クククッ……、私はまだ3回分の変身を残している

     そんな噂から生まれたのが、今回の都市伝説である。

    「つーか、どうせなら最初から最強形態で良くないか?」
     素朴な疑問を感じつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を説明する。

     今回、倒すべき相手は、あと3回分の変身を残した都市伝説。
     既に不良達を倒した時に1回、変身をしていたらしく、頭には鋭い角が生えている。
     ちなみに、もう一度変身すると筋肉質になり、次に変身すると体が鉄のように固くなって、全身がトゲトゲしくなるようだ。
     そして、最終形態。
     そう言った無駄なモノが取っ払われて、グレイみたいな姿になる。
     なんだか、この時点でどこかで聞いたような、見たような胡散臭さ満載のアレな雰囲気が漂っているが、元が噂だった事を考えて……察してくれ。
     まあ、こんな外見のせいなのか、衝撃波を飛ばしたり、目にも止まらぬ早業で攻撃を仕掛けてきたりと、なかなかの強敵。
     そのうち、『お前達を取り込んで、究極形態になってやる』とか言い出すかもしれない。
     ただし、そこまでの力はないから、激しいスキンシップのような状態になるだけだがら、気にしないでくれ。
     どちらしても、厄介な相手である事は間違いない。
     面倒な事になる前に倒してしまってくれ。


    参加者
    七里・奈々(恋スル七ハ百万馬力・d00267)
    玖・空哉(クックドゥドゥルドゥ・d01114)
    穂群坂・結斗(雪月封火・d01524)
    鳴神・月人(一刀・d03301)
    刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)
    犬蓼・蕨(白狼快活・d09580)
    赤秀・空(失敗者・d09729)
    恋川・想樹(ねむりねこ・d10384)

    ■リプレイ

    ●地上最強の……敵?
    「なんだか何処かで聞き覚えがあるような敵だけど、油断大敵。取り敢えず、仮称として『F様』と呼ぶ事にしよう」
     都市伝説の確認された場所に向かいながら、赤秀・空(失敗者・d09729)がさらっと死亡フラグを立てた。
     だが、空自身は気づいていない。
     いつの間にか、空だけ音声が変えられている事を。
     気のせいか、空だけ何となくぼやけている。
     すべては非常事態を避けるため。
     これも都市伝説の力……かも知れない。
    「なんつーか、今回の都市伝説って戦闘力が53万くらいありそうだぜ。もうダメだ、勝てるわけがない……、なんつー展開にならねーよう祈っとくか」
     何となく目張りが入りつつ、玖・空哉(クックドゥドゥルドゥ・d01114)が口を開く。
     今回は妙な発言をするたび、見えざる力が働いたように錯覚するのか、普段は見えないようなものが見えているような……気がする。
     もちろん、編集上の都合的な……と言うよりも、単なる気のせいなのだが、何となく参加者全員が違和感を覚えていた。
    「つーか、どんな噂だよ! それ以前に、変身を残してる奴が存在するって、どんな状況だよ!!」
     すっかり呆れ果てた様子で、鳴神・月人(一刀・d03301)がツッコミを入れていく。
     その正体は異星人や未来人、はたまた超絶生命体など色々な説があるようだが、そのせいで余計に妙な姿になってしまったようである。
     しかも、思わせぶりに宇宙船っぽいモノの破片や、タイムマシンっぽい設計図などが見つかったため、余計に実在すると思われてしまったらしい。
     もちろん、それは騒動を面白がった者が引き起こしたほんの些細な悪戯であったが、その本人ですら都市伝説となって現れる事など予想もしていなかった事だろう。
    「……と言うか、これってまるでキメラだね。だって、だって吸収する人と変身を残してる人って……げふんげふん」
     急の喉が突き刺すように痛くなり、犬蓼・蕨(白狼快活・d09580)が激しく咳き込んだ。
     ……何かがおかしい。
     何か目に見えない……大人の事情的なアレが働いているような気がする。
    「んー? 察するに、ガチムチになってから、全部脱げちゃう感じの都市伝説なのかな? だったら、こっちから攻撃を仕掛けて、全部脱がしちゃったら、きっと早く倒せるんじゃないのかな!」
     真冬にもかかわらずスクール水着姿で依頼に参加し、七里・奈々(恋スル七ハ百万馬力・d00267)がニコリと微笑んだ。
     実際には脱ぐと言うよりも変身していく感じなのだが、話を聞けば聞くほど着ぐるみチックな姿をイメージしてしまう。
    「それ以前に元ネタが、いまいち分からないんですよねえ」
     色々な意味で最も安全圏にいる事に気づかぬまま、恋川・想樹(ねむりねこ・d10384)がのほほんとした表情を浮かべる。
     元ネタを知らないおかげが、一番リラックスしており、都市伝説を脅威であるとは感じていない。
     そう言った意味で都市伝説を目の当たりにしても、動揺する事無く対応する事が出来るだろう。
     もちろん、都市伝説側としては大袈裟に『げげぇ!』と驚いてほしいので、その辺りで温度差を感じてしまうかも知れないが……。
    「どうやらアレのようじゃろう」
     都市伝説とそのまわりに倒れた不良達を見つけ、刀鳴・りりん(透徹ナル誅殺人形・d05507)が生暖かい視線を送る。
     どこかで見たような中途半端感満載の外見。
     おそらく、半分ずつ真似をすれば、問題ないと安易に考えた結果なのだろう。
     そのせいで安っぽさばかりが強調されてしまい、全然格好良くはない。
     むしろ、格好悪くて胡散臭かった。
    「こいつが噂の……さて、さっそくはじめようか」
     余計な事を考えないように気持ちを切り替え、穂群坂・結斗(雪月封火・d01524)がスレイヤーカードを構える。
     この様子では、見た目のショボさを馬鹿にされ、ついカッとなってしまったのだろう。
     『いつもは冷静な俺がイカン、イカン』と中途半端感満載の口調でボヤいている。

