食い込んで血が噴き上がる。
    「お、オレが抑えてる内に早く!」
    「それは死にフラグ!?」
    「ゆーとる場合かっ!」
     ミチルがブラックテトラの後方から鬼神変でパンチ。
     その衝撃でぐらついた所へ、実が百裂拳で追い打ちをかける。
     澪は清めの風を吹かせつつ、扇をぱたぱたやった。
    「見た目回復してても、多分エナジー体で覆ってるだけだとおもうんよ! ダメージちゃんと溜ってる、だから一気に畳み掛けたらいける筈やよ!」
    「その考え、乗ったヨ!」
    「フラグ分は回収しないとね!」
     ガンナイフを半身に構えたましろと、バスターライフルを構えた朱那。
     二人の射撃が一斉に叩き込まれ、ブラックテトラを僅かながらに押しのける。
     が、後ろからは依然としてミチルのジャイアントパンチと実の連打パンチが仕掛けられている。敵は前後から挟まれて打たれたい放題。つまり……。
    「今度こそ、トドメのチャンス!」
     正面側から突撃するまるみ。
     彼女に並んで摩耶も突撃。
     二人は同時に剣を翳すと、頭部を挟んで両サイドに分離。頬部分に剣を突き立てると、そのまま胴体をかっぴらくつもりでお尻の方までざっくりと切り開いてやった。
     高く高く咆哮し、まるでつむじ風の様にねじれて消えるブラックテトラ。
     彼は残骸ひとつ残さず、雑木林に僅かな破壊だけを齎してこの世から消えて行ったのだった。

    ●灼滅者だって温泉に入り隊
    「俺の活躍、見てくれたかな。なんなら生死を賭けて戦った仲間同士背中を流し合おうじゃな――」
    「ソォイ!」
     前歯キラーンした黒虎を二階から露天風呂にシュート。
     朱那はどこかやり遂げた顔で手を叩いた。
    「この後はどうスル? 温泉入っちゃう?」
    「あ、じゃあ水垢離したいなぁ」
    「温泉で水垢離……できるのかな……」
     頬に手を当てる澪。腕組みする摩耶。
     そしてそんな彼女らを邪魔しないようにそそくさと男湯へ向かう実。
    「湯の華あるかな……お土産屋さん寄ってくか」

    「温泉と卓球の続きもしたいし、現地調査もしたいよねー」
     パンダのぬいぐるみをもふもふしながらそう語るましろ。
    「そうだねー、澪ちゃんとか気になるよねっ!」
     両手を天に翳し、目の中にお星さまを輝かせるまるみ。
    「え、現地調査ってそういう意味なん? うち大爆寺さんいお土産買うてこと思ったんやけど」
    「それもいいかも?」
     などと……。
     灼滅者たちはこのボロ温泉宿の平和を影ながら取戻し、人間らしく少年少女らしく、別府の情緒を楽しんだのだった。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 12
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