    ●不良達
    「俺達で気を引くから、今の内にその人達を安全な場所へ運んであげてね」
     不良達を庇うようにして陣取り、空が仲間達に向かって声をかける。
    「気を引く……だと? お前がか? 笑わせるなァ!」
     激しい雄叫びを響かせながら、都市伝説が全身の筋肉を隆起させた。
     次の瞬間、都市伝説が物凄いスピードで距離を縮め、空を吹っ飛ばすほど強烈な一撃を放つ。
    「……無茶をするな。さすがにボロ雑巾のようにはなりたくないだろ」
     空に対して警告しながら、月人が都市伝説の攻撃を代わりに受け止めた。
     だが、あまりにも強烈な一撃だったため、反射的に表情が歪む。
    「どうやら、見た目だけでなく、能力もアップしているようですね。まあ、予想の範囲内で収まるレベルだと思いますが……」
     冷静に都市伝説の行動を読みながら、想樹がギリギリのところで攻撃をかわしていく。
     それに苛立った都市伝説が再び姿を変え、全身がトゲトゲとした凶悪な姿に変貌した。
    「……畜生っ! せっかくの駒を横取りしやがって! 俺の……俺の獲物だ! 返しやがれ!」
     激しい怒りを爆発させ、都市伝説が唸り声を響かせる。
     その途端、大地が震えたような錯覚を受けたが、都市伝説の顔を見てションボリ感が倍増した。
    「君は少しお喋りが過ぎるみたいだ。もういないよ。誰一人としてね」
     都市伝説の顔面めがけて、結斗が容赦のない一撃を放つ。
     だが、都市伝説はビクともしない。
    「さすがに噂だけの事はあるね。 だったら、一撃必殺!! ……ゴールデンブレェェェェイク!!」
     都市伝説の急所を狙うようにして、蕨がフォースブレイクを炸裂させる。
     その一撃を食らって都市伝説が吹っ飛び、そのまま倒れて動かなくなった。
    「やっぱり、大した事がなかったねっ!」
     勝ち誇った様子で都市伝説を見下ろし、奈々がふんと鼻を鳴らす。
    「いや、まだ奴は最後の変身を残しているのじゃ」
     警告混じりに呟きながら、りりんが素早く身構えた。
     都市伝説もそれに応えるようにして、ムックリと起き上がる。
    「ですよねー」
     色々な意味で身の危険を感じ、空がサッと後ろに飛び退いた。
     それに合わせて、妙なフラグも一緒についてくる。
     おそらく、深い意味はないと思うが、嫌な予感しかしないのも、また事実。
    「……チッ! 纏めて片付けてやろうと思ったのに、これじゃ台無しじゃねえか!」
     すぐさま奈々の足を掴み取り、都市伝説が荒々しく息を吐き捨てた。
     それに気づいた奈々が怪しげなスライムを投げつけたが、そのせいでべっとべと。
     暴れれば暴れるほどスライムが粘つき、スクール水着の中に入っていく。
    「こんな事で奈々は負けないもん!」
     悔しそうに唇をグッと噛み締め、奈々が怪しげなスライムと格闘する。
     それが自分の撒いた種であった事をすっかり忘れ、すべての責任を都市伝説に押し付ける勢いで!
    「卑怯なマネをしやがって! 許さねえ!」
     都市伝説が鬱陶しそうに奈々を放り投げようとしたため、空哉が近距離からオーラキャノンを撃ち込んだ。
    「つーか、俺は悪くねえだろうがっ!」
     ムッとした表情を浮かべ、都市伝説が叫び声を響かせる。
     次の瞬間、都市伝説の体にヒビが入り、最終形態へと変貌を遂げた。

    ●都市伝説
    「これからが本当の地獄だ……!」
     とうとう都市伝説が正体を現したため、空哉がライドキャリバーの剛転号に飛び乗り、必要以上に距離を取る。
     最終形態になったためか、空気がビリビリとしており、嫌でも警戒してしまう。
    「それにしても、さっきの不良達。個性的な人達が多かったね。まさか、あの中に取り込もうとした相手がいたとか」
     軽く冗談を言いながら、空が閃光百裂拳を叩き込む。
     その途端、都市伝説が『何故、それをっ!』と大袈裟に焦る。
     もちろん、例え不良達がこの場にいたとしても、取り込む事など出来はしない。
     だが、都市伝説は焦っていた。脂汗が止まらない。
    「こういう隙だらけの行動を取るのも、元ネタに由来しているんでしょうね。……悲しいですね」
     深い溜息をつきながら、想樹が都市伝説に視線を送る。
    「完璧な計画だったはずなのに……。奴らを取り込み、完全……いや、究極生命体になれば、俺に敵など……敵などいなかったはずなのに!」
     延々と自分の失敗を語りつつ、都市伝説が拳を震わせた。
     ある意味、お約束。
     この手の語りと過去話が出た時は、トドメをさしてくれ、という合図である。
     そのため、トドメをさすまで、この語りは……続く。
    「畜生、こんなはずでは……、こんなはずではァ!」
     そして、想樹達をチラ見。
    「いまのうちにさっきのお返しをするよっ! ……って、スライムがああああ」
     大粒の涙を浮かべながら、奈々が体にこびりついたスライムを取ろうとする。
     しかし、スライムはスクール水着の中へ中へと入っていき、奈々を妙な気持ちにさせていった。
    「気円……っと、これは禁句だったね。フラグ的な意味でも」
     ハッとした表情を浮かべ、結斗が小さく首を横に振る。
     一瞬、頭が禿げるかと思った。いや、どちらかと言えば坊主的なアレに。
    「今だー! 早くうてー!」
     そのため、空哉が覚悟を決めた様子で、都市伝説を羽交い絞めにした。
    「それなら遠慮はいらぬな」
     一気に間合いを詰めながら、りりんが都市伝説に紅蓮撃を叩き込む。
     その途端、空哉の全身にも激痛が走り、『ちょっと待て! やり過ぎだ!』と叫ぼうとしたが、そのまま叩きつけるようにして斬りかかってきたため、声が打設に意識があっちの世界に旅立った。
    「……きたない花火だね」
     次の瞬間、都市伝説が勢いよく弾け飛んだため、蕨が嫌悪感混じりに吐き捨てる。
     空哉の尊い犠牲によって、都市伝説は倒された。
     これからも夜空を見るたび、思い出す事であろう。
     都市伝説と共に散った空哉の事を!
    「いや、死んでないから。お前らも泣くなよ、縁起でもねえな」
     ムックリと起き上がり、空哉が仲間達にツッコミを入れた。
     本当は起き上がる事さえキツイが、このまま放っておけば火葬場にゴーである。
    「ま、まあ、みんな無事で何より。元ネタをよく知らなかったせいか、最後まで謎が残った気もするけど……」
     複雑な気持ちになりながら、月人が空哉に肩を貸す。
     そして、月人達は都市伝説の恐ろしさを色々な意味で実感しつつ、その場を後にするのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年12月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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